胃と腸 48巻3号 (2013年3月)

今月の主題 隆起型食道癌の特徴と鑑別診断

序説

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はじめに

 ヨード液の撒布による色素内視鏡が積極的に行われるようになり,1980年代には食道表在癌の発見が相次ぐようになった.しかし,それまでは食道癌を表在型の状況で発見するのは非常に難しく,診断できたとしてもほとんどが小型の隆起型病巣であり,粘膜下層への浸潤を示すものであった.表在性の隆起型食道癌は0-Iおよび0-IIa型の病巣を含むが,0-IIa型には,全体として0-IIc型の範疇に含まれる陥凹内隆起成分もそのように表現される場合があるなど,必ずしも0-I型と連続的にとらえるべきではない病巣が含まれる.したがって,食道表在癌における隆起型病巣の生物学的特性を考える場合,0-I型の臨床病理学的な検討とそれに対応する臨床所見の分析からアプローチするのが適当と考えられる1)

 わが国における食道癌の組織型はほとんどが扁平上皮癌であるが,表在隆起型病変にはいわゆる特殊型の含まれる割合の高いことがよく知られている.組織型の異なる腫瘍はその性格に基づきそれぞれ異なる様式で増大していくが,発育進展の過程における組織変化や不均一性の程度もそれぞれにおいて異なる.その過程が腫瘍の表面および深部形態を決定し,医療者は内視鏡ないしX線造影によりその詳細を読み解くこととなる.特に様々な組織型の含まれる0-I型食道癌の臨床診断は,ほかのいずれの型とも異なる知的好奇心を診断医に抱かせるものである.

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要旨 隆起性扁平上皮癌の病態を知るうえでは,表在癌の特徴を分析することが重要と考えられる.術前未治療の隆起型表在扁平上皮癌(0-I型,0-IIa型),外科的切除58例,内視鏡的切除54例を肉眼的,病理組織学的に検討した.混合型が多くみられたが,隆起部分に限局してその特徴を分析すると,0-I型では腫瘍長径が大きいほど粘膜下浸潤がみられたが,0-IIa型では腫瘍の長径とは必ずしも相関せず,0-I型,0-IIa型において腫瘍長径5mmを超えると粘膜下浸潤の可能性をみた.隆起の立ち上がり方がなだらかであるものは粘膜下浸潤の可能性が高いことが知られており,筆者らの成績からも同様のことが言えると考えられたが,0-IIa型ではなだらかな立ち上がりは少なく,高さの低い隆起では粘膜内,粘膜下の判定は難しいものであった.腫瘍の表層への露出度が大きいものは粘膜内の腫瘍成分が多いと思われ,SM癌の比率が高い傾向が示唆された.旧分類の0-Isep型に相当する粘膜下腫瘍様発育をする特徴的な隆起病変があり,隆起表面の大半が非腫瘍性上皮で覆われ,上皮下に発育の主座があり,腫瘍浸潤は長径の拡がりと同等に全体的に粘膜下浸潤をすることが多い.この形態では特殊組織型を呈することが多いことが知られているが,最も多いのは一般の扁平上皮癌であることを再認識する必要があり,0-Isep型の位置づけは重要であると考えられる.粘膜下浸潤を来す0-I型では,多くが隆起腫瘍長径の大きさと同等範囲で粘膜下浸潤を認めたが,これは粘膜下での腫瘍増生が粘膜部分の腫瘍を持ち上げて隆起状となる考えを支持するものである.また腫瘍の表層での露出は全体ないし50%以上を認め,ほぼ全例が粘膜下浸潤は腫瘍長径の50%以上の割合を占めていた.腫瘍の表層への露出の程度や粘膜下への浸潤の広さが隆起の程度に反映していると考えられる.

