臨床整形外科 55巻3号 (2020年3月)

特集 頚椎を含めたグローバルアライメント

緒言 松山 幸弘
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 今回「頭蓋・頚椎を含めた脊柱グローバルアライメント—首下がりを考える」をテーマとして特集を組んでいる.

 首下がりを症候として呈する病態は様々である.

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 首下がり症の病態理解には,体幹が後傾して頭部が下垂している(胸腰椎での代償能は残存)頚胸椎限局型と,体幹全体が前傾して頭部が下垂している(胸腰椎での代償能が破綻)全脊椎型に分類して検討する必要がある.また,胸腰椎後弯を呈した腰曲がり症では,全脊椎型の首下がり症と同様に体幹前傾および前方注視障害を呈するが,病態が異なるため両者のグローバルアライメントを考慮し,その違いを明確に区別する必要がある.

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 歴史的には,グローバルアライメントに関する研究は胸腰椎で先行し,近年,骨盤下肢を含めて評価することが体系づけられたが,頚椎を含めたグローバルアライメントは未解明の部分が多い.真の重心線は外耳道付近から下ろした垂線であることから,頭蓋と頚椎を含めてグローバルアライメントを解析することが重要である.本稿では頚椎を含めたグローバルアライメントの基本事項を概説する.

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 立位・二足歩行や水平視は,頭蓋から下肢に至る脊柱・下肢関節が特に矢状面において相互作用し静的な脊柱配列(アライメント)や動的なバランスを維持・調整することにより可能となる.脊柱の矢状面配列異常に伴う立位・歩行障害の病態認識および治療は,胸腰椎骨盤で広まり,近年は頚椎の矢状面配列異常の評価・治療にも関心が高まっている.胸椎の上に坐する頚椎は胸椎以下の配列の影響を強く受けるため,たとえ頚部の障害が愁訴の患者においても他高位の脊椎や下肢の配列の影響を受けている可能性を常に念頭に置き評価を行う必要がある.

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 胸腰椎の変形を主とする成人脊柱変形は,近年,その分類や手術適応が広く認識されている.一方で,頚椎アライメント異常の概念も報告され,頚椎,胸腰椎両者の変形がある場合は,いずれの治療を優先すべきか,脊椎外科専門医でも判断に苦慮する場合がある.当教室で手術を行った成人脊柱変形患者の29.6%に画像上の頚椎変形を認め,それぞれ頚椎,胸腰椎を先行させた手術を行った.本検討から治療方針の決定には全脊椎のflexibilityを考慮し,非構築性病変の保存療法が可能であるか判断すること,構築性病変の矯正には全脊椎アライメント(global alignment)を考慮し,より土台に近い胸腰椎から矯正を考慮することが望ましいと考えた.

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 首下がり症の病態はいまだ十分に理解されておらず,手術に関しても明確な治療戦略は確立していない.われわれは代償機能の指標であるpelvic incidence-lumbar lordosis(PI-LL)と荷重軸の偏位の指標であるsagittal vertical axis(SVA)を用いたタイプ分類に基づいた治療戦略を立てており,その考え方について述べる.この方法を用いることでどのタイプにどのような手術方法が適しているのかの判別が可能であり有用である.

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 立位バランスを評価するうえで,脊柱のみならず全身アライメントの評価を行うことが重要である.Slot-scanning 3D-Xray imaging System (EOS)の登場により,画像のつなぎ合わせなく低被ばくでの評価が可能になった.ヒトでは垂直立位を保持するために腰椎が前弯化し,頚胸椎,骨盤や下肢と連関して,外耳道中心からの荷重線を足部から一定の距離に保っている.成人脊柱変形の際の適切な固定アライメントに関してはいまだに議論があるが,日本人では頚椎,腰椎の前弯角が小さいため,人種差や対象となる年齢も考慮し手術計画を立てなくてはならない.

