胃と腸 6巻12号 (1971年11月)

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はじめに

 最近,筆者らは術前に診断しえた原発性食道胃重複癌で,しかも胃はⅡa+Ⅱc型の粘膜内に限局した早期胃癌であった1例を経験したので,その概要を述べると共に,集計しえた本邦症例と自験例を加えた50例の食道胃重複癌に関する統計的観察を加えて報告する.

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はじめに

 胃内視鏡の進歩に伴い,これまで稀にしか経験することができず,しかも術前診断が非常に困難であった胃病変の発見も可能となり,その臨床診断についての検討もより詳細に行ないうるようになった.最近,筆者らは胃粘膜下囊胞とⅠ型早期胃癌が共存していたきわめて稀な症例を経験したので報告する.

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はじめに

 胃癌診断法が著しく進歩したとはいえ,Ⅱb型早期胃癌の術前診断例は甚だ少ない.その大部分は癌や潰瘍などの他の合併病変によって手術し,偶然発見されたもので,一般には約2cm以下の比較的小さなものが多く,切除胃の肉眼所見でも判定不能なものが殆んどである.本症例はⅡb+Ⅱc型早期胃癌のⅡc病変が最初Ⅱa様病変として認識され,その後の精検でⅡc病変と診断し切除を行ない,Ⅱb+Ⅱc型早期胃癌と確認されたものである.

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はじめに

 隆起性病変の中央部に浅い潰瘍を認め,その噴門側にⅡc様病変が存在した特異な1症例を経験した.術前Ⅲ+Ⅱcを疑ったが,粘膜下腫瘍,またはⅢ型の進行癌も否定できず,確診が得られぬままに手術を施行した.術後Ⅱc+Ⅲ型早期胃癌に限局性のリンパ細網組織の増生が重なった症例であったので報告する.

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はじめに

 健康診断の目的で外来を受診し,胃X線検査の結果,十二指腸球部腫瘍を疑われ,その後の精査により癌と診断されたが,その原発部位は必ずしも明らかとならず,手術によりはじめて,幽門輪上わずかに前庭部側から発生したⅠ型早期胃癌と判明した症例を経験したので報告する.

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はじめに

 胃疾患診断学の進歩が胃癌に関しては目ざましいものがある反面,胃肉腫については発生頻度が稀である関係もあり,多くは癌と誤診されている現状である.

 筆者らは約4カ月の期間に急速な進展をみた胃原発性と考えられる細網肉腫の1例を経験したので報告するとともに,文献的考察をこころみた.

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はじめに

 筆者らは低蛋白血症を伴った特異な消化管po1yposisの1例を経験し,RISA試験により胃内への蛋白漏失機転の存在を確認しえた.胃全摘により血清蛋白像の著明な改善を得たので,若干の考察を加えて報告する.

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はじめに

 血液疾患と消化器疾患とが互いに関連を有することは,悪性貧血における無酸症や低酸症の合併をあげるまでもなく周知の事実である.一方,多血症に消化性潰瘍の合併する割合も比較的高率といわれている1)~3).筆者らはかかる1例を経験したので,過去,沖中・中尾両内科に入院した真性多血症10例について検討したところ,内3例に消化性潰瘍の合併をみた.ここにその症例を報告し,両者の因果関係について考察を加えた.

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はじめに

 本邦においては臓器別の悪性腫瘍の発生率は消化管に最も高く,なかでも胃癌は圧倒的多数を占めている.しかし,同一胃のそれぞれ異なった部位に生じる重複胃癌は比較的稀である.胃癌に較べると,悪性リンパ腫をはじめとする平滑筋肉腫などの非上皮悪性腫瘍の発生は低率で,さらには癌腫と肉腫の全く異なった性格の2病変が何の連絡もなく,個々に独立して同一胃に共存する場合は非常に稀である.私共は最近,同一胃に悪性リンパ腫(細網肉腫)と粘膜内癌とが独立して別個に共存した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.筆者らの研究の背景

 胃癌の組織発生に関しては,慢性胃炎とくに腸上皮化生粘膜との関係が重要視されており,胃癌のあるものは腸上皮化生から発生すると言われている1)~3).従って,腸上皮化生は一種の前癌状態とみなすこともできるから,胃における腸上皮化生の程度および範囲を知ることは大切なことである.

