特集 これが私の訪問看護だ。—実践にみる「在宅看護学」の原点
【私の実践集】
➏在宅にあるたくさんの笑いを糧に次のステップへ
阿部 智子
1
1訪問看護ステーションけせら
pp.877-879
発行日 2014年11月15日
Published Date 2014/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688200029
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
訪問看護を始める前の私は、総合病院の消化器外科に長く勤務していました。今は訪問看護師として、在宅で療養する多くの方々にケアを提供するために奔走している日々です。施設と在宅とでは療養環境や目的が違うことから、それぞれに療養に対する考えがあり、看護があると思います。しかし、患者さんの思いはどうでしょうか。病気を治したい、少しでも元気になりたいという思いは、どこで療養していても同じなのではないでしょうか?
病院勤務時代のあるときのこと。1人の初老の男性が、食道がんの手術目的で入院してきました。お孫さんに話しかけるやさしそうな笑顔が、とても印象に残る方でした。手術を終えて、気管切開のまま一度は退院しましたが、半年後には再入院となりました。そのときの表情は笑顔もなく、とても暗かったのです。半年間の延命の代わりに、言葉だけではなくどれほど多くのものを失くしたのだろうかと考えさせられました。
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.