日本糖尿病教育・看護学会誌 21巻1号 (2017年3月)

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 本研究の目的は2型糖尿病患者がインスリン療法を意味づけるプロセスを明らかにすることである.対象者はインスリン療法を導入して3か月から10年以内の2型糖尿病患者20名であり,半構成的面接を実施し,分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.その結果,24の概念が生成され,2型糖尿病患者のインスリン療法の意味づけは,9つのカテゴリーと2つの概念によってプロセスを描くことができた.患者はインスリン療法導入時,導入することをインスリン注射を打つ事実として捉えることから,インスリン療法は適切な時期に速やかに導入すべきことが示唆された.また,その後は《身体のイメージに基づくインスリン療法の理解》と《養生できないことを引きずる》場合に分かれ,どちらの場合も《インスリン療法を受け入れようと励む》へと向かうプロセスであった.これらより,導入後のプロセスにおける意味づけは,現在のインスリン療法を受け入れようとするための関わり方に活用できることが示唆された.

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 本研究の目的は,CSIIを行う小児・青年の療養生活と課題についてCSIIを使用している群とCSIIを中止した群との比較により明らかにし,CSIIを行う小児・青年と家族へのよりよい療養生活に向けた看護支援の示唆を得ることである.外来通院中のCSII群35名(年少児の親14名,年長者21名),CSII中止群9名(年少児の親3名,年長者6名),計44名を対象に,文献検討に基づく自記式質問紙を用いて,ボーラス忘れの頻度と理由,CSIIにしてよかったこと・困っていること等について回答を求め,記述統計,カイ二乗検定,および質的帰納的分析を行った.

 その結果,ボーラスを2回/月以上忘れる者はCSII群17名(48.6%),CSII中止群4名(44.4%)であり,インスリン注入が容易であるがゆえにうっかり忘れることが多かった.CSIIにしてよかったことは,CSII群は「学校での生活がしやすくなった」が25名(71.4%)と,有意に多かった(カイ二乗値4.490,p=0.034).CSIIで困っていることは,両群とも「注入部位が赤くなったり,硬くなったり,かぶれる」が半数以上にみられ,CSII中止群では「針の痛みが強い」(カイ二乗値5.382,p=0.023),「注入セットの挿入が難しい」(カイ二乗値8.568,p=0.010)が有意に多かった.両群共に「英語で書かれた表示が読みにくい」,「ポンプやカテーテルが服を着替えるときにじゃまになる」等が,年長者の半数以上にみられた.学校生活上の課題では,「学校でアラームが鳴るのが気になる」,「水泳など,学校でポンプを外したときの管理が難しい」が多かった.以上より,インスリンポンプの適切な操作やボーラス忘れを防ぐ支援,学校生活でのトラブル予防・対処と学校生活をしやすくする支援,皮膚トラブルの予防と穿刺時の疼痛軽減に向けた研究と支援の必要性が示唆された.

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 全国の病院で勤務する日本糖尿病療養指導士資格をもつ看護師(以下,CDENと略す)の特徴と活動内容を把握し,CDENの専門職的自律性と周りからの承認への認識が職務満足度にどのように影響しているかを,糖尿病専門外来の担当の有無に焦点をあてて明らかにすることを目的に郵送自記式質問紙法による調査を行った.分析対象は371名で,専門外来を担当するCDEN73名,専門外来を担当しないCDEN141名,CDE資格も専門外来ももたない看護師157名の3群に分け比較検討した.3群間で職務満足度の得点に有意差は認められなかったが,職務満足度を高める要因に違いが認められた.専門外来を担当するCDENは,自己の実践能力の高まりを自覚することで職務満足度を高めていた.一方,専門外来を担当しないCDENは,自律性の高まりを自覚しているが,その能力を活かす場が限定的であり,専門外来担当のCDENより周りからの承認を感じることが少ないため,自己成長できる機会を求めていることが示唆された.

