日本糖尿病教育・看護学会誌 19巻2号 (2015年9月発行)

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原著

診断時高齢の２型糖尿病患者がセルフケア行動を習得していく過程での経験越野　恵理 , 稲垣　美智子 , 多崎　恵子 19巻2号 , 2015年9月 , pp.111-120

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　高齢期に糖尿病診断を受けた患者が，セルフケア行動を習得していく過程でどのような経験をしているのかを明らかにする目的で，外来通院している診断時高齢の２型糖尿病患者14名を対象に半構造化面接を行い，エスノグラフィーの手法を用いて分析した．

　その結果，患者の経験は10のサブテーマで表わすことができ，さらに性質が類似した４つのテーマへと統合された．テーマは，①診断されることは今ある自分が揺らぐ，糖尿病患者としての始まりであった，②糖尿病とも医療者とも，付かず離れずの距離感を保っていた，③糖尿病治療の根幹と位置付けられている食事療法がもつ意味の大きさが，自分の想い描いていた高齢者として生きることへの壁として立ちはだかっていた，④糖尿病になっても絶えることなく健康な老いを切望していた，であった．

　以上から医療者は，高齢期に診断された患者に対して，診断されたときから始まる糖尿病と老いが重なる怖さを考慮したケアを提供する必要性があると示唆された．

有職２型糖尿病患者の経験するスティグマとその対処中尾　友美 , 高樽　由美 , 横田　香世 , 正井　静香 , 片岡　千明 , 仲村　直子 19巻2号 , 2015年9月 , pp.121-130

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　本研究の目的は，有職２型糖尿病患者のスティグマとその対処について明らかにし，糖尿病看護の示唆を得ることである．研究参加者は12名であり，質的記述的手法で分析した．

　糖尿病患者のスティグマには，【欠陥身体という感覚】【怠惰な性格への過剰な反省】【社会生活で不利とみなされる集団】という３カテゴリーが抽出された．対処では５つのカテゴリーが抽出された．以下にストーリーラインを述べる．病状が軽い間は【糖尿病を隠す】【療養行動をとらない自分に目をつぶる】対処をするが，自覚症状の出現，インスリン注射の実施を余儀なくされると，【糖尿病の現実を周囲に小出しにする】【糖尿病を隠せる範囲に社会関係を狭める】対処をとった．また，病気の進行とともに療養行動をとらざるを得なくなり，【健康を装いながら療養行動をとる】対処をとりながら，血糖コントロールへの努力を行っていた．発症早期からスティグマの観点を含むアセスメントや支援の必要性が示唆された．

研究報告

２型糖尿病患者の食事療法継続に対する感情的負担を軽減する因子松本　悠希 , 黒田　寿美恵 , 山内　栄子 19巻2号 , 2015年9月 , pp.131-138

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　患者の感情的負担を軽減することが食事療法の継続と良好な血糖コントロールにつながるとの前提から，本研究は，血糖コントロールが良好な２型糖尿病患者の食事療法継続に対する感情的負担を軽減する因子を明らかにし，患者の感情的負担を軽減する看護のあり方への示唆を得ることを目的とする．糖尿病歴５年以上，HbA1c（NGSP）7.4％未満の外来患者５名に半構造化面接調査を実施し，質的帰納的に分析した．感情的負担を軽減する因子は，【一時的・部分的な食事療法の緩和】【血糖コントロールに不適切な食事の視野外への隔離】【食事療法の逸脱を惹起するストレスの緩和】【自分に相応な食事療法を実行できている自信】【食行動が血糖値に直結するという認識】【自己の社会的責任の自覚】の６カテゴリに類型化され，看護のあり方は，１）厳格に守らなくても血糖コントロール可能な自分なりの食事療法を模索する過程の共有，２）感情的負担の根源に対する問題解決型対処行動の促進，３）食事療法継続の「有益性」の認識とコントロール感覚の強化，が示唆された．

