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緒言
日本の在住外国人のうち,国籍(出身地)欄「韓国」「朝鮮」は約17%で,日本の在住外国人の中で2番目に多い1)。筆者らは第1報(本誌74巻9号)で,妊娠,分娩,産褥,育児期の在日コリアン女性への支援を考える際には,他の在住外国人とは異なる支援,日本人女性と同様の支援が必要であることを提案した。日本の医療や保健の水準は世界でも最高水準にあるが,在住外国人は言葉や文化・風習の違い,経済上の問題などから,さまざまな問題を抱える2)と言われている。国内でも海外でも在外外国人は仲間同士のエスニックコミュニティを大切にしており,同じ国の者同士が地域コミュニティを形成しながら居住することが明らかとなっている3,4)。また,同国人と結婚し,相談相手や友人も同国同士であることが多く,ネットワークが小さなコミュニティ内で終わってしまうことも多い3)。在日コリアンも仲間同士のエスニックコミュニティを大切にしており,コミュニティを形成して居住している者も多い。先行研究では,在日コリアンコミュニティに居住する在日コリアンは,コミュニティ内で情報交換し,助け合っていることも明らかとなっている5)。
また,在日コリアンは伝統的儒教の価値観から強いジェンダー規範意識を持っており,家庭内での女性の家事・育児負担割合が強いことが明らかになっている5)。これは女性たちの健康に大きく影響する問題である。在住外国人の周産期,育児期に生じる困難は,言語6,7),文化的背景8,9),保健医療制度の違い6,10),支援者不足6,7,10)から生じていることが明らかとなっている。在日コリアンは,言語的問題はないものの,文化的背景には日本人と異なることも多く,それに加え,強い伝統的儒教の価値観もあることから5),特徴的な困難が生じていることが推測された。
そこで,本研究では,在日コリアン女性の妊娠,分娩,産褥,育児期に生じる困難について明らかにし,必要な支援について検討したいと考えた。
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