訪問看護と介護 28巻4号 (2023年7月発行)

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特集　失敗する前に教えてほしかった……！　訪問看護に来ていきなり必要になる看護技術

扉佐藤　直子 , 岩本　大希 , 國居　早苗 28巻4号 , 2023年7月 , pp.269

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基礎教育でしっかり学ばない、病棟でそんなに求められるわけでもない、でも訪問看護では必要になる看護技術——。

本特集では、そういう種類の看護技術を精選し、現場経験豊かな訪問看護師さんの指導のもと、一つひとつ噛み砕いて解説します。

爪切り佐藤　直子 , 岩本　大希 , 國居　早苗 28巻4号 , 2023年7月 , pp.270-273

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　訪問看護で出会う療養者の中には感染によって爪が変形しているなど、爪への配慮を要するケースも少なくありません。ただ、「正常な状態の爪の爪切り」の範囲であれば医療行為^※に該当しないため、また、誰しもが日常的に行うものであるため、就業時に研修で体系的に学ぶといったことがないまま、爪切りを任せられることがあります。病棟経験が十分ある看護師であっても、入院期間の短縮化が進む今、実は「患者の爪を切る」という経験をしたことがない人も多くいます。そのような中で、「訪問看護に来て爪切りを任せられたが、そのときに療養者にケガをさせてしまった」なんて事例も耳にします。

洗髪佐藤　直子 , 岩本　大希 , 國居　早苗 28巻4号 , 2023年7月 , pp.274-277

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　洗髪は、清潔を維持するための技術であり、同時に「快」を提供する技術です。一方で、急性期病棟では実施する場面が少ないために経験に乏しく、また、現場でのアレンジが求められることから、訪問看護の新任者が戸惑いやすい技術でもあります。不慣れさから、療養者の首に水を垂らしてしまったり、寝衣を濡らしてしまったりと、かえって不快感を与えてしまう結果になってしまうことも。

　ここでは、首の後屈が難しい疾患の療養者も多いことを踏まえ、フラットな状態でできるおむつを使った洗髪の方法を紹介します。なお、現場では、訪問入浴や簡易浴槽での入浴、ケリーパッドの使用など、他の方法を検討する必要もあることを申し添えておきます。

腹部マッサージ佐藤　直子 , 岩本　大希 , 國居　早苗 28巻4号 , 2023年7月 , pp.278-281

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　便秘は、入院期間の短い病棟においては、患者と医療者双方にとって「問題」として顕在化しづらいものです。しかし、在宅療養の場となると、便秘は重要な問題として浮上します。療養者の生活をサポートする訪問看護にとっても当然、便秘の有無は関心事になるはずです。

　そのような中で、侵襲が少なく、本人にとって気持ちのよいケアという理由から、訪問看護では腹部マッサージを行う機会が病棟以上に多く存在します。しかし、教科書によって説明の記述が異なるなど、確立した手順がないために、新任者にとっては混乱しやすい技術でもあります。

特別企画

訪問看護の事業承継ガイドラインを作りました！高丸　慶 28巻4号 , 2023年7月 , pp.282-287

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一般社団法人訪問看護支援協会は2022年7月、「訪問看護ステーション事業承継ガイドライン」を公開しました。事業承継の種類やタイミングといった基本的な解説はもちろん、訪問看護事業を承継する際に求められる特徴的な事項までを押さえた資料です。

このガイドラインがなぜ今、必要なのか。訪問看護ステーションを承継する上ではどんなことに注意が求められるのか。訪問看護ステーション事業承継検討委員会で座長を務めた一般社団法人訪問看護支援協会代表理事・高丸慶さんにご寄稿いただきました。（編集室）

事業承継ものがたり—訪問看護の“婚活”のお話坪田　康佑 28巻4号 , 2023年7月 , pp.288-291

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　坪田さんは、2014年に栃木県のある準無医地区に訪問看護ステーションを開設し、経営者兼管理者として奮闘していました。しかし、2017年に体調を崩したことをきっかけに事業承継を考え始め、2019年に法人売却に至った、という事業承継の体験者です。

　事前知識ゼロでスタートした事業承継は、決して楽なものではなかったそう。坪田さんは思い入れある訪問看護ステーションを引き継ぐにあたり、どんなことに悩み、戸惑ったのでしょうか。売却先を決める最後の後押しは何だったのでしょうか。事業承継までの実体験をご紹介いただきました。（編集室）

特別記事

2040年の訪問看護事業所のあるべき姿—大都市部で効果・効率的な訪問看護を実現するために川添　高志 28巻4号 , 2023年7月 , pp.294-301

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国立社会保障・人口問題研究所が2017年に示した将来人口推計によれば、2042年までは、65歳以上の高齢者が増え続ける一方で、15〜64歳の人口は急減すると言われています。環境が大きく変わるこれからの約20年、人口集中が著しい大都市部において訪問看護事業所はどうあるべきか。ケアプロ株式会社の川添高志さんにご寄稿いただきました。（編集室）

