助産雑誌 70巻3号 (2016年3月発行)

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特集　遺伝カウンセラーとは異なる　出生前検査における助産師の役割

扉 70巻3号 , 2016年3月 , pp.173

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日本では2012年にいわゆる新型出生前診断（NIPT）の開始について報道され，社会が，そして医療現場も混乱をきたしました。その背景には，妊婦や家族に正しい情報が伝わっていないことや，カウンセリング体制が整備されていないことがあるようです。

そのような状況下において，外来で妊婦の第一の窓口となり，妊娠初期から分娩，産後に至るまで母子に寄り添うことができる助産師には，身近な相談者としてのかかわりが求められます。

遺伝カウンセラーの役割は非常に重要ですが，助産師にはまた違う側面から，妊婦と家族の声を聴き，お腹の赤ちゃんのことを一緒に考えられるという，とても大切な役割があるのです。

助産師は出生前検査にどこまでかかわれるか中込　さと子 , 浅野　浩子 70巻3号 , 2016年3月 , pp.174-177

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出生前検査の導入に当たっては，妊娠期の発達課題に取り組む女性と家族へのケアの充実が欠かせません。どのようなサポートが必要か，今一度，自施設の妊婦健診を見つめ整えましょう。

新型出生前診断（NIPT）とは金井　誠 70巻3号 , 2016年3月 , pp.178-182

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2013年から検査開始となったNIPT。大々的な報道により「ダウン症が採血のみで99％以上の精度で診断可能」と誤解している妊婦も存在します。妊婦に正しい情報を，遺伝カウンセリングマインドをもって提供しましょう。

妊婦の意思決定を支える助産師の役割と実践阿部　明子 , 大谷　晃子 70巻3号 , 2016年3月 , pp.183-188

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助産師は遺伝カウンセラーの資格を有していなくても，産科外来で妊婦から出生前検査の質問を受けることが多い職種です。ここでは事例を通して，助産師として意思決定にかかわる意味や，他職種間のコーディネーターとしての役割を考えます。

遺伝診療部門をもたない施設の助産師の実践御手洗　幸子 70巻3号 , 2016年3月 , pp.190-195

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日本において，出生前検査を実施していない施設は全体の半数にのぼると報告されています。検査を希望する妊婦は紹介先の施設で検査を受けるしかありません。紹介先の施設に送り出す時，そして再び迎える時，妊婦が安心できる取り組みをまとめていただきました。

—いまさら聞けない！—出生前検査のきほんの「き」Q＆A 小笹　由香 70巻3号 , 2016年3月 , pp.196-199

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ベテラン助産師でも抱く，出生前検査にまつわる素朴な疑問や，妊婦さんや家族と話をする時の心構えなどをＱ＆Ａ形式で解説します。

—厚生労働科学特別研究事業—「出生前診断における遺伝カウンセリング及び支援体制に関する研究」の概要と目的久具　宏司 70巻3号 , 2016年3月 , pp.200-205

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わが国における母体血清マーカー検査，羊水染色体検査の実施状況と，遺伝カウンセリングを中心とした診療実態を明らかにした研究を紹介します。認定遺伝カウンセラーや，遺伝に関する専門知識をもった助産師の関与が求められています。

NIPTに関する生命倫理からの懸念と今後のあるべき姿仁志田　博司 70巻3号 , 2016年3月 , pp.206-211

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NIPTを導入するための社会的な整備が不十分なまま実施されていると懸念する専門集団の代表を務める筆者が，課題と今後のあるべき姿を示唆します。助産師として何ができるでしょうか。

実践報告

新生児の沐浴方法を改善！—山梨大学医学部附属病院産科病棟での「あわあわ沐浴法」導入杉山　剛 , 竹田　礼子 , 高野　和美 70巻3号 , 2016年3月 , pp.214-220

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「あわあわ沐浴」によるスキンケアイノベーション

杉山　剛　山梨大学医学部小児科

なぜ沐浴方法を見直そうと思ったのか

　私が小児科医となって15年以上たちますが，1か月健診のたびに疑問に思っていたことがあります。それは「なぜ赤ちゃんの皮膚はこんなにも汚いのだろう……」ということです。母親もわが子の皮膚の状態をしきりに訴えてきます。

