日本災害看護学会誌 19巻3号 (2018年5月)

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 昨年2017年12月に、8名の災害看護専門看護師(CNS)が誕生した。日本赤十字看護大学修士課程、福井大学大学院医学系研究科修士課程(看護学専攻)、日本赤十字広島看護大学看護学研究科、兵庫県立大学看護学研究科の各修了生である。CNSは、「複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかることを目的」としている(公益社団法人日本看護協会http://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cns)。

 CNS制度の発展経緯を概観すると(日本看護協会資格認定制度の経緯より)、1987年に専門看護婦(士)の必要性が認識され、制度設立に向けて検討が開始された。1996年には、日本看護系大学協議会(JANPU)がCNS教育課程の分野特定と教育課程の認定を(後に、分野特定はJNAが担当に変更)、個人認定は日本看護協会(JNA)が行う連携体制が確立された。1998年からJANPUによるCNS教育課程の認定が開始され、2018年4月現在、がん看護・精神看護・地域看護・災害看護等、13分野にわたるCNS教育課程が認定されている。これが全体的な流れの概要であるが、災害看護専門看護師に関連した動向は次のようになる。

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要約

目的:東日本大震災に伴い発生した福島原発事故によって県外への長期避難を与儀なくされた家庭のメディア報道に対する意見、要望を質的分析することを目的とした。

方法:調査対象は福島県から関東7都県へ避難した家庭の世帯主とし、無記名自記式調査を2014年の半年間行った。

結果:メディア報道に対する自由記載回答者326名(37.9%)を分析対象とした。このうち報道の肯定的評価は僅かで、男性を中心に報道のあるべき姿の意見陳述または偏向報道批判が主であった。また年齢区分、家族形態によって複雑に異なっていた。メディア報道によるストレスは主観的ストレスのストレッサーの一つと考えられた。

結論:チェルノブイリ原発事故時と類似した政府・自治体の混乱および復興対応の遅れに対する避難者の批判は強く、併せて放射線の健康への影響についての学者間の意見の大きな相違が、メディア報道に増幅されて住民のストレスや風評被害を起こしてきたことに共通性が確認された。避難によるストレスに加えメディア報道によるストレスが加わることから、より一層のストレスの軽減を図る必要があることが示された。

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要約

目的

東日本大震災後,A県B市に広域避難した高齢被災者が生活力量を形成していく過程を明らかにする。

方法

広域避難した高齢被災者3名に半構成的面接を行い,質的記述的に分析した。

結果

生活力量を形成していく過程を被災期,避難所生活期,広域避難生活期に分類した結果,生活力量を形成していく過程として【特異な喪失体験をする】【過酷な環境で生き抜く】【家族と伴に行動する】【新たに生活を再構築する】【社会的役割を見出す】の5のカテゴリーが抽出された。

結論

高齢被災者は,被災による特異的な喪失体験をし,被災後の生活に折り合いをつけ,生活力量を形成していた。被災後,生き抜くうえで,生命を脅かす危険がなく,衣食住の保証,他者と情緒的な繋がり,家族と行動を供にすることで安心感を形成していた。また,広域避難先で家族・被災者・地域住民らと親密な関係性の継続と社会的役割を見出すことで,現在の生活をコントロールしていた。

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要旨

 研究目的は、「東日本大震災の発災時から1年以内の間で、所属する組織において、リーダー的役割を担った者が、危機を乗り越えるためにとった行動を明らかにする」ことである。研究方法は質的帰納的研究とした。研究参加者は、震災後に復興を遂げた医療機関の部門のリーダーやスタッフで、2012年9月から2013年3月にインタビューガイドにもとづいて、30分〜60分の半構成的面接を実施した。得られたデータは逐語録に起し、言葉や文脈の内容を分析した。その結果、「災害という危機的状況において必ず対応するという信念と責任感の存在」「災害という危機的状況を回避するための戦略的な準備」「危機を脱するための目標および指示・命令の発令」「災害規模を想定した準備」「現場への権限委譲及び命を守るための自律的な行動」「ニーズ及び混乱回避のための情報の有効発信」「組織間・多(他)職種間の調整及び苛立つ避難者への個別の説得」「不安定な精神状態となった同僚・部下への思いやりと長期にわたる精神的支援」の8カテゴリーが抽出された。今後、危機的な状況を乗り越えるためのリーダーを育成するためには、危機意識をもち自律的に行動できるよう平常時から教育を行うことが必要であろう。