新卒訪問看護師育成プログラム参加者のその後と定着に向けた課題—大阪府訪問看護ステーション協会における取り組み（第2報）河野　あゆみ , 大市　育実 , 吉行　紀子 , 林　佳美 , 高澤　洋子 , 長濱　あかし 28巻4号 , 2023年7月 , pp.302-308

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　近年、訪問看護ステーション（以下、訪問看護ST）の間では新卒訪問看護師育成プログラム（以下、PGM）が全国的に広がっている^＊1〜5。しかし、その育成数やPGMの堅牢性の観点から、新卒で訪問看護師として就職することはまだ特別なキャリアデザインである。新卒訪問看護師育成PGMの内容^＊1〜4の紹介や育成する訪問看護ST側の意見^＊5〜7などの報告は散見されるが、新卒訪問看護師が「新卒」期間を終えた後に、どのような経過を辿っているのかを追跡した報告はほとんどみられず、新卒訪問看護師育成実績を評価しながら、PGMを常に洗練化させることが大切である。

　大阪府訪問看護ST協会では、2016年度より本格的に新卒訪問看護師育成を開始^＊4し、7年を経たところである^註1。本稿では、これまでの経過やPGM参加者への追跡調査の結果を紹介しながら、新卒訪問看護師育成の定着に向けた課題とヒントについて考察する。

連載　小瀬古伸幸の精神科訪問看護のしくじり体験・第1回【新連載】

境界性パーソナリティ障害の人の手のひら返し—1年以上入院せずに経過したが、何の前触れもなく事業所変更を申し出て終了小瀬古　伸幸 28巻4号 , 2023年7月 , pp.316-323

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連載の目的

　私の著作、『精神疾患をもつ人を、病院でない所で支援するときにまず読む本』（通称：横綱本、医学書院、2019年）の発売から約4年が経ちました。この本は、いわゆる困難ケースと言われている人たちに、私がどのようにケアを組み立て、何を考えて訪問していたのかを解説したものです。

　一方で、私がそうした困難ケースに対してケアを組み立てられるようになるまでの、イタく、苦しく、うまくいかなかった体験は、あまり書きませんでした。そんなものは読者にとって学びにならないし、自分の恥をさらすだけだと思っていたからです。

連載　新米マネジャー時代のここだけの話・第1回【新連載】

気が重い、管理者としての訪問大橋　奈美 28巻4号 , 2023年7月 , pp.324-326

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　管理者として大切なこと。挙げ始めるとキリがありませんが、職員の幸せと安全を守ることである、と私は考えています。

　「管理者」として現場に呼ばれることは、今も年に1〜2回はあります。例えば、威嚇的な暴言やハラスメントに抵触する言葉が見られるため、看護師が入室できないといったケースのときです。「バッタもん、帰れ」「偽もん看護師」「呼んでもないのに来るな」「用事もないのに入って来るな」「この布団に横になって」。こうした言動が見られる療養者に職員が困っているときは、私に訪問が要請されます。

連載　生活の輪郭・第4回

自然と暮らし尾山　直子 28巻4号 , 2023年7月 , pp.263-265

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その島は伊豆諸島の最南端にある。黒潮の激しい海流の真っただ中にあり、船の就航率は五〇％とも六〇％とも言われている。島は火山の噴火によってうまれた二重式カルデラ火山の世界的にも珍しい地形であり、周囲は崩れやすい海食崖にぐるりと囲まれ、岸に降りる唯一の手段である港の造設もままならない。

連載　在宅ケア　もっとやさしく、もっと自由に！・157

地域と住民と、愛着—驚きの人口ピラミッドを見て思うこと秋山　正子 28巻4号 , 2023年7月 , pp.310-311

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　各都道府県および市区町村は3年ごとに、老人福祉法に基づく高齢者保健福祉計画と介護保険法に基づく介護保険事業計画を策定しています。第8期は令和3（2021）年度から令和5（2023）年度なので、第9期計画策定のため、住民に向けて行った基本調査のデータをもとに新たな計画を立てる会議が現在、頻繁に開かれています。

　在宅医療の推進、在宅医療・介護・福祉の連携といったことも、この計画の中に盛り込まれます。国や都道府県の施策を反映しつつ、地域に存在するニーズを広くとらえる必要もあるため、審議は慎重に進められます。

連載　訪問先のちょっと気になる人。—精神科ナースはどう見る？　どうする？・第6回

ゴミ屋敷⁉……どこまでを“SOS”と捉えるべき？萱間　真美 28巻4号 , 2023年7月 , pp.312-315

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相談❻

訪問先が“ゴミ屋敷”だった場合、どうアプローチしますか？

ある訪問看護師より

　アルツハイマー型認知症と診断されている80代後半の女性、Fさんです。MMSE^※は20で、介護保険での訪問看護を週3回利用、デイケアにも週1回通われています。

　高級住宅街にある広いマンションに独りで住み、1日1回、散歩を楽しまれています。お嬢様育ちで一般的なデイサービスは気に入らず、「私はこんなんじゃない！」と泣き出してしまうこともありました。夫は逝去し、息子がいますが海外在住で、なかなか連絡はつきません。

