訪問看護と介護 25巻8号 (2020年8月)

特集 災害への備え、どうする—BCPの考え方と作り方

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近年、全国各地で災害が相次いで発生しています。

地震による被害、豪雨による冠水・洪水等は記憶に新しく、また、現在流行している新型コロナウイルス感染症もその1つと言えるでしょう。

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 近年、多くの自然災害の驚異に日本は脅かされています。歴史的に見ても、国内では地震や風水害、土砂災害が多く発生してきました。新型コロナウイルス感染症もこうした自然災害同様、在宅ケアの現場にも多大な影響を与えています。皆さんも、感染予防資材の調整や提供するサービスの質や量の見直しなどと、さまざまな面での対応が迫られたのではないでしょうか。今回の経験から、災害対策においては、自然災害や人為災害だけでなく、新興感染症の流行に対する対策も考慮する必要があることを実感した方々も多いだろうと想像します。

 疾患や障害がある人、高齢者などの在宅ケアの対象者は、災害やそれがもたらす環境の変化に対して脆弱です。災害そのものを避ける術はありませんが、災害後の生活を守るという点からは、訪問看護師をはじめとした在宅ケア従事者ができることは多いと私は考えています。

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 訪問看護師は、平時の看護において、次の訪問までの間の利用者さんやご家族の「もしも」のことをいつも考え、予測し、対応しています。皆さん、健康の維持や暮らしに関する「もしも」から、命に直結する医療ケアに関わる「もしも」のことも、よく考えて対応されていると思います。また、災害時の看護活動では、災害時支援の重要な方策となる「アウトリーチ」を常日頃実践していますので、訪問看護師は最も災害時対応に強い技術を持ち、平時に活用していると思います。

 このように災害時にも強い平時の思考と技術を持つ訪問看護師ですが、あらためて災害対策に注目すべき3つの理由がありますので、その理由と、取るべき対策としての自助・互助、および訪問看護事業所のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)について考えていきましょう。

BCPを作ってみよう

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「訪問看護事業所におけるBCP作成時のチェックリスト」(p.613)に基づいて、実際にBCPを作っていこうとしたとき、具体的にどのようなことを考慮しながら進めていけばいいのでしょうか。チェックリストの大項目ごとに、特に力点を置くべきところについて解説していただきました。

❶人的資源(スタッフ) 佐藤 純
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 訪問看護ステーションのBCPにおける人的資源の「人」は、スタッフや管理者を指します。災害発生時、スタッフや管理者の安全を第一に確保するための指針・方針、迅速な安否確認の方法などが検討すべき内容です。さらに、事業を継続するために行う訪問のシフト調整などの計画・指針もここに含まれます。

❷物的資源(金) 金坂 宇将
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 訪問看護事業所は企業である以上、自事業所の経営的な存続を考えることは重要です。しかし、企業であること以上に、地域そのものを守っている存在であり、訪問看護事業所が閉鎖することは地域の重要な資源を失うことを意味し、それは地域に住む住民の方々の健康を害することに直結します。物的資源の「金」について考えることは、災害時の事業所存続のためだけでなく、地域存続のためにも重要です。

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 訪問看護BCPにおける物的資源(モノ・情報)は、災害発生時に確保・運用すべき移動手段や通信手段、衛生資機材、帰宅困難スタッフが生活できるような備蓄品等を指します。災害発生時に混乱しないよう、事前に災害を想定して準備しておくことや、調達のルートや代替品を検討、計画しておくことが重要です。

❹利用者 佐藤 純
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 訪問看護や訪問介護のサービスを受けている人は、災害時に「要配慮者」に該当する方が多いです。個別の対応が求められるケースが少なくないことから、平時に訪問看護師として関わる中で、その人の生活状況を確認しておき、その上で、さまざまな災害を想定した計画を立てておく必要があります。

❺運営(主に「地域」) 江田 純子
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 岡山県は「晴れの国」と言われ、降雨量が少ない温暖な気候の地域ですが、2018年7月に発生した西日本豪雨は甚大な被害をもたらしました。倉敷市真備町にある2か所の訪問看護ステーションが被災。しかし、いずれも発災後、1日休んですぐに再開しています。「その地域で在宅看護、訪問看護を継続する」という決心・覚悟をし、被災直後から訪問看護実践を続けていたのです。その一方で、災害から2年が経った今も休止し再開の目途が立たないサービスもあると聞いています。

