訪問看護と介護 13巻12号 (2008年12月)

特集 ネットワークが地域を支える

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「多職種」「情報の共有」「顔の見える連携」……。さまざまなキーワードを携える「ネットワーク」という言葉。先進的なITや斬新なアイデアに基づき,全国各地で人と人を結び,地域を支えるネットワークがめざましく稼動しつづけた一年でした。創設,運営してきたメンバーがどう考え,動いてきたのか,そして今後の道筋について特集します。

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はじめに

 在宅医療(介護)は,診療所,訪問看護ステーション,薬局,病院,ヘルパーステーション,居宅介護支援事業所,介護施設など,さまざまな医療(介護)サービスが連携するチーム医療である。

 筆者は,9年前の1999(平成11)年9月,鹿児島市内に在宅医療専門のクリニックであるナカノ在宅医療クリニックを開設した。しかし,筆者は在宅医療をやりたくて開業したのではない。在宅医療のシステムがつくりたくて,開業したのである。

 チーム医療の質を上げるには,各参加メンバーのクオリティーを上げる教育が重要なことはいうまでもないが,いかにして良質な地域連携システムを構築するかがキーポイントとなる。筆者はそのためのツール(道具,手段)として,IT(Information Technology;情報技術)をフル活用したいと考えた。

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長崎在宅Dr. ネットとは?

 「長崎在宅Dr.ネット」(理事長:藤井外科医院,藤井卓先生)は,2003(平成15)年3月に長崎県長崎市およびその近郊で発足した在宅医療に関心のある医師の集まりで,会員数は約138名(2008(平成20)年4月現在)となっています(図1)。2008年1月には,NPO法人としての認証・登録を行ないました。

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はじめに

 現在,自宅で死を迎える人は1割程度にとどまる反面,病院で亡くなる人は8割以上にのぼる。その背景として国民皆保険制度と医療技術の向上,核家族化や共働きによる家族関係の変化,労働人口の都市集中化と地域共同体の崩壊による社会変化などが考えられる。

 こうした変化は,必然的に病院という場において看護職が介護や看取りを担わなければならない状況をつくりだしてきた。

 一方,本来自然現象である死は,家庭から姿を消し,家族の介護力や看取りに関わる文化は急速に失われてしまった。

 本院は今から10年前,病院の管理下で最期を迎えるのではなく,自宅で医療処置を受けながら自分の人生を生きることを支援するために,在宅療養支援診療所として開設し,現在は年間約200人(在宅看取り率84%)の看取りに関わっている。

 昨今の社会情勢の変化から,再び在宅での看取りが見直されるようになってきた。団塊世代が寿命を迎える2038年問題を前に,在宅支援を行なう医療機関や介護事業所が増加するなど,遅ればせながら体制は整いつつある。

 各地で病院と在宅療養支援診療所をはじめとする地域の診療所との連携が行なわれてきているが,当院ではそのことはもとより,チームケアのなかでの専門職同士の連携,特に看護と介護の連携に重点を置いてきた。本稿ではこの看護と介護の連携を中心に紹介していきたい。

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顔の見える連携のために

 われわれ乙訓医師会は,1995(平成7)年より京都府の南西部,乙訓地域(向日市・長岡京市・大山崎町)において,地域医療の質の向上と顔の見える連携をモットーに,さまざまな試みを行なってきた。そのなかで,地域医療にかかわる多職種(他の専門職)とのネットワークは最重要課題でもあった。

 在宅療養手帳委員会は,その名の由来である在宅療養手帳を連携の要として活用し,発展してきた。現在,この委員会は保健・医療・福祉・介護の分野で,他に類を見ない,広域にわたる現場の専門集団となり,乙訓の介護・福祉も含めた地域医療を支える重要な構成要素となっている。

連載 マグネットステーション インタビュー・12

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「選ばれるステーションになる」

木村 理念や運営方針についてお聞かせください。

池田 理念は「その人らしさを大切にする看護の提供」,基本方針が「安全安楽な看護の提供と自立への支援」「地域の保健,医療,福祉サービスとの連携」です。そして今年度の目標は「選ばれるステーションになる」。

連載 訪問看護 時事刻々

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 バラク・オバマ氏がアメリカの第44代大統領になることが決まった。初めてのアフリカ系大統領に,時代の変化を感じる人も多かろう。アメリカ発の世界経済の大混乱のなかで始まる新政権が,アメリカの強いリーダーとしての姿を復活させるのか,普通の国としてのアメリカに変化するのか,オバマ氏の「チェンジ」の意味がいよいよ明らかになる。

 選挙の過程は興味深い。実は,この大統領選挙は勢いや新鮮さや演説のうまさではなく,インターネットを駆使したマイクロターゲティング戦略が功をなしたといわれている。今年の夏,私はワシントンの選挙キャンペーンセミナーに参加した。そこでは,オバマ陣営のマイクロターゲティング戦略が民主党予備選の勝利につながったことが盛んに紹介されていた。

