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I. はじめに
本誌への論文投稿数は1995〜2016年で合計52編であり,その内訳は原著18編,総説3編,研究報告12編,実践報告7編,資料5編,短報1編,事例報告3編,その他3編である.1995〜2014年までのデータは「日本看護診断学会20周年記念誌」に掲載された『看護診断にみる研究史』(黒田,2015)から引用した.経年的にみても年に2〜3編と少ない.
編集委員会の役割は,看護診断に関連する論文の投稿数を増やし,看護の質向上に寄与する論文を1つでも多く社会に公表することである.看護診断に関連する研究とは,看護診断に至るアセスメントや看護診断の妥当性,信頼性,看護診断にもとづく介入の妥当性や成果の評価などがその対象となるが,今回は臨床における看護実践で身近な事例検討会やケースカンファレンスの取り組みを研究としてまとめる方法として,事例報告・事例研究に焦点を絞り,これらの理解を深めることを目的に今大会(第23回日本看護診断学会学術大会)において交流セッションを企画した.
日々の看護実践では,さまざまな疑問や困難あるいは効果的であったことなどが事例検討会やケースカンファレンスで検討されているが,検討内容は個々の看護師の経験として蓄積され,論文として公表されることは少ない.しかしこれらの個々の事例が貴重な研究の芽でもある.1つひとつの事例を丁寧に振り返りひもとくことで,疑問や困難,あるいは効果の背景にある共通的な現象を見出すこともできる.見出された共通的な現象は,看護実践における新たな知識でもある.この新たな知識が論文として公表され,類似する疑問や困難に遭遇したり,効果的な看護介入を模索したりしている看護職がこれらの知識を共有することが可能になれば,看護の全体的な質向上にもつながると考える.貴重な臨床の看護実践をぜひ事例報告や事例研究の論文として公表していただきたいと考えるため,今回交流セッションの参加者の要望を受け,プレゼンテーションの一部を取り上げて本誌に報告することにした.
なお,本稿では事例とは何か,事例報告と事例研究の違いや関係,事例報告を論文として投稿することに焦点を当てて述べる.
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