胃と腸 46巻7号 (2011年6月)

今月の主題 腸管Behçet病と単純性潰瘍─診断と治療の進歩

序説

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はじめに

 腸管Behçet病と単純性潰瘍に関連して,本誌ではこれまでに1979年(第14巻6,7号)に「回盲弁近傍潰瘍」,1992年(第27巻3号)に「腸型Behcet病・simple ulcerの経過」,2003年(第38巻2号)に「腸型Behçet病と単純性潰瘍の長期経過」の特集が組まれている.

 本稿では,腸管Behçet病と単純性潰瘍について,初学者にも理解しやすいよう,疾患概念,画像所見,これまでに解明されている事項,本号で述べられるであろう問題点,疑問点につき概説する.

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要旨 腸管Behçet病(BD)と単純性潰瘍(SU)の臨床徴候や腸病変の特徴,自然経過,および両疾患の異同を明らかにする目的で,長期経過観察しえたBD 30例,SU 11例の臨床像(再発率,手術率),内視鏡所見(病変形態と病変局在)の推移を検討した.BDの経過観察中に病型が進展したのが16.7%の症例にみられたが,SUの経過観察中にBDへ診断が変わった例はなかった.BDは病型にかかわらず,多彩な病変を呈し病変が進展することが多いが,SUでは発症初期の活動性が落ち着けば,比較的病勢が落ち着く傾向がみられた.しかし,SUにおいては口腔内アフタ(+)例が(-)症例に比し再発率は高かった.病変形態ではBDで回盲部打ち抜き潰瘍周囲に小潰瘍が併存する例が再発率71.4%,SUでは回盲部打ち抜き潰瘍(+)症例で66.7%と難治であった.また長期経過例ではステロイド治療が中心になっており,感染症の併発も認めるため,可能な限りステロイド減量を図るためアザチオプリンやインフリキシマブの導入を考慮に入れる必要があると考えられた.

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要旨 腸管Behçet病(BD)および単純性潰瘍(SU)の区別は重要な問題であり,現在の診断基準も十分とは言えない.そこで,SUもしくは腸管BDと診断された27例を見直し,口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍をはじめとするBD症状の有無別から非BD群5例とBD群22例に分けて,消化管病変の性状,分布と臨床経過について検討した.その結果,(1) 非BD群では5例全例に,BD群では22例中17例(77%)に回盲部の定型的病変を認めたが,病変の分布において,非BD群の5例中4例(80%)が回盲部に限局するのに対し,BD群は回盲部限局が22例中8例(36%)と少なく(p=0.07),回盲部以外の小腸,結腸・直腸にも多発する症例が認められた.(2) 経過中に非BD群よりBDへ病型変化したものはなかったが,BD群では22例中2例(9%)で病型変化が認められた.(3) 経過中,非BD群では5例中3例(60%)に外科手術が行われ,全例が再手術を受けていた.BD群における手術率は41%(22例中9例)で,さらにこのうち55%が再手術となった.(4) 非定型的な病変として,BD群2例の大腸に潰瘍性大腸炎に類似した病変が認められた.以上から,非BD群は回盲部に限局する傾向があり,BD群に回盲部以外にも多発する可能性や病型の変化するものも含まれ,病態は異なることが示唆された.再発性口腔内アフタを主症状として重要視すれば,いわゆるSUの頻度は低く見積もられた.

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要旨 腸管Behçet病・単純性潰瘍15例におけるカプセル内視鏡とバルーン内視鏡内視鏡所見を遡及的に検討し,不全型Behçet病(DBD),Behçet疑い(SBD),狭義の単純性潰瘍(non-BD)で比較した.15例中5例で回盲部より口側の小腸病変が認められ,その所見は多発潰瘍(5例),アフタ様病変(1例),敷石様所見(1例)に大別された.病型別に検討すると,DBD・SBD 11例中4例(36%)に小腸病変が認められ,2例(18%)ではアフタ様病変あるいは敷石様所見が認められた.一方,non-BD 4例中1例(25%)にのみ小腸の多発潰瘍が認められた.15例中,小腸と結腸・直腸のいずれかに病変が認められたのは10例であったが,両部位が罹患したのはnon-BDの1例のみであった.以上より,腸管Behçet病・単純性潰瘍では小腸病変が少なくないこと,および両疾患における回盲部以外の病変の性状が異なる可能性が示唆された.