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【要約】

[目的]本研究は、日本在住外国人の災害への備えの認識と公助の現状を明らかにして支援への課題を見出すことを目的とした。

[方法]外国人への公助の現状を明らかにするため、自治体ホームページの情報を質的に分析し、日本在住外国人5名に自助の備えの認識について半構成的面接を実施した。[結果]日本在住外国人の語りから、17のカテゴリーが抽出され『外国人にとっての災害への備えの項目』『備えられない理由』『備えるために必要なもの』が明らかとなった。項目は日本人と同様であるが、備えられない背景には文化的要因が見られた。公助の現状と外国人の認識から、情報とニーズのギャップ、教育と協力者の不足、公助への依存が備えの障壁で、必要な支援として、言葉に配慮した情報提供、継続的な教育の提供、ネットワークの構築、自治体や外国人支援団体との連携が示唆された。

[結論]外国人の考える自助の備えは日本人と同じであったが、備えられない背景には文化の違いがあった。外国人の特性に配慮した情報提供、教育、ネットワークと連携が自助の促進に必要である。

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1.はじめに

 2018年2月3日から8日にかけて冬型の強い気圧配置が続き、日本の上空には非常に強い寒気が流れ込み続けた。この影響により、北日本から西日本の日本海側を中心に断続的に雪が降り続き、特に福井県嶺北地方を中心に記録的な大雪となった。福井市では『昭和56年豪雪』以来、37年ぶりに積雪が130cmを越え、最深積雪は147cmに達した。この大雪により、県内の鉄道やバスなどの公共交通機関が終日運休、また高速道路や主要な国道が通行止めとなり、至る所で渋滞が発生した。福井県内を横断する国道8号線では、2月6日午前から1500台以上の車両が停滞し、その距離は最大で約20kmにも及んだ。福井県は、停滞車両を早急に解消するために、陸上自衛隊に災害派遣要請を行ったが、連日の降雪によって除雪は難航し、解消するまでに3日を要した。さらに、えちぜん鉄道、福井鉄道の線路や駅構内における除雪、福井市内の排雪場開設のために再度災害派遣要請を行い、大雪に関するボランティアセンターを設置し、生活道路や高齢者宅などの除雪を行った。

 今回の大雪により、学校の休校や企業の休業が余儀なくされ、交通網の麻痺によって救急搬送の遅れや灯油やガソリン、食料品などの生活物資が不足し、市民生活に多大なる影響を与えた。また、雪の重みによって住家や農業用ハウスが損壊し、除雪作業による死者、重軽傷者も発生した。これらの被害の甚大さから福井県内の9つの市町に災害救助法が適用された。

 福井県は、国の豪雪地帯・特別豪雪地帯に定められており、過去には、『昭和38年1月豪雪』、『昭和56年豪雪』、『平成18年豪雪』と数々の豪雪災害に見舞われている。しかし、今回の大雪は、近年経験しておらず、積雪量に関しては先にも述べたように『昭和56年豪雪』以来37年ぶりであり、当時よりも高齢化や過疎化などが進んでいる現状がある。そうした社会背景も踏まえながら大雪による人々の健康や生活への影響について明らかにし、今後の災害に生かすべく、住民へのインタビューや各医療施設の調査を実施したので、ここに報告する。

基本情報

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日本災害看護学会誌
19巻3号 (2018年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1345-0204 日本災害看護学会

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