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要旨 特殊型組織型食道癌のうち,類基底細胞(扁平上皮)癌(53.8%),癌肉腫(88.9%),悪性黒色腫(100%)はともに過去の報告と同様に隆起型を示していた.組織学的発育様式は,癌肉腫と悪性黒色腫では異なるが,それぞれでほぼ均一な発育様式であった.すなわち,癌肉腫では腫瘍のボリュームにより上方へ突出し,表面はほぼ全体が潰瘍化していた.悪性黒色腫ではそれとは対照的に,部分的に潰瘍を伴うが基本的には非腫瘍性上皮に覆われ,粘膜下腫瘍様を呈していた.一方,類基底細胞(扁平上皮)は,前2者と比較すると組織構築は多彩であり,その多くは上皮内扁平上皮癌から発生して上皮下浸潤性発育を基本としているが,進展とともに潰瘍化し,悪性度を増していくと考えられる.生検による確定診断の際には,これらの組織構築を考慮して組織を採取する必要がある.

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要旨 粘膜下腫瘍様もしくは特殊な組織型を呈する食道の表在型悪性腫瘍と良性疾患のX線所見について,提示可能な自験例の画像所見と報告例からみた特徴について概説した.悪性腫瘍 : (1) 典型的な組織像を呈する類基底細胞(扁平上皮)癌は,一見粘膜下腫瘍様であったが,立ち上がりは急峻で表面にゴツゴツした凹凸を伴っていた.(2) lymphoid stromaを伴う扁平上皮癌や内分泌細胞癌は,表面平滑な0-Is型であったが,表面に不整形の陥凹を伴っていた.(3) 癌肉腫は,亜有茎性でポリープ状の粗大な楕円形隆起を呈した.良性腫瘍 : (1) 平滑筋腫は,表面陥凹を伴わない半球状の平滑な粘膜下腫瘍や大小の平滑な結節状隆起を呈したが,(2) 10mm以上の顆粒細胞腫は表面に溝状,切れ込み状の陥凹を伴っていた.(3) 海綿状血管腫は2コブ状で表面平滑な軟らかく丈の低い粘膜下腫瘍であった.(4) 報告例も含めた膿原性肉芽腫は亜有茎性~有茎性のポリープ状隆起で棍棒状から分葉状を呈していた.(5) 炎症性線維性ポリープは下部食道に発生した長い茎を有する上皮に覆われた大きなポリープであった.隆起型の食道病変はまれな疾患が多く,画像所見のみによる質的な鑑別は困難であるが,表面のわずかな凹凸や陥凹から癌の所見を見い出すことや,報告例の形態的特徴やパターンを十分記憶して念頭に置くことが,術前の質的診断の向上に寄与すると思われた.

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要旨 隆起を示す食道腫瘍には,良性および悪性腫瘍が含まれるため,隆起の形(隆起の丈と基部の広さ),周囲粘膜からの立ち上がり,表面の凹凸や表面性状,大きさ,硬さ,色調,上皮内伸展の有無などを参考に鑑別を行う.平滑筋腫と顆粒細胞腫は,上皮で覆われた固い腫瘍を示すのに対し,脂肪腫,リンパ管腫,海綿状血管腫は,緊満感のない軟らかい腫瘍を示しており,色調などを参考にすれば,良性疾患はある程度診断可能である.これに対し,粘膜下腫瘍様の形態を示す食道癌は診断が難しい.発見時点で既に粘膜下層癌であり,血行性転移を生じる傾向があり予後不良のため,治療方針決定のためにも早期の診断が望まれるが,表層に露出している病巣部分が狭いため,適切な腫瘍組織が採取できず,確定診断に至らないこともある.粘膜下腫瘍様の形態を示す食道癌には,低分化型扁平上皮癌,類基底細胞癌,未分化型癌,腺様囊胞癌,腺扁平上皮癌,粘表皮癌などが含まれるとされているが,低分化型扁平上皮癌と類基底細胞癌では,粘膜下腫瘍様以外に,様々な隆起の形態を示す症例があり,形態だけでは診断困難である.