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要旨 腸管Behçet病(BD)は非特異性炎症を呈し病理診断が難しいとされているが,しばしば鑑別が問題となるCrohn病(CD)とは大きく異なる組織学的特徴を有している.CDに比較した腸管BD病変の特徴は,肉眼的に境界明瞭な大型,円形~卵円形の打ち抜き様潰瘍が多いこと,割面のルーペ像は下掘れ傾向の強いフラスコ型潰瘍で潰瘍底は概して平坦であること,組織学的に潰瘍底の滲出壊死層が薄く,この層の好中球と肉芽組織層の形質細胞浸潤が軽いことである.CDにしばしばみられる腸壁を突き通すような線状・帯状の全層性炎症や非潰瘍部漿膜下のリンパ球集簇巣は腸管BDではまれである.腸管BDの潰瘍縁粘膜にもCDと同様の絨毛の萎縮,陰窩の配列異常,形質細胞浸潤が認められるが,CDよりもさらに限局性で軽度な変化にとどまる病変が多い.これらの特徴的差異に注目すれば,切除標本の大多数が診断可能である.単純性潰瘍は腸管BDとの異同が問題となっているが,肉眼的にも組織学的にも両者の間で明らかな違いは指摘されていない.

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要旨 腸管Behçet病(腸管B病)および単純性潰瘍は,回盲部に打ち抜き様の深い潰瘍を伴う場合が多い.しかし両疾患ともに,回盲部以外の消化管部位にも非定型的病変を認めることがある.自験38例の検討では,14例(37%)で大腸を主体に潰瘍やアフタ様びらんがみられ,特に腸管B病で高頻度であった.なお,腸管B病の2例は定型的病変を欠き,大腸の広範囲に深い潰瘍が多発していた.こうした非定型的病変の分布はまばらで,縦列傾向などの規則性は認めなかった.定型的病変を欠き,非定型的病変のみの腸管B病は,Crohn病やNSAID起因性腸病変,非特異性多発性小腸潰瘍症など他の炎症性腸疾患との鑑別が必要になる.鑑別診断に当たっては,病歴の聴取や臨床症状を把握することはもちろん,潰瘍の形態や分布,上部消化管病変,病理組織学的所見などを総合的に評価することが重要である.

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要旨 自験25例を対象として,腸管Behçet病と単純性潰瘍の臨床像と消化管病変の比較を行った.眼症状,副症状は腸管Behçet病ではみられたが,単純性潰瘍ではみられなかった.腸管Behçet病の特徴的病変とされている回盲部の深い打ち抜き様潰瘍は,腸管Behçet病では54%に,単純性潰瘍では92%にみられた.今回の検討では,腸管Behçet病の特徴的消化管病変は,多発する様々な深さの潰瘍であった.鑑別診断として,感染性腸炎ではカンピロバクター腸炎,腸結核,CMV腸炎が問題である.血管炎との鑑別も問題であり,古典的PN,RA・SLEの血管炎では,打ち抜き様潰瘍を呈するため類似している.しかし,ほとんどが罹患部位,回盲部定型病変の有無で鑑別可能であった.Churg-Strauss症候群,Wegener肉芽腫症,顕微鏡的多発血管炎では,浅い不整形潰瘍が多く鑑別は困難ではないが,穿孔例では潰瘍が深いため類似した形態を示すことがある.

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要旨 腸管Behçet病(BD)・単純性潰瘍(SU)の潰瘍に対して,経内視鏡的にメサラジン注腸液を10例に撒布した.深掘れで大きな典型的な潰瘍に対してはメサラジンの撒布を行わなかった.潰瘍の多くはメサラジン撒布により縮小した.しかし,潰瘍は再発することが多いため,経過をみて潰瘍が再発した場合にはメサラジン撒布を行った.メサラジンによる経口投与と局所的撒布によって,73%に潰瘍の縮小または潰瘍の深さが浅くなることを認めた.腸管の潰瘍は再発するので,定期的に内視鏡検査を行う必要がある.治療効果SUとBDの潰瘍に対してメサラジンの経口投与とともに,メサラジン注腸液を経内視鏡的に潰瘍に対して撒布することは試みる価値のある治療法と考える.