 この腸上皮化生は,日本人にとくに多く,また加齢との関連が強く,40歳以上の人の約50%には多かれ少なかれ腸上皮化生がみられる4)

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はじめに

 筆者は1969年7月ミシガン州デトロイトにあるWayne State Universityの外科にResearch Associateとして渡米して以来,多くのいわゆるストレスによる胃粘膜よりの出血を経験し,その内視鏡像,病理,さらに治療について研究する機会を得たので,その結果を発表したい.

 近年外傷または敗血症,さらには両者の併発後の急性胃出血の頻度は著しく増加した.この原因はショック,敗血症,呼吸不全,腎不全などの治療が進歩した結果,以前なら当然死亡したと思われる患者が生存して,胃出血を合併する場合が多くなったためと思われる.

 この研究が行なわれたDetroit General Hospitalの一般外科のEmergency Serviceでは,平均約60人の患者を収容しているが,毎週約2例の急性胃出血の新患が発生し輸血をしている.この病院ではストレスによる胃粘膜出血の頻度は消化性潰瘍,食道静脈瘤よりはるかに多く,上部消化管出血の最大原因となっている.

 わが国では上部消化管出血の原因としては,消化性潰瘍によるものが過半数を占めている(長尾59.1%1),長塚71%2),浜口54.9%3),川井61.1%4)).これに反して出血性びらんの占める頻度は長尾14.6%1),長塚7.3%2),浜口8.8%3),川井2.3%4)と少ない.出血性びらんは通常X線検査では診断できず,出血後早期内視鏡検査を施行した場合に診断されるが,上記長塚2),川井4)の数値に示されるごとく,出血後早期内視鏡検査を施行してもわが国では出血性びらんの占める頻度は少ない.これに対して欧米では,出血後早期内視鏡検査を行なった場合,上部消化管出血の中で出血性びらんの占める頻度はKatz5)によれば28%と最も多く,数多くの著者が20ないし30%6)7)8)の数値をあげている.

 通常出血性びらんの誘因として,アルコール,抗炎症剤(アスピリン,ステロイド),火傷,外傷などが挙げられるが,この研究対象は外傷または敗血症,さらには両者の併発後の上部消化管出血であり,これ以外の誘因による出血は除いてある.外傷,敗血症で入院した患者が胃出血を合併してくるので,胃出血に対する手術を行なった症例はすべて非常に重症であった.

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はじめに

 胆囊癌,胆管癌の確定診断としては細胞診あるいは組織診による以外に適格な方法はない.しかし現状では,術前に生検を施行してその組織診を得ることは困難であり不可能に近い.そこで筆者らは教室で施行している経皮経肝性胆道造影の際に,経皮的に採取した胆汁の細胞診をおこない,臨床的に胆汁細胞診による術前確定診断を確立したので,その方法および成績について述べる.

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 臨床的診断法は形態学的方法と機能的方法とが密接な連係をたもって進歩することが必要である.小腸の診断法はいまだに開拓期にあり,その方法には,uniformityを欠いているものがすくなくない現状であって,検査法の新・旧をとわず依然方法論的問題がもっとも大きな比重を占めているように思う.

 小腸の内視鏡検査法は,内視鏡が幽門輪という関門を突き破って十二指腸の内視鏡検査ができるようになると,すぐその可能性が論ぜられるようになったが,ごく近い時期に新しい小腸診断法として登場してくるだろう.

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 病巣の拡がりが10mm×10mm程度の小胃癌を微小胃癌と考えまして,筆者らの経験した症例についてまとめて考えてみます.

 病巣が10mm×10mm以内の深部深達小胃癌は稀れにはみられますが,そのほとんどすべては早期胃癌といってよいと思います.微小胃癌の内視鏡診断を論ずるためには,ごく早い時期の胃癌と考えられるⅡbの診断に近づいてゆかなければなりません.本年度総会で取り上げられたⅡbのシンポジウムでも,いわゆる典型Ⅱbは,研究者によって多少の違いがありますが,厳密に定義する立場を取れば,内視鏡では現在のところ診断はできないであろうといわれています.