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要旨 隆起を主体とした食道表在癌39例を対象に,X線像による深達度診断について検討を行った.これまでに報告した側面変形による深達度診断では,B2型,C型変形の解釈にいまだ問題が残っており,正面像の所見を加えることでさらなる診断精度の向上を試みた.0-IIa型主体の病変をみると,上皮内伸展を伴わない上方発育の症例は,ほとんどがEP~LPMであった.また,E型,F型変形を呈するか,または正面像で上皮下腫瘍様の発育を示す所見を認めれば,SM深部浸潤した病変と診断可能であった.一方,0-I型主体の病変は全例SM癌であり,深達度診断に苦慮する可能性は低いと思われるが,正面像の所見を加味することで,その病変の発育進展形式を考慮した診断をすることが可能となり,診断能力の向上に繋がるものと思われた.

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要旨 隆起形態を示す0-IIa・0-I・1型食道扁平上皮癌について,内視鏡所見を中心とした肉眼病型別の色調および形態学的特徴と病理組織学的所見から,食道癌の壁深達度診断について検討した.隆起型食道癌の病型は,0-IIb,0-IIcを随伴する混合型が主体であるが,癌浸潤最深部の多くは隆起部分に一致していた.0-IIa型では,白色顆粒状および白色扁平低隆起は粘膜癌の代表的病型であり,基部に軽度のくびれを有する赤色小結節状0-IIa型はM2~SM1程度,基部が裾を引く赤色結節状0-IIa型はSM2,SM3を呈した.0-I型は,広基性赤色調0-Is型ではSM深部浸潤癌が多く,亜有茎性赤色調隆起0-Ip型もSM浸潤を呈した.1型については,基部の広い1型はT2・T3の進行癌を呈するが,基部の狭い赤色調1型はSM3~T2を示しており,T3外膜浸潤癌は少ない.また,特殊組織型食道癌は隆起を主体とした形態を示し,類基底細胞癌,内分泌細胞癌(小細胞型)では,腫瘍辺縁が非腫瘍性粘膜上皮に被覆され上皮下に発育する傾向を有し,癌肉腫は亜有茎性ポリープ状隆起を呈するという特徴がある.

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要旨 日本食道学会から食道扁平上皮癌の拡大内視鏡分類(日本食道学会分類)が提唱されたが,隆起型病変に対する診断精度は不明である.対象と方法 : 当院でESDを施行した隆起型扁平上皮癌40病変を対象とし,日本食道学会分類診断と病理組織像との相関を検討した.結果 : 正診は,Type B1が18病変中14病変,Type B2が13病変中4病変,Type B3が1病変中1病変であり,正診率は48%(40病変中19病変)であった.考察 : 誤診した原因は,(1) 角化やびらんにより血管が視認不可能,(2) 表層をEP~LPM癌に被覆された浸潤癌,(3) Type B2の深読みおよび浅読みの3つに大別された.(1) および (2) は通常観察での所見を,(3) はType B2領域のサイズおよび色調を加味することで,その大部分を正診することが可能であった.結語 : 日本食道学会拡大内視鏡分類に通常観察を加味することで,隆起型病変の深達度診断は向上すると考えられた.

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要旨 食道表在癌の深達度診断には通常内視鏡,拡大内視鏡,超音波内視鏡,食道X線造影などが用いられる.通常観察でほぼ平坦にみえる病変の深達度は,通常観察と拡大観察で十分に診断できる.一方,明らかな隆起を認める病変は粘膜下層に浸潤していることがあり,超音波内視鏡により有用な情報が得られる可能性がある.高周波数の細径プローブを用いて観察すると,食道壁は通常9層に分離される.表在癌の深達度診断には,3層から5層の高エコー層の評価が重要で,腫瘍エコーにより3層の不整や中断がみられ,4層には明らかな変化がみられないものをMM/SM1癌の診断し,腫瘍エコーが3層を断裂させ4層から5層に及ぶものをSM2/SM3癌と診断する.

