臨床整形外科 54巻12号 (2019年12月)

誌上シンポジウム 患者の満足度を高める関節リウマチ手術

緒言 仁木 久照
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 関節リウマチ(RA)の治療の進歩,特にメトトレキサート(MTX)や生物学的抗リウマチ薬(bDMARD)など関節破壊抑制効果を有する抗リウマチ薬の普及により,人工関節置換術をはじめとする整形外科手術を必要とする症例は減少することが期待されている.海外のNational Registryや大規模研究に基づいた研究では,大関節である股関節や膝関節のRAに対する人工関節置換術は減少傾向にある.本邦でも大関節では同様の傾向がある一方で,手・足の小関節の手術は増加傾向,肘関節の手術には明らかな減少傾向はないとされる.

 RA治療の大きな変化はRA手術に対する患者のニーズを変化させ,それに伴って整形外科医が目指す手術のゴールも大きく様変わりしてきた.今回の誌上シンポジウムでは,RA手術の未来と,患者からのニーズが高い手・肘・膝・足の手術について,特に患者満足度を高める手術の現状と未来について経験の豊富な先生方にご執筆いただいた.また薬物療法が主体となった今,患者満足度が向上する整形外科的手術を行うためには内科との連携は必須である.大学に内科・整形外科の合同リウマチ外来を立ち上げられた内科医からの視点でご執筆いただいた.さらに満足度の高い手術を行うには,周術期管理も重要な鍵を握る.それには抗リウマチ薬の適切なマネジメントが必要で,現在までに各種ガイドラインが発表されてきている.薬物マネジメントのエビデンスに基づいたガイドラインの現状と,患者の日常を支えるリハビリテーションについてもご執筆いただいた.

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 科学・医学の進歩や人口構成の変化などが加速している時代には,医療の形態や体制も慣れ親しんだ方法の延長線上で対応するのではなく,20年・30年先の姿を十分に考え早くイノベーティブに対応することが大切である.イノベーションの重要性はいわれて久しいが,いまだ知行同一がなされていない分野・場面も多い.医学の進歩で多くの患者が最大にそして継続的に救われるように,特に若い先生方には,ぜひ大きな視野を持ってリウマチ医療のありようを考えてみるきっかけに本稿がなればと願う.

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 近年,関節リウマチ(RA)の新薬が続々と登場してくるなかで,根治療法が確立されない限り,患者のアンメットニーズに応えるための補完治療として,構造的損傷を受けた関節への手術治療介入は必要とされている.手・手関節のRA手術によって身体機能障害の克服とより高いレベルのQOLの再獲得,うつの改善が可能となる.患者のニーズと術後のゴール設定を明確にすることにより,満足度の高い手術となる.

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 人工肘関節置換術(TEA)をはじめ,関節リウマチ(RA)では肘関節の障害に対して手術が必要となる例が以前は多くみられていた.薬物療法の進歩により減少はしているものの,手術適応症例がなくなることはない.本邦では優れた非連結型人工関節が開発され,特に最近いくつかの機種において10年以上にわたって90%を大きく上回るインプラント生存率など,優れた臨床成績が相次いで報告されている.今後は多関節罹患例や高度関節破壊例の減少と,インプラント性能・術式が改善されることでRA肘の手術成績はさらに向上するものと期待される.

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 近年の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に対する薬物治療の進歩に伴い,RAの膝手術は減少してきているが,末期の関節症に対しては人工膝関節置換術(total knee arthroplasty:TKA)が依然として有効な治療方法として行われている.今回,RAに対して行ったTKAの術後成績,術後満足度を調査し,OAに対して行ったものとの比較を行った.RA群ではOA群に比べ,術後activityは低くても術後患者満足度は高いことがわかった.RA患者においても機能回復をいかに高めうるかが今後の課題になると考えられた.

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 リウマチの薬物治療が進歩しても,現在のところなくなることのない足部手術において,すべての問題に対処できるように努力し,外科治療を進歩させることがリウマチ関節外科医としての使命である.われわれは関節リウマチ(RA)における足部・足関節部の変形・破壊に対して,関節機能の可及的な温存を目指しながら,機能再建手術を前・中・後足部すべてにおいて行っている.今後,RA症例に対し,さらに脛骨の骨切り手術や足関節鏡手術,distraction arthroplastyなどの関節温存手術の適応が広がることが期待される.

