Frontiers in Glaucoma 1巻59号 (2020年3月)

目でみるシリーズ 画像でみる緑内障の病態

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緑内障研究にはさまざまな動物モデルが用いられているが,マウスでは篩状板や黄斑が存在しないなど,視覚器の構造がヒトとは大きく異なる.一方で,大型のサルは解剖学的構造はヒトに近いが緑内障を自然発症せず,また研究倫理上の問題も大きくなりつつある.そこで小型の霊長類であるマーモセットの眼底写真,眼圧,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT),網膜電図などを調べたところ,老齢マーモセットの約11%に正常眼圧緑内障(normal tension glaucoma:NTG)様の神経変性所見を見い出した.緑内障様老齢マーモセットでは乳頭陥凹や篩状板(LC)の菲薄化および網膜における酸化ストレスマーカーの上昇,脳脊髄圧の低下に加えて,ヒトと同様に発達した一次視覚野が萎縮するなど,緑内障患者との共通点が多数観察された.本稿では,ヒトと類似した視覚システムをもち,かつ緑内障を自然発症するマーモセットについてご紹介し,今後のトランスレーショナルリサーチにおける有用性を検討したい.

Glaucoma Expert Discussion

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杉山 我々臨床家が緑内障診療において最大の問題と感じるのは,疾患の進行速度に個人差があり,患者さん個々の予後を予測するのが難しい点です.本日は緑内障の予後予測研究を手がける先生方とともに,研究の現状と実臨床への応用への可能性および課題について討論を行いたいと思います.はじめに,新田先生より緑内障のリスク因子と視野障害の進行についてお伺いしたいと思います.新田 私は福井県済生会病院に勤務して23年目になりますが,長年多くの緑内障患者さんを診ても,初診時にどの患者さんが進行しそうかを予測できません.同様に診続けてほとんど進行しない患者さんがいる一方,急速に進行する患者さんもいます.

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臨床の発展に研究は必須であり,臨床経験のためにも研究経験は必要といわれている.しかし,現在日本国内の眼科領域では研究,特に基礎研究は課題が多い状況にあるといわざるを得ない.今回は緑内障研究の各領域において現在活躍中の先生方に,研究を始めたきっかけやこれまでに取り組まれた研究内容をご紹介いただくとともに,Research mindをもった眼科臨床医を育てていくため何をすべきか,「緑内障研究の魅力と勧め」について議論していただいた.

Summing Up

緑内障の手術 栂野 哲哉
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緑内障性視野障害の進行を抑制することがエビデンスをもって示されている唯一の治療法は眼圧下降である.これを得るための手段として点眼,レーザー治療,外科的手術があり,単独あるいは組み合わせることによって,それぞれの患者に必要な眼圧下降量の達成を目指す.濾過手術の代表である線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)は強力な眼圧下降効果と多くの病型に対応できる汎用性をもつことから,現在においても緑内障眼に対する観血的手術の主流である.Cairnsによる原法の報告(1968年)から50年の間,いくつかの改良が加えられてはいるものの,濾過胞を作成し結膜下に房水を導くという基本コンセプトに変化はない.一方で,すべての症例で長期にわたり安定した手術効果を得ることは容易でない点,低眼圧や感染症などの重篤な合併症も生じ得る点から,熟練した術者にとってもトラベクレクトミーへ踏み切ることを躊躇することもある.こうした背景もあり,濾過手術とは異なるコンセプトのもとで眼圧下降効果を得るべく多くの手術法が考案されてきた.

Meeting Report

第30回 日本緑内障学会
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特別寄稿「学会を終えて」熊本大学 理事・副学長/熊本大学病院 病院長 谷原 秀信第30回日本緑内障学会(会期:2019年9月6日〜8日)を担当させていただき,無事,成功裏に学会を終了することができました.日本緑内障学会の理事・評議員並びに会員の皆様に,あらためてお礼申し上げます.本学会では,合計193題の演題が採択され,総数1,579名の皆様にご参加いただきました.学会場は熊本の中心街に位置し,復旧工事が進む熊本城も学会場から程近い場所にあります.県外からご参加いただいた皆様にも,熊本地震からの復興・復旧しつつある熊本の地をこの機会にご覧いただきました.本学会のテーマは,“緑内障の謎に対する「センス・オブ・ワンダー」”とさせていただきましたが,そのタイトルに相応しく緑内障の謎を解き明かし,新しい診断・治療に昇華させようとする演題が数多く発表され,議論された学会であったと喜んでおります.