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要旨 当院でインフリキシマブ投与を行ったステロイドなど既存の治療に抵抗性の腸管Behçet病,単純性潰瘍9例の初期治療効果および維持療法の成績,安全性を検討した.インフリキシマブ投与は0,2,6週の3回投与後,8週ごとの維持投与を基本とした.寛解導入目的に投与した8例中7例に有効で臨床症状の改善・消失をみた.無効例の1例は既手術例の吻合部の再発で狭窄・瘻孔を合併していた症例で,症状に改善がなく手術を施行した.術後再発予防目的に投与を行った1例は現在も寛解を維持している.維持投与は8例に継続中であり,全例で明らかな腸病変再発の徴候は認めず寛解を維持しており,現時点まで副作用を認めた症例はない.以上の結果から,インフリキシマブは腸管Behçet病および単純性潰瘍の難治例の治療として,初期治療効果および維持効果ともに有用な薬剤であることが示された.

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要旨 腸管Behçet病(EB)の治療では,下記の項目に着目して治療に当たる.発症からの経過・他臓器の併発症の状況(完全型・不完全型ならどの症候を併発した群か,活動期か寛解期か,併用免疫調節薬は何か,他に腸管に影響を及ぼす治療薬の有無),病変の部位・大きさ・深さ・形状,治療薬への反応性などである.浅い,小さな病変は5-ASA,典型像の大きな病変ではステロイド・IFXが有用な場合が多い.治療中はEBの治療への反応性のみならず,他臓器の併発病状についても,同時に経過観察すべきであるし,感染症や薬剤の副作用への注意も必須である.腸穿孔を起こさない治療が最低限の目標で,内科治療に窮する前に外科治療を相談することも重要である.

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要旨 腸管Behçet病,単純性潰瘍は回盲部に打ち抜き潰瘍,あるいは下掘れ潰瘍と呼ばれる類円形の潰瘍を認め,病理組織像はほぼ同じ形態を示し鑑別に困難なことも少なくない.両者とも5-ASA製剤を基本薬として用い,中等症以上の症例ではステロイド大量投与が有効であるが,難治症例は手術となることが多く,術後の吻合部潰瘍も高率に認められる.最近,Behçet病においてもTNF-αの関与が示唆され,インフリキシマブの有効性が報告されている.今回,ステロイド大量投与に反応せず,サリドマイド,インフリキシマブ投与が著効した2例を経験したので報告する.

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要旨 Behçet病は,HLA-B51をはじめとした遺伝素因に環境因子が付加され,免疫異常を引き起こし発症に至ると考えられている.最近のGWASでIL10,IL23R-IL12RB2が新たな遺伝素因として同定され,Th1,Th17型自己免疫応答が病態に関与することが改めて認識された.一方で,好中球機能過剰,TLR発現異常などの自然免疫異常も病態にかかわることも示されている.抗腫瘍壊死因子-α抗体は高い効果を示すが,現状では効果の持続に問題がある.また,インターフェロン-αは長期的に安定した効果を示すが,まだ,その薬理効果の発現機序は解明されていない.これらの課題の解決により病態はさらに明らかになるものと思われる.

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要旨 患者は63歳,男性.C型慢性肝炎治療のため前医でINF(Peg-INFα2a)投与後に腹痛,発熱,下痢が出現.CTで回腸終末部に壁肥厚がみられ,回腸炎と診断した.保存治療で軽快し,INFの影響を考え以後投与を見合わせた.しかし7か月後に再度同様の症状が出現し,当科へ紹介となった.大腸内視鏡で回腸終末部に深い下掘れ潰瘍がみられ,画像所見と臨床経過から単純性潰瘍と診断した.栄養療法を行い,症状,検査所見は軽快した.慢性肝炎に対し高い血中濃度が維持されるPEG製剤の使用を避け,INFβ製剤による再治療を行ったところ,5日後に腹痛,発熱,下痢の症状を伴って潰瘍が再燃した.単純性潰瘍の発症・再発にINF投与が関連した症例と考えられた.

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要旨 免疫不全に対する単純性潰瘍様病変として,X染色体劣性遺伝形式をとる無汗性外胚葉形成不全免疫不全症候群が知られている.この疾患はNEMO遺伝子の異常であることが明らかとなり,消化管の潰瘍病変を合併しやすく,消化管病変ではNEMO腸症とも言われる.本症では,炎症性腸疾患に類似する回盲部潰瘍を形成しやすく,単純性潰瘍もしくはBehçet病との鑑別が必要である.歯牙形成不全,汗腺の欠如,寡毛,易感染性などの消化管管外症状を知っていれば鑑別診断は容易である.回盲部の潰瘍病変は数個のものから,回盲部から終末回腸に多発する潰瘍まで様々であるが,消化管病変に関する報告は少なく,NEMO遺伝子異常を確認した自験例を中心に解説する.

