耳鼻咽喉科・頭頸部外科 89巻11号 (2017年10月)

特集① 明日から役立つ頭頸部領域の核医学—最新情報

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POINT

●頭頸部がんはPET/CTの登場で,より高い精度で診断できるようになった。

●強度変調放射線治療(IMRT)では,複雑な形状の照射野を設定できる。

●PET/CTシミュレーションとIMRTで,病変への確実な放射線照射を実現できる。

●さまざまな代謝・分子情報を反映するPET製剤が開発されており,PET分子イメージングと放射線治療の組み合わせによって,さらに効果的な治療が期待できる。

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POINT

●頭頸部がんでは治療法が多様化し,新たな予後予測因子が求められている。

●化学放射線療法では腫瘍容積は重要な要素となるが,FDGの集積を示すパラーメータの1つ,腫瘍代謝容積(metabolic tumor volume:MTV)が化学放射線療法の予後予測因子として期待されている。

●また,近年,不均一性の評価におけるテクスチャー解析が普及しつつあり,がん種によっては不均一性の指標が予後予測因子の1つとなる可能性がある。

●チロシンキナーゼ阻害薬の登場により,切除不能甲状腺がんに対して化学療法が多く行われる可能性もあり,今後甲状腺がんにおけるFDG-PETの役割が再検討される可能性もある。

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POINT

●PETはCRT後の治療効果判定に有用であり,特に高い特異度は救済手術の判断を行う際の一助となる。

●治療効果判定目的のPETはCRT終了後10週以降に行い,残存が疑われる場合には救済手術を考慮すべきである。

●頸部リンパ節は原発巣に比べ偽陰性を生じやすく,PET陰性であったとしても注意深い経過観察が必要であり,必要に応じて頸部エコーなど他の画像検査も併せて施行する。

●CRT後のplanned NDについては,PET陰性であれば不要との意見や,N stage進行例ではplanned NDを行うべきという意見があり,いまだ議論が分かれている。

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POINT

●PETは微量の薬剤分布を画像化でき,分子イメージング,機能画像と位置づけられる。

●がんに用いられるFDG以外のイメージング薬剤として,頭頸部領域では,低酸素イメージングプローブと核酸代謝イメージングプローブについての研究がなされている。

●いずれも,がん細胞が有する特異的な性質,増殖能を反映するマーカーとして期待されている。

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POINT

●甲状腺疾患の核医学診断には,主として放射性ヨウ素あるいは99mTcO4が用いられる。前者の場合,通常ヨウ素制限が必要であるが,甲状腺中毒症の鑑別を目的とする場合には必ずしもその必要はない。

●中毒性結節性甲状腺腫では24時間の放射性ヨウ素シンチグラフィが必要なことがある。

●甲状腺がんの転移が強く疑われるのにもかかわらず,シンチグラフィにて放射性ヨウ素の集積を認めない場合は,FDG-PET検査の実施が望ましい。

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POINT

●頸部局所病巣(リンパ節転移,局所再発)は外科的対応が原則である。

●アブレーションとアジュバントを区別する。

●すべての放射性ヨウ素抵抗性症例が分子標的薬適応ではない。

●PETは有用であるが,PETのみで分子標的薬適応を決めることはできない。

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POINT

89Srによる内照射は,特に固形がん患者において骨シンチグラフィで陽性像を呈する多発の有痛性骨転移に有用である。

●外来で89Srを静脈内に1回投与するだけで,複数の骨転移病巣に対して疼痛緩和効果が得られるため,外部照射と比較して汎用性の高い治療である。

●全身状態のよい早期の骨転移例で,より効果が発現しやすい。

●3か月以上の期間を空けて,繰り返し投与可能である。

特集② 知っておきたい耳鼻咽喉科の在宅医療

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Point

●少子高齢化が急速に進行することにより,日常生活に支援を必要とする高齢者が大幅に増加することが予測される。

●地域包括ケアシステムは,「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステム」であり,地域ごとにその構築が推進されている。

●在宅医療はその役割から,地域包括ケアシステムで必要とされる「生活を支える医療・緩和医療」と,海外で推進されている病院レベルの治療・ケアを行う医療に分類される。

●かかりつけ医は在宅医療に対し積極的に取り組むことが期待される。今後は専門医も自らの診療の延長線上に在宅医療を捉え,地域医療の担い手と連携しながら,地域住民ができるだけ住み慣れた地域で生活することができるように支援することが望まれる。

