JSES 内視鏡外科 3巻2号 (1998年4月発行)

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特集　腹腔鏡下脾臓摘出術の適応と工夫

血液疾患における脾臓摘出術の適応池田　康夫 3巻2号 , 1998年4月 , pp.118-122

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　血液疾患における脾臓摘出術の適応について解説した．脾摘術は治療目的と診断目的で行われる．前者の適応疾患としては，特発性血小板減少性紫斑病，遺伝性球状赤血球症，自己免疫性溶血性貧血などがあり，後者としては，悪性リンパ腫の病期診断，原因不明の脾腫などが挙げられる．それぞれの場合における注意点について，特に腹腔鏡下脾臓摘出術との関連で述べた．

腹腔鏡下脾臓摘出術の手術手技奥芝　知郎 , 大野　耕一 , 高橋　利幸 , 奥芝　俊一 , 加藤　紘之 3巻2号 , 1998年4月 , pp.123-128

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　特発性血小板減少性紫斑病をはじめとする脾臓摘出術の適応となる疾患に対し，腹腔鏡下手術はいまや第一選択とすべき術式である．手術は脾臓周囲支持組織の切離と脾への血行遮断に尽きる．手術は以下の方法で行う．（1）体位を右側臥位とする．（2）ハーモニック・スカルペル^＊を用い，脾結腸間膜より後腹膜に剥離を進めるlateral approach法で行う．（3）脾動静脈の処理は自動吻合器で一括切離する．（4）脾臓の摘出は，大型ナイロン袋に収納後，モルセレーターで粉砕，吸引する．これらは腹腔鏡下手術の基本手技を習熟したチームであれば，安全かつ迅速な手術が可能である．

腹腔鏡下脾臓摘出術—基本手技黒川　良望 , 安藤　健二郎 , 貝羽　義浩 , 中川　昭彦 , 阿保　昌樹 , 上野　達之 , 里見　進 3巻2号 , 1998年4月 , pp.129-135

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　1994年10月から1998年3月までに腹腔鏡下脾臓摘出術を29例施行した．最近の15例は体位を右側臥位（lateral approach）とし，脾背側の腹膜を切離したのち，短胃動静脈，脾動静脈を同定せずに脾門部を自動縫合器を用いて一括切離している．平均手術時間は90分，出血量は23mlで，開腹移行例はない．また，最近の6例はトロッカー3本（径12あるいは15,10,5mm）からのみの操作で脾摘術を完遂している，以上の結果は，脾摘出術が腹腔鏡下手術のよい適応であること，lat-eral approachと自動縫合器による脾門部一括切離法は，腹腔鏡下脾臓摘出術の標準術式となり得ることを示している．

小児症例に対する脾臓摘除術の特殊性吉田　和彦 , 金井　正樹 , 黒部　仁 , 村井　隆三 , 吉澤　穣治 , 原　章彦 , 水野　良 , 山崎　洋次 3巻2号 , 1998年4月 , pp.136-140

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　小児に対する腹腔鏡下脾摘除術（LS）は，開腹下脾摘除術（OS）に代わる“the gold standard”となった．当科においては，1993年より小児に対してLSを導入し，現在まで18例に施行した．初期の2例は出血により開腹へ変更したが，ハーモニック・スカルペル^＊とlinear staplerによる脾門部の切断を併用することにより，安全で容易となった．小児に対するLSの問題点は，限られた腹腔内スペースにおいて相対的に大きな脾臓を摘出することにある．体位とポートの位置の工夫，snake retractorや脾門部の結紮などの導入により，小児における問題は解決できる．LS後は腹腔鏡下胆嚢摘出術（LC）と同様に，痔痛の軽減，術後イレウスの発生率の低下，呼吸器合併症の減少などの結果，入院期間の短縮や心身のハンディキャップの軽減が得られるので，小児においてもOSに代わって標準化すべき術式と考える．

脾機能亢進症に対する手技の工夫橋爪　誠 , 田上　和夫 , 森田　真 , 富川　盛雅 , 津川　康治 , 御江　慎一郎 , 太田　正之 , 杉町　圭蔵 3巻2号 , 1998年4月 , pp.141-145

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　門脈圧亢進症合併患者に対する腹腔鏡下手術の適応は，現時点においてはまだ慎重に考慮すべきであるが，脾機能亢進症患者に及ぼす腹腔鏡下脾摘術のメリットは大きく，われわれは積極的に取り組んでいる．手術適応は，血小板数3×10⁴／μl以下または5×10⁴／μl以下で出血傾向を伴う症例である．他臓器の治療を安全に行うために，同時または二期的に手術を行うのもよい適応と考える．手術は，自動縫合器，ハーモニック・スカルペル^＊，モルセレーターなどの新しい器具を用いることで，巨脾症例であっても比較的安全に確実に施行できるようになった．

遊走脾に対する腹腔鏡下脾固定術廣瀬　龍一郎 , 板東　登志雄 , 吉田　隆典 , 北野　正剛 3巻2号 , 1998年4月 , pp.146-149

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　遊走脾は，脾固定靱帯の欠如により茎捻転やうっ血による脾腫を来す稀な疾患である．われわれは遊走脾の幼児例に対し，初めて腹腔鏡下脾固定術を行い報告したが，ここではその手技について述べた．脾の固定には脾を吸収性メッシュに包み，横隔膜下に縫着する方式を用いた，本症への腹腔鏡下手術によるアプローチは，脾の十分な観察ができ，捻転解除や摘脾への移行も可能であり，開腹術と同等の手術が安全に施行できる点から有用と考えられた．

