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I.はじめに
2013年,厚生労働省は増加する高齢者人口とそれに伴う医療福祉予算の増大を重大な問題と認識し,地域包括ケアシステムの構築を提案した(厚生労働省,2013)(図1).団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムである.
透析医療において,患者の高齢化とさまざまな疾患の併発病態により医療ニードが高度化,多様化している.認知症透析患者の増加,透析治療の差し控えや看取りの問題も,臨床現場を悩ます喫緊の課題である(日本透析医学会,2014).施設血液透析への通院サポートの問題も非常に重要であり,透析医療こそ地域包括ケアシステムのモデル事業として先行整備をしてもよいぐらいである.住み慣れた地域の人々の支援を受けながら自らの人生を全うするのは理想的な姿であるが,現実的には多くのチャレンジが必要である.特に昨今の社会の透析医療に対する厳しい視線は,(誤解や中傷も含まれているのだが)透析医療の抱える問題点の一端を社会が敏感に感じ取っていることの証左である.そしてそれは透析医療だけでなく,多くの慢性疾患をどのように地域で最期まで見届けるのか,ケアするのかということに対する一般市民の潜在的な恐れのように思われる.
本稿では,2017年11月に盛岡市で開催された第20回日本腎不全看護学会で発表した内容を再考し,これまでの筆者の30年間の慢性腎不全医療の経験から,透析医療における地域包括ケアの成熟のために,必要ないくつかのポイントについて考察する.
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