連載　私たちの仕事場・2

湘南鎌倉総合病院 70巻3号 , 2016年3月 , pp.165-168

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　湘南鎌倉総合病院（以下，当院および本院）は，神奈川県の鎌倉市にあります。地域の皆さまの声から始まった病院で，「生命だけは平等だ」の理念のもと，「救急患者さんは決して断らない」「年中無休，24時間オープン」などを実行している，地下1階，地上15階建ての病院です。

　その6階に，入院と外来が同じフロアになるように配した，お産センターがあります。年間分娩件数は現在約800件で，経腟分娩率85％，帝王切開率15％です。現在スタッフは35名の助産師と2名の看護師，産科医師（非常勤含む）12名，新生児科医師（非常勤）1名です。チームワークを大切に，日々コミュニケーションを取りながら業務を行なっています。

連載　宝物，教えてください・2

矢じりは私の生きる原点矢島　床子 70巻3号 , 2016年3月 , pp.169

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岐阜の山奥で農家の娘として生まれ，年の離れた姉・兄たちのなかで育ちました。小さい頃から矢じりを拾い，夢ばかりを追っていた少女時代でした。小さな矢じりを拾うと，数日間，私は夢のなかで縄文時代の人たちと話すことができ，彼らと同じ風景が目の前に広がっていきました。どんな高価な宝石よりも，小さな矢じりが私の宝物でした。

縄文時代，3000年以上も前の人が硬い石を何時間もかかって削り，丁寧に矢じりをつくっていました。長い長い命のつながり……この矢じりに，いつもワクワクしていました。矢じりは私の生きた証し，生きる原点です。

連載　助産研究をしよう　基本を押さえて臨床で活かす！・3

リサーチクエスチョンに出会うまで（1）—問題意識を言語化する福澤(岸)　利江子 70巻3号 , 2016年3月 , pp.222-226

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　今回からは早速，研究の具体的なステップの説明に入ります。研究にはいろいろな種類があり，現場でアンケート調査や観察をして調査をすることも研究ですし，文献を調べることも研究です。対象が「人（命あるもの）」かそうでない「物」かの違いがありますが，知識の貴重さの面からはどちらも等しく重要な研究です。この連載では，人を対象に実際に現場で調査をする研究を念頭に置いて解説します。

連載　海を渡る助産婦　長崎・五島列島で活躍した明松スナさんの手記・3

印象に残っているお産（Ⅰ）石川　紀子 , 小野　幸子 70巻3号 , 2016年3月 , pp.230-233

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明松スナ助産婦による手記

記録・小野幸子　加筆・石川紀子

　ここからは私が取り扱った妊産婦の数，ならびに異常産について述べます。1934（昭和9）年から1967（昭和42）年までの開業で取り扱った分娩数とその内訳は表の通りです。死産については妊娠20週から28週のものが多く，34週以降のものは約1/3でした。1966（昭和41）年頃まではほとんど自宅分娩で，分娩ギリギリまで診察に来ない者も少なくなく，死産のうち，妊娠中毒症が原因と思われる者がかなり含まれるのではないかと考えられますが，「原因不明」で処理してあります。低体重児は1000g（自宅で保育）1例，700g（産婦人科で管理保育）1例で，ともに成育しました。

連載　ほんとうに確かなことから考える　妊娠・出産・子育てのはなし・7

多胎妊娠について森　臨太郎 , 森　享子 70巻3号 , 2016年3月 , pp.234-238

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今回のテーマ

　厚生労働省の統計によると，1975年ごろから1990年ごろまでは，双胎出生はゆるやかに減少傾向となっていたが，その後2004年ごろまで増加傾向となり，2005年からは再び減少傾向となっている。2007年度では，多胎出生は約2.2％，そのうち双胎出生は約1％とされている。

　多胎妊娠のしやすさは，人種により異なることがわかっている。一般的には，黒人，白人，ヒスパニック系，アジア系の順に多いとされており，日本は多胎妊娠がもともと多い国というわけではない。近年，多胎妊娠は不妊治療との関連を指摘されており，多くの国で同様の傾向がみられる。