手術テクニック

経後腹膜的アプローチ法馬場　志郎 3巻2号 , 1998年4月 , pp.150-152

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　経後腹膜的アプローチ法とは，腹腔を経由せずに後腹膜臓器に内視鏡的に到達する方法である．特に副腎や腎，あるいはそのほかの上部尿路臓器への内視鏡下手術に適している^1-6）．また，開腹手術により腹壁前面に腸管の癒着が予想される症例でも，このアプローチ法により結腸の近傍の壁側腹膜を切開して剥離手術を行うことも可能である．また，上行，下行結腸切除でも結腸後面を安全に剥離することができる^7）．

　元来，後腹膜腔（retroperitoneum）とは腹膜の背面に存在する脂肪組織で充満された閉鎖腔領域で，本来の体腔ではない．したがって，後腹膜鏡下手術を可能とするには人工的に操作腔を形成する必要がある．しかし後腹膜気腹のみでは，微小な動静脈が格子状に走行している後腹膜脂肪組織内で有効な操作腔を得ることができない．Gaurにより報告されたバルーン拡張法^1）は，十分に広い操作腔を効率よくかつ安全に剥離，作成することができ，この操作腔を後腹膜気腹により展開することは容易である．

基本手技シリーズ・2

トロッカーの扱い方下村　一之 , 山田　博文 , 出月　康夫 3巻2号 , 1998年4月 , pp.153-154

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　トロッカーは腹腔鏡下手術の最初の段階で用いられる器具であり，その挿入手技は腹腔鏡下手術に不可欠のものである．最初のトロッカーの挿入は，（1）気腹針を先に腹腔内に刺入し，気腹完成後に1本目を挿入する方法と，（2）「open法（Hasson法）」にて腹壁（多くは臍部）に小切開をおき，腹腔内に達したことを直視下に確認の上，鈍針のトロッカーを挿入する方法の2つがある．（1）の気腹針による方法は，手技が簡便で短時間にトロッカーの刺入が行えるが，一方で盲目的操作であるところから，腹腔内臓器や血管を損傷する危険性を回避できない．また，時に重大な合併症（大出血，空気塞栓，腹膜炎など）も報告されている．したがって現在では，（2）のopen法が一般的に用いられる．

原著

肺小結節病変におけるCTガイドマーキング法の有用性山田　俊介 , 四方　敦 , 山崎　将典 , 小坂　昭夫 3巻2号 , 1998年4月 , pp.155-158

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　肺小結節陰影に対する胸腔鏡下手術において，術前にCTガイドに穿刺針を留置するCTガイドマーキング法（以下，マーキング）の有用性はすでに報告されている．今回，その有用性を客観的に評価する目的で，20mm以下の肺小結節36病変に対して行った31回の胸腔鏡下手術例をマーキング施行群15例と非施行群16例に分け，手術時間，ミニ開胸の有無より比較，検討した．結果は両者間で手術時間に差は認めなかったが，マーキング施行群がミニ開胸の造設頻度が低かった．また，マーキング施行群において問題となる合併症もなく，CTガイドマーキング法は肺小結節病変に対する胸腔鏡下手術において有用と思われた．

手術手技

前胸部アプローチ法による内視鏡下甲状腺切除術石井　誠一郎 , 大上　正裕 , 有澤　淑人 , 大森　泰 , 納賀　克彦 , 北島　政樹 3巻2号 , 1998年4月 , pp.159-163

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　甲状腺疾患における外科手術後の手術瘢痕は美容上の問題点となり，頸部の瘢痕収縮に伴う違和感を訴える患者も少なくない．われわれは，32歳，女性の甲状腺腺腫に対して，前胸部アプローチ法により本邦で初めて内視鏡下甲状腺手術を施行した．広頸筋下層の鈍的剥離と超音波切離装置により良好な視野が確保され，手術は安全に行われた．顔面の皮下気腫や縦隔気腫を認めず，術後の疼痛も軽微で，反回神経麻痺，出血などの合併症もなかった．頸部の美観は良好に保たれ，患者は第7病日に退院となった．本術式は従来の甲状腺手術に遜色のない切除が可能であり，今後さらに適応が拡大するとともに，甲状腺外科領域における選択術式の1つとなることが期待される．

私の工夫

腹腔鏡下胆嚢摘出術における気腹圧を利用した落下結石体外排出器具の考案長谷川　格 , 平田　公一 , 荒谷　純 , 高島　健 , 藤岡　久 3巻2号 , 1998年4月 , pp.164-167

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　腹腔鏡下胆嚢摘出術における術中偶発症の1つである落下結石に対して，気腹圧を利用することで，体内での捕捉および体外への排出を同時かつ瞬間的に行う器具を考案した．本器具は，結石を捕捉・排出するための誘導ドレーンと体外に排出された結石を捕捉するバッグで構成されている．器具の使用方法は，断端を指で閉鎖した誘導ドレーンをトロッカーより挿入し，先端を結石の近傍まで移動してから断端を一瞬解放すると，気腹圧の力で瞬間的に結石が体外に排出される．本器具は，片手操作が可能で簡単に操作でき，使い捨てに耐え得る低コスト性を備えており，腹腔鏡下手術における補助器具としての条件を満たした有用性の高い器具であると思われる．

基本情報

JSES 内視鏡外科
3巻2号
(1998年4月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：1341-7266 日本内視鏡外科学会

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