胃と腸 5巻12号 (1970年11月)

  • 文献概要を表示

はじめに

 筆者らは,併存する粘膜ヒダ集中によって当初Ⅱcを疑い,生検所見からⅡaを疑ってX線精密検査を反復再検し,結局Ⅱa+Ⅱcであった1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃壁内好酸球性肉芽腫はJaegerにより1932年初めて報告され,その後わが国においても多くの人により発表されている.筆者らは最近,胃にポリープ様腫瘤を呈し,Ⅰ型早期胃癌を思わせた好酸球性肉芽腫の1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃の好酸球性肉芽腫は1937年Kaijserにより初めて報告されているが,欧米での報告も数少なく本邦では中馬らの報告を第1例として,1969年までにわずか16例の報告がみられるにすぎない.筆者らは最近,胃の比較的大きな好酸球性肉芽腫の1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 筆者らは最近5年間の上腹部手術例341例中4例の副膵を経験した.この中,副膵が胃にあったもの3例,空腸にあったもの1例で,胃壁迷入副膵は同期間の手術全胃腫瘍105例に対し2.8%,胃良性腫瘍24例に対して12.5%となる.その2例はすでに津島ら1)によって報告されているが,ここでは多発性胃潰瘍を伴い胃粘膜下嚢腫を形成した最近の1例を報告し,あわせて胃嚢腫,特に胃壁迷入膵嚢腫について若干の考察を試みることとしたい.

前壁Ⅱc型早期胃癌の1例 鈴木 荘一
  • 文献概要を表示

はじめに

 胃前壁病変のX線診断は,最近,熊倉1)2)3)をはじめとして,多くの報告4)~7)がある.この症例も,ルーチン検査として腹臥位二重造影法による胃前壁撮影を行なってきたところ発見されたものである.

  • 文献概要を表示

 胃平滑筋肉腫は,比較的まれな疾患であるが,筆者らは穿通性胃潰瘍に合併した1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 最近における胃疾患のレ線および内視鏡診断技術の進歩は目覚ましく,旧来その質的診断の極めて困難とされていた隆起性病変に対して,術前にかなり正確な診断が下されるようになってきた.筆者らは術前,レ線およびVa型胃カメラによる反転撮影により,胃平滑筋腫と診断し,これに対して噴門側切除を行ない,組織学的には,一部悪性化像を示す1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 十二指腸原発の良性腫瘍としては,腺腫,線維腫,平滑筋腫などがあるが,いずれも比較的まれで,とくに平滑筋腫は胃に発生するものと比較してきわめて珍らしいものとされている.

 筆者らは,最近その1例を経験したので,症例を報告するとともに,文献的考察をこころみた.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.症例

患者:○村○ク 52歳 家婦

家族歴:特記すべきことなし.

既往歴:36歳時,虫垂切除.38歳時,腸癒着障害のため剥離術を受けた.

主訴:上腹部の膨満感

現病歴:昭和40年春頃から誘因なく食後.上腹部に膨満感があり,次第に食欲が減退してきた.膨満感は一進一退であったが,著しくなると必ず右側の背部に張ったような疼痛を伴い,苦しさの余り自ら嘔吐すると,吐物に少量であるが3日前の食物が混っていて,嘔吐後急速に諸症状は軽快した.また嘈囃,曖気,悪心,上腹部のモタレ感が常時あったが,絶食を2日位続けるとこれらの愁訴は全く消失した.便通1日1行.体重減少はなかった.昭和43年11月14日初診.

  • 文献概要を表示

はじめに

 虫垂憩室に関しては,Ribbert(1893)およびKelynak(1893)の記載以来,欧米ではかなり多数の報告例があるが,本邦においては,虫垂手術の多い割には少なく,現在までにわずか星野1例橋本2例,池森,矢野尾,陳各1例の計6例を見るに過ぎない.最近筆者らは,本症の1例を経験したので報告すると共に,多少の考察を加えてみたい.

  • 文献概要を表示

はじめに

 Peutz-Jeghers症候群の報告は近年増加の傾向にある.Peutz1)(1921)の記載と,Jeghers2)(1949)の系統的な報告によって,病像の確立されたこの症候群は,すでに外国では200例以上3),わが国でも長州4)(1955)以来80例以上の報告5)がある.

 本症候群で臨床上もっとも関心の払われる事項のひとつは,ポリポージスの癌化の問題であろう.他の消化管ポリポージスとは異なり,本症候群のポリポージスの悪性化を否定する報告6)7)が多い.

