胃と腸 6巻13号 (1971年12月)

  • 文献概要を表示

 1962年内視鏡学会で早期胃癌の定義と肉眼分類が提唱されて以来,X線および内視鏡診断学の発展と技術の普及により本邦における早期胃癌の発見数は逐年的に増加し,現在では2.0~3.0cmの早期胃癌が一般開業医のレベルでも診断可能となってきた.

 Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌を表面隆起型Ⅱaの亜型とみれば,Ⅱaの隆起は粘膜の厚さの2倍程度と規定されているので,Ⅱa+Ⅱc型はその程度の隆起を主体とし,一部に陥凹を有するものと定義されるであろう.この隆起の高さについての定義からいえば少しはみだしてくるが,どちらかと言うとⅡa+Ⅱcとせざるをえない症例が存在する場合もある.

  • 文献概要を表示

 早期胃癌の詳細な解析が各方面から行なわれているが,Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌に関しては文献が大変少ないのに驚くほどである.この型の内視鏡診断は余り問題がないのかもしれない.

 しかし,臨床上重要な問題が1つある.すなわち,Ⅱa+Ⅱc型は進展が比較的早く,肝転移をおこしやすく,予後も早期胃癌の中では最も悪いと考えられている.この型のほとんどは粘膜下に癌浸潤を伴って発見される.一般にⅡa+Ⅱc型のⅡa部は癌の粘膜下浸潤のために生じたものである.したがって,より早期の発見が必要であり,そのための逆行的追跡も極めて重要な仕事である.そういう作業から発見されたビラン,または極めてわずかな陥凹を生検することも大切である.いわゆるタコイボ型胃炎のビランと全く外観上の区別がつかぬこともあるので注意を要する1).Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌が,より早期にどんな内視鏡像を呈しているかを未だ不十分な資料ではあるが,若干の検討を加えてみたい.

Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌の病理 丸山 雄造
  • 文献概要を表示

 Ⅱa+Ⅱc早期胃癌は中央に浅い陥凹性変化を示すほぼ輪状の隆起性病変で,その特徴ある形状から興味が抱かれている.また井口らは早期胃癌の術後予後を追究して,この型の症例中にしばしば肝転移による早期死亡例のみられることを指摘し,そのPen型発育の定型例として掲げて以来,予後との関連の点からも注意を集めている.

 診断技術の向上に伴って隆起性病変の症例の比率が次第に増しつつあり,Ⅱa+Ⅱc型胃癌の経験も同時に数を増しつつあるが,その頻度は,林田の集計による早期胃癌2,364例中154例,佐野の報告によれば300例中22例が経験されており,筆者の手もとの早期胃癌160例中8例を数え,この型の症例は全早期胃癌の5~7%であることが知られる.

  • 文献概要を表示

 Ⅱa+Ⅱcの診断が特に取上げられた意味を考えると,Ⅱa+ⅡcはⅡaの亜型と考えられると同時に,Ⅱcの深部増殖型とも考えられていて,共にBorrmann Ⅱ型への移行段階の早期癌の形態像として注目されて来ている点がまずあげられる.発見せられたⅡa+Ⅱc病変は多少とも粘膜下浸潤を伴ったものが多く,より小さいものの内に,かつ粘膜内に癌のとどまるうちにより早期に診断されることが望まれる.これらの観点からX線検査,内視鏡検査を駆使しての総合診断の効果が期待されるものである.

 陥凹型と隆起型とにほぼ2大別される早期胃癌の肉眼分類に於いて,Ⅱa+Ⅱc型は時には隆起が目立ち,時には陥凹が目立ち,観察による形状診断の範囲で組織形態像をまで想定することは容易ではない.早期癌を診断する立場にたつものとしてこの病変型の示す意味あいを考え,あくまでも患者の予後を考慮した立場にたって綜合診断を行なう観点についてふれてみたい.

  • 文献概要を表示

 中島(司会) どうも皆さん御苦労様でございます,きょうは佐野先生と2人で司会さしていただきますが,大体佐野先生にバントをお渡しして,私はアシスタントになりますから,その点よろしくお願いしたいと思います.では佐野先生からお願いしたいと思います.

