日本腎不全看護学会誌 20巻1号 (2018年4月)

第20回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【会長講演】

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I.はじめに

 日本腎不全看護学会創設20周年の記念すべき年に,第20回日本腎不全看護学会学術集会・総会を岩手県盛岡市で開催した.東北で第9回日本腎不全看護学会学術集会・総会が開催された2006年当時,東北の学会員数は総数2,402名中156名,慢性腎臓病療養指導看護師(Dialysis Care and Management of Chronic Kidney Disease Leading Nurse:以下,DLNと略す)は431名中7名であった.東北での学会開催がきっかけとなり,この11年間に会員数は236名,DLNは49名に増加した.また,透析看護認定看護師(Certified Nurse in Dialysis Nursing:以下,DNCNと略す)は11名となり,各県で活躍するようになった.DLNとDNCNのネットワークにより,東北の腎不全看護力は着実に向上していることを実感している.

 今回の学会開催がさらなる東北の会員増加につながり,DLNへチャレンジする看護師が増え,腎不全看護の質向上の一助となることを期待する(表1,2,3).

第20回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【特別講演】

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I.はじめに

 臨床の場では,科学的根拠に基づいた医療(evidence-based practice:以下,EBPと略す)が求められており,看護技術についても経験知を科学知にするための研究が盛んに行われている.筆者も,臨床での課題や疑問を実践家と共有するとともに,その内容を看護技術の基礎研究のテーマとし,得られた知見を臨床の場に還元する取り組みを行っている.これまでの研究で,看護師の「根深い思い込み技術」に気づく機会が多く,このような看護技術はEBPの実践を阻害することになり,看護の質の低下にもつながる.

 実践の場において,この「思い込み看護技術」に気づく感覚を磨くためには,その感覚を醸成する職場環境を整えることがまずは重要である.そのためには,日々の看護技術を見直し研究的な視点で看護ケアを実践することと,それを適切に支援できる組織体制を強化することが大切である.

 本稿では,「思い込み看護技術」を排除した研究プロセスの実例を紹介し,看護の現場を科学するヒントを提供したい.

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I.はじめに

 本学術集会も今回で20回目を迎え,腎不全看護の知識が確実に蓄積されてきていることを実感する.本学会は,日々患者によりよい看護実践を提供すべく積み上げてきた知識を蓄積していることが,大きな特徴としてあげられる.本講演では,看護学を学問的に発展させる方法として,看護の実践知の集積が必須であることについて述べていきたい.

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I.はじめに

 「さぁーさぁーお立ち会い」で始まる筑波山名物ガマの油の口上.もともとは,大坂の陣に徳川方として従軍した筑波山中禅寺の住職が持参した陣中薬に由来するという言い伝えもあるが,このように“塗ったり”“貼ったり”するだけで怪我や病気が治る薬はとても魅力的である.しかし,残念ながら現在のバイオ医薬品の開発は複雑化をきわめており,さらに医療機器も高度なインフラに依存しているものが多い.そしてインフラに依存しすぎたがゆえに陥ってしまった現代の医療の落とし穴も目を背けられない課題として山積している.

 たとえば,血液透析治療はテクノロジー面からいえばすでに完成されたものととらえられがちだが,患者の立場に立った場合,果たしてそうなのだろうか.

 2015年9月10日,台風18号の通過に伴う記録的な大雨によって茨城県を含む北関東では河川の堤防決壊が起きた.鬼怒川の決壊による大水害に見舞われた茨城県常総市では,停電・断水によって医療体制が危機的な状態に陥った.ましてや東日本大震災や阪神淡路大震災のような規模ではどうだろうか.震災や豪雪などが起きるたびに患者の集団疎開や仮設住宅での切実な様子がニュースなどで流され,あらためてわが国の医療が高度なインフラなしでは成り立たない事実を目のあたりにする.

 ましてや途上国などの低インフラ地域ではどうだろうか.世界保健機関(WHO)によると,世界70億人のうちおよそ50億人もの人々が1日2ドル未満で生活しており,そのほとんどがアフリカやインドなどの開発途上国で暮らしている.その貧困さが原因で,下痢や肺炎など適切な治療・診断さえ受ければ助かるような病気によって,多くの子どもたちが命を落としている.5歳未満の子どもの死亡率は1990〜2000年にかけて大幅に減少したが(世界全体では11%減),それでもなお,毎年1,000万人以上が5歳まで生きられずに死亡している(本木他,2005).

 こうした現状のもと,2000年に開催された国連ミレニアムサミットにおいて,21世紀の国際社会の目標として「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)」が掲げられた.その主な目標を表1に示す.

 2015年までに8つの目標と,18のターゲット,48の指標の実現を目指すという公約がなされていた(The United Nations, 2011).この表が示すように,貧困層の多い開発途上国などでは,衛生管理に加え早期に適切な治療を施すことが大変重要となってくる.その際,用いられるテクノロジーが,それぞれの地域でアクセス可能かどうかということを第1に考慮しなければならない.あらためて21世紀の医療は,いつでも,どこでも,誰でも受けられる医療の実現であることが望まれる(荏原,2012).