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 脊柱変形に対する治療を行ううえで,頚椎を含めた全脊椎アライメントの持つ臨床的意義や代償機構を熟知し,正確に評価することは極めて重要である.近年の画像検査の進歩により,脊椎外科医は患者固有の全脊椎アライメントや,アライメント不良に対する下肢などでの代償メカニズムに関して,よりよい評価を行うことが可能である.高齢者に対する変形矯正手術では脊椎矢状面アライメントは増悪しており,過矯正はインプラント関連の合併症リスクを増大させるため,手術に際しては患者の年齢を十分に考慮することが重要である.

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 201X年10月,「膝蓋骨骨折発生」の第一報が,南極昭和基地から届いた.

 南半球はこれから夏に向かう.本格化する屋外作業で転倒し,石のように硬い氷原で強打して受傷した.添付された画像ではきれいな横割れであった.

海外留学レポート

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 筆者は,2018年7月〜12月にSpain,BarcelonaにあるVall d'Hebron大学に留学しました.

連載 やりなおし! 医療制度 基本のき・3

柔整・あはき 小野 直司
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 医業類似行為,いわゆる医療ではない代替療法のなかで,若い整形外科医に知っておいてほしい基本事項を述べたいと思う.本稿では,無資格のカイロプラクティックや整体を除き,公的資格があり健康保険の療養費の給付対象となる3職種,柔道整復師,あん摩マッサージ指圧師,鍼灸師(あはき)について,特に「受領委任」と「施術同意」の意味する所を含めて説明する(表1).

連載 いまさら聞けない英語論文の書き方・19

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 論文にとっては,言わずもがなですが,データの質・新規性が最も大事です.しかし,どんなに素晴らしいデータでも,適切に提示されなければ魅力は半減します.データの多くは通常,Figureとしてまとめますが,データ整理と論文執筆に意識が集中しすぎて,Figure作成がないがしろになっていないでしょうか.今回から2回にわたって,普段あまり習う機会のない,論文Figure作成に必要な基礎知識を取り上げます.

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 手関節掌側ガングリオン11例に対する関節鏡下手術の治療成績を報告する.術前にMRIで発生部位を推測し手術に臨んだ.3-4portalから関節鏡視し,1-2portalから機器を挿入し流入孔を拡大してガングリオンの消失を認めた.全例調査時再発はない.皮神経刺激症状も含めて痛みの残存はない.手関節掌側,特に橈側のガングリオンは切開術では橈骨動脈損傷や皮神経障害,時には疼痛性瘢痕のため,術後に愁訴を残しやすい.その点で背側からの関節鏡視により比較的安全,確実に解消しうる手関節鏡下手術はよい手術方法と考える.

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背景:肩関節上方組織の伸長性と外旋可動域は関連があるとされているが,客観的指標を用いて評価を行った報告はない.本研究の目的は,肩関節上方組織の伸長性を評価することで,外旋制限の要因特定,治療効果判定の指標とすることである.

対象と方法:対象は健常成人とし,超音波診断装置を用い,中間位・外旋位での上方組織計測の信頼性および伸長性の差を検討した.

結果:中間位,外旋位での上方組織の長さ,厚さの計測は,高い信頼性が得られ,外旋動作で上方組織の長さは有意に増加した.

まとめ:外旋動作では肩関節上方組織の長さのみ増加した.

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 化膿性脊椎炎は高齢者やcompromised host患者の増加に伴い,その発生も増加傾向にあり,保存的治療が奏功しない症例や広範囲骨欠損を伴う症例では手術加療を要する.今回,腰椎化膿性脊椎炎2例に対して最小侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)を適用して前後合併手術を施行した.前方はXLIF®の後腹膜腔経大腰筋アプローチを用いて椎間板搔爬ならびに腸骨からの全層骨移植を行い,後方は経皮的椎弓根スクリュー(PPS)固定を施行した.両症例とも小皮切,少出血で手術可能で,感染制御と骨癒合が得られた.小侵襲で有効な手術法であると考えられた.

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目的:肩甲上神経麻痺を合併した肩甲部囊腫2症例の鏡視下除圧術後の棘下筋筋力の回復の推移を報告する.

