特集 精神疾患をもつ女性の周産期ケア
妊娠・出産期のメンタルケア
岩元 澄子
1
,
吉田 敬子
1
1九州大学大学院医学研究院精神病態医学児童精神医学研究室
pp.101-105
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100461
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妊娠・出産期の精神障害をもつ女性を支援することの意義
まず,ある母親の症例を紹介する。
彼女は,出産直後から,初めての育児にどうしたらよいのかわからず,おろおろするばかりだった。そんな自分の気持ちを夫や身内に打ち明けた時には,すでに出産後4週間が過ぎていた。その1週間後に保健所に相談に行き,助産師の家庭訪問で話を聞いてもらった。しかし困惑は増し,2週間後(出産後7週間),助産師の紹介で出産した産婦人科を受診した。産科母子病棟に緊急入院となったが,症状は増悪し,入院継続は困難となり,数日後には退院して,すぐに近くの精神科クリニックを受診した。産後うつ病と診断され,抗うつ剤を服用しながら,家族が世話をしたが,さらに困惑し,育児が全くできず,泣き叫んだり,自殺念慮も現れた。抗うつ剤の効果が認められず,家族も疲弊したため,精神科クリニックの紹介で筆者らの勤務する大学病院の受診となった(出産後9週間)。抗精神病薬による症状の改善をはかったが,母親が赤ちゃんを傷つける危険性が生じたため,精神科入院となった(出産後10週間)。
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