連載　Hallo！　ポジティヴヘルス　オランダ生まれの“健康”の新概念・第5回【最終回】

健康とは何で、どこに向かうものか川田　尚吾 28巻4号 , 2023年7月 , pp.328-334

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　ここまで全4回にわたり、ポジティヴヘルスの概要（第1回「『ポジティヴヘルス』とは何か」）とそれを用いた私の在宅医療での実践を紹介（第2〜4回「ポジティヴヘルス志向の実践に迫る①〜③）し、ポジティヴヘルスの実際とその影響について迫ってきました。

　最終回となる今回は、それらをまとめる回と位置付け、加えて現地オランダにおけるアップデートについても簡単にご紹介していきたいと思います。

連載　暮らしの手触り・第3回

見えない白衣の脱ぎ方坂井　雄貴 28巻4号 , 2023年7月 , pp.336-337

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　主治医意見書を書くのが苦手だ。思えば研修医の頃から、介護保険を利用するために、医者にかからなければいけないことに違和感があった。訪問看護や訪問介護、デイサービス、福祉用具、そんな暮らしに関わることを、どうして医者が決めるのだろう？　実際、患者の病気のことは知っていても、それが地域での暮らしや生活にどう影響しているかを医療機関にいる医者が知ることはとても難しい。

　ある日、介護職員の方に連れられて80代の女性が初めて診療所にやってきた。聞くと認知症のため異食や徘徊をしてしまうそうだ。同居の息子さんには仕事があることから、ほぼ毎日、見守りのためにデイサービスで過ごす必要があり、介護認定の更新に主治医意見書が必要とのことだった。

書評

『—13の実践レシピで解説！—看護を教える人が発問と応答のスキルを磨く本』｜問いかける力を授けてくれる1冊清水　奈穂美 28巻4号 , 2023年7月 , pp.293

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誰もが経験する「対話の壁」

　「発問」と「応答」のスキルを磨く——このタイトルを見た瞬間に、看護を教える立場にある多くの指導者や教員が経験していると思われる新入職員・学生との対話の壁を、そっと壊してくれるエッセンスがつまっていると感じ、すぐさま手にとりました。

　学生に「訪問に行ってどうだった？」と投げかけると、表情が（何を答えたらいいのだろうと）一瞬固まることがあります。そして、学生は「療養者の疾患は○○で〜、家族構成は○○で〜」と情報を説明し、状況ばかりを話してしまうことが少なくありません。それに対し、「そうじゃなくて、どう思ったの」と尋ねると、圧力になり、学生が黙ってしまう。これでは対話が進まず、学生に何を考えてもらいたかったのかが伝わらないのです。

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目次 28巻4号 , 2023年7月 , pp.266-267

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今月の5冊 28巻4号 , 2023年7月 , pp.339

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Information　学会・研究会情報 28巻4号 , 2023年7月 , pp.340-341

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バックナンバー・年間購読のご案内 28巻4号 , 2023年7月 , pp.342-343

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FAX購読申込書 28巻4号 , 2023年7月 , pp.344

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次号予告・編集後記小池 28巻4号 , 2023年7月 , pp.346

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自動車の駐車にはどこか苦手意識があり、いざその場面が訪れると心拍数が上がります。教習所での習ったのは「あのポールが見えるところまで下がったら、一旦停止。それからハンドルを目一杯切って……」みたいな感じ。でも実際の路上にポールはないわけで。そりゃあ困るわけで。実際の場面が想定されていないんですよ。もっと言えば、一連の流れを構成要素でぶつ切りにして解説されても、全体としてのまとまりがなくなってかえって流れがつかめなくなる感じ、がありました。▶在宅の看護技術の解説する企画には同種の難しさがあると思い、避けていたところがあります。でも佐藤直子さんの解説のアプローチはそもそもスタンスが違って、そこに驚きがありました。佐藤さんは、全部の流れを教えるというより、「部屋を明るくする」とか「爪を切るときは指の持ち方に注意する」とか、本当に外してはいけないポイントを中心に据えて教えていきます。この教え方だと、手順全体の理解を邪魔することなく学びを進められ、また、変数だらけの訪問看護でも、場面の諸条件をひとまず無視して活用できるものが学ぶことができます。なるほど。本誌の誌面＋動画解説もそのスタンスを真似てみました。▶特集のタイトルも、打ち合わせのときに出た佐藤さんの言葉をほぼそのまま使っています。現場を分かっている人の言葉はまっすぐで、コンセプトが分かりやすい。企画を通して勉強になりました！……小池

基本情報

訪問看護と介護
28巻4号
(2023年7月発行)

電子版ISSN：1882-143X 印刷版ISSN：1341-7045 医学書院

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訪問看護と介護 28巻4号 (2023年7月発行)

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