日本災害看護学会誌 19巻2号 (2017年12月)

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 12月に入り、慌しさが増しています。加えて、日本付近は冬型の気圧配置により強い寒気が流れ込み、厳しい寒さとどこか追われるような気になります。それでも、やってくる新しい年のことを考えると、希望や意欲が沸いてくる年の瀬です。

 平成29年に理事・監事の選挙が行われ、8月の定時代議員会で役員の選挙結果ならびに推薦理事の承認を頂きました。日本災害看護学会第7次理事会は(平成29年〜平成30年の2年間)、10名の理事と1名の組織会員理事、 そして2名の監事の計13名で出発しています(本誌後ろのページの役員一覧をご覧下さい)。一同、誠実に着実に学会運営に当たりますので、どうぞ引き続き、ご支援とご協力をお願い致します。

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要約

【目的】東日本大震災及び原子力発電所事故後、福島県内の看護基礎教育機関に在籍する看護教員の災害経験と看護基礎教育へ与えた影響の実態を明らかにすることを目的とする。

【方法】調査用紙を郵送し、匿名による回収を郵送で行った。調査記述内容を意味の類似性に基づいて整理、分析した。

【結果】回収数(率)105(43.8%)で有効回答数103(42.9%)を対象とした。看護教員は所属する看護教育機関の物的被害(75件)と人的被害(4件)と教員自身の避難(15件)を経験していた。災害経験の反映を考えている教員は73(70.9%)でその理由は【将来の災害に備える】【原子力発電所事故による影響を考える】【体験を通して看護を深める機会】であった。反映考えていない教員は26(25.2%)で、その理由は【教育として反映困難】【災害に向き合えない】であった。災害看護で重要と回答した教育内容は、災害看護活動と被災者心理であった。問題点では、災害看護の内容精選、教授方法、学生への対応が挙げられた。

【結論】福島県の教員は放射線に関する基礎知識を看護基礎教育でどのように取り扱うか考えていた。また教育機関の特徴を考慮した内容精選と教授方法の選択が災害看護教育の課題となった。

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要約

 災害急性期において、遺族は心理的・身体的に危機的状況にあることが考えられる。よって悲嘆や喪失という特定の状況にある家族を理解すると共に、支援についての知識の習得が必要である。

 日本DMORT(災害時死亡者家族支援チーム)研究会は日本災害看護学会第16回年次大会においてワークショップを企画した。その中で「災害急性期における遺族の心理」「遺族支援、遺族の思い」「家族看護学と遺族支援」について講義を行い、参加者間で意見交換を行った。その結果、対象者は災害急性期における遺族支援の実践について学びを深めることが出来た反面、ワークショップでの講義内容やディスカッションの時間については再考が必要であることが明らかになった。

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Ⅰ.はじめに

 平成22年版防災白書によると,我が国は全世界の0.25%の国土面積しかないにも関わらず,マグニチュード6以上の地震回数が20.5%と非常に高いことが報告されている(内閣府,2012).そのため,自然災害に対する防災・減災についての取り組みは我が国の重要な課題となっている.防災・減災の取り組みに関しては,阪神・淡路大震災や東日本大震災の教訓から,自助・共助の重要性が報告されている(内閣府,2014a).

 災害時の自助・共助に関する取り組みとして,地域住民が任意で結成する自主防災組織がある.自主防災組織は,過去の災害における教訓から結成が促進されており,確実に数を増やしている(内閣府,2014b).しかし,自主防災組織は,役員の固定化,高齢化,近年では高齢でも仕事を持つ人がいることによる人材確保の困難(小野まなみ,2016)や防災訓練の低い実施率・参加率,リーダーの不足(自主防災組織活性化検討委員会,2017)などの課題が指摘されている.また,有馬は,全国Web調査で自主防災組織カバー率が75.8%に対し自主防災組織加入自覚率は9.2%と報告しており,多くの自主防災組織は「有名無実の机上だけの名ばかりの組織となっているのではないか」と懸念している(有馬,2012).このような課題や懸念がある自主防災組織を災害時に有効に機能させるためには適切に活動を評価していくことが重要になると考える.齋藤らによる自主防災活動の評価に関する先行研究調査では,自主防災活動の評価研究は主にアンケート調査で分析しており,防災訓練などの活動回数やその参加率などといった形式的・表面的な項目に留まる感があると述べている(齋藤,梅本,糸魚川他,2014).このことは自主防災活動が適切に評価されていない可能性を示唆しているが,自主防災活動を評価するツールは確立されていないのだろうか.齋藤らの自主防災活動の評価に関する先行研究調査では,どのように先行研究を抽出したのかが述べられておらず,また,医療分野における研究が一つも含まれていない.

 看護分野においては,阪神・淡路大震災以降から災害に対する意識が高まり,日本災害看護学会が発足し,多くの研究・実践活動がなされるようになってきた.日本災害看護学会の定義によると「災害看護」とは,「災害に関する看護独自の知識や技術を体系的にかつ柔軟に用いるとともに,他の専門分野と協力して,災害の及ぼす生命や健康生活への被害を極力少なくするための活動を展開すること」とされている(日本災害看護学会,1998).災害看護の関わりは,病院・施設だけではなく地域にも及ぶ.看護独自の視点で他の専門分野と協力して地域防災力向上に努め,地域住民の健康と生活を守るということは看護の重要な役割である.このような看護分野の状況から鑑みると,自主防災活動の評価に関する研究は医療分野も含めて明らかにしていく必要がある.