症例:男性2例.MRIで肩甲骨棘窩切痕部に腫瘤性病変を認め,鏡視下除圧術+関節唇修復術を施行した.術後の外旋筋力を,MICROFET2TMを用いて経時的に評価した.

結果:棘下筋筋力は術後2カ月で80.1%,78.8%,術後5カ月で98.9%,99.6%と回復した.

結語:肩甲部囊種に対して鏡視下除圧術を行い,術後5カ月時点で健側とほぼ同等の筋力の回復を認め,良好な臨床成績を得た.

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論文の内容

 THA術後脱臼にはアライメントや脚長,オフセットなどのインプラント設置に関わるもののほか,関節包や外転筋など軟部組織に関わるものなどがあり,多くの因子が関与している.近年,脊椎手術後のTHAにおいて,股関節脱臼などの合併症が高いと多くの報告があり,脊椎-骨盤の動きの重要性が注目されている.

 本論文では,THA術後1年以降に生じた遅発性脱臼20例についてインプラントアライメント,骨盤-大腿の角度を評価した.新しい指標として骨盤-大腿がなす角とカップの前方開角の和によりcombined sagittal index(CSI)を算出し,機能的股関節可動域とインピンジメントのリスクを評価した.

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論文の内容

背景 軟骨損傷は疼痛,腫脹,引っ掛かり感などの症状を引き起こし,長期には変形性関節症を引き起こすことが知られている.これまでに多くの研究者が組織工学的再生と軟骨修復に焦点を当てて研究してきたが,いまだ硝子軟骨の再生を再現できる方法はない.また,多くの手術方法が行われているが,その中で特別に優れた方法は存在しない.

 骨髄刺激法(microfracture)は最も広く行われている手術方法であるが,小さな軟骨損傷に対して第一選択の手術方法とされ,一方,培養軟骨細胞移植(autologous chondrocyte implantation:ACI)や幹細胞による軟骨修復術は広範囲の治療に適していることが示唆されている.

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 本多通孝先生は,胃癌や食道癌術後患者の後遺症やQOLの評価尺度を開発したことで世界的に知られる外科医である.2003年に日大医学部を卒業後,京大Master of Clinical Research(MCR)コースを修了し,現在は福島県立医大低侵襲腫瘍制御学講座教授として,精力的に消化器外科手術を行いながら,多くの研究成果を報告している.

 前作『外科系医師のための手術に役立つ臨床研究』に引き続き,今回の『外科系医師のための臨床研究 手術を評価するアウトカム』では臨床研究における「アウトカム」設計の奥深さについてさまざまな角度から論じられている.「『…先生手術は成功ですか?』こんな質問にどう答えますか」というこの本の帯の質問の意味は深い.「何をもって手術の成功とするか」というのは,「何を手術のアウトカムとするか」という質問に置き換えることができるだろう.手術自体がトラブルなく終了すれば成功なのか,術後に十分な機能回復が得られることが成功なのか,それとも術後生存期間が長いことが成功なのであろうか.

INFORMATION

第31回日本末梢神経学会学術集会

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目次

欧文目次

次号予告

あとがき 山本 卓明
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 「Every good-bye is so sad...」英国がEUを離脱する1月31日,EU本部で英国人女性スタッフが,一緒に働いてきたEU諸国のスタッフと涙ながらに別れを惜しんでいる様子が,TVで放映されていました.あれほどまで時間をかけ,自らの意思で離脱を決め,ロンドン市内は,あたかも新年を迎えるカウントダウンさながらの雰囲気の中,やはり,別れは辛いものであることを感じさせられました.

 本号の出版される3月は,異動の季節,別れと出会いの季節です.教授職に就いて4年,一貫して送り出す立場です.昨年4月には,やや頼りない感もあった後期研修の先生達が,今やとてもたくましく,頼りになる存在です.そして,3月末を待ちかねたかのように喜々として(?)新天地へと旅立っていく様子をみると,大学病院での研修ゆえとは理解していても,取り残されたような寂しい感覚になります.

基本情報

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臨床整形外科
55巻3号 (2020年3月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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