 ここでは、「運営」の項目について、その中でも特に「地域」と関連するものについて紹介します。地域で訪問看護を継続するために、「平時」「災害時」「災害後」に求められる取り組みは何か、被災地において被災ステーションの活動を見守った経験をもとに考えていきます。

緊急特集 新型コロナ、第1波の経験、第2波への準備

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新型コロナウイルス感染症の拡大は、在宅ケアの現場に大きな影響を与えました。

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 当ステーションで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した訪問看護を行った。ここでは、その準備から実践までを含めた内容を共有したい。実践内容は2ケースで、1事例目が感染疑い・濃厚接触者事例、2事例目が濃厚接触者事例で、それぞれを時系列に述べていく。

 なお、当ステーションでは、COVID-19が拡大を見せ始めた3月下旬に、COVID-19の濃厚接触者への訪問に備え、ステーションとしての運営ルールを定めていた(表1)。以下の事例は、その規定を追加した後に依頼があったものである(一部、ケース❶の後に更新した項目あり)。

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 現在、私の勤める医療法人葛西医院訪問看護ステーションかっさいは、2020年3月に開設された新しいステーションです。所在地である大阪市生野区は面積8.37km2、総人口12万9573人(2020年1月1日時点)の地域で、特徴としては全国で最も外国籍の人口比率が高い行政区の1つであることが挙げられます。同区内に訪問看護ステーションは約40あり、その中、生野区のステーション連絡協議会(以下、生野区ナース会)に加入しているのは19ステーション(2020年6月時点)です。19のうち、常勤換算5.0以下の小規模ステーションが7割を超えています。

 本稿では、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、生野区ナース会で構築した「生野区ナース会新型コロナウイルス対策協力システム」について、その中身と完成までの経緯について紹介します。

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寄り添うってどういうこと?

 私たちはよく、「患者に寄り添う」と言います。「寄り添う」ってどういうことでしょうか。皆さんは、「寄り添えて」いますか?

 私は、臨床医として患者さんと接するようになって30年余りになります。この6年ほど、週1日、在宅医療専門のクリニックに勤務し、残りは大学で教育と研究に従事しています。訪問診療はまだまだ駆け出しですが、患者さんのお宅に伺い、自分では考えたこともなかった経験をしてきた方々のお話を直接に聴き、さまざまな人生の大切な最終段階に深く関われるというのは、医療者の特権だと感じています。

連載 家でのこと・第8回

ラジオが聴こえる部屋 高橋 恵子
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うわっ、こいつのツイマジうぜぇ

さあ、今週もはじまりましたラジオDEトゥギャザーのお時間です。

連載 物語で紡いでいく在宅ケア いえラボからの活動便り・2

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 「お元気でしたか〜」。5月のココシリワーカーWebランチ会が始まりました。いえラボの地域デビューを助けてくださった方、病院の看護師の相談に乗ってくださっている方、実習でお世話になっている方など、大切な仲間が顔を見せてくれました。

 自粛期間中、訪問もなかなかできない中で皆さんが共通して行っていたのが「電話」です。「電話には注意!」は高齢者の間の常識ですが、そんな高齢者に所属や名前、そして、何より声で分かってもらえ、「あぁ、○○さん」と電話を切らずに話を聞いてもらえたそう。地道にコツコツと出会いを大切にしてきたからこその信頼関係。ふと、東京都大田区が65歳以上を対象にしている「見守りキーホルダー登録事業」のことを思い出しました。大田区では年に1回、誕生月にこの登録情報を更新するルールを設けています。1年に1度の“顔合わせ”。これは「再会するしくみ」とも言えます。「地道にコツコツ」「再会するしくみ」が今日のキーワードとなりました。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・131

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 緊急事態宣言下にあった今年5月の中旬、認知症が進む90代の母親を介護している娘さんからの電話相談を受けました。

