訪問看護と介護 19巻11号 (2014年11月)

特集 これが私の訪問看護だ。—実践にみる「在宅看護学」の原点

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訪問看護に高度で幅広い期待が寄せられる今、その実践者の“知”を互いに共有し、後進に伝え、さらに深めていくための「在宅看護学」の確立が待望されます。

しかし、訪問看護(在宅看護)は、あまりに幅広い機能を含むため、見える化も、体系化も、評価もしづらいのが宿命です。

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 訪問看護サービスが制度化されたのは、今から30年ほど前のことでした。日本経済は右肩下がりになり、わが国は高齢化社会を迎える時期にありました。

 訪問看護サービスは、高齢者がもつ「老後には住み慣れたわが家での生活を最期まで続けたい」という希望を受けとめることができる、効果的なサービス法であると認められ、その後の政策において重要視され、看護師養成カリキュラムのなかにも統合科目として配置されています。

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 世界で最も高齢化の進んだ日本において、在宅療養者を支える訪問看護に対する社会の期待は大きい。本特集の実践集にみられるように、疾患があっても自宅で療養できるよう、これまでも、これからも、訪問看護に従事する看護職たちは、専門性を発揮しながら利用者や家族に寄り添い続けていくであろう。

 こうした訪問看護の活動は、利用者の健康状態をその人なりの条件のなかで最大限改善していくことに加え、介護にあたる家族の生活の充実も視野に入れて実践されているように思う。個別事例を積み上げてみると、すばらしいケアが数え切れないほどあるだろう。

【私の実践集】

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 私が新卒で就職したのは消化器外科の病棟で、大半ががんの患者さん。手術をして退院されても再発して入退院を繰り返し、病院で亡くなる方も多くおられました。

 日勤が終わると、プライマリーの患者さんのベッドサイドに腰かけてよく話を聞いたのを思い出します。「もう家に帰れない」と感じている患者さんの心のうちを知り、「今の状況なら、家に帰って家族と過ごす時間がもてるかもしれないのに……」と感じることがよくありました。そして、いつか訪問看護師として、家で看取りを支えたいと思うようになりました。

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 私は、看護短大卒業後、新卒の21歳で看護師として精神科単科の病院に就職した。その後10年間、2か所の精神科病院で勤務をした。途中、福祉と医療の連携の難しさを感じ、その橋渡しができるようになるために、社会福祉士の資格を取得した。

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 私が看護師になったのは今から30年前。東京都世田谷区にあった国立病院附属看護学校を卒業し、同系列の国立病院の小児科に就職しました。そこには、生まれてから何年も家に帰れず入院している子どもたちや、病院から学校に通う子どもたちがいました。

 先天性の糖尿病でインスリンの教育入院中に、食堂から食パンを盗み、3斤分はあろうかという食パンを耳だけ残してくりぬいてトイレで食べていた男の子。慢性腎不全で入院中、明日は透析の日だったのにその1日が待てずに、チョコレートを食べて亡くなった子。「いい子になるよ、いい子になるよ」と言いながら涙を目にいっぱい溜めて腰椎穿刺に耐えていた白血病の女の子。この子たちとの出会いが、「病」というものの理不尽さを私に教えてくれたのかもしれません。

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 私が訪問看護を始めたきっかけは、当時勤務していた病院の院長からの打診だった。地域で第1号となる訪問看護ステーションの開設準備中に、「看護師のなかでも『この人なら』と思うメンバーに声をかけたが誰もやりたがらない。管理者をやってもらえないか?」と頼まれたことにさかのぼる。

 当時私は「地域医療は住民こそが主人公」を理念に掲げる50床の国保病院の健康管理室に勤務し、おもに健康管理活動を行なっていた。病院長からのオファーに「えぇー! 私が訪問看護?」とたいへん戸惑った。そして「今、当院にとって地域住民から求められる活動で優先順位が高いのは、健康管理か在宅支援のどっちだろうか?」と真剣に考えた。自分がやりたいのは健康管理活動だけど、「求められているのは在宅支援だろう」と考え、「やれと言われるのなら、やってみよう」と腹をくくったことに始まる。37歳のときだった。

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 広島県安芸地区は瀬戸内海沿いにある広島市の東に位置し、旧海軍兵学校がある江田島町や、なでしこジャパンに送られた筆の生産で有名な熊野町、マツダ自動車を基幹産業とする府中町などを含む3市4町にまたがっている。高齢化率は21・4〜38・8%と幅広く、島しょ部・沿岸部・山間部・市街地というさまざまな地域を含む。安芸地区医師会総合介護センター(以下、当センター)は、4つの訪問看護ステーションと併設の居宅介護支援事業所、本部に訪問介護ステーションと福祉用具貸与事業所がある。現在のスタッフ数は114人(常勤33人・非常勤81人)で、訪問看護の利用者は月平均365人である。

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 訪問看護を始める前の私は、総合病院の消化器外科に長く勤務していました。今は訪問看護師として、在宅で療養する多くの方々にケアを提供するために奔走している日々です。施設と在宅とでは療養環境や目的が違うことから、それぞれに療養に対する考えがあり、看護があると思います。しかし、患者さんの思いはどうでしょうか。病気を治したい、少しでも元気になりたいという思いは、どこで療養していても同じなのではないでしょうか?