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要旨 患者は50歳代,男性.検診異常にて,近医で上部消化管内視鏡検査を施行し食道癌と診断され,当院へ紹介となった.通常観察では,Mt中心に長径約7cmの発赤調平坦病変を認め,病変内中央に表面が顆粒状・結節状を呈する白色調隆起を伴っていた.なだらかな立ち上がりを示し,緊満感を認めた.ヨード染色では,隆起周囲には不整地図状の不染帯を広範囲に認めたが,隆起の多くは染色され,非腫瘍性扁平上皮に被覆されていた.隆起部のNBI拡大観察では,軽度拡張したType B2血管が,網状あるいは不整樹枝状かつ密に存在する所見を認めたが,血管の口径不同は乏しかった.EUSでは,腫瘍が第2~3層を主座に均一な低エコーを呈し,粘膜下層は菲薄化していたが,明らかな筋層への浸潤は認めなかった.隆起は,なだらかな立ち上がりを示す上皮下発育の腫瘍で,大小不同の顆粒状・結節状表面構造を呈し,周囲に上皮内進展を伴うこと,NBIでは,有馬分類のtype 4Rに類似していたことより,特殊組織型食道癌,特に類基底扁平上皮癌あるいは腺扁平上皮癌を鑑別に考え,表在型食道癌0-“Is”+IIb,cT1b(SM2)N0M0,Stage Iにて,胸腔鏡補助下食道切除術(3領域郭清)を施行した.病理診断はbasaloid squamous carcinoma(pSM2)with squamous cell carcinoma(pEP/LPM),INFb,ly0,v0,pPM0,pDM0,pRM0,SMT-like,27×20mm(浸潤部),N0であった.

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要旨 患者は60歳代,女性.近医の上部消化管内視鏡検査で食道に隆起性病変を認め,生検で扁平上皮癌と診断され,当院へ紹介となった.通常観察では,Ut~Mt後壁を中心に40mm大の発赤調平坦病変を認め,中央に約10mm大の頂部,やや陥凹呈する隆起を伴っていた.隆起部は緊満感・硬さを有し,ヨード染色では頂部陥凹部のみ不染帯を呈した.NBI拡大観察では,隆起部辺縁に太く蛇行するType B3血管を認め,隆起頂部では,Type B2血管が不整樹枝状から網状の走行を呈していた.EUSでは,第2~3層を主座に均一な低エコー腫瘤を呈し,筋層への浸潤は認めなかった.隆起は比較的急峻な立ち上がりを示す上皮下発育主体であり,微細血管はType B2血管が不整樹枝状から網状を呈することより,特殊組織型食道癌あるいは低分化型扁平上皮癌と診断した.PET-CTでは明らかな転移はなく,表在型食道癌0-“Is”+IIb,cT1b(SM2)N0M0,Stage Iにて胸腔鏡補助下食道切除術(3領域郭清)を施行した.病理診断はendocrine cell carcinoma,pT1b(SM3),ly0,v0,pPM0,pVM0,pRM0,N0であった.

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要旨 患者は17歳時から食道アカラシアの既往のある60歳代の男性.食道X線造影検査では胸部下部食道が対称性に狭小化し,拡張した口側食道に楕円形で可動性を有する隆起性病変を認めた.内視鏡検査では狭窄部を中心とした白濁肥厚粘膜を背景とし,胸部下部食道に白色で可動性を有するIp型病変と,発赤調で地図状の浅い陥凹面や不整なびらんが多発していた.ヨード染色でも不染ないし淡染を呈した.病理組織学的には,Ip型病変は主に低分化型扁平上皮癌から成り,多彩な組織像を示す紡錘型腫瘍細胞を伴うことから,癌肉腫と最終診断した.多発する0-IIcないし0-IIb病変はpT1a-LPMまでの扁平上皮癌であった.食道アカラシアにIp型食道癌(癌肉腫)が合併した報告は極めてまれであり,報告した.

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要旨 患者は,食思不振を主訴とする61歳,男性.上部消化管内視鏡検査で,胸部中部~下部食道に内腔を占居する軟らかい易出血性の腫瘍を認めた.立ち上がり急峻な亜有茎性隆起を呈し,分葉状の表面は黒色調で,光沢感を有していた.周囲粘膜にも黒色色素沈着を伴っており,生検で悪性黒色腫と診断した.胸腹部CTで肺門部・胃小彎側周囲・傍大動脈周囲リンパ節への転移と,多発右肺転移を認め,食道癌に準じた進行度はT3 N4 M1(肺),stage IVと診断した.通過障害に対して放射線照射を行い,また,全身化学療法としてダカルバジン単剤療法を行った.治療開始後4か月の時点で,原発巣の縮小および肺転移の消失が得られており,経口摂取も可能な状態で経過している.

