胃と腸 44巻13号 (2009年12月)

今月の主題 collagenous colitisの現況と新知見

序説

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はじめに

 本誌でCC(collagenous colitis)1)の特集を組むのは今回が初めてである.欧米ではCCの報告例が多いのに比し,本邦ではCC症例はまだ少なく,最近になり報告例が増加しつつある状況である2)~5).本症は,診断が困難であるため疾患としての認知が本邦では遅れていた.早期胃癌研究会でも,数年前から数例が提示されており,筆者も読影に指名されたが正しく診断できなかった.以前に数例の自験例があったにもかかわらず6)7),診断ができなかったのである.診断が困難な理由は,まれであるため日常の鑑別診断に挙げられないことが大きい.それに加え,後から内視鏡画像を見ても著しい所見,あるいは特異的な所見を挙げ難いこともある.

 しかし最近は,CC症例が研究会にも頻繁に提示されるため,臨床像と合わせて総合的に考えると鑑別に苦しまなくなった.各施設とも10例を超える自験例を経験していると思われる.最近の報告例を見ると,本邦例の臨床的な特徵(性,年齢,症状など)が海外の報告例と共通する点が多い.一方,かけ離れている点もみられ,その実態に大変興味をひかれる.なかでも本邦では,CCの臨床的な特徴として薬剤との関連が強いと考えられているが,どうしてであろうか.また,欧米ではCCは内視鏡的に異常がないと言われているが,CCの本場スウェーデンに留学した医局員に聞くと,細かく内視鏡所見を検討すると本症にはいろいろな所見があり,内視鏡診断が可能な例も多いとの情報もある7)8).今後,日本においてもCCに対しての内視鏡的な診断と鑑別能が向上することを期待したい.

 思い起こせば20年以上前,共同研究者の飯田三雄先生(九州大学大学院病態機能内科学)と虚血性大腸炎を調査している際に横行結腸に長大な縦走潰瘍例を見た.そのとき,飯田先生が“この例は通常の虚血性大腸炎とは臨床的・形態学的にかけ離れている”と断じ,対象例に組み入れなかったことを記憶している9).その特徴的な例は現在の情報から考えると,CCが基礎疾患として存在したと推測される.最近,縦走潰瘍を伴う例を見るたびに思い出されるエピソードである.

 CCの診断基準は海外のものを使用するしかない.それによると,CCはLC(lymphocytic colitis)と類縁疾患であり,両疾患を合わせてMC(microscopic colitis)と総称される10)~13).しかし,本邦ではCCの報告は散見されるが,LCの報告例はほとんど見当たらないようである.この点は,本邦の特徴であろうか,あるいは診断の遅れが原因であろうか.MCの中でも,CCは最近急に認知度が高まり,多数例の検討も始まったが,LCは病理像さえ広く認知されているとは言い難い.そこで本号ではLCは取り上げず,CCのみを検討対象とした.本企画によりCCの診断と理解が進み,LCについては次回には特集が組まれるくらい情報が集積されることを強く期待する.

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要旨 CCとLCは類縁疾患で,CCとLCを総称してMCと呼ぶ.MCの年間罹患率(人口10万人対)は8.6~10.0(CC 3.1~4.9,LC 4.4~5.5)である.MCの平均発症年齢は65~68歳,男女比はCC 1:7,LC 1:2.4で,CCにおいて女性優位であるが,LCにその傾向はない.MCの原因として,自己免疫疾患,胆汁代謝異常,腸管感染症,薬剤などが挙げられるが結論は得られていない.MCの患者は対照に比して自己抗体(抗核抗体,抗グリアジン抗体,ASCA)の出現頻度が高く,いくつかの自己免疫疾患との合併が報告されている.MCに関連する薬剤としてNSAIDs,PPI(特にランソプラゾール),SSRI,H2blocker,チクロピジン,アスピリンなどが挙げられているが,比較対照試験から導き出されたものはNSAIDsとSSRIである.MCの内視鏡所見として大腸粘膜の血管網異常,発赤,浮腫,顆粒状変化,縦走潰瘍などが挙げられるが,MCの約30%(本邦では75%以上)に何らかの内視鏡的異常を認める.顆粒状変化やCB沈着は右側結腸で高頻度に認められる.CCにおける縦走潰瘍は非常に長い線状潰瘍(潰瘍瘢痕)として認めることが多く,潰瘍周辺粘膜に炎症性変化を認めないことが特徴である.この縦走潰瘍とランソプラゾールとの関連性が報告されており,特に本邦ではランソプラゾール服用者の78%に縦走潰瘍を認めるといった報告もある.欧米ではこれほど高い頻度は示されておらず,NSAIDsと縦走潰瘍の関連性を示唆した報告もある.この縦走潰瘍は欧米では横行結腸~右側結腸に多く認めるが,本邦では左側結腸に多く認める.CCと鑑別を要する疾患として,虚血性腸炎,Crohn病,腸管アミロイドーシス,特発性腸間膜静脈硬化症,過敏性腸症候群,感染性腸炎,セリアック病などがある.治療はブデソニドが有効で,予後は総じて良好である.