連載 わたしのことをわたしから・24

まったく思いもよらない事態 冨士 雄大
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ふつうに生活しているように見えるかもしれないけれど,ここにいたるまでには幾多の困難があり,現在もこれからも問題があります。あまり知られていない私の病気のことを書きました。わかってもらえたらうれしいです。

連載 高齢者虐待にどう対応するか・9

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はじめに

 虐待ケースにおいて,被害者との信頼関係を構築することは非常に重要です。被害者は,多くの場合,失意にさいなまれており,孤独な状況で耐えています。そこに,信頼できる支援者が現れ,「その支援者は必ず味方になってくれる」という確信を被害者が得ることは,通常,決定的な援助基盤となります。今回も模擬ケースを通じて考えてみたいと思います。

連載 ヒト・モノ・バをつなぐ認知症ケア―今日のデザインの役割・6

自立支援とその周辺・2 山崎 正人
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本人―自立支援―道具

●行動と記憶の関係

 2008(平成20)年9月26~28日,香川県高松市で第9回日本認知症ケア学会大会が開催されました。その特別講演はもやもや病と闘う整形外科医,山田規畝子先生の「高次脳機能障害を生きる医師として」。山田先生は,もやもや病で3度の脳出血を経験され,記憶障害,半身麻痺,半側空間無視と再発ごとに障害が増えています。

 頭で考えることができても体が動かない,行きつけのスーパーで買いたいものが探せない。これらの戸惑いを医師として科学的に説明づけたいと,高次脳機能障害や神経心理学などの医学書を読まれました。その一冊に「生物の行動は基本的に全部記憶」1)という文章があり,その意味を知ったことで自分の障害が整理されたそうです。以後,障害を受け入れ,同じ障害をもつ人たちのカウンセリングを中心に医療に携わっているとのことでした。

 もやもや病と認知症の原因は異なります。しかし,高次脳機能障害として類似することも多く,その観点からも話をされました(司会者代読)。

連載 100歳までの道のり・3

「はなぞの福祉寮」での生活 城 美奈子
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 1人暮らしに区切りをつける時期がきたことを知らされた私は,母の施設での生活についてケアマネジャーと話し合いました。その数日後,「町の福祉寮の部屋が1つ空いたので,入居が可能です」と,連絡がありました。タイミングを逃すことはできません。入居手続きは義兄に出向いてもらい,その後のことはすべて私が引き受けるということで役場との調整を済ませました。

 このときには,兄弟姉妹で意見の相違があり,心情的に辛い思いをしました。それは,婿や嫁といった義理の意見が入り,さらに金銭と責任が絡むからでした。

連載 訪問看護ステーションの現場をあるく・12

東京へ 川越 博美 , 宮崎 和加子
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 1年間の全国行脚の締めくくりは,私たちの地元である東京です。大都市東京都には,訪問看護ステーションが約500か所あり,その全体像の把握はなかなか難しい現状ですが,訪問看護師不足のために,ステーションを統廃合している実態は全国と同様です。

 500か所ある訪問看護ステーションのうち,どのステーションを訪問させていただくか悩みました。これから訪問看護ステーションが力をつけていかなければならない分野はいろいろありますが,認知症と末期がんの訪問看護が特に重要ではないかと二人の意見が一致しました。

連載 ほんとの出会い・33

宇宙と大地と宮沢賢治 岡田 真紀
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 東京オペラシティの近江楽堂で素敵な音楽会があった。近江楽堂は私が好きな小さなホール。礼拝堂を思わせるアーチ型の天井があり,聖母像がたたずみ,演奏者と同じ平場に120ほどの客席が並ぶ。そこにいるだけで心が落ち着く空間である。

 音楽会があったのは9月21日,宮沢賢治の命日だった。この欄でも一度紹介したことがある“歌唄い”,川口京子さんがリードオルガンの伴奏で宮沢賢治ゆかりの歌を歌った。そのオルガンは盛岡郊外の骨董店に何年もたなざらしになっていたのが修復されてよみがえった英国製のもの。前回の音楽会では「しゃぼん玉」や「赤い靴」など懐かしい童謡の一語一語の奥深さに聴き入ったのだが,今回は宗教性とでもいうのか川口さんの別の魅力を感じた。

連載 自宅で死んでみませんか・3

癌 その三 皆川 夏樹
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癌 その三

小杉Tさん(男性)、昭和一三年生まれ、享年六八歳

 小杉Tさんは、まだ六八歳と比較的お若い方でしたが、肝臓癌が脊椎に転移し、下半身が全く動かない状態で病院から退院、ご自宅で亡くなることを考えて、私どものところに訪問診療・訪問看護の依頼となりました。もっとも、ご本人は認知症が進んでおり、状況の理解はできていない、ということで、奥様のご希望、という形でしたが。