 そこで,本研究では,学際的に自主防災活動の評価に関する先行研究の調査を行い,確立された自主防災活動の評価ツールがないかを明らかにし,また,その実態を明らかにすることで,今後の自主防災活動に活かしていきたいと考える.我が国の地域コミュニティは,都市部では地縁的なつながりや共通価値観の希薄化,また地方では人口減少・高齢化により存在そのものが危うくなっているといわれている(山内,2009).加えて,2025年までに高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯が増加するため,自助を基本として,互いに助け合うことの重要性が言われている(地域包括ケア研究会,2008).自主防災活動がより活発なものとなれば,自主防災活動に取り組んでいる既存のコミュニティも強固なものとなる.また,災害における自助・共助の力は地域包括ケアシステムの構築を進める我が国にとっても有益なものとなり,地域住民の健康と生活を守ることに繋がると考える.

 以上より,学際的に自主防災活動の評価に関する先行研究調査を行い,評価ツールの実態を明らかにすることで,今後の看護への示唆を得ることを目的とする.

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要約

 大規模災害の発生によって愛する人を失ったことにより、残された家族は心理的・身体的に危機的状況になることが考えられる。日本災害看護学会第18回年次大会においてワークショップを企画し、「遺族支援、遺族の思い」「家族看護学と遺族支援」についての講義、「熊本地震における遺族支援の実際」についての情報提供を行い、参加者間で看護師だからこそできる遺族支援について意見交換を行った。その結果、対象者はワークショップの目的「看護専門職だからこそできる災害急性期における遺族支援について考えを深める」について概ね達成出来たことから、本ワークショプにおける研修企画は対象者にとって有益なものであったことが考えられた。今後は他職種の役割を知り、多職種連携についての学びを深めることができるワークショップについて検討する。

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1.はじめに

 日本災害看護学会ネットワーク活動調査・調整部は、ネットワーク活動委員会の一組織であり、国内で発生した災害の被災状況や看護ニーズについて調査・情報収集を行い、そのデータを蓄積し、災害看護の知識の構築に貢献することを目的とし活動している。

 平成27年9月の関東・東北豪雨により鬼怒川が決壊し、大規模洪水が起きた。この大規模洪水は、平成27年9月、台風18号から変わった温帯低気圧の影響により、西日本から北日本にかけての広い範囲で大雨となり、特に関東地方と東北地方では記録的な大雨となった。この大雨の影響で茨城県常総市では、鬼怒川が増水し、平成27年9月10日に常総市・新石下付近の堤防が66年ぶりに決壊した。また、同市の若宮戸付近や、上流の筑西市・船玉付近と伊佐山付近でも越水が発生した。今回の大規模洪水災害において、日本災害看護学会ネットワーク活動・調査調整部では、発災2か月後に大規模洪水災害発生時における病院避難時の医療活動とケアニーズについてその実態を明らかにするために調査を行う機会を得て、平成27年11月9日に調査を実施したのでここに報告する。

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1.はじめに

 平成28年4月14日21時26分,熊本県熊本地方で発生した地震は,マグニチュード6.5,最大震度7を記録した.熊本県益城町で震度7,熊本市東区,西区,南区で震度6弱を記録するなど熊本県内広域にわたり甚大な被害を及ぼした.さらに2日後の4月16日1時25分には,マグニチュード7.3,最大震度7の地震が発生し,熊本県の被害状況はさらに深刻な状態へと進んだ.この間,日本災害看護学会では,先遣隊の派遣や熊本プロジェクトを通して,熊本地震について現地での活動や調査を行った.今回の熊本地震では,最大震度7の地震が立て続けて2回発生したこと(表1),多様な福祉避難所が設置されたことが特徴として挙げられる.

 そこで今回,二度の甚大な地震という稀有な経験をした熊本県看護協会と医療機関,多様な福祉避難所の設置運営を行った益城町役場を対象に日本災害看護学会ネットワーク活動・調査調整部の継続調査を実施したので報告する.

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Ⅰ.はじめに

 平成28年10月21日14時07分頃、鳥取県中部を中心とした震度6弱、マグニチュード6.6の地震が発生した。重症者5名を含む30名が負傷し、住居の損傷が激しい地域を中心に広範囲に避難所が開設された。日本災害看護学会ネットワーク活動調査・調整部では、初期調査により被害状況や支援活動の情報を入手したところ、県内で初めて災害支援ナースの派遣が行われたこと、地元の看護大学が全面的な看護支援を実施していることなど、看護において注目すべき活動がなされていることが分かった。そこで初期調査に続いて、発災から3か月経過した平成29年1月23日から24日にネットワーク活動調査・調整部活動として現地に赴く初動調査を実施したため報告する。

基本情報

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日本災害看護学会誌
19巻2号 (2017年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1345-0204 日本災害看護学会

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