Coffee Break

見る 3.見る準備 長廻 紘
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 ある修行僧(A)が,師匠(B)に聞いた.A : 「わたしは愚かな者です.なんとかしっかりした物の見方を身につけたく(本来の自己を知りたく)思います」.面前の香炉を指して,B : 「見えるか」 A : 「見えます」 B : 「どう見える」 A : 「わかりません」.そこで師は叱咤していった「お前はさっき見えるといったではないか.そんなことで見えると言うことができるのか.他が見えるということは即ち自己が見えるということだ.また逆に自己が見えるということは,他も見えることだ.毎日しっかり生きて仕事をしていれば,自他ともに見えるようになる」.その僧は恥じ入って,見るとは何かと探求を深め,ついに本来の面目を悟るに至った.

 内視鏡を始めたころ,よく先輩から検査中のファイバースコープを渡されて,この僧と同じように「何か見えるか」と問われた.「○○が見えます」と言うと,「そんなもののことは聞いていない,潰瘍が見えないか」と画面の端にある病変を指摘された.潰瘍はだんだん小さくなり,ついにはあるかないかの潰瘍瘢痕になった.有るかないかほどの小さく浅い潰瘍瘢痕が確実に見えるようになって,まあ最初の関門は突破したことになった.

早期胃癌研究会

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 2012年7月の早期胃癌研究会は2012年7月27日(金)にグランドプリンスホテル新高輪・国際館パミール「北辰」で開催された.司会は梅垣英次(大阪医科大学第二内科)と松本主之(九州大学大学院病態機能内科学),病理は二村聡(福岡大学医学部病理学講座)が担当した.また,画像診断教育レクチャーは入口陽介(東京都がん検診センター消化器内科)が「注腸造影の撮影法─腫瘍性疾患を中心に─」と題して行った.

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 2012年 9月の早期胃癌研究会は9月19日(水)に笹川記念会館国際会議場にて開催された.司会は赤松泰次(長野県立須坂病院内視鏡センター)と野村昌史(手稲渓仁会病院消化器病センター),病理は和田了(順天堂大学医学部附属静岡病院病理診断科)が担当した.セッションの間に,第18回白壁賞,および第37回村上記念「胃と腸」賞の授与式が執り行われた.

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 神戸でJDDW(Japan Digestive Disease Week)2012が開催された.ちょうど同じ週のはじめ,京都大学の山中教授がiPS細胞の研究で「ノーベル医学生理学賞」を受賞されたばかりで,日本中が沸いている最中の開催となり,当初より予定されていた山中教授のJDDW20回記念講演に,期待が高まった.私は大会第2日目の朝,東京を出発し,午後からの参加となった.可能ならば,午前中の咽頭・食道における拡大のセッションを聞きたかったが……出遅れてしまった.

 午後いちばんに楽しみにしていた,iPS細胞の講演が予定されていたが,会場の掲示板には「山中教授ノーベル賞受賞おめでとうございます」の文字とともに,「ご多忙のため,ご講演は中止,代理の先生によりご講演予定」とあった.しかし,このタイミングでやっぱりiPS細胞の知識を得ておきたいと思い,会場へ向かった.1,200人収容可能な会場はすでに満席となっており,中継会場が設置されていたため,そちらへ急いだ.幸いまだ席に余裕があり,目玉を逃さずに済み安堵した.iPS細胞,4つの遺伝子により初期化された細胞は,今後の再生医療や薬剤の開発に大きな期待が持てるとのことで,臨床応用の時期も近いようだ.山中教授の代理講演は,ともに仕事をされている青井教授によって行われ,今話題のiPS細胞についておぼろげに理解することができた.