 筆者らは最近,偶然口唇部のメラニン色素斑を指摘された主婦に,上行結腸癌と腸管ポリポージスとが併存している症例を経験し,さらにその家系に明らかな遺伝的関係を見出した.ここに本症例と本症候群に関連する臨床上の2,3の問題点について報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃の病変を部位別に眺めると,病変の種類によって,その存在部位にそれぞれ好みのあることがわかる.ごくおおまかには,胃中部に多く,下部に,ついで上部に発生することが多いが,非上皮性腫瘍は上皮性腫瘍に比して中部から上部よりに(後者は中部から下部よりに)好んで発生するという傾向がある.一方,非上皮性腫瘍のうちでも,平滑筋由来のものは中部から上部に生ずることが比較的多い.

 本稿では,胃を組織学的にみて,体部腺領域,幽門腺領域にわけ,特に前者に生ずる疾患を中心に考察を加える.

  • 文献概要を表示

はじめに

 昭和41年1月から43年12月までの3年間に,県立ガンセンター新潟病院で手術を受けた胃ポリープの75症例について臨床的観察を行ない,若干の考察を試みた“胃ポリープ”は昔より知られている疾患であるにも拘らず,その定義や分類は末だ確立されていないのが現状である.したがって,筆者ら外科医にとって,手術方針を決定する際に困難を感じることがしばしばある.よって,自験例にもとづいて手術適応と術式を検討した.

  • 文献概要を表示

はじめに

 医学の目覚ましい進歩に伴って,消化器病学の診断面においても画期的な研究,開発がなされ,特に胃疾患の診断についてはレ線,内視鏡さらには内視鏡を応用した胃生検の発達により,器質的疾患,なかんずく早期胃癌の診断には驚異的な成果を収めている.かように消化管の診断が進歩しているにもかかわらず,膵臓病学の分野においては,膵が後腹膜に位置するという解剖的関係から診断に対する方法が極めて困難であることやPancreozymin-socretin testによるすぐれた膵外分泌機能検査をもってしても,膵に大きな予備能力があるという機能上の問題,さらには膵疾患患者に特異的な症候に乏しい点などから,膵疾患の正確な診断は急性膵炎を除いてはなお困難である.一方,典型的な急性膵炎を除いた膵障碍にみられる上腹部疼痛,嘔気,嘔吐,微熱,黄疸などは,胃腸,胆道疾患においても同様にみられる症状であり,しかもアルコール,寄生虫,胆道系疾患,胃十二指腸潰瘍その他を原因として,膵障碍が発生することから,これらは一般に他の疾患すなわち胆のう炎,胆石症などの胆道系疾患,胃および十二指腸潰瘍などの病態にかくされたり,胃炎,胃腸神経症,胃下垂,胆道ジスキネジーおよび,irritablecolonなどと誤診されている場合が多いと思われる.このように膵障碍の診断が正確に行われない理由として,“膵炎の存在の可能性に考えおよぶ”ことから膵炎の診断が始まると言う有名なGulekeの言に代表されるように,消化器疾患における膵疾患への認識が他臓器に比し充分でないことにもよるが,診断過程の第一段階の一般臨床症状に特有なものが少なく,第二段階である一般臨床検査の進め方も,胃腸および胆道系の検査が実施されそこでなんらかの所見が得られると,その所見に従って診断名がつけられ治療されたり,あるいは時々膵機能検査として,尿および血中amylaseが測定される程度であると考えられる.従って,たとえ膵疾患が存在していても,膵特殊診断であるPancreozymin-secretin test,特殊レ線診断さらには消化吸収試験などの検索を行ない,膵臓の正確なる診断を下すことができなくなる.

 筆者は従来,レ線,内視鏡および胃液検査を主体とする胃腸の精密な検索,肝機能検査,胆のう胆道のレ線検査,十二指腸液検査による肝,胆道系の検索,さらには精神身体症的検索などを実施しても,なお原因不明の上腹部疼痛を主訴とする患者の多いことに疑念を抱いてきたが,激症な急性膵炎や既往歴のある慢性再発性膵炎以外に比較的軽度の自覚症状を持つ膵障碍がこれまで考えられているよりも多いのではないかと考えた.しかしながら,上腹部疼痛を訴える患者全例にPancreozymin-secretin testを含む膵特殊検査を実施することは,方法が煩雑なため極めて困難であると言わざるを得ない.従って,筆者らは膵疾患の確診は特殊検査法にゆずるとして,特殊検査を必要とするか否かを判断することが目下の最大急務であると考えた.そこで前述の第二段階でごく普通に行なわれる胃十二指腸レ線検査に際し,“simplifed hypotonic duodenography”を併用し,これで異常所見の認められた場合に,一週間連続尿amylase,血中amylase,およびPancreozymin-secretin test,その他を実施した結果,本方法の有用性を認めたので報告する.

