臨床整形外科 54巻1号 (2019年1月)

誌上シンポジウム 小児の脊柱変形と脊椎疾患—診断・治療の急所

緒言 吉川 一郎
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 小児脊柱変形でよくみられる「特発性側弯症」は思春期女子に多く,診断は容易であり,その保存療法も手術治療もおおむね確立された感があるが,学童期側弯症や乳幼児期側弯症は頻度も低く,進行例に対する治療は難しい.

 また,様々な形態を呈する先天性側弯症の治療はバランスのとれた疼痛のない脊柱をどの時点で獲得するかという治療戦略が必要である.

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 思春期特発性側弯症は,側弯症の中では最も多くみられるものであり,近年,側弯症診療は急速に進歩している.側弯症患者を診る際には,肩の高さ,ウエストライン,肩甲骨の位置,前屈した背面の左右差をチェックし,これまで診断されていない症候性側弯症や神経原性側弯症の合併の可能性も含めて診察を行う.手術は,3DCT画像を活用して術前準備を行い,O-armナビを使ってスクリュー刺入を行っている.また,rod rotationを行わないdual rod translation法について解説した.

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 神経・筋疾患に伴う脊柱側弯症はほとんどが進行性である.また,高度な変形に至る.このため手術的治療が推奨され,矯正効果も大きい.しかし,周術期合併症は多いとされ,また,手術の効果のエビデンスは多くはない.しかし,実臨床においては極めて高い有効性を実感できる治療法である.今後はエビデンスとなる評価方法を確立し,手術のメリット・ベネフィットを確認していく必要がある.

非特発性側弯症 宇野 耕吉
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 非特発性側弯症は,基礎疾患を有し,それぞれの病態(精神発達遅延,麻痺,骨脆弱性,四肢・関節の変形や拘縮など)の理解が重要である.これらの側弯は,乳幼児期から発症するいわゆる早期発症側弯症であり,成長温存手術(growth friendly surgery)による早期の手術介入を考慮に入れながら経過をみていく必要がある.

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はじめに

 先天性に生じる椎骨の形態異常は,側弯や後弯など何らかの症状が生じない限り見逃されることがあり,成人後に偶然X線写真で指摘されることも少なくない.このように無症候性に経過したものは,もちろん臨床上治療対象とはならない.その一方で,幼・小児期から側弯や後弯などが悪化し,いろいろな症状を引き起こす病態もある.しかも,幼・小児期から成長に伴って悪化する変形は,早期発見,早期治療が必要であり,手遅れになると日常生活動作(ADL)のみならず,生命予後にも影響を与える場合がある.本稿では,椎骨の先天性奇形により生じ,整形外科医師にとってその特徴を頭に入れておかなければならない疾患群などについて診断と治療法のピットフォールについて述べる.

小児の脊柱後弯症 柳田 晴久
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 小児の脊柱後弯症を生じる疾患は多岐にわたり,後弯単独の例や後側弯の例が含まれ,また部位も頚椎・胸椎・胸腰椎・腰椎など多様である.後弯が進行すると脊柱全体の矢状面アライメントに影響を及ぼし,結果として立位(あるいは座位)バランス不良,痛み,呼吸器症状,消化器症状などを生じる.また一般に脊柱変形で脊髄麻痺を生じることは稀だが,高度後弯では麻痺を生じうる点も特徴である.治療法はScheuermann病などでは装具治療が有効であるが,多くの後弯症は手術が必要となる.小児期に自然経過を予測し,適切な時期に治療することが肝要である.

小児の頚椎疾患 中村 直行
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 近年は著しい少子化の影響で,一般病院で小児を診る機会が格段に減っている.さらに小児の頚椎病変となるとかなりニッチな分野で,もはや稀少疾患の気配さえ漂い始めている.本稿では,その領域で知っておくべき代表的な疾患を4つ解説した.各疾患の詳細は成書に譲るが,日頃小児専門病院で仕事をする中で感じるpitfallをなるべく記載するように心がけた.