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 Ⅱc境界は,1)単純な曲線を描き,段形成の鮮鋭な型(断崖型と名付けた),2)複雑なヂグザグな線を描き,しばしば多数の非癌粘膜島を伴う型(リアス海岸型と名付けた),3)段形成が不鮮明でⅡc壇界がはっきりしない型(遠浅型と名付けた)の三型が区別される.図1はAH法実体顕微鏡観察をした断崖型Ⅱc境界である.非癌粘膜は明瞭な網状SP(6巻10号:第1回参照)を示しているが,下2/3のⅡc面ではそれが不明瞭で,ヘマトキシリンに不規則に淡染し,所々にカニの穴状に散在した不鮮明な胃小窩の残存が認められる.網状SPの網眼部に相当する粘膜部を胃微細区areolae gastricaeと名付けたが,図2のごとくⅡc境界の非癌部でこのareolaeが完全に保たれ,従って境界線が内側に向って凸の微細な弧を描いていることがある.これはareola完全型Ⅱc境界である.また時には,Ⅱc境界の非癌粘膜部のSPが乱れ,areolaeが不規則にくずれていることがある.これは,areola崩潰型Ⅱc境界である.図3はリアス海岸型で,右下半分は非癌粘膜,左上半分がⅡcである.リアス海岸型にもareola完全型とareola崩潰型とがあるが,この例は一部areola完全型,一部areola崩潰型を示す.リアス海岸型境界部Ⅱc面には肉眼的大きさから実体顕微鏡的大きさまでの非癌粘膜島が散在する.島の最も小さいものは図4に示すように一コーコになったareolaで,これを微細島(microislet)と名付け,数コのareolaの集団からなる島を小島(islet)と表現している.図5も断崖型Ⅱc境界であるが,下1/3のⅡcと上1/3の非癌粘膜(FSPが明瞭)との間にFP,SPが乱れて,不鮮明になった帯状の領域が認められる.この部はⅡb状癌粘膜である.従って厳密に言えば,これはⅡbでふち取られたⅡc境界である.また時にはⅡaでふち取られたⅡc境界もある(しかしこのⅡbやⅡaのふち取りは肉眼では読みとれない位のものであるから早期胃癌の型判定には考慮する必要はない).図6は遠浅型Ⅱc境界である.下1/3は非癌粘膜(FSPが明瞭)で,上の方向に進むに従って段々とFSPは乱れ,崩潰し,不明瞭となり遂には消失している.上1/3はⅡc面である.この遠浅境界部では非癌胃小窩と癌性胃小窩とが混在している,あるいは粘膜の基本構造が一部保たれ,一部くずれ,その固有層に癌細胞が浸潤増生している.Ⅱc面はすでに述べたように,FP,SP,FSPが不明瞭で,あるいは崩潰消失しているが,所々にカニの巣のような小溝,あるいは不鮮明で乱れた小溝が散在していることがある.これは残存した非癌性胃小窩や胃小窩,または形成された癌性の胃小窩や胃小溝である.カニの穴や小溝が全く認められないⅡc部は単純癌のことが多く,組織学的に見ても非癌胃小溝は全く残存していない.一般にはⅡc面はヘマトキシリンに染まりにくいことが多い(H不染性Ⅱc).これは第2回目で少しふれておいたH不染性びらんと同一の理由によるものである.

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 たいへん奇妙な題であるが,その意味がすぐのみこめた人も多いであろう.ある程度内視鏡の経験を重ねた人でせっかく挿入した内視鏡を,患者自身に抜去された苦いおもいでをもたないものはあるまい.

 患者と術者とのコンタクトが十分とれていたり,挿入開始前の説明が完全であれば,こうしたおもいがけないことはそう起こらないとは思うけれども,時に全く予測ができないことがある.多くの例では挿入開始前から患者は不安・緊張の表情を示し,身体を固くしている.挿入もてこずることが多い.

