日本腎不全看護学会誌 19巻2号 (2017年11月)

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I.はじめに

 『図説わが国の慢性透析療法の現況』1)によると,慢性透析患者数は2014年末には32万448人と年々増加傾向にある.透析患者では,腎性貧血,尿毒症性低栄養,骨格筋減少・機能異常,運動耐容能の低下,易疲労感,活動量減少等により,生活の質(quality of life:以下,QOLと略す)の低下が認められる.長期透析によって心不全や低血圧などの合併症が発生し,患者のQOLをさらに低下させると指摘されている2).上月3)は,「透析患者は,4〜5時間の透析療法を週3回実施している.そのため,透析療法による時間的拘束や疲労感などの身体的制限により,透析療法実施日の身体活動量が低下してしまうことが多いと考えられる」と述べている.

 このような問題に対処するため,近年,腎臓リハビリテーション(以下,腎リハと略す)という概念が提唱されてきた.腎リハとは,腎臓障害者に対して行う新たな内部障害リハビリであり,運動療法,薬物療法,栄養療法,教育,精神的ケアなどを要素とする包括的リハビリの1つである2).包括アプローチのなかでも,「運動療法」は重要な要素となる.上月3)は,「透析患者における運動療法の効果は,最大酸素摂取量の増加や透析効率の改善や運動耐容能の改善や筋力の増加」と述べている.また,日本透析医学会の「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」4)は,透析効率改善によると生命予後良好であることを示している.よって,運動療法を実施することで,日常生活における諸症状が改善し,日常生活動作(activities of daily living:ADL)のみならずQOLの改善が期待できる.

 A病院では,今まで透析患者に推奨されていた運動療法は,非透析日に無理をしない程度に歩くなどの運動とされており,計画や実施されているかは個人に任せられていた.A病院の維持透析患者のなかには,高齢で活動量が低下傾向にあり,透析後半の血圧低下や下肢攣れ等の症状がみられる者も多い.そこで,2015年9月より,維持透析患者のQOL改善,身体機能の維持・向上を目指すことを目的に,透析中の循環動態の安定している患者4名に運動療法を1か月試みた.その結果,身体的評価では身体機能の改善がみられたが,透析効率は期間が短かったため改善がみられなかった.そこで,今回は対象患者を増やし,QOL・身体機能の維持および透析効率の改善に焦点をあて,運動療法継続を試みた.

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 本研究の目的は,腹膜透析患者のボディイメージ・セルフケア能力の特性を明らかにすることである.

 研究対象者は,腹膜透析患者87名(平均59.4歳/30〜80歳代)である.研究方法は,無記名自記式アンケート調査である.アンケート内容は患者のボディイメージ混乱・セルフケア能力を測定するために既存の尺度であるBody Image Assessment Tool(以下,BIATと略す),腹膜透析療養者のセルフケア能力尺度(Peritoneal Dialysis Self-Care Agency:以下,PDSCAと略す)を使用した.患者属性は性別,年齢,腹膜透析の継続期間,段階的腹膜透析導入法(stepwise initiation of peritoneal dialysis using Moncrief and Popovich technique:以下,SMAP法と略す)実施の有無,腹膜透析カテーテル出口部部位,主たる腹膜透析実施者について調査し,分析は患者基本属性とBIAT・PDSCA下位概念について,Mann-WhitneyのU検定およびKruskal-Wallisの検定を行った.

 ボディイメージは患者属性による有意差はみられなかった.しかし,セルフケア能力はセルフケア能力の下位概念である「受容する力」で年齢20〜50歳代と60歳代より70〜80歳代が有意に高く,右腹部・左腹部に腹膜透析カテーテル出口部部位がある場合より中央にカテーテル出口部部位がある場合のほうが有意に高いことが確認できた.以上の結果から腹膜透析患者のボディイメージは属性にかかわりなく変容し,混乱が起こる可能性がある.そのため,腹膜透析患者に対しボディイメージ変容の状態をアセスメントすることが重要である.また,セルフケア能力は年齢や腹膜透析カテーテル出口部部位の違いを考慮する必要があることが示唆された.

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 本研究の目的は,公的介護保険制度制定年以降に報告された血液透析継続上の高齢者の事例研究における看護問題・課題を明らかにすることである.

 「医学中央雑誌Web版Ver5.0」において,「看護」「高齢者」「介護」「血液透析」をキーワードとして2016年2月24日に文献検索した.抽出された事例研究57件中,60事例を【高齢者の看護問題】【家族の看護問題】【支援システムの課題】に分類し,看護問題・課題を分析した.研究対象の看護問題は【高齢者の看護問題】「非効果的健康管理」(13件),【家族の看護問題】「介護者役割緊張,家族機能障害」(11件),【支援システムの課題】「在宅療養支援体制の不足」(9件)の順に多かった.【高齢者の看護問題】「非効果的健康管理」は,食事・服薬管理など高齢者自身の自己管理に関する研究,「介護者役割緊張,家族機能障害」は家族の介護負担感に関する研究,「在宅療養支援体制の不足」は,すべて在宅支援体制の未整備に関する研究であったが,地域包括ケアによる多職種連携・介護保険制度の活用により看護問題・課題解決策を導くことができていた.

 これらの結果から,血液透析受療中の高齢者・家族には地域包括ケアによる多職種連携・介護保険制度の活用が看護問題・課題解決策を導く手段として有用であることが示された.

基本情報

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日本腎不全看護学会誌
19巻2号 (2017年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-7327 日本腎不全看護学会

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