  • 文献概要を表示

 回盲部は,直腸,S状結腸についで病変の多いところです.この部に腫瘤を触れる場合も日常しばしばあります.このようなときには,触診によって腫瘤の性状を詳しく知らなければならないのは勿論です.そのときにもっとも大事なのは,X線透視を存分に駆使することです.腫瘤と腸管の関係,腸管の可動性などを透視下の触診で納得のゆくまで調べることが必要です.それから,回盲部のX線検査は,最近流行の二重造影法だけに頼らずに,充えい法なり,粘膜法なり,状況に応じて有効とおもわれる方法を試してみることです.とくに,現在では古いといわれる経口検査法が非常に有効であるのがこの回盲部の診断です.

  • 文献概要を表示

 月日の経つのは早いもの,私が内視鏡検査を始めて,もう十数年たった.Wolf-Schindlerの古びた胃鏡を手にとり,接眼部に眼をあててSchindlerのGastroscopyの頁の一部をのぞきみしたのが,今でもつい先日のことのような気がする.先代の故川井銀之助教授がドイツに留学してもち帰られた品物である.先生の言によれば,滞独中彼の地でやった時には胃内観察がよくできたが,帰朝後教室でやると,余り調子が出ず,多忙にまぎれて断念し,そのまま教授室の一隅にお蔵にされた状態であった.当時かけだしの臨床医であった私をして内視鏡検査に心動かせた出来事は,忘れもしない若年者胃癌の苦い経験であった.軽い上腹部痛と,3日に1回の弛張性高熱を発し,軽度の脾腫を伴った患者で,胃X線検査は前後3回にわたり施行されたが(当時,私共の教室ではX線検査は全て放射線科に依頼するシステムであったので,自分の手で行なうわけには行かなかった)潰瘍あるいは癌性変化は発見されず,原虫が証明されないために疑問を残しつつもマラリアの既往と脾腫およびカルテの上の定型的な熱型にひかれてアテブリン,キニーネ療法を行ない一旦解熱してほっとした.しかし症状の好転も束の間で,再び発熱し結果的には死の転帰をとったが,剖検によって胃体部前壁の穿通性潰瘍からの癌化を思わせる病巣があり,一部が胃周囲膿瘍を作っていた患者であった.生前に胃内をのぞくことができ,病巣が発見できていたら,たとい死はまぬがれなかったかもしれないが大きな誤診・誤療はさけ得たであろうし,なによりも確診を得られぬままに自分の臨床医としての無力さを感じつつ,数週にわたり毎日毎日病室へ足をはこぶみじめさだけは味わわなくてすんだであろうと思えてならなかった.

 そこで,かびが生えてくもってしか見えないWolf-Schindlerの胃鏡を用いてSchindler,GutzeitのGastroskopieの著書を手がかりに,四苦八苦しながら胃鏡を始める次第となったが,胃外でみてもぼんやりとかすんでしか見えない胃鏡では,胃内がみえるわけがなかった.そこで,レンズ系を少なくした硬式胃鏡を試作し,次いでモノクロームでの胃内撮影を試みた.現在の胃カメラあるいはファイバースコープで撮影したフィルムからみればとても胃内の写真といえる代物ではなかったが,始めて胃角がぼんやりと撮れた時の喜びは今でも忘れることができない.しかし,当時の技術の未熟さも手伝って,金属性の硬式胃鏡あるいはflexibleとはいってもわずかしか曲がらない胃鏡では挿入の操作そのものが大問題であって,患者の体位と首の保持が正しくなければ胃鏡は入るものではなく,途中で中止することも再三であった.

  • 文献概要を表示

 十二指腸液中の癌細胞を検出することによって診断できる臓器の癌は,十二指腸癌,十二指腸乳頭部癌,膵臓癌,胆道癌,胆嚢癌,および肝癌などがあげられる.しかし,これらの癌はいずれも現在の段階では早期診断の可能性が極めて低いもので,特に細胞診によってその可能性を見出だそうとする考え方が強くなってきている.今後努力を払うべき分野のひとつであろう.