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要旨 〔症例1〕は15歳,男性.9歳時発症の難治性の腸管Behçet病.複数の免疫抑制薬を併用したにもかかわらず,ステロイド依存性となり,12歳時にステロイド性骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折を合併した.13歳時,病変の悪化から穿孔性腹膜炎に罹患し,癒着性腹膜炎治療のため回盲部切除術を施行された.〔症例2〕は12歳,男児.9歳時発症の難治性の腸管Behçet病.ステロイドへの反応は良好であったが,減量中再燃と寛解を繰り返した.各種免疫抑制薬を併用するも,プレドニゾロンを15mg/dayから減量できなかった.2例ともサリドマイド治療は極めて有効で,〔症例1〕では臨床症状および血液検査所見が著しく改善した.〔症例2〕ではサリドマイド治療を開始後,再燃徴候はなく経過し,ステロイドや免疫抑制薬を減量できた.最終的に2例ともサリドマイド以外の薬剤の中止が可能であった.

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 〔患 者〕 57歳,女性.

 〔主 訴〕 検診の上部消化管内視鏡にて異常.

 〔家族歴〕 特記事項なし.

 〔既往歴〕 2000年より慢性関節リウマチの診断にて加療中.

 〔現病歴〕 2009年6月,定期健診にての上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に多発する白色調の小結節隆起性病変を認め,同部よりの生検にて濾胞性リンパ腫と診断され,同年6月30日精査加療目的にて入院となった.

Coffee Break

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 内視鏡的胃粘膜境界が英文で発表されたのは,1969年の欧州内視鏡学会誌のEndoscopy誌上である.著者はK. Kimura, T. Takemotoであり,恩師の竹本忠良山口大学名誉教授と兄弟子に当たる木村 健元自治医科大学消化器内科教授である.当時,木村教授は東京大学医学部第三内科であり,竹本教授は東京女子医大消化器内科教授であったが,前任の東京大学で木村教授を指導しておられた.

 発表後,慢性胃炎の領域では必読とされ,特にHelicobactor pyloriと慢性胃炎の関連が注目されるとともに,一段と多く引用されるようになった.

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要旨 早期胃癌と胃MALTリンパ腫が併存した病変に対し,拡大内視鏡観察が有用であった症例を経験した.NBI拡大観察にて胃MALTリンパ腫はリンパ濾胞様構造,pitの消失,病変内に周囲と同様の粘膜の介在,血管の拡張,蛇行,分岐を認めた.一方,早期胃癌(高分化腺癌)はNBI拡大観察にて血管の網目状構造,クリスタルバイオレット染色にてpitの大小不同を認めた.両病変が衝突していると考えられたためESDにて一括で切除し,その後H. pylori除菌を追加した.約2年が経過し,再発は認められていない.拡大内視鏡観察が両者の鑑別に有用であった.

胃と腸 図譜

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1概念,病態

 転移性大腸腫瘍とは,他臓器を原発とする悪性腫瘍が大腸壁に転移し発育浸潤したもので,その頻度は0.1~1%と報告されている1).転移様式としては腹膜播種と隣接臓器からの直接浸潤が多いが,腹腔外の遠隔臓器も含め血行性またはリンパ行性にも生じる.原発巣は胃癌が圧倒的に多く,次いで卵巣癌,膵臓癌などが続く1)2).周囲臓器からの直接浸潤の場合,初期には大腸病変は原発巣の隣接部に好発し単発性であるが,進行例や遠隔臓器からの転移(腹膜播種,血行性またはリンパ行性転移)例では病変部位も様々で多発していることが多い.

早期胃癌研究会

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 2010年11月の早期胃癌研究会は11月17日(水)に笹川記念会館国際会議場にて開催された.司会は野村昌史(手稲渓仁会病院消化器病センター)と小山恒男(佐久総合病院胃腸科),病理は岩下明徳(福岡大学筑紫病院病理部)が担当した.画像診断教育レクチャーは,八木一芳(新潟県立吉田病院内科)が「胃炎の拡大内視鏡診断─A-B分類および除菌後拡大像について」と題して行った.

