胃と腸 42巻9号 (2007年8月)

今月の主題 食道表在癌内視鏡切除後の長期成績

序説

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 今から30~40年前,食道癌の診療は極めて困難であった.大部分の腫瘍は大きく,狭窄を形成していた.患者は飲み込んだ固形物の通過が困難となっても,水で流し込む,柔らかな食べ物に変更するなどの工夫をし,なかなか病院へ行かなかった.とうとう嘔吐が始まると,対処の仕様がなくなり,はじめて医師のもとを訪ねることとなった.このころには,体重も顕著に減少しており,栄養状態は不良であるにもかかわらず,手術以外に有効な治療法がなかった.高齢,低栄養,しばしば伴う合併疾患は,大きな侵襲を伴う食道癌根治術のリスクを高めていた.リスク低減のため,手術時間は自ずと制限され,手術の根治性もまた低くならざるを得なかった.手術後の再発はしばしば発生した.局所再発,頸部・上縦隔リンパ節再発そして肺,肝や骨などの遠隔臓器転移もしばしば生じ,有効な治療が行えない時代が長く続いた.このような環境の中で外科医としての生活を送っていたわれわれには,胃癌における早期癌の診断学・治療学の確立,その優れた治療成績は,食道癌についても早期診断が治療成績を劇的に向上させる可能性を強烈に示唆した.

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要旨 背景:EMRは簡便かつ低侵襲で,食道のm1,m2癌に対する標準的治療として広く普及している.方法:1995年1月から2005年12月の間に内視鏡切除を施行したm1,m2食道癌症例を対象に長期予後を解析した.結果:対象は118例144病変で,これらを中央値で35か月経過観察した.118例のうち116例(98.3%)の予後が判明し,異時多発癌による原病死を1例,他病死を15例に認めた.EMR後の遺残再発を4病変(2.8%)に認め,そのうち3病変は追加のEMRで治癒可能であった.EMR後に食道の異時多発癌を9例(7.6%),他臓器の異時多発癌を15例(12.7%)に認めた.結論:食道m1,m2癌の原病予後は良好で,その予後はむしろ併存疾患や食道および他臓器の異時多発癌により規定されていた.

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要旨 1989年12月から2005年3月まで食道扁平上皮癌でEMRを行ったm1・m2食道癌214例238病巣,m1:140病巣,m2:98病巣(男:女=189:25,平均年齢66.4歳)を対象とし,長期成績を検討した.同時多発癌は21例(9.8%)45病巣に認めた.局所再発は19例(8.9%)に認め,手術が1例,放射線治療が2例,内視鏡治療が16例に行われた.異時多発癌は22例(10.3%)に認め,すべて内視鏡治療により制御された.リンパ節転移,遠隔臓器再発はなかった.他臓器重複癌を72例(33.6%)に認めた.原病死はなく,他病死15例,他癌死16例で食道癌より後発の他臓器癌死を9例に認めた.over allで5年生存率93%,10年生存率70%であった.長期的にみても,食道m1・m2癌は十分内視鏡治療で根治が望め,異時多発病巣や他臓器重複癌の発見には10年を超える長期的な経過観察が必要である.

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要旨 2000年1月から2005年12月の期間にESDを行い,組織学的深達度がm1,m2であった食道扁平上皮癌症例79例を対象とした.結果:(1)一括完全切除率93.7%,(2)偶発症:穿孔0%,遅発穿孔1.3%,(3)局所再発率0%,(4)遠隔転移率0%,(5)異時多発食道癌24.1%,(6) 3年生存率95.1%.考察:食道ESDの偶発症と長期予後はEMRと同等であった.食道ESDはEMRより一括完全切除率が高く詳細な病理学的検討が可能となり,局所再発率が低かった.ESDは食道表在癌の治療に有用であると考える.