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 JDDW(Japan Digestive Disease Week)2012は10月10~13日までの4日間,神戸市において開催された.6つの学会がJDDW2012に参加し,例年のように多くの参加者が神戸の地を訪れたようである.しかし,私自身は地元開催でありながら日常の病院業務に追われ,この学会印象記を書けるほど会場に出向くことができなかったのが残念である.これは地元開催ゆえのデメリットなのかもしれないが,全国の多くの医師,特に地方勤務の医師においても,日常業務に支障を来さないように,最低限の日程でしか参加できないという深刻な問題かもしれない.

 日本消化器内視鏡学会総会は,高橋信一会長(杏林大学)の意向により,“患者にやさしい内視鏡”をコンセプトにした多くの主題演題が企画されていた.これまで,内視鏡学会での胃領域の話題は“ESD(endoscopic submucosal dissection)の手技”や“IEE(image-enhanced endoscopy)を用いた診断”に関するものが主役であったが,今回は陰をひそめた.ESDやIEE診断のバブルが過ぎ去ったのか,単なる中休みなのか? 学会が多すぎて新しい話題が見当たらないことにも1つの原因があるように思う.

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 JDDW(Japan Digestive Disease Week)2012は10月10日(水)~13日(土)までの4日間,神戸国際展示場,神戸ポートピアホテル,神戸国際会議場において開催された.多くの参加者があり,どの会場も盛況で非常に活発な学会週間となった.JDDWとして20回目の節目となる大会であり,山中伸弥先生(京都大学iPS細胞研究所)による記念講演も企画されていたが,残念ながらノーベル賞受賞によりキャンセルとなってしまった.それでも代役を務められた青井貴之先生の話は大変興味深く,今話題のiPS細胞に関する見識を深めることができた.今回の私の神戸滞在は11~13日昼までであり,その間に参加したプログラムについて報告する.

 11日午前中は,松橋信行先生(NTT東日本関東病院)と藤城光弘先生(東京大学)が司会を担当されたワークショップ10「患者にやさしい大腸内視鏡検査の工夫」に参加した.“患者にやさしい内視鏡”は今回の日本消化器内視鏡学会のテーマの1つであり,挿入法だけではなく,(1) リラックスできるような工夫 : 室内・ユニフォームの配色,音楽,アロマ,映像鑑賞など,(2) 前処置の工夫,(3) スコープの選択,(4) 先端フード,(5) 術者の配置,(6) 前投薬(鎮静剤・鎮痛剤),(7) 検査体位,(8) 炭酸ガスの使用,(9) リカバリーを含めた安全なセデーション管理,(10) 次回検査へ情報を伝達するための個人票の作成など,様々な点に焦点を当てた発表があった.大腸内視鏡検査がテーマとして取り上げられる際は挿入手技ばかりが議論されることが多かったが,本ワークショップはすぐに実行できる内容が満載であり,大変有意義なものであった.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

第19回「白壁賞」論文募集
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 「胃と腸」編集委員会では,故白壁彦夫先生の偉業を讃え,「白壁賞」を設け,優秀な研究・論文を顕彰しております.今回は「白壁賞」の論文を下記の要領で公募いたしますので,奮ってご応募ください.英文誌に発表された消化管の形態・診断学に関する論文が応募の対象となります.

学会・研究会ご案内

投稿規定

編集後記 小山 恒男
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 隆起型の食道癌には扁平上皮癌のみならず,basaloid squamous carcinomaやmucoepidermoid carcinoma,adenoid cystic carcinoma,endocrine cell carcinoma, carcinosarcoma,melanomaなど,特殊な組織型を呈する病変も多い.しかし,特殊型食道癌は頻度が低いため,これらの鑑別診断は難しい.まずは基本を知るべきである.そこで,最も頻度の高い扁平上皮癌に関する病理学的検討から始めることにした.

 藤田は112例の外科切除および内視鏡切除材料を詳細に検討し,0-Iと0-IIa型では深達度診断の指標が異なることを解説した.病理組織学的検討が主であるため,臨床家には読みにくいかもしれない.しかし,本論文には多くのルーペ像が提示されている.ルーペ像から発育様式を知り,隆起を呈した理由を考察することが,臨床診断能向上に有用である.

次号予告

基本情報

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胃と腸
48巻3号 (2013年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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