第20回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【教育講演】
1. 岩手県災害時透析ネットワーク—東日本大震災の教訓は活かされているか
大森 聡
1
1岩手医科大学泌尿器科学講座
pp.26-32
発行日 2018年4月30日
Published Date 2018/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003200104
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I.はじめに
東日本大震災では岩手県は医療・行政・企業が連携し,患者転院と通院維持,透析医療資材調整を一元管理したことが奏功し,透析患者の県外移送は回避された.
震災の反省点には,“災害時透析ネットワーク”が未整備だったことがあげられる.この反省に立ち,岩手県は「岩手県災害時透析マニュアル」の作成に着手した.
震災のリアルな経験を教訓に医療・行政・企業のマニュアルを作成し,3部門の役割分担と連携を明確にした.連絡網は,①メーリングリスト,②電話・ファクスの連絡網に加え,アマチュア無線ネットワークを整備した.アマチュア無線は県内44施設の整備が完了し,「岩手県透析ネット」として稼働している.さらに本ネットワークは,県災害対策本部内で災害救急医療とは別系統で“安定透析患者”を対象とした維持透析の調整を行う部署として設置されることとなった.
これら3部門のマニュアルに加え,本ネットワークの紹介や災害時の自助・公助・共助の啓蒙を盛り込んだ透析患者向け冊子「災害時に透析を受けるための対策と岩手県災害時透析マニュアルについて」を作成した.現在,4冊セットのマニュアルとネットワークを構築するに至っている.一方,震災後5年を経て発生した台風10号被害は,これまでの岩手県の取り組みを検証する機会ともなった.
今回,震災の教訓を経て構築した「岩手県災害時透析ネットワーク」の紹介をするとともに,本ネットワークが稼働した台風10号被害に対する岩手県の対応について報告する.
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