Frontiers in Glaucoma 1巻60号 (2020年10月)

目でみるシリーズ 画像でみる緑内障の病態

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近年,低侵襲かつ比較的短時間で簡便に行うことのできるMIGS(minimally invasive glaucoma surgery)が普及してきている.国内においてはシュレム管をターゲットとしたMIGSのみが承認されている.デバイスを留置する術式はiStent®手術のみであり,他は使用するデバイスの違いはあるがすべてTrabeculotomy ab internoである1)-6).すなわち,角膜切開により眼内からアプローチをして,隅角鏡直視下で傍シュレム管結合組織とシュレム管内壁を合わせて切開,もしくは切除,あるいはステントを留置することで前房圧を下げるというコンセプトの術式である.結膜が温存できるという利点はあるが,従来の眼外法と同様に上強膜静脈圧を下回る眼圧値までの下降は難しい.これまでの報告から,術後眼圧は10mmHg台半ば,1年生存率は約60〜70%程度であることが知られている7)-12).安全性を重視した場合,20mmHg程度までの眼圧下降を目指した手術としては有効な術式と考えられるが,約30〜40%の効果不十分例が存在することも事実である.背景因子として,白内障同時手術や落屑緑内障に対しては効きやすく,原発開放隅角緑内障(primary open angle glaucoma:POAG)やレーザー繊維柱帯形成術(SLT)の既往がある症例に対しては効きにくいと報告されている8)12).他にも成績に関与する背景因子が明らかになれば,手術効果の予測精度は向上し,手術適応の拡大に繋がると考えられる.そんななか,近年,術前や術中の房水静脈循環と術後成績の関係についての報告が注目されている13)-15).流出路再建術のMIGSである以上,理論上は最終的に房水が流入する房水静脈や上強膜静脈の流れが滞っていれば,手術効果は得られにくいことが推測される.本稿では,筆者らの施設において,代表的なMIGSであるトラベクトーム手術前と手術中の房水静脈の状態を撮影することができた症例を提示し,房水静脈動態と術後成績について考えていきたい.

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緑内障の領域に限らず論文執筆は研究活動の証であり,研究成果を世に問うものである.その際,論文を日本語ではなく英語で執筆し,英語雑誌に投稿することは,より広い世界で多くの研究者から評価を受けることを可能とする.英語論文の手間や苦労に躊躇する若手医師も多いと推測されるなか,今回は,英語論文執筆の経験豊富な先生方をお招きし,英語論文執筆の意義や実際の執筆に役立つノウハウについてお話いただいた.

Summing Up

緑内障の検査 竹本 大輔
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原発開放隅角緑内障(primary open angle glaucoma:POAG)(広義)は,加齢がリスク因子の慢性進行性疾患である.今後ますます進む高齢社会において,一人でも多くの緑内障患者が「生涯現役」の視機能を実現できるよう,治療戦略を考えることが我々眼科医に求められている.そのためには,緑内障をより早期の時点から診断・経過観察し,適切な時期に治療介入を行うことが必要である.緑内障の診断は,眼科医による眼底所見の読影と視野障害の確認という方法で,従来から行われている.この診断法は古典的ではあるが,緑内障の病態に即したゴールデンスタンダードであり,その重要性が揺らぐことはない.しかしその一方で,眼底写真に基づく構造評価は非定量的であるため,特に早期例において検者間の診断のばらつきや診断の遅れが生じる可能性が問題点であり,定量的評価が求められていた.近年,光学診療機器のめざましい発展により,特に光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)によって,緑内障の眼底所見(構造変化)の定量的評価が,日常診療の場においても容易に行えるようになった.さらには,緑内障のかなり早い段階でみられる知見が次々と報告され,視野障害が出現する以前のいわば「緑内障予備軍」ともいうべき病態(=前視野緑内障)が明らかとなった.現在ではOCTは緑内障診療においてなくてはならない診療機器といっても過言ではない.本稿では,前視野緑内障(preperimetric glaucoma:PPG)に内容を絞り,視野とOCTについての基礎事項,そして最近10年間程度で明らかになった事項をメインに紹介しようと思う.PPGの診断は時に難しい.PPGを診断する際は,時に微細な眼底の構造変化のみをもって緑内障性か否かを判断せねばならず,また,OCTで紛らわしい所見を示す例も多く,注意が必要である点に関しても併せて述べたい.

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2020年10月2日(金)〜4日(日)の日程でホテル日航大分オアシスタワーを中心会場として,第31回日本緑内障学会を主催いたします.大分の地で開催できることを大変光栄に思っております.本学会のテーマは「緑内障発症のメカニズムに迫る」です.多方面からの研究で緑内障発症のメカニズムを明らかにするとともに,治療に結び付く研究の成果の発表を期待しております.2020年は当初の予定ではオリンピックイヤーであり,緑内障のオリンピックという意味で本学会を「おんせん県 Oita Glalympic 2020」と名付けました.