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要旨 CC(collagenous colitis)と診断した24例(平均69.8歳,男女比1:3)を対象とし,臨床学的所見と病理組織学的所見を解析した.また,CCを疑ってコンサルテーションされた症例のうちCCではないと結論づけたものの病理組織像を検討した.症状は下痢が20例,便潜血陽性が2例,症状なしが2例であった.剖検例を除く23例の通常内視鏡所見をみると,19例(82.6%)に何らかの異常が記載されており,A群“特に異常なし”4例,B群“軽度の変化”10例とC群“縦走する粘膜欠損・潰瘍(瘢痕を含む)”9例に分類した.LPZとNSAIDs内服例の内視鏡所見に着目すると,NSAIDs(-)/LPZ(+)は10例で,このうちA群,B群,C群はそれぞれ1例,5例,4例であった.NSAIDs(+)/LPZ(+)の5例では,それぞれ1例,3例,1例であった.また,NSAIDs(+)/LPZ(-)例は3例でいずれもC群であった.collagen bandの厚さは平均47μmで,LPZとNSAIDsの服用の有無による差はみられなかった.単核球浸潤スコアは3点満点で平均2点を超えていたが,全例で好中球と好酸球浸潤を伴っており,好酸球浸潤(1.2点)のスコアが好中球(0.7点)より高い傾向にあった.lymphocytic colitisの基準を満たす症例は認められなかった.これらの結果と文献的考察から,肉眼像の類型化を試み,病態発生を考察した.また,病理組織学的鑑別診断の問題点を明らかにした.

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要旨 欧米ではcollagenous colitisおよびlymphocytic colitisは慢性水様性下痢の原因の10~20%を占めると考えられている.疫学研究の結果から,collagenous colitisの人口10万人当たりの年間発病率は2.3~7.1と報告されており,近年,増加傾向にある.発症年齢は58~70歳であり,性比は女性が83~89%を占めている.collagenous colitisの病因については薬剤起因性の他に遺伝,胆汁酸吸収不良,感染症,一酸化窒素,コラーゲン代謝異常などの関与が考えられている.しかし,いまだ完全に解明されてはいないのが現状である.

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要旨 collagenous colitis 24例を対象とし,臨床像を遡及的に検討した.何らかの薬剤投与を受けていたのは24例中23例であり,最も頻度が高かったランソプラゾールは20例(83%)で投与されていた.ランソプラゾール内服例は,すべて内服中止のみで症状が改善した.ランソプラゾール内服例の11例(55%)に細長い縦走潰瘍が観察されたが,ランソプラゾール非内服例ではみられなかった(p=0.07).縦走潰瘍は左側結腸を中心に分布し,境界が明瞭で周囲の浮腫性変化に乏しかった.組織学的には,ランソプラゾール内服例で非内服例よりも膠原線維帯が厚い傾向がみられた(p=0.08).以上より,本邦ではランソプラゾールに関連したcollagenous colitisが比較的多く,その内視鏡所見として左側結腸の縦走潰瘍が特徴的である可能性が示唆された.

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要旨 近年CCに関して,粘膜面の異常や血管異常などの内視鏡所見,原因薬剤との関連性を示唆する報告も増えている.本稿では自験例CC 16症例に関して,内視鏡異常所見(血管網増生・走行異常,色素撒布後の粗糙・顆粒状粘膜,線状縦走潰瘍・瘢痕,発赤)の大腸分節ごとの出現頻度,分布を検討した.また背景因子や内視鏡所見,病理組織学的所見,CBの厚さ,好中球浸潤,被蓋上皮の脱落)についても相互に対比した.結果:原因薬剤はランソプラゾールが81%を占めた.大腸の左右側内視鏡所見出現度を比較したところ,血管網増生・走行異常所見は高頻度(100~88%)であるが左右差はなかった.粗糙・顆粒状粘膜は右側結腸で63%,左側結腸で25%,であり左右差があった(p=0.03).線状縦走潰瘍は左側結腸に高い傾向があった.便回数の高低別,関連薬剤別に比較したが,臨床像により内視鏡所見などに差異はなかった.病理組織学的所見の程度と内視鏡異常所見の両者に関連はなかった.ただし,粗糙・顆粒状粘膜所見と血管網増生・走行異常所見は相関した(p<0.026).結論:以上より,粗糙・顆粒状粘膜は右側結腸に出現率が高かった.内視鏡異常所見強度同士は相関するものがあった.したがって,CCの診断上,右側結腸で粗糙・顆粒状粘膜を認めればCCに伴う内視鏡異常所見の可能性が高く,また生検をする部位を内視鏡所見により選択する必要性はなく,右側を含む多数の生検が有用と考えられた.