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要旨 EMRを施行した食道m3・sm1癌46例50病巣を対象として,局所再発や多発癌の頻度,リンパ節転移・再発の診断精度と治療について検討した.局所再発は4病巣(8.0%)に認め,高度なまだら不染の症例や,食道裂孔ヘルニアがない腹部食道の症例に多かった.多発癌は13例(28%)に認められ,全例EMRで治療した.主病巣および多発病巣を含め,局所コントロールが不能な症例はなかった.46例中4例(8.7%)にリンパ節転移,再発が明らかとなっている.これまでのところ原病死はないが,リンパ節転移例を厳密に事前に振り分けることは困難であり,経過観察に重点を置く必要がある.経過観察は6か月ごとに通常内視鏡,EUS,CT,頸部・腹部USをセットにして行うのが効果的で,早期診断を目指すならばEUSは必須である.EMR単独治療例の重点経過観察期間は1年6か月で,CRT追加例では再発時期が遅くなる傾向があるため4年以上の経過観察が必要である.これまでの経験から転移リンパ節は,画像診断で検出可能な大きさになると急速に増大する傾向がある.早期診断のためには,気になるリンパ節が描出されたら経過観察の間隔を3~4か月にせばめ,経時的変化を捉えることが重要である.

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要旨 食道T1a-MM・SM1癌内視鏡治療後の経過.〔目的〕臨床的N0症例を対象にEMRを行い,組織学的に深達度T1a-MMまたはSM1と判定された症例に対して組織学的所見に基づいて一定の判断基準を設け,追加治療を行った.その治療成績を検討し,治療方針の妥当性を検討した.〔対象と方法〕87例(組織学的深達度T1a-MM:65例とSM1:22例)を検討対象とした.追加治療の適応基準は幕内の提案を採用した.病理肉眼所見で病型が0-I,0-III,0-IIc+IIaのものと,病理組織所見で脈管侵襲(+),浸潤様式(infγ),滴状浸潤(+),分化度(低分化型)などの場合は追加治療必要症例とし,それ以外の場合は経過追跡の適応とした.治療法の選択は患者との相談で決定し,CRT・RTまたは根治手術のいずれかを選択した.追加治療の適応であるにもかかわらず,EMR後の治療を望まなかった症例は治療拒否例とし,経過追跡を行った.〔結果〕経過追跡群は47例(T1a-MM:44,SM1:3)で,追加治療はCRT・RT群15例(T1a-MM:7,SM1:8),手術群7例(T1a-MM:1,SM1:6),治療拒否群は18例(T1a-MM:13,SM1:5)であった.経過追跡群には局所再発6例(12.7%)リンパ節再発1例(2.1%)を認めた.追加治療症例における再発はなかった.すなわちCRT・RT群では再発はなく,手術群の2症例(28.5%)で組織学的にリンパ節転移を確認したが術後再発はなかった.この症例は組織学的にリンパ管侵襲2+であり,このような症例には手術をすべきである.治療拒否群においては2例(11%)に転移再発(骨転移1例とリンパ節転移1例)を確認した.経過追跡群における局所再発は分割切除症例で,再EMR 5例とRT 1例を行い治癒した.EMR後の転移再発は経過追跡群2.1%,追加治療群0%,治療拒否群11%であった.〔結論〕組織学的深達度T1a-MMまたはSM1症例に対するEMR後の追加治療を病理肉眼病型ならびに病理組織所見(脈管侵襲,浸潤様式,滴状浸潤,分化度)を参考に,追加治療の適応を決定することは妥当であると考えられる.なかでも脈管侵襲中等度症例には根治手術を適用すべきである.

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要旨 EMRを施行した早期食道癌116症例165病変を対象に,食道内多発癌症例の臨床的特徴と治療成績,食道粘膜の多発ヨード不染帯(multiple Lugol-voiding lesions;multiple LVL)と食道内多発癌および頭頸部重複癌の関連について検討した.同時性・異時性食道内多発癌の発生は計24例(20.7%)に認めた.また,2病変の場合が11例(45.8%)で,3病変以上をもつ場合が13例(54.2%)と半数を超えていた.多変量解析では,multiple LVLが食道内多発癌発生の独立した危険因子(オッズ比3.5,95%信頼区間1.2~10.1,p=0.02)であった.multiple LVLは異時性食道内多発癌の発生,3病変以上の多発癌,頭頸部重複癌の存在に関連していた.また,multiple LVLを伴う症例(n=38)の3年累積多発癌発生率は41.9%で,伴わない症例(n=78)の13.2%と比較して有意に高かった(p<0.01).したがって,multiple LVLを伴う場合,食道内多発癌・頭頸部重複癌発生のリスクを考慮し,食道および頭頸部を厳重に経過観察することが必要である.

