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Ⅰ 諸言
新人看護職員の離職率や、基礎教育と臨床現場のジェネレーションギャップが取りざたされ、新人看護職員の臨床での教育体制の強化が必要とされ、新人看護師の新しい教育体制として、2010(平成22年度)年より新人看護職員の教育に重点がおかれ、新人看護職員に対する臨床研修が義務化された(新人看護職員研修ガイドライン,2010)。多くの病院はこのガイドラインに基づいて、新人看護職員の臨床研修を企画・実施している。このガイドラインには、「新人看護職員に対して、臨床実践に関する実地指導、評価等を行う者」を「実地指導者」とし、求められる能力として、「教育的に関わる能力」、「適切な関係性を築くコミュニケーション能力」、「置かれている状況を把握し、一緒に問題を解決する能力」、「研修の個々のプログラムを立案できる能力」、「臨床実践能力を評価する能力」が挙げられている。また、指導者の役割や働きの重要性が明示され、質の高い看護実践と新人看護職員に対する適切な指導を展開できる人材育成の重要性と体制整備が不可欠としている。実地指導者には問題解決能力やプログラム立案能力、評価する能力などが求められ、従来のプリセプターに比べると高い能力が求められている。これらのことから、新人看護師を指導する看護師の選定において、混乱が生じる可能性があると考えられる。
1980年代より、新人教育体制にプリセプターシップが導入され、全国の病院の約80%が行っている(藤代,2010)。プリセプターの役割については、吉富ら(2008)の参加観察法を用いた研究によって7項目が報告されている。またプリセプターの要件として永井(2009)の見解では、「日常業務遂行能力がある」、「新人と双方交流のコミュニケーションがとれる」、「臨床指導など指導者の役割に対する姿勢が前向きである」、「上司の補佐役が務められる(上司との意思の協力能力)」、「健全な組織人意識が育っている」の5項目が挙げられている。しかし中垣ら(2008)は、臨床現場で選出されているプリセプターの選定基準について、「新人の立場を理解できるもの」、「知識・技術や看護過程の展開など看護の役割モデルになれるもの」、「プリセプターを引き受ける意思があるもの」、「人間関係が円滑にできるもの」、「師長・主任の推薦したもの」、「プリセプター研修を受けているもの」と報告している。プリセプターの要件と臨床現場で選出されているプリセプターの選定基準と比較すると不一致が生じていると考えられる。
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