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要旨 CC(collagenous colitis)は内視鏡的特徴に乏しい原因不明の慢性下痢症と位置付けられていたが,近年,内視鏡診断・技術の進歩により,その微細な粘膜異常所見や特異な縦走潰瘍を呈することが知られ,またNSAIDsやPPIなどの薬剤との関係も報告されるようになった疾患である.その確定診断は病理診断によるCB(collagen band),単核球浸潤の証明に頼らざるを得ないのが現状であり,より効率のよい精度の高い生検診断を行う必要がある.本稿ではCC 15症例の内視鏡所見と病理組織学的所見を対比させ詳細に解析した.その結果,微細顆粒状粘膜では単球をはじめ各炎症細胞浸潤が有意に多く,かつ,CB陽性率が高く,CB形成との強い相関が証明された.このことよりCCが疑われる症例に対しては,微細顆粒状粘膜が好発する深部大腸の観察と生検が有用であると考えられた.

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要旨 当科で経験したCC(collagenous colitis)8例を対象に臨床像,内視鏡像,治療などについて検討を行い,鑑別診断,治療について考察を加えた.内視鏡的な異常は8例中6例にみられ,血管透見低下が最も多く6例に,易出血性,血管増生,縦走潰瘍・縦走潰瘍瘢痕が3例に,横走潰瘍・横走潰瘍瘢痕が1例にみられた.内視鏡検査に起因すると思われる粘膜の裂創が2例に,特徴的な長い縦走潰瘍が1例にみられた.縦走潰瘍の症例は虚血性大腸炎を疑い,血管透見低下と易出血性がみられた1例はアミロイドーシスを疑い生検した.他の4例は内視鏡像よりCCを疑って生検した.治療は薬剤中止により明らかに軽快したものが5例でいずれもランソプラゾールが投与されていた症例であった.1例はランソプラゾールとNSAIDを中止しても症状は軽快せず,著明な蛋白漏出を伴っていたためプレドニゾロンの投与を行い軽快した.他の2例は薬剤の関与はなかった.

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要旨 CG(collagenous gastritis)は,CC(collagenous colitis)と同様,粘膜固有層の細胞浸潤と上皮下に10μm以上に肥厚したcollagen bandの存在により組織学的に定義される.CGはまれな疾患であり,これまで本邦報告は5例にすぎない.自験1例を追加し検討した結果,20~43歳の比較的若年者にみられ,発見動機は検診または心窩部痛であった.X線・内視鏡像は,顆粒結節状変化が特徴的であるが,隆起周囲に認められる非びらん性の陥凹性変化が本体である.組織学的に炎症所見の不均一性を認め,腺管萎縮がまだらに起こるため,顆粒結節状に取り残しを形成すると推定された.欧米では,CCを合併し大腸や十二指腸にcollagen bandの肥厚を認めた症例が報告されているが,本邦の症例はいずれもCG単独例であった.

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要旨 患者は62歳,女性.1年2か月前に交通事故による頸椎症と診断されNSAIDsを内服していた.1年前から続く水様性下痢と突然の下血のため来院した.大腸内視鏡検査では,S状結腸に縦走潰瘍を認めた.生検組織では上皮下に肥厚したcollagen bandを認め,collagenous colitisと診断した.出血は1日で止まったが,頸椎症のためNSAIDs内服の中止は不可能であり水様性下痢は続いた.止痢剤では改善せずメサラジン内服にて治癒した.経過中一度メサラジンを中止したら,水様性下痢が再燃した.約1年間の投薬期間を要した.