連載　未来の助産師を育てています　わたしたちの教育現場・14

名古屋市立大学大学院　看護学研究科博士前期課程看護学専攻助産学領域助産学分野 70巻3号 , 2016年3月 , pp.240-244

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助産師教育の充実に向けて

　名古屋市立大学（以下，本学）の助産師教育は，11年間の短期大学専攻科修了生と9年間の看護学部助産科目履修生をあわせると約200名の人材を輩出してきました。これまで学部生のなかには，4年間で3つの資格を取得することを好まず，あえて卒業後に助産師学校および助産専門職大学院に進学した者がいました。また，助産学についてしっかり学びたいと願い，助産専門職大学院を受験した学生や，タイトなカリキュラムをみるにつけ，学習の負荷が加わることに対して自信をもてないと言った学生もいました。

　私たちは，学部卒者が学ぶ教育環境の整備が必要であると考え，助産師教育の量的・質的向上を図り，実践力を有する高度専門職業人を育成することをめざして，2008年に国公立大学で初めて大学院博士前期課程（修士課程）に助産学分野を設置しました。学士課程教育を最大限に活かし，既設の博士前期・後期課程との連動のほか，学部4年間における看護基礎教育を充実，社会が求める人材を育成できる大学づくりをめざしました。

連載　りれー随筆・375

看護学士をめざす山口　幸子 70巻3号 , 2016年3月 , pp.252-253

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　私は，学位授与機構を利用して，看護学士の学位を取得しました。学位授与機構は，大学以外でさまざまな専門分野を学んだ申請者に，学位を授与するものです。

　助産師は真面目で，生涯研鑽を続けると言われます。しかし専門学校を卒業しただけでは，いくら学習を積み重ねても看護学位はありません。「今さら，看護学位なんて」と思わず，皆さんにもぜひチャレンジしてほしいと思います。

この本，いかがですか？

『出生と死をめぐる生命倫理—連続と不連続の思想』船戸　正久 70巻3号 , 2016年3月 , pp.228

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　著者は，北里大学，東京女子医科大学で周産期医療センターの責任者として長年，深く新生児医療にかかわり，日本周産期・新生児医学会，日本新生児成育医学会などの学会を積極的に先導した先輩医師のお1人である。新生児の生と死にかかわる現場から，こうした生命倫理の問題にも先駆的に取り組まれ，学術的にも大きな貢献をしてくださった。

　著者のもっとも大きな貢献は，イェール大学のダフ博士の分類を基にした「新生児医療における倫理的観点からの意思決定」，いわゆる「仁志田の基準」（クラスA〜D）を学術的な観点から学会の場で紹介してくださったことである。この発表は聴衆に大きなインパクトを与え，その1人であった私にも大きな影響を与えた。最初の頃は学会でも，新生児の倫理や死の問題はタブー視され，その発表に対して，私を含め誰も手を挙げて質疑する人がいなかったことを非常に印象深く覚えている。

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バックナンバーのご案内 70巻3号 , 2016年3月 , pp.213

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BOOKS 70巻3号 , 2016年3月 , pp.227

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News File 70巻3号 , 2016年3月 , pp.246-247

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Information 70巻3号 , 2016年3月 , pp.248-250

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次号予告・編集後記 70巻3号 , 2016年3月 , pp.254

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基本情報

助産雑誌
70巻3号
(2016年3月発行)

電子版ISSN：1882-1421 印刷版ISSN：1347-8168 医学書院

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投稿規定

助産雑誌 70巻3号 (2016年3月発行)

特集 遺伝カウンセラーとは異なる 出生前検査における助産師の役割

実践報告

連載 私たちの仕事場・2

連載 宝物，教えてください・2

連載 助産研究をしよう 基本を押さえて臨床で活かす！・3

連載 海を渡る助産婦 長崎・五島列島で活躍した明松スナさんの手記・3

連載 ほんとうに確かなことから考える 妊娠・出産・子育てのはなし・7

連載 未来の助産師を育てています わたしたちの教育現場・14

連載 りれー随筆・375