耳鼻咽喉科医の在宅医療 田村 学
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Point

●超高齢化社会となった日本では,在宅医療を普及させることが肝要である。

●保険診療においては,訪問診療と往診とを明確に区別する必要がある。

●在宅医療においてnarrative based medicine(NBM)に基づく治療は大切な医療技術の1つである。

●在宅で看取りを行う際に必要な3つの説明には,①告知,②病状進行,③疼痛・栄養管理,がある。

オフィスで診る嚥下障害 西山 耕一郎
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Point

●慢性的に誤嚥が続いている軽度嚥下機能低下例では,患者自身はむせの自覚はないものの食事時間は延長し,食事量に変化がないにもかかわらず体重減少を生じていることが多い。

●オフィスで効率よく短時間で嚥下機能評価をするには,兵頭スコアを使用するのが一番よい。

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Point

●在宅の嚥下障害患者には,重症例やコミュニケーション障害例が多いため,患者の状態を勘案し,各人に適した対応・提案が必要である。

●在宅医療において,耳鼻咽喉科医が嚥下内視鏡検査などによる根拠に基づいた嚥下診療を行うことで,患者・家族の不安を解消し,リハビリテーションにつなげることができる。

●嚥下機能改善の訓練実施には,リハビリテーション専門職との協同が望ましい。

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Point

●生活期(在宅)においては,嚥下性肺炎予防を大前提としつつも本人と家族のQOLを最大限に高める視点でかかわり,嚥下機能だけではなく,利用者を取り巻く環境全体の評価も行わなければならない。

●本人や家族またはヘルパーによってリハビリテーションを継続できるよう指導し,介護保険サービスからの自立・卒業に向けて取り組むべきである。

●生活期の介入はすべてチームアプローチであり,有効な連携を構築することが重要である。

●「1対1」による訪問リハビリテーションは今後も重要な位置を占めるが,今後は,「1対多数」の集団指導のアプローチも求められている。

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欧文目次

あとがき 小川 郁
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 今年の夏も異常気象「低温と長雨」が話題になっています。発端は雨の少ない梅雨と台風5号でした。ノルーと名付けられた台風5号は,7月21日に南鳥島付近で発生した後,日本のはるか東の太平洋上を迷走し,29日には小笠原諸島に接近し,31日には「非常に強い」台風へと勢力を強めました。この時点で既に発生後10日を経過しています。その後,台風5号はゆっくりと九州に接近したのち,8月7日には室戸岬付近を通過し和歌山県に上陸し,8日に日本海へぬけて,9日に温帯低気圧となりました。つまり台風発生後,20日間にわたって猛烈な豪雨などさまざまな脅威を与え続けました。この台風は平均速度が遅かったため寿命の長い台風となり,寿命は1972年台風7号に次ぐ2位の記録となりました。ちなみに1972年台風7号は「断続した豪雨等による災害」として激甚災害に指定され,同年7月に発足した第1次田中角栄内閣にとっては発足早々の大規模災害となりました。今回の台風5号の通過が「低温と長雨」の始まりとなりました。例年に比べ本州への太平洋高気圧の張り出しが弱くなり,気温が低くぐずついた天気が続くことになりました。東京都心は8月になってから雨が21日間連続で降っています。7月下旬から北海道の北にオホーツク海高気圧が発生し,北東からの冷たい風「やませ」も吹いています。まさに「低温と長雨」で,東京都心の21日間連続の降雨は,8月としては1977年の22日間連続以来,実に40年ぶりのようです。

 さて,今月号の特集は「明日から役立つ頭頸部領域の核医学—最新情報」「知っておきたい耳鼻咽喉科の在宅医療」の2本です。核医学は近年の画像診断としては最も期待されている領域ですが,FDG-PET/CTをはじめとして次世代の甲状腺疾患の核医学診断および放射性ヨウ素内用療法89SrCl2による骨転移治療など,進歩の著しい領域ですので,是非この際に知識を整理しておきましょう。また,超高齢社会を迎えたわが国では在宅医療も重要な課題です。10月号が発刊される頃に異常気象がどのようになっているのか想像もできませんが,「低温と長雨」の反動でさわやかな秋になっていることを期待したいと思います。食欲と読書の秋です。是非,ご一読いただきこれからの日常臨床の参考にしていただければと思います。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
89巻11号 (2017年10月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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