耳鼻咽喉科・頭頸部外科 88巻2号 (2016年2月)

特集① 走り出した舌下免疫療法—現況と展望

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POINT

●スギ舌下免疫療法が保険収載となり1年が経過した。かなり慎重に行われており,重篤な副反応は報告されていない。

●スギ舌下免疫療法は,確実にスギ花粉症の診断をつけてから行う。2年間継続して行うと治療効果は70%程度と報告されている。海外データの有効抗原投与量のメタ解析結果からも,スギ舌下免疫療法は2年間継続したほうがよい。

●治療効果を予想する臨床マーカーはまだ開発中である。治療効果を判定するマーカーも,いろいろ報告されているが,すべてが不十分である。

●舌下免疫療法の作用機序として,阻害抗体の誘導,制御性T細胞(Treg)の誘導が有力視されている。

●免疫チェックポイント機能(PD-1,PD-L1)も重要な役割を担っている可能性がある。

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POINT

●舌下免疫療法では重篤な副作用がほとんどないものの,副作用そのものは軽度なものを中心に,皮下免疫療法より多く発現する。

●副作用の発現時期に関しては,全体の70%程度が開始後1か月以内に発現している。

●重篤な副作用の兆候として腹部症状を見逃さない。

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POINT

●短期間に自然改善が得られにくいアレルギー性鼻炎では,アレルゲン免疫療法が唯一自然経過を改善する治療として期待されている。

●全身的で重篤な副作用が少なく自宅での投与が可能な舌下免疫療法の抗原エキスが市販されるようになった。

●アレルギー性鼻炎の正確な診断,原因検索後に,患者にメリット,デメリットの十分な説明をし,インフォームド・コンセントを得て開始する必要がある。

●多くは治療の必要がないものの副作用の局所における発現頻度は高く,全身的な副作用も皆無ではなく,自宅で行う治療のため医師のみでなく患者にも副作用についての十分な説明が必要である。

●今後12歳未満の小児への適応拡大が望まれる。

●医師は一定の学会主催の講習会,あるいは学会が監修したe-learningを受講後,各製品について企業のe-learningを受講して舌下錠の処方権を得ることができる。

特集② がん免疫療法のブレイクスルー—免疫チェックポイント阻害薬

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Point

●1987年にCTLA-4分子,1992年にPD-1分子がクローニングされ,1990年代にこれらの分子がT細胞を抑制する方向に働く補助刺激受容体であることが解明された。

●1996年に動物モデルにおいてこれらの分子をモノクローナル抗体でブロックするとT細胞が活性化され抗腫瘍効果を発揮することが示された。

●本剤はT細胞上の共抑制受容体である免疫チェックポイント分子を抗体でブロックし,T細胞の活性化を持続させて癌を攻撃させる薬剤である。

●本剤の投与により自己免疫疾患様のimmune related Adverse Event(irAE)が報告されている。

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Point

●悪性黒色腫(メラノーマ)において2種類の免疫チェックポイント阻害薬〔ニボルマブ(nivolumab)・イピリムマブ(lpilimumab)〕が承認されている。免疫チェックポイント阻害薬は非小細胞肺がんにおいて承認が待たれる状態にあり,ほかのがん種でも開発が進められている。

●抗PD-1抗体であるニボルマブはT細胞の活性化を増強し,抗腫瘍効果を示し,抗CTLA-4抗体であるイピリムマブは腫瘍特異的CTL(細胞障害性T細胞)への抑制的シグナルをブロックし,抗腫瘍効果を発揮する。

●イピリムマブやニボルマブには免疫チェックポイント阻害薬特有の有害事象である,免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)が認められ,これに対する対応は重要である。

●ニボルマブやイピリムマブ以外の免疫チェックポイントを標的とした治療開発が始まっており,治療選択の広がりが期待される。

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Point

●頭頸部がんは免疫抑制による疾患である。

●再発・転移頭頸部がんに対しても免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示され,現在第Ⅲ相試験が進行中ある。

●免疫療法の今後の展開として,放射線療法との併用が挙げられる。

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Point

●多くの悪性腫瘍において免疫チェックポイント阻害薬の効果が確認されている。

●免疫チェックポイント阻害薬の有害事象は自己免疫疾患類似の病態を示す。

●特徴的な有害事象の管理が免疫チェックポイント阻害薬を用いる鍵である。

●多職種による診療連携が必須である。

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今日の鼻副鼻腔内視鏡手術の理論体系を見事に確立

 300頁余を擁する本書は,鼻・副鼻腔あるいは関連領域の疾患に関する外科的治療について解説した,国内最高の教科書といえる。後世に残る歴史的なstate-of-the-artである。書評を依頼され読んでいくうちに,自分にフルボディのビンテージの赤ワインを味わう資格があるのかと,自問自答するはめになった。そのため,小職が多忙な仕事の合間を縫い時間をかけて熟読するのに2か月を要した。その理由には,二つの大きな要素がある。第一の理由は,本書が単なる内視鏡を用いた鼻副鼻腔手術の技術的な解説書ではなく,高橋研三先生に端を発し高橋良先生に受け継がれ,多くの東京慈恵会医科大学の諸先輩の長年の努力により,熟成され築かれてきた集大成の結実であることをひしひしと感じたからである。第二の理由は,臨床医学としての鼻副鼻腔手術の技術革新に貢献する手法として,本書には鼻副鼻腔の機能解剖に関する研究の歴史と深い造詣が基盤にあり,東京慈恵会医科大学方式と謳われる今日の鼻副鼻腔内視鏡手術の理論体系が見事に確立されている点である。素晴らしい成書であると賞賛し感嘆するほかない。