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要旨 アルコール依存症者(ア症)の食道癌の内視鏡的粘膜切除(EMR)後の異時性発癌と,癌のなかったア症の発癌とを内視鏡経過観察で比較した.食道癌と口腔咽喉癌の6年発生率はそれぞれEMR後(n=84)で56%と35%,食道異形成患者(n=112)で31%と20%と高頻度だが,食道ヨード不染帯のなかった患者(n=616)では4%と4%であった.ハザード比は不染帯のない患者を基準として,EMR後で23.8倍と14.2倍,食道異形成患者で11.2倍と6.55倍であった.アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)ヘテロ欠損者では,それぞれの6年発生率は,EMR後(n=44)で70%と46%,癌がない患者(n=72)で34%と30%といずれも高く,ALDH2正常者では,EMR後(n=40)で30%と8%,癌がない患者(n=484)で5%と5%であった.ハザード比はALDH2正常で癌がない患者を基準として,ALDH2欠損でEMR後の患者で32.6倍と21.8倍,ALDH2欠損で癌のない患者で11.7倍と11.6倍,ALDH2正常でEMR後の患者で8.12倍と7.36倍であった.ア症ではEMR後の異時性癌の頻度がALDH2欠損者で特に高いが,癌がない患者でも食道異形成やALDH2欠損があると非常に高い発癌リスクがみられ,これらの患者では厳重な長期間の内視鏡観察が必要である.

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要旨 開院以来7年間にわれわれの経験した食道癌のEMR/ESD症例72例中で同時性・異時性の多発食道癌は11例(15%)であった.その中で異時性多発食道癌は5例(45%)であった.多発食道癌の病巣数は2病巣までが11例中8例(73%)であり,3病巣までが11例中10例(91%)であった.いずれの症例もEMR/ESDが繰り返して施行されており,cancer freeの状態への導入が可能であった(手術や放射線治療を行った症例はなかった).その中で,1例のみEMR/ESDを8回反復した症例を経験したが,結局,EMR/ESDの反復で治療を完了した.これらの経験から,T1-LPMまでの病巣である限り複数個の病変があっても,EMR/ESDの反復治療により,極力,食道温存を図ることが可能であると考えられた.

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要旨 食道表在癌に対する内視鏡切除の進歩と適応拡大により食道が温存されQOLの向上が図られてきた.一方,食道が温存されることによりfield cancerizationの問題が挙げられる.内視鏡検査のヨード染色で発見される多発癌や異時性多発食道癌に遭遇する機会も多い.われわれはEMR後経過例の多発小ヨード不染に対してAPCを施行してきた.71例を対象とした検討では,APC前生検では19.7%が扁平上皮癌,43.7%がdysplasiaの診断であった.APC処置後は64.4%の症例で内視鏡所見での明らかな多発小ヨード不染は改善した.経過追跡でヨード不染が残存した16例のうち,10例は生検でも扁平上皮癌と診断され3例に再EMRが施行された.APCは簡便で多発小ヨード不染を有する食道粘膜のメインテナンス法として有用な処置法と思われた.

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要旨 〔症例1〕53歳,男性.2000年6月,食道扁平上皮癌に対し,EMR施行〔SM1,ly(+),v(+)〕.追加治療として化学放射線療法を施行.6年後に異時性食道癌を発見し,EMRを施行.病理学的には,扁平上皮癌T1a-MM,ly0,v0と診断された.〔症例2〕61歳,男性.2000年11月,食道扁平上皮癌に対し,EMR施行〔SM1,ly(-),v(+)〕.追加治療として化学放射線療法を施行.5年後に異時性食道癌を発見し,EMR施行.病理学的には,扁平上皮癌T1a-MM,ly1,v0と診断された.2例とも,6か月ごとの内視鏡検査にて発見された.いずれも,10 mm以下の小癌であったが,周囲に盛り上がりを伴う陥凹性病変であり,深達度T1a-MMの浸潤を示す,発育の早い病変と考えられた.