 佐野(司会) 早期胃癌の分類のうちでもⅡa+Ⅱc型は人によってずいぶん意見が違うと思います.今日の座談会をすすめる都合上,私達が考えられるⅡa+Ⅱcの形態を示すものを図に書いてみましたので,これに従って,話しを進行させていただきたいと思います.

一頁講座

  • 文献概要を表示

 内視鏡の挿入等にともなう偶発症は器種の改良と術者の細心の注意によって激減させることができるが,前処置としての局所麻酔による事故はどうであろうか.

 局所麻酔は内視鏡の介助者に委ねることが多いが,不注意な使用あるいは特殊な体質の人では時として重篤な麻酔事故が発生しうることはよく知られている.

  • 文献概要を表示

 結腸ファイバースコープが実用の域に達してから2~3年になる.最近では,精力的にスコープを使っている諸施設では8割内外の高率で盲腸,さらには終末回腸へ挿入されているようである.今回はその挿入法および挿入に関する問題点について述べてみよう.

  • 文献概要を表示

 Ⅱa境界Ⅱa境界は一般に鮮明である.AH法実体顕微鏡的に観察すると大体4型に分けることができる.すなわち図1に示すごとく隆起の範囲と癌の範囲が完全に一致する型(J型;JustのJ)と,隆起した辺縁は非癌粘膜の過形成であって癌はそれよりやや内部にある,言いかえれば隆起した過形成性非癌粘膜で縁取られたⅡa境界(H型;HemのH)の2型がまづ分けられ,両型それぞれにくびれをもって隆起するもの(J-1型,H-1型)と,もたないで隆起するもの(J-2型,H-2型)が分けられる.また,何れの型においてもその境界線は外側に向って凸の弧を描いているが,強い不規則なヂグザクな線を示すものと,比較的なめらかなゆるい弧を描くものがある.

  • 文献概要を表示

 注射部位は薬液を如何なる目的で用いるかによって決る.

 並木先生達の行なった方法によれば,肉芽増生を促す目的で,O.5%アラントイン溶液を1~3m1,Fibrosisを抑制するためにリンデロン4mg/m1を0.5~1ml,コルトシンF2.5mg/mlを0.5~2m1,アラントインは潰瘍底に,ステロイドは潰瘍縁に,ゆっくり注入したといわれる.注入箇所は適宜かえて2~3カ所にする.私達は未だステロイド剤の使用は行なっていない.特に難治性の潰瘍だけを対象にしているため,症例数も北大グープの数百例という数に較べてほんのわずかであるので,未だ種々の薬剤を用いる段階まで達していないからである.

  • 文献概要を表示

 最近の胃X線・内視鏡検査の進歩は著しく,胃疾患の形態学的な診断能は飛躍的に向上した.その結果,最近では数多くの早期胃癌が発見されるようになった.ことに胃隆起性病変の質的診断は,比較的小さな1型ないしⅡa型早期胃癌の鑑別診断を除けば,比較的容易であると考えられている.

 今回,筆者らはⅡa+Ⅱc型早期胃癌様の形態を呈した興味ある胃隆起性異型上皮病変を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 胃粘膜下腫瘍のうちでも神経線維腫は比較的まれな疾患であるが,筆者らは最近,胃前庭部に胃壁内迷入膵と併存した胃神経線維腫の1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 直視下胃生検の進歩普及により,胃内病変の術前診断はきわめてその正確性を増し,また,病変の長期追求が次第に容易になってきたが,胃生検の結果,異型上皮と診断がついた場合,臨床的にその処置に迷うことも少なくない.筆者らも,Ⅱa型早期癌を疑い胃生検を行なったが,異型上皮と診断がつき,2カ月ごとの厳重な経過観察を約して帰宅させたが応ぜず,8カ月後の来院時には全く別人の胃をみるような急速な発育を示した1型早期胃癌を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 吐血および下血を来す大量消化管出血は日常数多く遭遇する疾患であるが,その原因疾患を頻度別にみると圧倒的に胃および十二指腸,次で結腸直腸,食道などの疾患が多く,その他の疾患は比較的少ない.特に十二指腸を除く小腸に起因するものは全消化管出血の1%前後にすぎないとされ,比較的まれとされている.著者らは最近,空腸粘膜に発生した微小動脈瘤の破裂により下血ショックをきたし,手術により救命しえた1例を経験したが,これは出血性小腸疾患の内でも更にまれなものであり,わが国においては未だその報告がなく,海外においても過去わずか6例が報告されているにすぎない.以下著者らの経験例を報告すると共に本疾患につき文献的考察を試みたい.