 各論に少々触れてみると,編者の森山寛名誉教授が述べておられるように,内視鏡下鼻内副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:ESS)を志す若手の耳鼻咽喉科医から,症例経験の多い術者まで,幅広く,座右の銘として使える仕様になっている。付録のDVDは,解説書の理解を容易にし,その情報が2次元的に読者の脳に入ってくる。

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はじめに

 側頭骨悪性腫瘍は比較的稀な疾患であり,発生頻度は100万人に1人であると報告されているが外耳道原発の癌はさらに少なく1)日常診療で遭遇することは稀である。初期の外耳道癌は難治性外耳道炎などの炎症性疾患と鑑別困難で,早期診断が難しいことが多く2),統一された病期分類や手術方法は定まっていない。また,われわれの渉猟しえた範囲において本邦で外耳道癌根治切除後の聴力予後を検討した報告はない。今回われわれは,比較的早期の外耳道癌に対して中耳温存手術を施行した10症例を後向きに検討した。

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はじめに

 高齢者における後天性真珠腫は長期間ほとんど進展のない症例もあり,保存的に経過をみることも少なくない。しかし手術を行わない場合には脱落する場合が多いため,同一施設において長期間保存的に観察できる例は思いのほか少ないと考えられ,さらに観察中に急速な進展に遭遇した症例の報告は稀である。今回われわれは,7年間の長期にわたる経過観察中に,突然の進展をみた高齢者の後天性真珠腫例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 担癌患者において,白血球増多を示すものの明らかな感染源がなく,高granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)血症を示すことがあり,G-CSF産生腫瘍として肺癌を中心に報告されている。頭頸部領域においては,甲状腺癌や鼻副鼻腔癌に多く予後不良の腫瘍として知られているが,下咽頭癌における報告は少ない。今回われわれはG-CSF産生下咽頭癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 非結核性抗酸菌(non-tuberculous mycobacteria:NTM)は,培養可能な結核菌以外の抗酸菌を指す。デオキシリボ核酸(DNA)による菌種同定の普及に伴い,国際的に報告されたNTMの菌種数は150を超えている1)。NTM症の多くは肺疾患であり,耳鼻咽喉科領域でのNTM感染は非常に稀であるが,NTMによる中耳炎の報告が散見され,起炎菌の多くはMycobacterium abscessusである。M. abscessusは抗酸菌の中では最も薬物治療に対して難治であるため,過去の報告で渉猟しえた範囲では,全症例で手術を施行している。今回われわれは,M. abscessusによる中耳炎の1症例を経験し,薬物治療により治癒できたので,文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 Castleman病は胸腺腫に類似した組織像を示す縦隔に発症するリンパ節の過形成病変として,1954年にCastlemanらによって最初に報告された疾患である。本症の好発部位は縦隔であり,頭頸部領域での発生は比較的稀である。治療法としては,腫瘤の全摘出が第一選択であり,全身症状を有する症例に対してはこれまで副腎皮質ステロイドの投与が行われてきた。さらに,近年は抗IL-6受容体抗体による治療が行われるようになり,多くの症例で症状が改善したと報告されている。

 われわれは顎下腺に発症した単発性Castleman病の1例を経験した。本症例の概要を文献的な考察を加えて報告する。

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あとがき 吉原 俊雄
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 2016年新年を迎え,少し正月気分も落ち着いてきたころと思います。昨年やり残したこと,失敗したこと,不満だったことなど,本年で解決の方向に上手く導きたいところです。大学では入試,医師国家試験,卒業式と例年の行事が目白押しになりますが,個人事業主の方をはじめ勤務医の多くの先生方も確定申告など,忙しさに拍車をかける時期と思います。診療報酬改定も微妙なところに着地した感があります。いずれにしても良い年になることを願っております。本誌のさらなる充実と飛躍のため編集委員一同頑張る所存です。

 さて,2月号の特集は,「走り出した舌下免疫療法—現況と展望」と「がん免疫療法のブレイクスルー—免疫チェックポイント阻害薬」の免疫関連の二本立てです。フレッシュな時期にふさわしいフレッシュな内容です。ぜひ,手に取ってお読みいただければと思います。最新の知識が得られる内容です。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
88巻2号 (2016年2月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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