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 腰椎分離症と腰椎形成不全性すべり症は,小児の腰椎疾患で見落としてはならない疾患である.腰椎分離症の病態は疲労骨折であるため,治療開始のタイミングは予後に大きな影響を及ぼす.特に偽関節化した分離部は保存治療により骨癒合することはないため,早期発見・早期治療が重要である.形成不全性すべり症で分離がある症例では神経症状が発症しにくいので,発見が遅くなる場合がある.特に仙骨終板のドーム化の所見がある場合はすべりの進行は必至と考えられているため,可及的早期の手術が望ましい.

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 一般的に,日常診療の現場において,脊柱変形(主に側弯症)と腰椎分離症を除く小児の脊椎疾患に遭遇する機会は極めて少ないが,そのなかには重篤なものがある.この稿では,強い疼痛としばしばヘルニアを伴って発症し,手術治療の適応について判断が必要となる「頚椎椎間板石灰化症」,愁訴が不定であるために診断が遅延しがちであるが,ほとんどが保存的治療の適応である「化膿性脊椎炎,椎間板炎」,悪性腫瘍である「急性リンパ性白血病」,著しい疼痛と特徴的な扁平椎で発症するが疼痛管理ができれば予後はよく,自然緩解する「ランゲルハンス細胞組織球症」による脊椎病変について説明する.

整形外科/知ってるつもり

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 ナックルキャストとは石黒ら1)が1991年に報告した基節骨骨折および中手骨骨折に対する固定法である.キャストによりMP関節を70〜90°屈曲位で固定し,PIP関節およびDIP関節は固定せず早期からの自動運動を行わせることで,骨片の整復とともに機能的な回復が得られる,整形外科領域における極めて有用な保存療法の1つである.

境界領域/知っておきたい

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 スポーツや美容・ダイエットの領域において“体幹トレーニング”という言葉が頻出する.正しい体幹トレーニングは腰痛に対する運動療法として有用であり,多くの臨床整形外科医にその概念と正しい方法について理解していただきたく,ここに解説する.

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 整形外科手術後の創部の合併症には,手術部位感染(surgical site infection:SSI)や肥厚性瘢痕(hypertrophic scars)がある.「きれいに」傷を治すためには,これらの発症機序を理解し,予防するための手術手技,とくに閉創手技を知る必要がある.手術部位感染を生じたら,壊死組織をつくってしまった可能性,肥厚性瘢痕を生じたら術後創部に張力が過剰にかかった可能性を考える必要がある.これらを予防するためには,脂肪組織に大きく糸をかけない,また日常動作で張力のかかる方向に切開線を一致させない,といった工夫が必要である.特に女性ホルモンの影響がある患者や皮膚に張力がかかる活動性の高い患者では傷が目立ちやすくなるため,手術手技の工夫が必要となる.

最新基礎科学/知っておきたい

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はじめに

 多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)とは全血を遠心分離することにより作製される血小板が濃縮された血漿成分のことをいい,その概念は,1970年代における血小板減少症患者に対する血小板輸血の使用が始まりとされている.1990年代に,Marxら1)が口腔外科領域においてPRPの骨および軟部組織再生に対する有用性を報告して以来,筋骨格系をはじめとした整形外科領域においても組織再生に応用されている.

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はじめに

 膝前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷は,膝スポーツ外傷の中で最も一般的で,治療に当たる機会が多い.スポーツ活動を希望する患者にはACL自体の治癒帰転が不良なため,骨孔内に移植腱を挿入して固定する靱帯再建術が行われる.関節鏡を用いた鏡視下手術法の進歩と生体力学的・解剖学的研究によって,現在では手術術式はほぼ完成したものと考えられている.しかし,ACL再建術後患者の膝関節内を再鏡視すると,native ACLかと思うほどきれいに滑膜に覆われているものから,ほとんど滑膜被覆を認めず腱線維が露出しているものまで様々である.ACL再々建術を行う要因の5%は,このような再建靱帯の成熟不良例,生物学的要因といわれている1).この再建靱帯の成熟をより確実にできないかと考え,組織損傷の治癒に優位とされる多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)を用いたACL再建を行った.約1年後に再鏡視で評価を行い,滑膜被覆は7/8例で良好だったが,Cyclops lesionが3/8例に発生した.このCyclops lesionの発生数は従来法の再鏡視例に比べて多い傾向にあった(表1).