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 関節リウマチ(RA)診療において,内科・整形外科の連携は重要であり,患者のQOL向上にも役立つと考えられるが,大病院では診療科の専門性が高く,科間の垣根が高いことが問題である.内科・整形外科医に同時に診察を受ける機会は少なく,患者からのニーズは高い.本稿では2003年から横浜市立大学附属病院において取り組んでいる内科・整形外科の合同リウマチ外来について報告する.

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 関節リウマチの周術期には,使用している抗リウマチ薬の適切なマネジメントが必要である.現在,多くないものの徐々にエビデンスが発表されており,それらをもとに各種のガイドラインが発表されている.原則的に,メトトレキサートは継続のまま手術に臨み,biological disease modifying anti-rheumatic drugsは,投与間隔分の休薬期間をもって手術を行うことが推奨されている.しかし,この原則にとらわれすぎることなく,個々の状況に応じて適切な対応をする必要がある.

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 関節リウマチ(RA)患者に対する関節保護の指導では関節自体の安静には装具を用い,生活動作の制約にはADL,家事動作上の工夫を行う.手指・手関節変形に対する装具としてリストサポーター,尺側偏位,スワンネック変形,ボタン穴変形の進行予防用の装具などを作製する.ADL・家事動作に役立つ自助具として肩関節拘縮によるリーチ機能の障害,握力・ピンチ力の低下,手指巧緻性の低下に対応した市販あるいはオーダーメイドの自助具を用いる.足部・足趾変形に対する装具では靴型装具や足底装具にアーチサポート,中足骨パッドなど変形拘縮に対応した工夫を加える.

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目的:extreme lateral interbody fusion(XLIF)ケージの角度により獲得できる椎間角や椎間高に差があるかを検討した.

対象と方法:成人脊柱変形(adult spinal deformity:ASD)に対してXLIF併用前後合併矯正固定術を施行した40症例を対象とした.10°ケージ(X10群;95椎間)と15°ケージ(X15群;26椎間)に分け,獲得できた椎間角や椎間高を調査した.

結果:ケージ角度によって得られる前弯角や楔状角,椎間高には統計学的差はなかった.

まとめ:ASD患者のXLIF直後のCT画像の評価から,ケージ角度によって獲得できる椎間角や椎間高には差がない.

最新基礎科学/知っておきたい

骨肉腫幹細胞 塚原 智英 , 水島 衣美
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はじめに

 がん細胞の組成は均一ではない.化学療法や放射線療法の後に,多くのがん細胞が殺傷されてもごく一部のがん幹細胞が生き残り,治療後の再発や転移を引き起こすといわれている1).がん幹細胞は自己複製能と分化能,高い造腫瘍能を持ち,さらに化学療法や放射線療法に抵抗を示す.近年,骨肉腫をはじめとした肉腫にも高い造腫瘍能と薬剤耐性能を司る肉腫幹細胞(sarcoma stem-like cells/sarcoma-initiating cells:SSCs/SICs)の存在が報告されている(図1)2,3).本稿では骨肉腫幹細胞および分子マーカーの探索と,骨肉腫幹細胞のエネルギー代謝機構について概説する.

境界領域/知っておきたい

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はじめに

 RS3PE症候群は,高齢者を中心に関節症状をきたす症例にみられ,しばしばリウマトイド因子・抗CCP抗体陰性の関節リウマチ(RA)(血清陰性関節リウマチ:seronegative RA),あるいは高齢発症のRA(elderly-onset RA:EORA),リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)との異同が議論される症候群の1つである.1985年にMcCartyら1)が報告した疾患概念で,Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema syndromeの略である.直訳すれば,「寛解に向かいつつある,血清反応陰性の対称性滑膜炎で圧痕浮腫を伴う」症候群となる.四肢の比較的大きな関節の炎症を主徴とし,再発は少なく,特に手背・足背の圧痕浮腫が特徴的である.治療としては少量のステロイドが著効を示す.これまでは比較的稀とされてきたが,高齢者の日常診療の中で遭遇する頻度が増え,関節炎の鑑別疾患の1つとして重要となりつつある.

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痙縮—神経生理学的説明と実際の臨床症状

 痙縮は,錐体路系に対する抑制機構が不完全になることで現れる上位運動ニューロン徴候と説明されている.骨格筋に受動伸張を加えると,その最初だけ筋緊張抵抗を示すジャックナイフ現象は有名であり,その抵抗感の強弱は受動伸張速度に依存する.