 病院勤務時代のあるときのこと。1人の初老の男性が、食道がんの手術目的で入院してきました。お孫さんに話しかけるやさしそうな笑顔が、とても印象に残る方でした。手術を終えて、気管切開のまま一度は退院しましたが、半年後には再入院となりました。そのときの表情は笑顔もなく、とても暗かったのです。半年間の延命の代わりに、言葉だけではなくどれほど多くのものを失くしたのだろうかと考えさせられました。

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 もう30年も前のことです。看護師になり初めて担当した患者さんは、30歳の女性で胃がん末期の方で、出産後3か月でした。

連載 マグネットステーション インタビュー・50

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看護師が常駐し夜勤もしていて、医療依存度の高い人から看取りまで対応可能なショートステイ。おそらく日本初の稀少な試みである。原田さんは、訪問看護師としての20年の経験から、3年前、このショートステイを開業した。「ここなら、また泊まりに来たい!」と利用者さんに言わせているのは、そうした医療上の条件ばかりではない。徹底した「在宅生活の再現」と「社会参加」を両立し、看護との連携にもとづく質の高い介護を提供しているからだ。原田さんが提案する“未来型ショートステイ”の可能性と課題を取材した。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・62

「地域力」を引き出す 秋山 正子
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 団地のなかで「暮らしの保健室」をオープンして丸3年が過ぎました。「石の上にも3年」とはよくいったものです。ご近所の様子も徐々にわかってきました。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第40回

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 先日、第78回日本心理学会(京都市・同志社大学)で、行動の観察に関するシンポジウム「観察から論文へ—行動の時間をいかに記述するか」を開いたら、10以上の別のシンポジウムがあったにもかかわらず満員になった。

 これは、とても意外なことだった。というのも、心理学では従来、質問紙調査や実験を中心とした研究が多かったからだ。実際の現場に出て、そこで起こる行動をひたすら観察するなどというやり方は、関係する要因が多すぎて研究にならないと思われているのではないか。そう思っていたのだが、どうやら心理学者のなかにも、そろそろ実際の行動が気になり始めている人が増えているらしい。

連載 一器多用・第42回

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 今から30年ほど前のこと。父が、私も妹も大好きだったジュースを買ってきてくれました。「いつもよりすごく安かったから、1ダース買ってきたよ」と得意満面。兄妹そろって大喜びし、「お父ちゃん、ありがとう!」とレジ袋を開けたところ、似ているけれど何かが違うのです。コピー商品といえばまだ聞こえがよいのですが、要はいわゆる“パクリ商品”を買ってきてしまったのです。私たちのテンションは一気に下がり、母にも「まったく騙されやすいんだから……」と言われて、父は無言のまま部屋を出ていってしまいました。私たちを喜ばせようとしてくれたのですから今思えばありがたいのですが、当時は幼心に「偽物はイヤだ!」と駄々をこねてしまいました。自分も子をもつ身となって父の気持ちを思うと、心のなかで「あのときはごめんなさい」とつぶやいています。

 こうした“パクリ問題”は、今も止まないばかりか、ますますエスカレート。商品やキャラクターなどにとどまらず、海外ではディズニーランドの劣化コピーのような遊園地が話題になりました。これはお笑いネタにされるほどの出来の悪さでしたが、なかには笑えないレベルのものも。iPhoneでお馴染みのApple社公式ストアが、店員の制服から内外装のデザインなどまで誰もがそれと見まごうほどのクオリティで完璧にコピーされた話は記憶に新しいところ。STAP細胞問題でクローズアップされた“コピペ”もその一種と言えましょう。インターネット社会になって、われわれにも他人事ではありません。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第44回

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母さん 認知症になって父さんはいろいろなことが変わってしまったけど、「そこは変わってもいいんじゃない!」って、いちばん思うところが変わってないのよね。

杏里 それって、もしやごはんに関することじゃない?

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ニュース—看護と介護のこのひと月

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次号予告・編集後記 杉本 , 栗原
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医療ニーズの高い方の「泊り」のサービスの重要性への指摘が続いています。自費でのお泊りデイサービスが拡がり、法整備されるまでの基準づくりが各自治体で進められてもいますが(p.902に関連ニュース)、(療養通所介護は別として)看護体制は手薄です。9号巻頭の柴田さんはケアつき住宅への短期入居で、10号巻頭の櫻井さんと本号特集の松木さんは複合型サービスで、そのニーズに応えようとしています。一方、本号巻頭の原田さんが挑むは単独型ショート。デイより報酬が安いにもかかわらず、看護職を24時間常駐させて看取りにも対応します。原田さんが提案する「機能強化型ショートステイ」は効果的かつ現実的です。“箱モノ”サービスに訪問看護の発想をどう活かすのか。その実際を巻頭で詳しくお伝えしています。…杉本

小誌編集室に配属されてほぼ半年。「訪問看護ってなんだろう?」という疑問に、ずばり答えてくれる特集を担当させていただきました。編集作業を終えてみて感じるのは、その幅広さと奥深さ、そしてこれからもっと広く深くなっていきそうというわくわく感。利用者さんのいろいろな生き方、死に方を支えるために、訪問看護師さんたちがとった方法は千差万別で、「『これ』が訪問看護だ!」というより「利用者と実践者の数だけ訪問看護がある」というほうが正しいのかもしれません。そのエッセンスを引き出し、多くの人に伝わる言葉やデータに変えていくこともまた、刺激的でおもしろい取り組みだと改めて感じました。11月の在宅看護学会が楽しみです!…栗原

基本情報

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訪問看護と介護
19巻11号 (2014年11月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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