第20回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【教育講演】
3. 腎移植の発展による新たな課題
佐藤 滋
1
1秋田大学医学部附属病院腎疾患先端医療センター
pp.39-45
発行日 2018年4月30日
Published Date 2018/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003200106
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I.はじめに
腎移植1年生着率は98%以上となり,中長期生着率も向上している.
内視鏡下生体ドナー腎採取術からロボット支援術への可能性,透析を経ない先行的腎移植(preemptive kidney transplantation:以下,PEKTと略す)の推進,腎不全患者の高齢化と高齢移植患者,新たな免疫抑制薬の導入,移植医療の個別化,術前術後の抗HLA(human lymphocyte antigen)抗体,特にドナーHLAに対するドナー特異的抗HLA抗体(donor specific antibody:DSA),検出法の進歩や免疫抑制薬と免疫抑制法の改良など,さまざまな要因が腎移植成績の向上に寄与している.
しかし,改正臓器移植法施行による献腎移植数の減少,高齢レシピエント,長期生着率向上に伴う心血管疾患・悪性腫瘍発症といった問題も注目されている.また,BKウイルス(BK polyomavirus:以下,BKVと略す)腎症や血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:以下,TMAと略す)といった早期に移植腎機能が障害される疾患の存在も明らかになってきた.また,生体腎移植ドナーの長期予後についても注視する必要がある.
ABO血液型不適合移植と抗HLA抗体の術前脱感作療法などは,腎移植において一般化するまでに発展普及してきた.一方で,DSA検出法とその解釈,免疫抑制薬血中濃度測定法による相違と理解,これらの保険収載問題,TMAと補体異常への理解と対応,移植医療の標準化など,課題は多々ある.
本稿では,腎移植の発展に伴う新たな課題を中心に,その現状と展望を述べる.
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