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要旨 Collagenous colitisは従来まれな疾患と考えられてきたが,疾患概念の浸透とともに欧米をはじめ本邦でも報告例が散見され,決してまれではないことがわかってきた.本稿では,筆者が大腸内視鏡を施行して本疾患を疑い診断した2症例を紹介し,若干の考察を加えた.〔症例1〕は脳梗塞を発症し,救急病院入院後から下痢が出現した.大腸内視鏡は,右側結腸で新鮮なびらん・裂傷様の所見を,横行結腸からS状結腸には縦走する瘢痕を認めた.生検の組織像では,表面上皮直下で肥厚した膠原線維束が形成されており,表面上皮は変性,脱落し,形質細胞の増加が特徴的な慢性炎症細胞浸潤を認めるが,好中球浸潤は軽度であった.〔症例2〕は循環器専門病院で加療中,2か月前から3,4行/日程度の下痢が出現した.大腸内視鏡は異常所見を認めなかった.病理組織で慢性炎症細胞浸潤,特に形質細胞浸潤が深部まで認められ,好酸球も認められた.表層被蓋上皮の変性,剥離像とともに,80μmと肥厚した膠原線維束を認めた.

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要旨 患者は50代の女性.水様性下痢の精査のため全大腸内視鏡検査を施行した.初回の検査では全大腸にわたり,血管透見の不良,不整所見を認め,S状結腸には細長い縦走潰瘍を認めた.生検を施行し,collagenous colitisと診断した.内服中のランソプラゾールを中止したところ,下痢は改善した.初回診断の1か月後には,縦走潰瘍は瘢痕化し,血管透見の不良,不整所見も改善傾向を認めた.病理組織学的にも経過観察中にcollagen bandが消失した.一般にcollagenous colitisは内視鏡所見に乏しい疾患とされるが,細長い縦走潰瘍病変を大腸粘膜に認めた場合,collagenous colitisの可能性を念頭に置くべきである.

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要旨 6か月前に狭心症を発症しアスピリン,チクロピジン,ランソプラゾールなどを服用中の64歳,女性が慢性下痢で当科外来を受診し,大腸内視鏡検査が行われた.盲腸では軽度の血管透見低下がみられる程度であったが,大腸の他部位では血管透見低下とともに,インジゴカルミン撒布により不規則な粘膜模様と,腸管長軸方向に走るひび割れ様の浅い線状溝が多数観察された.またS状結腸から直腸では背景粘膜の白色調変化によって通常観察でも縦走する浅い線状溝が観察され,これらの所見は血管透見像と対照的に管腔の伸展に伴い不明瞭化した.大腸の各区分より生検を行い,被蓋上皮下の膠原線維束(20~40μm),上皮内および粘膜固有層に単核球を主体とし,好酸球を交えた炎症細胞浸潤,被蓋上皮の変性,剥離が認められた.これらの所見より,collagenous colitisと診断した.症状はランソプラゾールを変更して1か月で改善した.自験例でみられた線状溝の所見はこれまでに報告がみられず,本症の新たな内視鏡像の可能性がある.

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要旨 患者は60歳代の女性.胸焼け症状に対してランソプラゾールを服用中,持続する頻回の水様性下痢と低蛋白血症にて当科を紹介され入院となった.注腸X線検査にて下行結腸,横行結腸の細長い縦走潰瘍瘢痕を認めた.大腸内視鏡検査にて,縦走潰瘍瘢痕の他,大腸全域にわたる大腸粘膜の血管透見像の消失と微細顆粒状粘膜,および毛細血管の数珠状拡張所見を認めた.病理組織所見では被覆上皮直下の粘膜間質に厚さ25~40μmのcollagen bandの肥厚所見を認め,collagenous colitisと診断した.ランソプラゾールの中止後も症状は増悪し,ステロイド投与により症状は速やかに改善した.本例はランソプラゾールが原因と考えられるcollagenous colitisの典型例と考えられ,collagenous colitisを疑った場合には薬物服用歴を含む,詳細な病歴の聴取が重要と考えられた.

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 〔患者〕 80歳代,男性.繰り返す下痢と嘔吐,下腹部痛にて近医を受診し,CTにて盲腸から回盲部の壁肥厚と回腸終末部の拡張を認め,当科を紹介された.

 〔大腸造影所見〕 充盈像では虫垂口付近に陰影欠損を認め,虫垂は描出されなかった(Fig. 1a).圧迫像では虫垂口付近および回盲弁上唇に不整なバリウム斑を認め,回盲弁は緊満しバリウムは回腸へ移行しなかった(Fig. 1b).二重造影では虫垂口付近の粘膜表面は顆粒結節状で,同部から回盲弁上唇にかけて伸展不良所見を認めた.虫垂口付近,回盲部上唇肛門側(Fig. 1c, 矢印)には辺縁不整な小潰瘍が認められた(Fig. 1c, d).