 本稿ではPRPを用いてACL再建を行った際に生じたCyclops lesionと,PRPを用いず従来法によりACL再建を行った際に生じたCyclops lesionの組織所見を比較した.

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はじめに

 多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)は組織修復の有効性により,整形外科のみならず形成外科などにおいても研究・臨床応用されている.整形外科領域ではスポーツ医学において靱帯などの軟部組織修復に用いられている.一方,脊椎領域においてはこれまで,①骨癒合促進,②椎間板再生,③脊髄損傷・軸索再生で有効性が示されている.本稿ではそれらに加えて,近年われわれが着目している凍結乾燥多血小板血漿(freeze-dried PRP:FD-PRP)における今後の展望や最新知見も含めて概説する.

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積極的保存療法の重要性

 我々は整形“外科医”であり,保存療法が無効であれば,とくに病院勤務の身では手術療法に誘導する傾向がある.それは整形外科専門医研修や,健康保険診療報酬の仕組み,はたまた標榜科名の「外科」にも起因するかもしれないが,多くの整形外科医はあまり意識せずに行っているようである.一方で,多くの患者はできればメスを入れずに治したいと思っているようである.特に,現時点で行いうる保存療法から手術療法の各種治療法について時間をかけてすべて丁寧に説明して,患者がメリットとデメリットの全貌まで把握すると,骨折に対する手術のような絶対適応でない限り,手術が相対適応である整形外科慢性疾患(変性疾患など)に対しては保存療法を希望する傾向がある.

 整形外科は内臓疾患分野のように外科と内科が分かれた科ではなく,整形“内科医”も兼任しており,専門医研修の時期から外科的な手術療法のトレーニングはもちろん,メスを使わない内科的な保存療法のトレーニングにも励む必要がある.超高齢社会の真っただ中にある我々整形外科医は,機能予後や健康寿命を伸ばす将来につながる治療に取り組めるよう,特にこれからは,従来の消極的な方法ではなく積極的保存療法が重要であると考えられる.

連載 いまさら聞けない英語論文の書き方・5

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 これまで2回に分けて,英文字入力に関する基本的な注意事項をお話ししました.今回は,英論文原稿を用意するにあたり,適切な英文原稿の構造・フォーマットに関して説明します.これも第3,4回と同様,当たり前のことばかりなのですが,論文執筆経験の浅い若手医師・研究者の英語論文原稿をみると,驚いたことに,これらのルールが徹底されていないことがしばしばあります.是非,この機会にこれらの作法を復習し,原稿を組み立ててください.論文はブログではありません.正確に情報を伝えるため,様々な決まりがあります.基本は大切です.

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 81歳女性で,上行結腸癌の手術歴があった.術後2年ほどして左下腿の浮腫,しびれを主訴に当科を受診した.下肢深部静脈超音波検査で膝窩静脈に血栓を認め,その近位に5cmほどの腫瘤を認めた.MRIでは非特異的な信号強度を示す辺縁不整な腫瘤を認め,坐骨神経を巻き込み膝窩動静脈を圧排していた.造影CTでは内部不均一な造影効果を示す辺縁不整な腫瘤を認め,膝窩静脈は閉塞していた.経皮的針生検で大腸癌膝窩部転移と診断した.化学放射線治療を行い腫瘍は著明に縮小した.大腸癌の膝窩部軟部組織転移の報告はなく,極めて稀な症例であった.

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目次

欧文目次

次号予告

あとがき 黒田 良祐
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あとがき

 2019年,新年あけましておめでとうございます.今上天皇の退位が決まり5月には現皇太子の即位も決定しています.「平成」の時代が終わり,この号が発刊されているころには新しい年号が発表されているのでしょうか?

 今年は第9回大会となるラグビーワールドカップ2019が日本で開催されます.9月20日から11月2日までの期間に全国12の都市で20のチームが戦います.ワールドカップは4年に一度ですが,今回がアジア初の開催であり,わが国,日本で開催されるなんて,なんたる幸運か….「4年に一度じゃない,一生に一度だ.」このキャッチコピーでPRが行われています.私もなんとしても競技場へ足を運んで生で観戦したいと思っています.

基本情報

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臨床整形外科
54巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:1882-1286 印刷版ISSN:0557-0433 医学書院

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