 母親の在宅介護を8年間続けたけれど、限界を感じ、悩んだ末に有料老人ホームを探し、母親はそこに入居しました。しかし、娘さんは様子を見に行っているうちに、「なんだか、これでいいのかなあ」と新たに悩みます。それで、区域内のグループホームを全て訪ね歩き、娘さんが「ここぞ」と思ったところに母親は入所することができました。今回の電話相談は、その入所から1か月半後のタイミングとのことでした。

連載 地域連携の技術 ファシリテーション・スキル・第8回

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ファシリテーションの出番、地域の「会議」にあり

 今回から、さまざまな場面で、どのようにファシリテーションのスキルを使っていくのかについて触れていきたいと思います。

 最初に取り上げるのは、多職種が参加する会議です。私の働く東京都大田区では、市民啓発を目的に行政、医師会、歯科医師会、薬剤師会、訪問看護ステーション、ケアマネジャー協議会、訪問介護支援事業所連絡会、通所介護事業所連絡会、鍼灸師会などの代表者が参加して、年に1回開催される地域包括ケアに対する区民啓発イベント(「くらし健康あんしんネットおおた」といいます)の企画を考え、実行する話し合いを定期的に行っています。

連載 「みんなの認知症見立て塾」出張講義 認知症「見立て」の知「対応」の技・第5回

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 前回に引き続き、認知機能障害について説明します。原因疾患や障害される脳の部位により、さまざまな認知機能障害が出現するというのはすでにお伝えした通りです。そのうち、前回は(短期)記憶障害、病識の障害について扱いました。今回は、見当識障害、注意障害、視空間認知機能障害について解説していきます。

連載 [小説]ナースマン訪問看護編 あと、どれくらい?・第12回【最終回】

分かっていたの 小林 光恵
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 金曜日の夜7時前、草森徹は自宅でパソコンの前に座り、左の手のひらを眺めている。どこか寂しげなのは、川瀬りつから昨夜遅くに届いたLINEのメッセージにショックを受けているからだ。

 「ダメだって、分かっていたの」

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 畏友である川越厚氏(医療法人パリアン、クリニック川越院長)が、自ら選び監修し、解説のブックレットを加えた、音楽CD「いのちを癒す魂のアート、音楽」を発表しました。今さら紹介するまでもなく、彼は終末医療の分野では第一線で活躍してきた在宅ホスピス医で、多数の著書を出版し、各地で講演会を開き、テレビ・ラジオでもその活躍が何度も取り上げられてきました。

 正規の販売に先立ち、親しい人たちに謹呈されたこのCDにはメッセージが添えられていて、その中で「このCD制作は自分の終活の一環で、早めのお別れの挨拶と、人生の旅路で出会った人々への感謝の気持ちを託したもの」だと述べています。

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目次

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバー・年間購読のご案内

FAX購読申込書

次号予告・編集後記 小池 , 米沢
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BCPについてフォーカスした特集はいかがでしたか。「事業継続が地域のためである」。皆さんにとっては至極当たり前に聞こえるかもしれないこの一文に、私は胸が衝かれました。だって、そういう仕事って多くないはずですから。それでも、そう言い切ってしまえる訪問看護っていかに大切な仕事なのか、と思うんですね。大事です、BCP。そういえば、うちの会社ってどうなっているのだろう……。▶今回、「緊急特集」と称し、新型コロナ対応に関する実践もご紹介いただきました。まったくタイプの異なる内容ですが、いずれの原稿からも不確実性が高い状況下で意思決定していく姿が見え、心動かされました。……小池

BCPの考え方は、なにかの安定的な運営を担うすべての人にとって役立つものだと思いました。一方で、緊急特集のお二人のように、ものすごいスピードで体制をつくる行動力にも感動。そして岩本さんのように「これでよかったのか」という迷いに恐れず向き合うことが、本当の強さだと感じました。以前、社の机で謎の美容グッズ大量備蓄をしていた先輩がいたのですが、思い返せば「出産、子育て、そして月刊誌」という被災(?)後、BCP的に勤務環境を整えた結果だったのかもと納得しました。ただ、明らかに消費量を踏まえない過剰備蓄でしたが……。……米沢

基本情報

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訪問看護と介護
25巻8号 (2020年8月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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