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PRPを用いたACL再建術後に発生したCyclops Lesionの組織所見—PRPを用いた組織再生
谷口 悠
1
,
金森 章浩
2
,
吉岡 友和
3
,
菅谷 久
3
,
山崎 正志
2
Yu TANIGUCHI
1
,
Akihiro KANAMORI
2
,
Tomokazu YOSHIOKA
3
,
Hisashi SUGAYA
3
,
Masashi YAMAZAKI
2
1いちはら病院整形外科
2筑波大学医学医療系整形外科
3筑波大学医学医療系整形外科運動器再生医療学
pp.84-90
発行日 2019年1月25日
Published Date 2019/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201266
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はじめに
膝前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷は,膝スポーツ外傷の中で最も一般的で,治療に当たる機会が多い.スポーツ活動を希望する患者にはACL自体の治癒帰転が不良なため,骨孔内に移植腱を挿入して固定する靱帯再建術が行われる.関節鏡を用いた鏡視下手術法の進歩と生体力学的・解剖学的研究によって,現在では手術術式はほぼ完成したものと考えられている.しかし,ACL再建術後患者の膝関節内を再鏡視すると,native ACLかと思うほどきれいに滑膜に覆われているものから,ほとんど滑膜被覆を認めず腱線維が露出しているものまで様々である.ACL再々建術を行う要因の5%は,このような再建靱帯の成熟不良例,生物学的要因といわれている1).この再建靱帯の成熟をより確実にできないかと考え,組織損傷の治癒に優位とされる多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)を用いたACL再建を行った.約1年後に再鏡視で評価を行い,滑膜被覆は7/8例で良好だったが,Cyclops lesionが3/8例に発生した.このCyclops lesionの発生数は従来法の再鏡視例に比べて多い傾向にあった(表1).
本稿ではPRPを用いてACL再建を行った際に生じたCyclops lesionと,PRPを用いず従来法によりACL再建を行った際に生じたCyclops lesionの組織所見を比較した.
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