 〔下部消化管内視鏡所見〕 回盲弁上唇肛門側に小潰瘍を認めた(Fig. 2a).回盲弁は硬く緊満し,回腸への内視鏡挿入は困難であった(Fig. 2b).虫垂口周囲は結節状で辺縁不整な潰瘍と発赤を伴っていた(Fig. 2c, d).盲腸および回盲弁肛門側の潰瘍部生検より低分化腺癌が検出され,右半結腸切除術およびD3郭清を施行した.

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要旨 CFP(calcifying fibrous pseudotumor,石灰化線維性偽腫瘍)は四肢,体幹,腋窩,胸膜,腹膜などの軟部組織に発生するまれで病理学的に特異的な偽腫瘍である.患者は60歳代,女性.食後のつまり感をもち,胃集団検診にて異所指摘を契機に紹介医を受診した.X線所見や内視鏡所見では下部食道に正常粘膜で覆われた粘膜下腫瘍様病変が存在していた.比較的立ち上がりが急峻で粘膜筋板から粘膜下層に発生した腫瘤と考えられた.CT検査所見では石灰化を伴う境界明瞭な腫瘤で造影効果は認めなかった.変性した平滑筋腫の術前診断にて胸部下部食道切除術を施行した.切除標本では5.8cm大の硬い腫瘤が粘膜下層に存在し,割面は境界明瞭な白色充実性腫瘤であった.組織学的には,硝子化した膠原線維成分が主体で,異型のない紡錘形細胞が散在していた.砂粒体を含む石灰化を認め,軽度のリンパ球,形質細胞浸潤を伴っていた.免疫組織化学的にはvimentinのみが陽性であり,食道CFPと診断した.消化管に発生するCFPはまれであり,食道での発生は本例が第1例目である.

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欧文目次

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 一度の胃内視鏡検査で極めて多くの画像情報が得られるようになった.白色光画像以外に色素撒布,酢酸撒布,拡大,構造強調,NBI,AFI,FICEとあふれるような情報が供給される.しかもファイリング装置で撮影コマ数に制限がない.内視鏡医は手元スイッチを切り替え,処理しきれないほど多くの画像情報を得て,見落とし,見逃しの危険などないと思いがちである.しかし,その画像情報の収集過程に問題がある.胃内腔の構造は複雑で,噴門,胃体部の皺襞,胃角,偽幽門輪などの部位ごとの形態的な違いがあり,さらに胃底腺領域,幽門線領域,萎縮領域といった粘膜腺も異なり,一筋縄ではいかない.

 本書前書きに述べられているように,編者の細井先生は消化管のX線検査に長く携わってきた.その技量は達人の域であろう.卓越した撮影技術を有することにとどまらず,胃X線標準撮影法を確立し,この数年はその普及と精度管理に尽力している.本書では,X線検査で実現された標準化や精度管理が胃内視鏡で遅れていることに対する苛立ちが表れている.

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 素晴らしい本ができたものである.あまり厚くはなく簡単に読めるようだが,読みはじめると一字一句に,著者が熟考した跡がみられて奥が深い.

 短文の“はじめに”が半頁ほど終わると,次の瞬間には読者は右手にファイバースコープを持って,首をかしげながらハンドルをいじりたくなる.大腸内視鏡検査を実施したことのない筆者ですら,そういう衝動に駆られるのだから,毎日のように使用している読者なら,そこからしばらく著者の誘導に乗って,あっという間にスコープの先端は回盲部に到着してしまうだろう.

編集後記 平田 一郎
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 CC(collagenous colitis)は,欧米では約30年前に疾患概念が提唱され,以後,症例の蓄積とともに多くの知見が集約されてきた.一方,本邦においてはCCの認知度は決して高いとは言えず,CCの報告例が散見されだしたのはつい最近のことで,類縁疾患であるLC(lymphocytic colitis)に至っては本邦ではほとんどその報告を見ないのが現状である.CCとLCを総称してMC(microscopic colitis)と言うが,本邦では欧米に比してMCが少ないのか,それとも見逃されているのか実態はつまびらかにされるべきである.他誌だけでなく本誌においてもCCに関する特集は企画されたことがない.消化器医はCCの臨床的特徴を把握して,慢性下痢患者に遭遇したときには本症も必ず念頭に置いて診断治療に当たるべきである.また,CCは大腸内視鏡的肉眼所見に乏しく,生検病理組織が診断の決め手となる場合が多い.消化管病理診断に携わる病理医にCCの組織所見を十分認識してもらい症例の取りこぼしがないようにしたい.このような観点から,今回CCの特集が企画された.

基本情報

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胃と腸
44巻13号 (2009年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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