これからの緑内障診療のために「高齢者とドライアイ」

①加齢とドライアイ 岩川 佳佑
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ドライアイには乾燥感や異物感のほか眼精疲労や視力低下などといった自覚症状があり,QOLへの影響が大きい眼疾患の一つである.ドライアイの発症にはパソコンの使用やコンタクトレンズの装用などの環境要因とともに加齢が危険因子として知られている.わが国の疫学研究では,60歳以上を対象とした有病率は73%と高い有病率が報告されている1).ドライアイは,涙腺,角膜,結膜,マイボーム腺,眼瞼ならびにこれらと相互に関連する神経を含む統合的システムである涙液機能単位(lacrimal functional unit)の障害として認識されている2)(図1).これらの組織に加齢性変化が起こると,涙液の量や質の低下に加えて涙液メニスカスの形成不全が生じるためドライアイを発症しやすくなる.近年,ドライアイは,フルオレセイン染色下での角膜上の涙液層破壊パターンに基づき,角膜上皮の親水性が低下する「水濡れ性低下」,涙腺からの涙液分泌量が低下する「涙液減少型」,涙液の蒸発が増加している「蒸発亢進型」の3つのサブタイプに分けて病態の成因を評価する層別診断(tear film oriented diagnosis:TFOD)が提唱され広く知られている.TFODにより眼表面の不足成分を油層,液層,表層上皮に分けて知ることができ,涙液の安定性低下の原因となる眼表面の不足成分を補う眼表面の層別治療(tear film oriented therapy:TFOT)を行う3)(図2).近年のドライアイ診療は,TFODおよびTFOTのアプローチにより多くの症例で治療効果が期待できるようになった.高齢者のドライアイに対する診療では,マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction:MGD)や結膜弛緩症などがドライアイ発症に強く影響する場合があるためこれらに対する介入も検討する必要がある.

Doctor interview My Practice

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私が入局した当時,根木昭教授が緑内障を専門とされていたこともあり,研修医のときから多くの緑内障患者さんを担当し,治療の難しい疾患として認識していました.その後,日本緑内障学会の父と呼ばれる須田經宇教授が当学の第6代教授でいらっしゃったことを知り,私が4年目のときに赴任された先代の谷原秀信教授も緑内障の専門でいらっしゃったこともあって,緑内障はますます身近に感じる疾患となりました.初めての筆頭英語論文も緑内障症例報告でした.しかしながら,根木先生のご紹介で2年間国内留学した北里大学では,白内障班と角膜・屈折矯正班に所属して当時の清水公也教授に教えていただいていましたし,卒後6年目に入学した大学院の研究テーマは網膜幹細胞に関連したもので,臨床も神経眼科外来を担当し,緑内障の専門外来を担当していたわけではありませんでした.そんな私が緑内障を生涯のテーマと覚悟を決めたのは,谷原先生のご紹介でEpstein教授の前でプレゼンをさせていただいたことをきっかけとして,米国のデューク大学に留学したことが決め手だったと思います.眼科医になって10年目のことで,専門を固める時期としては遅いほうかもしれません.

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「緑内障は,視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」(緑内障診療ガイドライン第4版)と定義されており,眼圧依存性の視神経障害が緑内障の本態といえます.眼圧はゴールドマン圧平眼圧計などにより,角膜を変形させて測定します.そのため,測定眼圧は真の眼球内圧だけでなく,眼球の剛性,特に角膜の剛性の影響を受けます.中心角膜厚が厚いと測定眼圧が高くなることは古くから知られていますが,実際にどの程度の厚みの変化によりどの程度測定眼圧が変わるかはよくわかっていません.というのは,測定眼圧は角膜の組織的な性質の影響を受けるのであり,単なる厚みに過ぎない角膜厚では十分に補正できないということがあります.そのため,角膜の組織学的な性質,特に生体物質としての変形しやすさを直接測定したいという考えが出てきました.この,生体物質の曲がりやすさや剛性,脆弱性などの物理的な性質を測定する学問を生体力学(バイオメカニクス)と呼びます.

Glaucoma 私のArchives

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広島大学病院は広島県の最終医療機関としての役割を果たしている.先天白内障や小児緑内障など,一般病院が手を出しにくい疾患が大学病院に集まる構図になっている.小児緑内障に対する治療の第1選択は線維柱帯切開術(トラベクロトミー)であり,これは緑内障診療を西日本で長く行っていた者にとって非常に馴染みのある手術手技である.先天白内障に対する20ゲージの経毛様体皺襞部白内障手術は合併症も少なく,良好な結果が得られる術式である.それが25ゲージの硝子体カッターを使って前眼部からアプローチする現在の術式に進化して,さらに洗練された術式となった.個人的には決して嫌いな術式ではなく,それなりに楽しく小児眼疾患の診療を行っていた.これは2010年ごろの話である.当時,川崎医療福祉大学の教授であり,日本小児眼科学会の理事長であった田淵昭雄教授に小児眼科学会の理事に推薦いただいた.そのこともあって小児眼科領域にことさら注目するだけでなく,小児緑内障に対する診療に正面から取り組むことになった.私が小児緑内障にかかわってきた,この10年たらずの間に見聞きしたことをArchivesとして記載したい.

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奥付

基本情報

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Frontiers in Glaucoma
1巻60号 (2020年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1345-854X メディカルレビュー社

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