血液フロンティア 27巻12号 (2017年11月)

特集 HLA半合致移植の現状

特集 HLA半合致移植の現状

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 同種造血幹細胞移植はドナーと患者のHLA適合が原則であるが,近年HLA半合致移植が急速に増加している。従来,CD34陽性細胞純化や抗胸腺細胞グロブリンが用いられてきたが,最近,従来の概念を覆す新たなGVHD予防法として移植後大量シクロホスファミド法が開発され,その簡便性と良好な成績から急増している。最大の障壁であったドナー不足の問題が解消されつつあり,造血幹細胞移植の成功から半世紀を経て,HLAバリアの克服という大きなブレークスルーの時代を迎えている。

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 移植後シクロホスファミド(posttransplant cyclophosphamide:PTCy)を用いたHLA半合致移植では,移植後早期に同種抗原に応答して活性化したアロ応答性T細胞が選択的に傷害される一方で,アロ非応答性T細胞が温存されるため,移植片対宿主病(GVHD)を抑制する一方で,免疫回復は比較的良好であり,非再発死亡が少ないことが特徴とされる。Johns Hopkinsグループの原法では骨髄非破壊的前処置による骨髄移植であるが,近年は移植成績のさらなる向上のため,前処置の強化や末梢血幹細胞の使用など多くの試みもなされ,本邦を含め世界的に急速に普及している。

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 HLA半合致移植が開発される歴史の中で,ペルージャグループを中心とするin vitro T cell depletionの方法は,移植時の混入T細胞を極限(104/kgオーダー)まで減少させることでHLA不適合のバリアを超えて,移植片対宿主病(GVHD)を抑えることに成功した。しかしながら,移植後の免疫不全にまつわる諸問題やCD34陽性細胞のpositive selectionに用いるキットが高額であることから,一般医療として普及するには至っていない。これに対し,抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を用いたin vivo T cell depletionは,通常の医療機関でも施行可能であり,ATGの量を調整することで,GVHD(免疫抑制過少)と免疫不全(免疫抑制過剰)のバランスを保つことが可能となった。ATGを用いるHLA半合致移植の中で,北京大学が主導するものと韓国で行われているものは,比較的高用量のATG(サイモグロブリン ~10 mg/kg)を用いているのに対し,本邦で多く行われている兵庫医大方式では,ATGを減量(サイモグロブリン 2.5 mg/kg)し,移植後にステロイドを併用することが特徴となっている。本稿ではATGを用いるHLA半合致移植のプロトタイプとして,北京大学方式,韓国で行われているHLA半合致移植の方式,および兵庫医大方式について概説する。

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 Alemtuzumabはリンパ球に発現するCD52に対する抗体で,半減期が長い。前処置として投与して,レシピエントT細胞を抑えて拒絶を予防するとともにドナーT細胞を抑えて移植片対宿主病(GVHD)を予防することで,ハプロアイデンティカルドナーからのHLA半合致移植を可能としている。高い生着率と低い重症GVHD発症率が得られており,サイトメガロウイルス(CMV)感染症などのウイルス感染症に注意する必要があるが,alemtuzumabを用いたハプロ移植は比較的安全に行える方法である。ただし,非寛解期移植での移植後再発・再燃が多い点が問題であり,alemtuzumab投与量や移植後免疫抑制剤の投与方法などに関しては,今後も検討していく必要がある。

2.小児のHLA半合致移植 菊田敦
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 免疫細胞療法のひとつとして低用量ATGを用いたT細胞充満HLA半合致移植が注目を浴びており,小児再発・難治性白血病に対して,これまでにない優れた治療成績が報告されている。福島県立医科大学における開発の経緯と最近の治療成績について概説するとともに,再発・治療抵抗性小児固形腫瘍に対しても治療効果が示唆され,今後の開発が期待される。一方,課題として免疫監視機構からのエスケイプによる再発様式が指摘され,何らかの対策が望まれる。また,今後は多施設共同臨床試験による検証が必要である。

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 半合致ドナーからの移植は,不一致のHLAを標的とした重篤な移植片対宿主病(GVHD)のリスクと引き換えに強力な移植片対白血病(GVL)効果を期待して難治性の白血病に行われている。半合致移植後の再発白血病にみられるゲノム異常の解析から,HLAの位置する6番染色体短腕領域のヘテロ接合性の消失が高頻度で生じていることが確認された。不一致のHLAを失ったクローンがGVLの選択圧を回避することで再発に至ったと推測される。腫瘍細胞の免疫回避の巧妙さを示すこの現象を通じて,移植免疫の理解が深まることが期待される。

連載 私のこの一枚(162)

連載 臨床研究,私の思い出(184)

日本人のT細胞腫瘍とB細胞腫瘍 下山正徳

連載 第15回 世界の血液学と血液学専門誌

論文不正と査読の諸問題 吉田彌太郎

Topics「身近な話題・世界の話題」(161)

細胞競合とがん 谷口喜一郎 , 井垣達吏
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 細胞同士が互いの優劣を認識し,状態の劣る細胞が優れた細胞によって置き換えられるという,興味深い細胞間コミュニケーションが存在する。「細胞競合」と呼ばれるこの現象は,組織恒常性維持システムのひとつとして注目されている。近年,細胞競合ががんの発生・進展に深く関わる可能性が示されてきた。細胞競合は生物個体にとって敵か味方か? ショウジョウバエを用いた遺伝学的研究により,がんに対する細胞競合の二面性が明らかになりつつある。

1月号予告

基本情報

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血液フロンティア
27巻12号 (2017年11月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6940 医薬ジャーナル社

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