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 糖尿病腎症セルフマネジメント教育プログラムについて,看護師による対面式の直接面談を,タブレット端末を用いた遠隔面談に置き換えた場合の効果について比較検討した.糖尿病腎症2期から4期にある成人40人を,直接面談と電話指導を実施する直接群と,直接面談を遠隔面談に置き換えた遠隔群とに無作為に割り付けた.プログラムは6ヶ月間で,評価はセルフマネジメント行動,身体・心理的指標を用い,開始時,終了時,終了6ヶ月後に収集した.両群の違いを判断する基準として変化率の差を10%と設定した.結果,32人がプログラムを終了した.セルフモニタリングやQOLでは直接群の効果が大きく,薬のアドヒアランス,HbA1c,BMI,自己効力感では両群でほぼ同様の効果を認めた.参加者が少なかったことから結果の解釈は限定的であるが,遠隔群においても行動変容が観察されたことから,直接面談を実施することが物理的に困難な場合は,遠隔面談に切り替えることは可能であると考えられた.

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 診療報酬「糖尿病透析予防指導管理料(以下,透防管)」の算定に関する実態を明らかにするため,全国472施設に勤務する糖尿病看護認定看護師と慢性疾患看護専門看護師を対象に,自記式質問紙の郵送法による横断調査を行った.

 透防管を算定している164施設では,算定申請に向けて【支援の質の標準化】,【メディカルスタッフの確保】,【場所と時間の確保】,【対象者の選択と説明方法の確立】,【医師の理解と協力を得ること】,【指導システムの構築】,【組織の理解を得るための実績の可視化】,【人間関係づくり】を工夫し,現在は「透析予防指導に関わる看護師の不足」に最も困難を感じていた(43.9%).透防管を算定していない56施設が算定に至らない理由は,「担当する看護師のマンパワー不足」が最も多かった(53.6%).

 以上のことから,透防管の算定とその後の指導体制の維持には看護師の確保が最も重要であることが示唆された.

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 2型糖尿病患者の療養生活における家族との距離を明らかにする目的で,診断後6ヶ月以上が経過しており同居家族のいる2型糖尿病患者10名を対象に半構造的面接を実施し,現象学的アプローチ法を用いて分析した.

 その結果,「2型糖尿病患者の療養生活における家族との距離とは,糖尿病という新たな自分が出現することで生じる家族の中での不利な立場と,胸の内にしまい口にできない思いが作り出す現象として患者の中に存在していた.」と,患者の思いの本質にある距離という現象を描くことができた.また,距離に関する6つのテーマが描かれた.

 これらの結果より,患者や家族に対する距離という視点を活用した支援の方向性が示唆された.

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 本研究では,教育入院患者に行った歯周病に関する教育の効果を明らかにすることを目的に,教育入院患者13名(介入群)を対象として,糖尿病と歯周病に関する知識や口腔内清潔習慣に関する講義演習の介入を行い,教育入院歴のない外来通院患者15名(対照群)と比較検討した.

 その結果,介入群では入院当日と比較して3ヵ月後には,「歯周病は糖尿病の合併症である」(p<0.05),「歯周病が血糖コントロールに影響する」(p<0.01)という知識が有意に向上していた.しかし,両群ともに歯石除去や歯みがき回数など,口腔内の清潔習慣については3ヵ月間で有意な変化を認めなかった.教育入院は糖尿病と歯周病に関する知識の普及に効果的であることが示唆されたが,口腔内の清潔習慣の改善までには至っておらず,今後,行動変容につながるよう,教育内容や指導の時期を検討していくことが課題である.

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 わが国の看護師による外来での糖尿病の療養指導に対する診療報酬の算定要望とその関連要因を明らかにするため,日本糖尿病学会の認定教育施設604施設の外来で療養指導に携わる看護師を対象に,自記式質問紙の郵送法による横断調査を行った.

 回収した297件のうち241件は病床数が200床以上の施設から得られた.病床数が200床以上かどうかを問わず,既収載の医療技術への算定要望が高かった.未収載の項目では,初診患者や受診中断者への療養指導に対する算定要望が高く,病床数が200床以上の施設では,血糖コントロールが悪化した患者や,認知症患者への療養指導に対する算定要望が高かった.これらへの主な関連要因は,療養指導の必要性の認識や算定対象外での療養指導の実施程度であり,診療報酬が算定できないにもかかわらず必要な療養指導を実施することの限界が,要望の高さにつながっていることが示唆された.