看護師の糖尿病チーム医療を促進する実践およびチーム連携状況の実態多崎　恵子 , 稲垣　美智子 , 松井　希代子 , 堀口　智美 19巻2号 , 2015年9月 , pp.139-147

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　看護師が糖尿病チーム医療を促進する実践とチーム連携状況の実態を明らかにすることを目的に，糖尿病看護に携わっている看護師を対象に自記式質問紙調査を行い，1020名の有効回答を得た．その結果，看護師のチーム促進の実践は「あてはまる」の割合が最も高い項目でも70.0％であり全体的に高いとはいえなかった．その中でも，看護師としてのケアの姿勢をチームにおいて示す項目や，メンバーとの信頼関係づくりの項目は比較的高い結果であった．一方，医師や他職種に対し看護の視点から表明し論理立てて説明する項目や，看護の立ち位置をチーム全体から判断し行動する項目は低い結果であった．またチーム連携状況では，連携への意欲や努力は比較的高かったが，医師や他職種からうける信頼感やチーム連携の満足感は低い結果であった．以上より，チーム促進の実践におけるスキルアップとチーム連携における自信や満足感向上について看護体制を含め今後検討する必要性が示された．

１型糖尿病患者が「周囲のひとに１型糖尿病であることを話さない」と決めるプロセス鈴木　真貴子 , 丸井　英二 , 西木　正照 , 伊東　康男 , 栗岡　聡一 , 山根　雄幸 , 清水　匡 , 堀口　逸子 19巻2号 , 2015年9月 , pp.149-156

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　本研究の目的は，現在成人期にある１型糖尿病患者を対象に，「周囲のひとに１型糖尿病であることを話さない」と決めるプロセスを明らかにすることである．対象者６名に対して修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ（M-GTA）を用いて分析した．対象者は周囲のひとに１型糖尿病であることを知られた結果，〈行く手を阻まれた〉〈２型糖尿病と混同され傷つく〉など【辛い体験】をし，【自己評価低下】があり，【話さなければ嫌な思いをしない】と考え，「周囲のひとに１型糖尿病であることを話さない」と決めていた．【辛い体験】は患者自身が感じている病い（illness）と特定の社会において病いにあるひとが従うことを期待されている役割としての病気（sickness）とに差があることが原因と考えられた．看護師は患者が感じている１型糖尿病という病い（illness）を知る努力を惜しまないことが重要である．

２型糖尿病患者の首尾一貫感を高めると認識している支援内容の検討小田嶋　裕輝 , 河原田　まり子 19巻2号 , 2015年9月 , pp.157-165

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　２型糖尿病患者の首尾一貫感を高めると看護師が認識している支援内容を抽出することを目的とし，糖尿病教育入院に携わる臨床経験３年以上の看護師７名に半構成的面接調査を実施し質的帰納的に分析した．その結果，首尾一貫感の下位概念のうち，把握可能感を高める支援内容として，患者教育の準備状態を確認し，過去から現在までの病気に至った生活や，現在の療養生活を振り返る中で，今後の治療への理解を促し，また，支援者間での支援方針の統一を図っていた．処理可能感を高める支援内容としては，生活上の問題と改善点を一緒に見出し，家族や仲間の力を活かしながら，実現可能な目標や方法の共有を図っていた．有意味感を高める支援内容では，生活と治療の両立や治療への意欲を支えつつ，糖尿病が自己管理可能な病気であるとの理解を深め，療養行動の意味を見出せるように関わっていた．首尾一貫感を高める支援内容は，糖尿病看護師に求められる判断・役割として先行研究で示唆された内容と重なるところがあり，糖尿病看護の質そのものの向上にも資することが示唆された．

基本情報

日本糖尿病教育・看護学会誌
19巻2号
(2015年9月発行)

電子版ISSN：2432-3713 印刷版ISSN：1342-8497 日本糖尿病教育・看護学会

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