 痙縮は一方,実践臨床医による説明は,「上位運動ニューロンの病変がもたらす,間欠的ないし持続的に現れる骨格筋の不随意な過活動による協調運動障害」といった内容が多く,ジャックナイフ現象や速度依存性には必ずしも触れていない.臨床では,深部腱反射の亢進があってもジャックナイフ現象は不明瞭で,むしろ鉛管様(固縮)に近いなど,神経生理学的に理解する痙縮とは様相が異なることも多い.また,特に長期経過例ではしばしば筋緊張異常の過剰亢進や様相の複雑化も生じ,現象の説明がより難しくなる.

連載 いまさら聞けない英語論文の書き方・16

英文執筆のカギ 堀内 圭輔 , 千葉 一裕
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 本連載を読むまでもなく,英語論文を書くための文法や単語の使い方に関して詳細に記述した良書は多数出版されています.しかし,こうした参考書を読破した結果,実際に英語論文を執筆できるようになった方がどれほどいるでしょうか? そもそも,内容を伴わずに英単語や英文を記憶するのは現実的に困難です.高校時代の英語学習法と何ら変わりません.今回は,英語論文初心者が,執筆にあたり心に留めておく事柄に関して,筆者の私見を交えてお話しします.

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転位のある大腿骨頚部骨折に対して,THAはBHAに比べ,脱臼率は高いが,再置換の率は低く,医療費も低い.

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・最先端のイメージング技術を駆使して,生体骨組織内の骨芽細胞・破骨細胞について4次元で解析する手法を開発

・生体骨組織内での骨芽細胞・破骨細胞の相互作用の可視化に世界で初めて成功

・骨芽細胞・破骨細胞の細胞間コンタクトを介した骨吸収制御機構の発見

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 ガイドワイヤーレスなpercutaneous pedicle screw(PPS)システムを用いて脊椎固定術を行った57症例の治療経験を調査した.疾患内訳は変性疾患が41例,椎体骨折13例,感染性脊椎炎2例,転移性脊椎腫瘍1例であった.変性疾患の多くの症例は,extreme lateral lumbar interbody fusion(XLIF)との併用による間接的除圧術を行ったが,特にXLIF後に側臥位のままPPSを挿入した症例では,手術時間が短縮し出血量の低減に寄与することが示唆された.

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背景:大阪医大式(Osaka Medical College:OMC)側弯装具に関する調査を実施した.

方法:対象は当院でOMC側弯装具を用いて治療を実施した26名の児童である.装具の1)重さ,2)着脱,3)肌トラブル,4)着用時間についてアンケート調査した.

結果:1)重い,やや重いが4名,やや軽い,軽いが4名,普通が18名であった.2)自分でいつでも着脱可能6名,時々着脱可能7名,不可能13名,3)肌トラブルあり12名,なし12名,わからない2名であった.4)装着時間は12時間未満11名,12時間以上15名であった.

まとめ:装具重量は妥当であったが,約半数が自分では着脱できず,肌トラブルも抱えていた.半数以上は12時間以上着用できていた.

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 頚椎歯突起後方偽腫瘍の治療法としては,一般的に除圧固定術が選択されることが多い.実際に固定術を行った症例では良好な成績が得られている.しかし,びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH)により骨性架橋で頚椎が多椎間で癒合している症例では,O-C2固定をした場合,頭部から頚部が可動できなくなり,嚥下障害を来すリスクがあることを念頭に置かなければならない.今回そのような症例に対しては,C1後弓切除術のみを施行した.最終観察時点において,臨床成績もよくMRIで除圧されていることが確認できた.

INFORMATION

第14回骨穿孔術研究会

第77回乳児股関節エコーセミナー

第23回超音波骨折治療研究会

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目次

欧文目次

次号予告

あとがき 土屋 弘行
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あとがき

 近年,これまでになく自然災害が日本を襲い,9月から10月にかけての台風や大雨により被害を被った地方の皆様にお見舞い申し上げるとともに,1日も早い復興を心からお祈りいたします.

 さて,皆様におかれては,秋の夜長をいかがお過ごしでしょうか.ラグビーファンは,大いに盛り上がったのではないでしょうか.日本チームもアイルランドやスコットランドを撃破して予選リーグを全勝で通過し,ベスト8に進出しました.われわれに夢と希望を与えてくれました.そのラグビーワールドカップも南アフリカの優勝で幕を閉じました.愚生も,ルールも知らないにわかファンで盛り上がりました.走る,蹴る,飛ぶ,投げるはもちろんですが格闘技の要素も強く,30人の鍛え抜いた男たちが圧倒的なパワーでぶつかり合うのはド迫力でした.日本チームの夢と挑戦は続きます.

基本情報

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臨床整形外科
54巻12号 (2019年12月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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