New Information of Glaucoma

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緑内障は有病率が比較的高く,視覚障害の原因として大きな割合を占める.緑内障の及ぼす社会的インパクトが大きいこともあり,医師を含めた研究者,製薬会社,機器メーカーが尽力し,緑内障診療は長足の進歩を遂げてきた.しかしながら,技術が進み知識が増えることにより,初めて露わになった謎や新しい臨床的な問題も出現し,緑内障による視覚障害の克服には,まだ何段階もハードルが残っていると感じられる.本稿では,緑内障診療にかかわるこの10年の進歩を振り返るとともに,今後10年の展望を大胆に述べてみたい.立派なタイトルに相応しい内容を伴っていない場合は,筆者の力量不足が原因である.どうかご容赦いただきたい.

これからの緑内障診療のために「緑内障と遺伝子」

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緑内障の主要病型である原発開放隅角緑内障(primary open angle glaucoma:POAG)は多因子疾患であり,遺伝要因と環境要因が発症にかかわることが知られています.POAGの遺伝背景には2つのパターンがあります(図1).1つ目は,ある一つの遺伝子(原因遺伝子)の変異でPOAG を発症するタイプです.前編でお示しした通り,このタイプは頻度が1%未満の稀な変異によって引き起こされます.2つ目は,遺伝的影響度が少ない多数の遺伝子マーカーが累積してPOAG発症のリスクを高めるタイプです.大部分のPOAGがこのタイプに当てはまり,このタイプのゲノム解析にはゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS)という手法が用いられてきました.

Doctor Interview My Practice

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クリアカットな考えに基づく臨床実践に興味があり,その当時循環器内科か眼科かの選択に悩んでいたと話す愛媛大学眼科准教授の溝上志朗先生.時は白内障手術バブル時代,内科開業医の父の不純(?)な勧めと手先を動かすことが好きだったことから,眼科医の道を歩むことにしたという.以来,3人のメンターと出会うなかで緑内障を専門にすることを決め,臨床医としての腕を磨いていく.現在は大学病院の医師として,緑内障診療の最後の砦と後進の育成に力を注ぐとともに,医療法人仁友会南松山病院にて緑内障患者の長期フォローアップに努めている.ここでは,溝上先生の緑内障専門医としての歩みと心がけていること,今後の展望などについてお話しいただいた.

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眼科外来における緑内障患者は高齢社会,検診の浸透,学会などの啓蒙活動,検査機器の進歩などにより日々増加しています.そのなかでも早期の緑内障はまだ患者の自覚症状がない,もしくはまだ軽度であるため,治療アドヒアランスを保つことが難しい症例に多く遭遇します.患者の点眼遵守率は医師が把握しているよりも悪いと報告されており,海外の報告では外来通院中の患者でも遵守率は60〜70%とされています1)-3).わが国で行われた筆者の施設も含めた大規模調査でも遵守率は75%前後であり,患者の申告する遵守率と医師の把握している遵守率の一致は中等度にとどまることを報告しました4).では,どのような理由で患者のアドヒアランスが低下するのでしょうか.表1に患者の緑内障点眼のアドヒアランスが低下する原因となる因子をまとめました.特に重要なものとして,無症状,知識不足,点眼回数,副作用などが挙げられます.

Glaucoma 私のArchives

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緑内障を中心として臨床をするときに重要なのは,当然ですが長期に患者さんの観察を行うことです.私が医師になったときは,β遮断薬であるチモロールマレイン酸塩が発売され始めた頃でした.それから40年近く,さまざまな患者さんの治療にあたってきたなかで,さまざまな新しい薬剤が発売され,薬剤選択が時代とともにどんどん変わってきました.手術もマイトマイシンC(MMC)を使わないレクトミーから,MMC-レクトミーが標準になるところもみてきましたし,さらに今は低侵襲緑内障手術(minimally invasive glaucoma surgery:MIGS)が手術選択肢を変えてきています.薬剤選択も術式選択も時代とともに大きく変わってきました.固定式電話しかなかった時代からスマホの時代に変わってきたように,緑内障治療も過去とは全く異なるものになっています.さらに私は医師になって九州から東北まで転々としてきましたので,診ている患者さんもその度にすべて入れ替わり,患者さんを本当の意味で長期にわたって観察することができないことが何度もありました.

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奥付

基本情報

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Frontiers in Glaucoma
1巻59号 (2020年3月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1345-854X メディカルレビュー社

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