 肝臓癌に対しては、約一年前に発見され、治療を行なってきていましたが、転移が進み、これ以上の打つ手がない、ということで、六月一二日に退院となりました。

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後期高齢者医療制度をどう評価するか

浅川 一昨年でしたか,後期高齢者医療制度に大賛成というポスターを,日本看護協会が出しましたね。組織的な意見表明として画期的だったと思います。

萩原 ですから施行されたときも,私たちは淡々とその制度を受け止め,訪問看護を実践していくにはどうしたらいいのかを考え,研修等で制度をわかりやすく説明しました。

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「マグネットステーションインタビュー」の始まり

 2007年春,「訪問看護ステーションや訪問介護ステーションの経営は厳しく,採算の合わないステーションが多いといわれている。なぜ,経営が上手くいかないのか。経営が成功しているといわれる訪問看護ステーションとの差はどこにあるのだろう」。こう考えたのが発端で,その後,「訪問看護や訪問介護で成功しているといわれるステーションの管理者をインタビューする。そのインタビューは日々経営に悩んでいるステーション管理者のヒントになるはずだ」という考えに至りました。

 さらに,「成功しているステーションは在宅医療や看護,介護のサービスを受ける人だけでなく,そこで働く職員も引きつけて離さないでいる。そこで成功しているステーションを“マグネットステーション”と呼び,そのインタビューから導き出した成功の秘訣を読者に提示することで,全国の訪問看護ステーションがよりいきいきするようなサポートをしよう」というコンセプトのもと,連載「マグネットステーションインタビュー」が始まりました。

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 2006(平成18)年4月に「在宅療養支援診療所」の制度が新設され,在宅患者への24時間365日の対応が求められるようになった。医療機関の機能分化,社会的入院の解消,患者の権利やQOLを尊重する流れなどから,在宅医療への期待はますます高まっている。

 しかし,24時間365日対応を実現するための診療所の運営ノウハウなどもまだ十分に確立されているとはいえず,医療業界全体における人材不足や医療者の疲弊という現実は,地域医療の持続的発展にも影を落としている。

シリーズ クオリティの向上を!―訪問看護の充実をめざして・2

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新人看護師の育成

角田 まず新人の訪問看護師をどう育成しているか,実際の取り組みをお話しいただけますか。

古橋 入職してからの教育については積極的に対策を立てているほうだと思います。技術・知識の面についてのチェック表を用いて1年間の目標を立て,その達成をチェックしています。ただこれは技術・知識的なもので,たとえば患者さんへの説明の仕方,医師や介護職との連携の仕方,接し方など,ケースを通じてしか教えられないことが多いんですね。人数が少なかったときには,ほとんど私が同行訪問して教えていたのですが,現在は各スタッフに分担してもらっています。

ほっとらいん ふろむ ほんごう

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 ALSなどの難病によって,話すことや書くことができなくなった患者の意思伝達装置では,日立製作所の「伝の心」が知られている。「伝の心」は,ディスプレイ上に表示された文字盤やメニューの上を,カーソルが自動的に動くように設定してあり,文字盤やメニューの希望の箇所にカーソルが移動したときに,身体の一部をつかってスイッチを押すことで,項目を選択し,意思を伝えていくことができる。

 「伝の心」のほかにも,NECの「オペレートナビ」などのパソコン操作支援ソフトが開発されている現在では,パソコン初心者の場合→「伝の心」,すでにパソコンを知っている・使っている方→「オペレートナビ」という使い分けがされ,市場を2分している状況となってきている。今後はパソコンを使い慣れている患者が増えていくであろうし,ITを利用したコミュニケーションの可能性はさらに広がっていくに違いない。

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 看護実践能力向上のためのシリーズとして,排泄援助に関するDVDが2本発刊された。

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編集後記 富岡 , 伊藤
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●おかげさまをもちまして13巻も12号を迎えることができました。読者の皆様に感謝申し上げます。今号の特集テーマは“ネットワーク”。患者と医療・介護提供者,提供者のなかの各職種,さまざまな関係において情報をいかに共有していくかが重要事項となっています。その実践をご参考ください。また,シリーズ「クオリティの向上を!」は,新人教育と管理者教育についての座談会です。特別記事「“マグネットステーション”に共通するもの」にも記載がありますが,管理者へのフォローというものの重要性を強く感じました。……富岡

●この1年は「マグネットステーションインタビュー」で,インタビュアーの木村氏と12のステーションに伺いましたが,インタビュー開始から5分もたたないうちに,行なわれている看護のすばらしさに目をみはるということのくり返しでした。一方,川越/宮崎両氏による連載「訪問看護の現場をあるく」では,全国のステーションの実践を紹介しつつ,そこで抱える問題をもとに訪問看護の明日に多くの問いかけを発信していただきました。他の連載や特集も含め,「来年こそは!」と,期待がふくらむこの1年であったと思います。……伊藤

基本情報

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訪問看護と介護
13巻12号 (2008年12月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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