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 2011年2月の早期胃癌研究会は2月16日(水)に笹川記念会館国際会議場にて開催された.司会は春間賢(川崎医科大学消化管内科学)と小林広幸(福岡山王病院消化器内科),病理は大倉康男(杏林大学医学部病理学)が担当した.画像診断教育レクチャーは,田中信治(広島大学内視鏡診療科)が「大腸NBI拡大内視鏡診断のポイント」と題して行った.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

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代表世話人 工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院)

当番世話人 斎藤  豊(国立がん研究センター中央病院)

開 催 日 2011年7月17日(日)10 : 00~17 : 00(予定)

会場 大手町サンケイプラザ4Fホール

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 医療の進歩は目覚ましく,著しい情報社会となった現在,最新の医療情報を正確にかつ迅速に伝達することが重要となっている.『消化器疾患最新の治療』は,2年ごとに執筆者を改めて,消化器疾患の診療に関する最新の情報を提供することを主旨とした書物である.

 数多くある消化器関連書のなかでも,本書の大きな特徴は,治療に関する最新の話題を配列して掲載している『巻頭トピックス』であろう.今回は,「生活習慣病との関連に対する消化管吸収抑制薬」,「炎症性腸疾患に対する分子生物薬」,「消化器癌に対する分子標的治療」,「新しい胃癌および大腸癌の治療ガイドライン」,「C型慢性肝炎に対する新規の治療法ならびに遺伝子多型による治療法の選択」,「自己免疫性胆膵疾患の治療」,「NOTES(natural orifice trans-lumenal endoscopic surgery)」が取り上げられている.いずれも現時点で最も注目されているホットな話題であり,特に若手の消化器科医師は是非にでも知っておきたい内容が満載されている.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

学会・研究会ご案内

投稿規定

編集後記 平田 一郎
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 Behçet病(Behçet's disease ; BD)の特殊病型である腸管BDは,腸管に潰瘍性病変を有し,「1987年厚生省調査研究班ベーチェット病診断基準」(以下,“研究班診断基準”)の完全型と不全型に当てはまるものを指す.一方,腸管(主に回盲部)にBD類似の潰瘍性病変を有し,完全型や不全型の条件を満たさないものは一般に単純性潰瘍(simple ulcer ; SU)と呼ばれ,BDから区別されている.腸管に前述の特徴的潰瘍を有し,BDの主症状の1つである“口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍”のみを合併する例は,“研究班診断基準”からみれば“腸管Behçet病の疑い”とされる.しかし,このような症例を実際の臨床面でどのように取り扱うかについては,腸管BDに属すべきという意見や,SUとして扱うべきという意見があり,腸管BDとの異同に関して一定の見解は得られていない.この問題点を臨床的に解明することは,今回の企画の大きな目的である.

 村野論文では,SU症例を口腔内アフタ合併例と,非合併例に分けて解析し,口腔内アフタ合併例は非合併例に比して難治性で再発率も高く,腸管BD病と同様の病態を呈すると報告している.高木論文では,口腔内アフタ合併例をBD群,非合併例を非BD群と分けて解析した結果,非BD群はBD群に比して潰瘍が回盲部に限局する傾向を有し,手術率や再手術率が高いと報告している.村野論文と高木論文では口腔内アフタ非合併例の難治性の結果が異なっている.しかし,いずれにしても,両論文ともBDの主症状の1つである口腔内アフタ合併例は,むしろ腸管BDとして,非合併例はSUとして扱うことを示唆している.また,両論文とも,症例の長期経過の検討において,BD群の中では経過中に病型の進展(変化)を認めるものがあったが,口腔内アフタ非合併例のなかでBDに移行したものは皆無であったとしている.小腸病変のあり方においても,口腔内アフタ合併例と非合併例は異なっているようである.これに関して,松本論文ではカプセル内視鏡やバルーン内視鏡を用いて検討している.それによれば,非合併例(松本論文中では,“狭義の単純性潰瘍”として類別)では潰瘍性病変は主として回盲部に限局しているが,口腔内アフタ合併例(“Behçet疑い”として類別)では“不全型Behçet病”と同様に回盲部以外の小腸にも病変がみられ,非合併例は合併例やBD病とは異なる病態を呈していることがわかる.また,腸管BD,SUと他疾患の鑑別も重要であり,病理学的立場(田中論文)や臨床的立場(小林論文,大川論文)から鑑別点がそれぞれ述べられている.

次号予告

基本情報

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胃と腸
46巻7号 (2011年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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