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 目的は病棟看護師の2型糖尿病患者への食事療法を中心とした生活志向的支援と支援に関する認識や学習体験との関係を明らかにすることである.糖尿病教育入院をしている病棟の看護師251名を対象に自記式質問紙調査をし統計学的に分析を行った.

 その結果,糖尿病看護実践に自信がないと思うほど生活志向的支援をしていた(τ=0.202〜0.341).また,糖尿病看護に満足感を感じているほど,生活志向的支援をしていた(τ=0.20.0〜0.316).更に事例検討,患者がする食事療法を自らも体験したことのある看護師は,生活志向的支援の中でも「生活満足を保つ支援」を実施している者が多かった(p=0.0001〜0.048).以上のことから,患者の考え方や態度の変化を看護師が支援の効果として認識できるような他看護師によるサポートや,患者を“糖尿病をもちながら生活している人”と捉え,患者個々に異なる「生活」を事例や体験を通して理解することの必要性が示唆された.

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 本研究では,糖尿病外来で看護師が援助に困難を感じていた糖尿病患者に対し,看護師間のディスカッションを通して援助の手がかりを見出すことを目的とした.A糖尿病外来で看護師が援助に困難を感じている72事例を対象に,「看護師が援助に困難を感じている理由」及び,「困難に感じている状況を打破するための気づき」の2点が書かれている箇所を抽出し要約した.次にディスカッションの中で見出された援助の手がかりを読み取り,類似するものをまとめ質的帰納的に分析した.

 その結果,63事例から,「患者の内面へ踏み込めなかったり,振り回されている事例は,主治医と連携し関わる」「患者への向き合い方に対して,面接の場所や人をかえること,身体への思いを聞くこと,共通目標を立てる」「入院・治療が必要な病状であるにもかかわらず決定できないケースには,入院治療の後押しをする」「身体の状態をとらえなおす気づきから,身体への危機感・重要性・関心を高めるように関わる」等の16パターンの援助の手がかりが見出された.さらに16パターンの手がかりの焦点をとらえたところ,【看護師の観点に関する手がかり】と【アプローチ方法に対する手がかり】の2つに分類された.

 本研究で見出された援助の手がかりは,必ずしも難しい看護援助ではなく,できるところから取り組むことが可能な外来看護援助の道標になると考えられた.

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本研究は,成人期2型糖尿病患者のセルフケアの促進因子に関する文献研究である.Web版医学中央雑誌を使用し,『2型糖尿病』『セルフケア』をキーワードとし,最新5年分で,成人期を対象とした,34文献を分析した.分析は,セルフケアを促進する内的要因と外的要因を類似性に従い分類・コード化した.結果,内的要因は【糖尿病への自己効力感を高める改善法】【糖尿病と共に生きる感情の変化】【自分に合った療養行動を行う意識の変化】,外的要因は【患者の効果的な療養行動実施に向けた医療者からの支援】【患者を取り巻く状況】などのカテゴリがそれぞれ抽出された.本研究の結果より,セルフケアと感情が密接に関係し,負の感情もセルフケアの促進因子に変化するという内的要因の知見,成人期では役割を担えるよう生活を改善していくことが必要であり,食事療法はその生活の中で2型糖尿病患者に特徴的なものであるという外的要因の知見が得られた.

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 近年,神経難病患者や障害者の介護者の介護負担軽減を図る目的で,レスパイトケアが普及しつつある.インスリン療法中の糖尿病患者の介護者の介護負担は大きく,在宅療養を継続していくためには,介護者の介護負担を軽減する必要があると考える.しかし,糖尿病患者に対するレスパイトケアの受け入れは十分とは言えない現状である.

 今回,身体介護度の高い後期高齢1型糖尿病患者に対する家族看護介入として,レスパイトケアを調整した事例を経験した.主介護者70歳代男性と従介護者40歳代男性の2名を対象とし,レスパイトケアによる家族看護介入について検討した.介護負担の現状をインタビュー調査するとともに,Zarit介護負担尺度日本語版(荒井・工藤,2004)を用いて,レスパイトケアによる介護者の介護負担感の変化を調べ,主介護者と従介護者を比較した.その結果,両者とも『時間的制約感・心理的負担』を感じており,レスパイトケア実施による介護負担感の低下が認められた.