Ⅱbの内視鏡診断 上野 恒太郎
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 癌は潰瘍またはびらんをつくり易く,とくに癌が粘膜表面に露出した部分ではほとんどといってよいぐらいに粘膜欠損がみられます.それ故,胃粘膜表面に欠損や隆起性変化を伴わないⅡb型癌とは,その部の胃粘膜に癌が存在する状態としてはごく初期の病像と考えられます.

 Ⅱbの実際の病型としては,早期胃癌のごく初期の病像でいわゆる典型Ⅱbと呼ばれるものと,すでに存在する癌の周辺粘膜に癌の進展形式の一つとしてみられるいわゆる随伴Ⅱbとがあります.一方,非常に浅いびらんが点在するが病巣全体としては陥凹がはっきりせず周辺の非癌粘膜との境界がよみとれないものや,病巣全体のひろがりに対して凹凸の変化が軽小な病変などでは,ⅡbとⅡc(またはⅡa)とどこで一線を画するかが実際上の問題となります.今春のシンポジウム“Ⅱbをめぐって”では,このようなごくわずかしか凹凸のない癌を従来の明らかなⅡc(またはⅡa)と区別して類似Ⅱbと呼称し,前述の典型Ⅱb,随伴ⅡbとともにⅡb診断の手がかりを得るための検討が行なわれました.

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 難治性胃潰瘍を何とかして癒してやろうという気持は診療を行なっている者にとって一つの大きな気がかりである.経口薬も実に多種あらわれて使ってくれというメーカーの宣伝攻勢も激しいが,もうひとつこれという効果がほしいものである.胃生検用のファイバースコープができたとき,みなが等しく考えたことはこの機械を使って生検診断ばかりでなく,治療もやってみようということであったと思う.

 その治療面の一つとして,生検用チャンネルを通して注射針を挿入し,目的部位を直視下に刺し薬液を注入するとどうなるであろうかという問題があった.昭和42年のはじめにポリエチレンチューブの先端に注射針をつけた手製の注射管を作り,生検用ファイバースコープを通して胃癌にマイトマイシンを注射したのが,そもそものはじまりであったが,注射針とチューブの接着の問題や鉗子出口のところに針がひっかかってうまく出なかったり,接着部がひっかかって抜去がうまくいかなかったり,注射に際してかなり高圧をかけるので接着部がこわれたりして,実験は失敗ばかりしていた.注射管の製作をあるメーカーに依頼したが一向にとりあってもらえず再三たのんでやっと作ってもらったのが,何と先端の針とチューブの接着部が太すぎて生検用チャンネルを通せないものだったりしたことは,苦労話の一つである.

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欧文目次

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 本書は長年にわたり米国フィラデルフィアのプレスビテリアン大学のRoth教授の許に留学していた梅田博士がその間,同氏の所属する東大第一内科の論文を,立派な英語に翻訳されたものである.

 本書はいわば胃カメラによる胃疾患診断学の英文No.1とも称せられるもので,さきに筆者らの病院より出された早期胃癌アトラスの英文版に早期胃癌の胃カメラ診断の項があるが,胃疾患全般にわたり,45枚の胃カメラのカラースライドを使って,英語で書かれたものとしては,世界最初のものといってよかろう.

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 この書物は,1922年に筋肉収縮の研究でノーベル賞を受けた,世界における生理学の最長老である英国のA.V.Hill教授の“The Ethical Dilemma of Science and other Writings”(1960)のなかの論文で,現在のわれわれに関心のある部分をえらんで訳されたものである.

 さすがは,高名な生理学者であると同時に,科学全般に対する高い識見と政治に対する深い関心の持主のヒル教授であることが,この書物の内容からはっきり汲みとれる.

編集後記 竹本 忠良
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 本号は久方ぶりに症例・研究特集である.たいへん失礼な言い方かもしれないが,読者のなかにはまた症例特集号かと表紙だけ眺めてそのまま本誌をしまいこむ方もあるのかもしれない.

 私は症例特集は「するめ」みたいなものだと思っている.見ためには形が悪いし,味もさほど美味とは思えない.それに堅くて歯をいためそうだ.しかし,よく噛めばだんだん味がでてくるし,柔かくもなる.

基本情報

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胃と腸
6巻12号 (1971年11月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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