 近年,Secretin試験,Pancreozymin-Secretin試験などの膵機能検査法が進歩して,この方法によって採取された十二指腸液を用いて細胞診が行なわれている.細胞採取の最も大事なコツは,Diamond tubeまたはDreiling tubeを通じて流出してくる十二指腸液を,氷をつめた箱の中でひやしながら試験管に集め,それぞれの試験管内の液を採取後直ちに遠沈することである.時間をかけると膵液,胆汁中に含まれる酵素により細胞がすぐ崩壊,変性してしまう.

  • 文献概要を表示

 前回はⅢまたはⅢ+Ⅱc型胃癌の鑑別診断についてのべました.今回はⅡc型胃癌の肉眼の読みについてのべることにします.

  • 文献概要を表示

 感銘を受けた1冊の本について書けという電話で,思わず新旧雑然とした書棚をながめた.そしてとりだしたのがこの本である.学問の進歩が早いということは知識の陳腐化するスピードが早いということで,あまり古い本の名前をあげることは誤った情報を提供する危険がある.といっても,深い感銘を素直に受けるだけの豊かな感受性と吸収力は若い血の気の多い時代の特権であって,われわれがある程度古い本をとりあげることも止むを得まい.この本はWittenbergの解剖学教授であったAbraham Vaterの業蹟(1720)が永久に輝いている領域でのX線診断に関する労作で,211頁,図版150の小著である.この本の存在を知ったのはH.G.JacobsonらのTheVaterian and Peri-Vaterian Segments in Peptic Ucer(Am. J. Roentgenol.,79;793,1958)という論文であった.ちょうどその頃,同級の水野美淳博士(現東女医大小坂内科助教授)と病理学教室の保存材料をひっくりかえしてVater乳頭の形状,大きさなどを調べさせてもらったりまた沖中内科の剖検例についてVater乳頭膵管のX線所見をみ始めていた.その仕事は「Vater乳頭のレ線学的研究」1)として消化器病学会に発表したが,仕事の上でどうしてもこの本を読む必要があり,注文してから入手するまでの3カ月をひどくながく感じた.この本と同時にPopfelがニューヨーク大学放射線科の助教授時代に書いたRoentgen Manifestation of Pancreatic Disease(C. C. Thomas Publisher,U. S. A.,1951)も入手して読んだ.

 Vater乳頭附近の悪性疾患をなんとか根治的手術するには病変をより早い時期にX線的にみつけだすことが必要であることはいうまでもないが,X線的になにが正常の乳頭で,なにが異常な所見であるか,明確なCriteriaのなかった当時として,著者らはずいぶん苦心したことと思う.事実,著者らはまず100例をこす剖検材料についてVaterian Segmentsの正常X線像の分析,組織学的研究を加え,ついでこの領域の各種の疾患の手術例,剖検例についてX線所見を分析したものをまとめたものであって,今日読んでも準古典的な名著の1つとしての価値を失っていないように思う.

  • 文献概要を表示

 古都レニングラードには何週間いても飽かぬ程,多くのものがあった.人々の心も,モスコーに較べて開放的であり,意志表示もはっきりしていた.ここでも数カ所の病院を訪れたが,主として,ペトロフ名称国立レニングラード癌研究所に滞在した.

 この研究所は1926年創立で,すでに44年の歴史を誇っている.ソ連邦全国から癌の追跡調査カードが送られてきて,この研究所の統計部門はコンピューターによって即刻資料整理を行なっている.「数分間のうちに,お望みの癌の統計を出してみせますよ」とのことであった.

--------------------

欧文目次

編集後記 高木 国夫
  • 文献概要を表示

 “胃と腸”も発刊以来すでに5年をすぎようとしています.この間,早期胃癌を中心に,胃十二指腸潰瘍をはじめとして消化管の重要な疾患および検査法の進歩が毎月テーマとしてとりあげられ,すぐれた論文が掲載されて,日本国内のみならず,全世界にも本誌の価値が知られてきています.“胃と腸”の英文版を希望する声を外国医師から聞くことも多くなっています.本誌が広く愛読され,その価値が高くみとめられ,全国からすぐれた論文が集まってきたのに,掲載が遅れがちになっている現状ですが,今月号は,症例と研究を特集しました.

 症例には,早期胃癌をはじめ,好酸球性肉芽腫,嚢腫,平滑筋腫など,また胃に関する症例のみでなく,十二指腸の平滑筋腫,結核,さらに,大腸疾患として,虫垂憩室,Peutz-Jeghers症候群が掲載されています.いずれの症例も,すぐれた写真と考按がなされているのみならず地道な作業にうらづけされていて,症例をよせられた諸先生方の御努力に感謝したい.

基本情報

05362180.5.12.jpg
胃と腸
5巻12号 (1970年11月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月5日~11月11日
)