第20回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【教育講演】

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I.はじめに

 東日本大震災では岩手県は医療・行政・企業が連携し,患者転院と通院維持,透析医療資材調整を一元管理したことが奏功し,透析患者の県外移送は回避された.

 震災の反省点には,“災害時透析ネットワーク”が未整備だったことがあげられる.この反省に立ち,岩手県は「岩手県災害時透析マニュアル」の作成に着手した.

 震災のリアルな経験を教訓に医療・行政・企業のマニュアルを作成し,3部門の役割分担と連携を明確にした.連絡網は,①メーリングリスト,②電話・ファクスの連絡網に加え,アマチュア無線ネットワークを整備した.アマチュア無線は県内44施設の整備が完了し,「岩手県透析ネット」として稼働している.さらに本ネットワークは,県災害対策本部内で災害救急医療とは別系統で“安定透析患者”を対象とした維持透析の調整を行う部署として設置されることとなった.

 これら3部門のマニュアルに加え,本ネットワークの紹介や災害時の自助・公助・共助の啓蒙を盛り込んだ透析患者向け冊子「災害時に透析を受けるための対策と岩手県災害時透析マニュアルについて」を作成した.現在,4冊セットのマニュアルとネットワークを構築するに至っている.一方,震災後5年を経て発生した台風10号被害は,これまでの岩手県の取り組みを検証する機会ともなった.

 今回,震災の教訓を経て構築した「岩手県災害時透析ネットワーク」の紹介をするとともに,本ネットワークが稼働した台風10号被害に対する岩手県の対応について報告する.

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I.はじめに

 2013年,厚生労働省は増加する高齢者人口とそれに伴う医療福祉予算の増大を重大な問題と認識し,地域包括ケアシステムの構築を提案した(厚生労働省,2013)(図1).団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムである.

 透析医療において,患者の高齢化とさまざまな疾患の併発病態により医療ニードが高度化,多様化している.認知症透析患者の増加,透析治療の差し控えや看取りの問題も,臨床現場を悩ます喫緊の課題である(日本透析医学会,2014).施設血液透析への通院サポートの問題も非常に重要であり,透析医療こそ地域包括ケアシステムのモデル事業として先行整備をしてもよいぐらいである.住み慣れた地域の人々の支援を受けながら自らの人生を全うするのは理想的な姿であるが,現実的には多くのチャレンジが必要である.特に昨今の社会の透析医療に対する厳しい視線は,(誤解や中傷も含まれているのだが)透析医療の抱える問題点の一端を社会が敏感に感じ取っていることの証左である.そしてそれは透析医療だけでなく,多くの慢性疾患をどのように地域で最期まで見届けるのか,ケアするのかということに対する一般市民の潜在的な恐れのように思われる.

 本稿では,2017年11月に盛岡市で開催された第20回日本腎不全看護学会で発表した内容を再考し,これまでの筆者の30年間の慢性腎不全医療の経験から,透析医療における地域包括ケアの成熟のために,必要ないくつかのポイントについて考察する.

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I.はじめに

 腎移植1年生着率は98%以上となり,中長期生着率も向上している.

 内視鏡下生体ドナー腎採取術からロボット支援術への可能性,透析を経ない先行的腎移植(preemptive kidney transplantation:以下,PEKTと略す)の推進,腎不全患者の高齢化と高齢移植患者,新たな免疫抑制薬の導入,移植医療の個別化,術前術後の抗HLA(human lymphocyte antigen)抗体,特にドナーHLAに対するドナー特異的抗HLA抗体(donor specific antibody:DSA),検出法の進歩や免疫抑制薬と免疫抑制法の改良など,さまざまな要因が腎移植成績の向上に寄与している.

 しかし,改正臓器移植法施行による献腎移植数の減少,高齢レシピエント,長期生着率向上に伴う心血管疾患・悪性腫瘍発症といった問題も注目されている.また,BKウイルス(BK polyomavirus:以下,BKVと略す)腎症や血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:以下,TMAと略す)といった早期に移植腎機能が障害される疾患の存在も明らかになってきた.また,生体腎移植ドナーの長期予後についても注視する必要がある.

 ABO血液型不適合移植と抗HLA抗体の術前脱感作療法などは,腎移植において一般化するまでに発展普及してきた.一方で,DSA検出法とその解釈,免疫抑制薬血中濃度測定法による相違と理解,これらの保険収載問題,TMAと補体異常への理解と対応,移植医療の標準化など,課題は多々ある.

 本稿では,腎移植の発展に伴う新たな課題を中心に,その現状と展望を述べる.

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目次

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編集委員/編集後記

基本情報

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日本腎不全看護学会誌
20巻1号 (2018年4月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-7327 日本腎不全看護学会

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