  • 文献概要を表示

 遺伝性出血性末梢血管拡張症は,1865年Babingtonによってはじめて遺伝性鼻出血(hereditary epistaxis)として記載され,1896年Rendu,1901年Osler,1907年Weberらによって詳細に研究され,以来,Rendu-Osler-Weber病といわれるようになった.その後,さらに1909年Hansにより遺伝性出血性末梢血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia)なる名称が提唱されている1).わが国では単にOsler氏病として記載しているものが多いようである.本症は,皮膚,粘膜の動静脈吻合部が拡張し,多数の小血管拡張斑を生じ,その破綻により容易に出血をきたす遺伝性疾患であり,出血傾向,多発性末梢血管拡張斑ならびに遺伝性を3主徴とするものである.本症は,わが国では,1934年正木2)の最初の報告以来1969年までにわずか21家系の報告をみるにすぎず3),このうち消化管の内視鏡所見についての記載は更に少なく,野村3),松永4),稲本5),依藤9)らの症例をみるにすぎない.

 今回,われわれは比較的詳細に検索しえた本症の一家系を経験したので,主として消化管の内視鏡所見を中心に報告することとする

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 最近の医学の分野における計測法の発展の中で注目されているものの一つにサーモグラフィがある.“Optoelectronics”に属するこの新らしい計測法は,これまでの生体の温度についての考え方を大きく変換させてしまったといっても過言ではなかろうと思われる.温度分布が画像としてX線像のように,また最近は色の分布として認めることができ,しかもそれが遠隔で短時間内にキャッチできるところにこの方法の特徴があるといってもよいであろう.研究会の代表である渥美和彦教授はその序文の中で,研究会が数年にわたりとった約4,000枚のサーモグラムの中から代表的なものを選んでこの図譜をつくりあげたと述べている.サーモグラフィの初期の開拓を行なってきたこの研究会のメンバーの努力が,ここにみのったものであるといってよいであろう.この図譜はつぎの内容から成り立っている.

 序論としては,Ⅰ.はじめに,Ⅱ.原理と装置,Ⅲ.撮像時の注意,から成り,正常人のサーモグラムとしては,Ⅰ.正常人の身体各部のサーモグラム,Ⅱ.正常人の種々の条件下でのサーモグラムであり,各種疾患例のサーモグラムとしては,Ⅰ.妊娠時のサーモグラム,Ⅱ腫瘍のサーモグラム,Ⅲ.脈管疾患のサーモグラム,Ⅳ.炎症性疾患のサーモグラム,Ⅴ.神経系疾患のサーモグラム,Ⅵ.リウマチ性疾患のサーモグラム.Ⅶ.その他,となっている.この内容からもわかるようにサーモグラフィの主な臨床的応用の分野はこの図譜の内容の示すような領域であるといってもよいであろう.しかしこの応用の領域は今後ますます拡大されてゆくものと考えられる.

編集後記 佐野 量造
  • 文献概要を表示

 私達国立がんセンターグループが早期胃癌図譜を出版した当時は早期癌が100例程度であった.編集委員がそれぞれの立場から肉眼分類を検討しているうちに,小形のBorrmannH型様の外見を呈する何例かの症例に遭遇し,これをどのように分類するかで議論が沸いた.その結果,周辺が隆起し中央の陥凹しているものをⅡa+Ⅱc型という分類で統一しようではないかということで,どうやら意見がまとまった.その当時のこの型の早期癌は粘膜下層に深く浸潤したものばかりであったが,その後年数がたつにつれて粘膜内の癌でもドーナツ型または環状を呈するものが出てきた.一方この名称が一般に使用されてくると人によってはBorrmannⅡ型様のもののみにⅡa+Ⅱcを限定すべきである,粘膜のものはⅡaまたはⅡcでよいではないかという意見が外部のあちこちから出てきた.

基本情報

05362180.6.13.jpg
胃と腸
6巻13号 (1971年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月5日~11月11日
)