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要旨 症例は61歳の女性.人間ドックの上部内視鏡検査にて食道病変が発見された.0-IIc型食道癌,深達度m1~2と診断し,内視鏡的粘膜切除術を施行した.病理組織診断はSCC,m3(浸潤幅2,800μm),ly0,v0,0-IIc,Mt,Post,25×15 mmであった.追加治療として化学放射線療法(FP療法+40 Gy)を施行し,その後再発は認めなかった.追加治療から8年後に労作時呼吸困難と難治性胸水が出現し,放射線療法の晩期毒性による放射線性胸膜炎と診断した.対症的に胸水ドレナージを繰り返し施行したが,次第に呼吸不全が進行し,呼吸器症状出現から1年11か月後に死亡した.

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 〔患 者〕 50歳代,女性.2005年5月,職場検診の胃X線検査にて異常を指摘され,近医を受診.上部消化管内視鏡検査にて胃病変を認め,2005年7月当院紹介入院となった.

 〔胃X線所見〕 立位第2斜位二重造影像で胃体上部後壁に,境界明瞭で内部に不整形のバリウム斑を有する径15 mm程度のIIa+IIc病変を認めた.また,その大彎側と口側には,バリウムをはじく領域が認められた(Fig. 1 a~c).空気を増量しても,IIc周囲の隆起が明瞭に描出された(Fig. 1 d).

早期胃癌研究会

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 第46回「胃と腸」大会は5月8日(火)にグランドプリンスホテル新高輪で開催された.司会は杉野吉則(慶應義塾大学医学部放射線診断科)と八巻悟郎(こころとからだの元氣プラザ内科)が担当した.

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要旨 患者は78歳,女性.約1か月前からの食事のつかえ感を主訴に近医受診し,食道腫瘍を指摘されて当院紹介となった.上部消化管造影および内視鏡検査所見では胸部中部食道に径5 cmの粘膜下腫瘍様隆起を認め,さらに内視鏡所見でその周囲に上皮内伸展を思わせるヨード不染帯を認めた.生検にて低分化型扁平上皮癌と診断し,右開胸開腹食道亜全摘術を施行した.病理診断では,低分化型扁平上皮癌で深達度sm3,脈管侵襲陽性で,1,2群リンパ節への転移を認めた.切除標本上も中央の隆起部分は完全に非腫瘍性上皮に覆われているものの,周囲の上皮内伸展部は通常の上皮内癌の形態をとっており,比較的まれな形態と考えられた.

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要旨 症例は71歳,女性.心窩部不快感のため当院を受診.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部から中部小彎に不整形の広範な白色調の陥凹性病変を認めた.同部の生検病理組織所見では扁平上皮で,異型細胞はみられなかった.胃粘膜に異型のない扁平上皮がみられるのは非常にまれである.今回われわれは,胃体部小彎側に広範に扁平上皮化生を認めた症例を経験したので報告する.

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要旨 69歳の女性.二次検診目的で施行された下部消化管内視鏡検査で,上部直腸に直径7~8 mm程度の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.色調は周囲と同色調で,粘膜表面の毛細血管の拡張を伴っており,色素撒布によりわずかに2つに分葉している像がみられた.total biopsy目的で内視鏡的切除を行った.組織学的に,ほぼ粘膜固有層に限局して,境界がやや不明瞭なリンパ濾胞様の構造を示しながら,B細胞性の形質を示すcentrocyte-like cellが浸潤,増殖している像を認め,MALTリンパ腫と診断した.PCR法にても腫瘍細胞のmonoclonalityが確認された.臨床病期はstage Iで経過観察となっているが,切除後17か月の時点で再発を認めない.

