特集 HLA半合致移植の現状
1.各種薬剤を用いたHLA半合致移植 2)ATG(anti-thymocyte globulin)HLA半合致移植
池亀和博
1
Kazuhiro Ikegame
1
1兵庫医科大学 血液内科 講師
pp.1669-1677
発行日 2017年11月30日
Published Date 2017/11/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201712031
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HLA半合致移植が開発される歴史の中で,ペルージャグループを中心とするin vitro T cell depletionの方法は,移植時の混入T細胞を極限(104/kgオーダー)まで減少させることでHLA不適合のバリアを超えて,移植片対宿主病(GVHD)を抑えることに成功した。しかしながら,移植後の免疫不全にまつわる諸問題やCD34陽性細胞のpositive selectionに用いるキットが高額であることから,一般医療として普及するには至っていない。これに対し,抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を用いたin vivo T cell depletionは,通常の医療機関でも施行可能であり,ATGの量を調整することで,GVHD(免疫抑制過少)と免疫不全(免疫抑制過剰)のバランスを保つことが可能となった。ATGを用いるHLA半合致移植の中で,北京大学が主導するものと韓国で行われているものは,比較的高用量のATG(サイモグロブリン ~10 mg/kg)を用いているのに対し,本邦で多く行われている兵庫医大方式では,ATGを減量(サイモグロブリン 2.5 mg/kg)し,移植後にステロイドを併用することが特徴となっている。本稿ではATGを用いるHLA半合致移植のプロトタイプとして,北京大学方式,韓国で行われているHLA半合致移植の方式,および兵庫医大方式について概説する。