 長期にわたる在宅療養を支えるためには糖尿病患者においてもレスパイトケアを考慮することが有用だと考えられた.

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 本研究はインスリン頻回注射療法(Multiple Daily Injection:以下MDI療法)と持続皮下インスリン注入療法(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion:以下CSII療法)の両者を体験した1型糖尿病女性患者の生活利便性を検討する.

 研究対象者はMDI療法からCSII療法に切り替えた1型糖尿病の女性患者1名に半構成的面接調査を行なった.面接内容は,MDI療法およびCSII療法を行っているときの糖尿病の管理状態,器械操作,日常生活,社会面,心理面とした.

 CSII療法はMDI療法に比べて,器械操作,日常生活に関して生活利便性は悪かった.しかし,CSII療法はMDI療法に比べてHbA1cや血糖値が安定することから,社会面,心理面も良くなることで負担感が軽減していた.

 患者は,生活利便性が悪くても治療効果を優先し,心理面や社会面が安定するCSIIを選択していることが明らかになった.

 看護師は治療による生活利便性の視点も意識して支援することが大切である.

第21回日本糖尿病教育・看護学会学術集会 会長講演

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はじめに

 私の看護実践は,内分泌代謝科と血液内科の混合病棟から始まった.ここで,初めて,糖尿病患者と出会った.その後,内科系病棟を中心に臨床看護の実践が積み重なっていく中で,「糖尿病のような慢性疾患患者への看護を専門的にやっていきたい.看護の出番がある」と思い,大学院へ進学した.

 大学院では,もう一度,糖尿病患者と向き合うことにより,15年の臨床経験がありながら,まったく患者の苦悩が分かっていなかった自分と出会った.糖尿病患者が願うものは何かを模索するところから,始めなければならないということに愕然とした.私の中には何も無い.そんな感覚を抱いた.

 毎日,田んぼに行って農作業をしている糖尿病の女性は,足が農作業でどろどろになるので,帰りは,洗った長靴を乾かしがてら手に持って素足で農道を歩くと言った.「歌を歌いながら!」.気持ちよさそうな姿が想像されたと同時に,素足で歩く足はどんなだろう? 痛くないのか,けがしないのか?という気がかりが浮かんだ.それを問いかけると,「痛い? けが? そんなこと考えずに歩いてた.長靴は一つだから洗ったら乾かさないといけないし」と返事をした.自分の足よりも長靴を大切にしているところがユニークだ.その後,その人は,足を引き寄せ,靴下を脱いで私に足を見せた.先っぽと足の裏が赤く,ガサガサしていて,硬い皮膚.触ると冷たかった.「やだよ,こんなに足を見てもらったのは初めてだ.恥ずかしい」と自分でも足をさすって,ちょっと泣いた.長靴と同じくらい(本当は長靴以上に)大事な自分の足を思い出した瞬間のように思った.足も長靴も両方大切にしていく方法を話し合った.

 入院を勧められている体格の良い運転手の男性は,忙しいのを理由に断っていた.入院したって変わらないとも言った.入院は高血糖の罰であるかのような捉え方で,気持ちも,からだも忙しく固まっているように思った.首のストレッチや,深呼吸を促すと,「いてて」と言いながら,一緒に私のまねをしてやってくれた.固まっているからだを自覚した.これからも仕事を続けられるように,今,頑張っているからだを休め,薬の力も借りて,血糖コントロールを良くする“リセット”の入院をしてみませんか?というこちらの提案に彼は頷いた.

 今も忘れない,糖尿病看護の可能性に手ごたえを感じた大学院での演習の体験である.

 今回の学術集会のメインテーマ「今こそ,五感を使って身体に働きかける〜響き合い,互いの可能性を拓く〜」を礎に,本稿では,患者も看護師も互いの可能性を拓く看護実践とはどのようなものなのかを考えてみたいと思う.

基本情報

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日本糖尿病教育・看護学会誌
21巻1号 (2017年3月)
電子版ISSN:2432-3713 印刷版ISSN:1342-8497 日本糖尿病教育・看護学会

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