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 UCの緩解期における問題点とは,言わずと知れた癌,dysplasiaのサーベイランスである.私が内視鏡を携えてSt. Mark Hospital(SMH)へ行き,そのとき初めて注腸造影によるUCの癌化例を見せられたとき,これは内視鏡の絶好の適応であると直感した.1970年,内視鏡によるUC-Cancer Surveillanceを考えた人はおそらくいなかったのではあるまいか.ロンドンにSMH以外大腸内視鏡(CF)は1本しかなく,SMHの人々に注腸造影よりCFが優れていると説いても相手にされず,英語の拙さに悔しい思いをしたものだ.しかし,彼らは1973年にはその有用性に気付き研究を開始しているのである.

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要旨 症例は72歳,男性.69歳時に右腎細胞癌手術の既往があり,糖尿病性腎不全のため血液透析中であった.2005年2月に下血を認め,入院で上部・下部消化管内視鏡検査等の精査をしたが出血源は不明であった.発症から9日後より再出血し,血管造影検査と腹部CT検査で小腸に出血源が疑われ,ダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行した.空腸に粘膜下腫瘍様隆起病変を認め,生検による病理結果より転移性小腸腫瘍(腎細胞癌)と診断され,再出血予防目的で小腸切除術を施行した.腎細胞癌からの転移性小腸腫瘍はまれな症例と考えられたので文献的考察を加えて報告する.

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欧文目次

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 川崎医科大学名誉教授として,現在も救急医療の最前線で活躍しておられる小濱啓次先生の編著による「救急マニュアル―救急初療から救命処置まで」が初版から22年を経てこのたび大改訂された.この間の救急医学の進歩には目を見張るものがあり,数多くの新知見を随所に盛り込んだ最新作が世に出されたわけである.

 小濱教授はわが国で最初の救急医学講座教授であり,それまでわが国の医学医療の中で全くと言ってよいほど省みられることのなかった救急医学の学問体系を構築し,救急医のアイデンティティー確立に尽力されてこられた.その意味では,本書の第1版はまさに救急医学のスピリットをふんだんに盛り込んだ名著であり,救命救急センターや救急部で働く若手医師にとってのバイブルであったとも言えよう.従来の各科対応型救急医療では対応できない重度外傷,広範囲熱傷,急性中毒,心肺停止,多臓器不全の患者を前に,手探りでスタートしたわが国の救急医療において,まさに道しるべの役割を果たしてきた.筆者が救命救急センターに配属となり,次から次へと搬送されてくる各種病態の患者対応に苦慮したとき,貪るようにして本書から情報を得ていたことが昨日のことのように思い出される.

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 松田晋哉氏の著書『基礎から読み解くDPC―正しい理解と実践のために 第2版』(医学書院)が刊行された.著者は周知のごとく急性期医療を担う病院のベンチマークから診療報酬までの新しい評価システムであるDPCについて設計・開発から普及まで,厚生労働省の作業を中心的に主導してきた研究者である.本書はまさに,そのようなDPCのすべてを考究しつくした第一人者である著者だからこそ初めてまとめることができた好著となっている.

 DPCはこれを導入している360に及ぶ病院の関係者にとっても,その壮大な機能の一部を理解しているにとどまり,容易に全機能を掌握できない拡がりと深みをもった制度である.本書では例示された事例の診療報酬算定方式で示されているように,極めて平易で具体的な記載により"DPCのすべて"が語られている.

編集後記 小山 恒男
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 食道EMRが開発され約18年が経過した.この間に内視鏡機器は格段の進歩を遂げ,食道表在癌の発見頻度は増加した.技術的にはESDの開発により,大きな病変でも一括切除が可能となった.当初,食道EMR/ESDの適応は深達度m1,m2の早期癌のみであったが,m3,sm1癌のリンパ節転移頻度は10~20%と報告されており,相対適応として多くのm3,sm1癌症例が内視鏡的治療を施行されてきた.

 本号では先進的な施設の治療成績を集積し,食道EMR/ESD後の長期予後を明らかにすることを目的として編集した.その結果,絶対適応である深達度m1,m2癌の長期予後は極めて良好であったが,高率に異時多発癌が発生することが明らかにされた.また,ESDは歴史が浅いため長期予後は不明だが,局所再発が少ないという利点が判明した.

基本情報

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胃と腸
42巻9号 (2007年8月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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