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編集後記
芳野 純治
pp.1044
発行日 2007年5月25日
Published Date 2007/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101126
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本企画はHelicobacter pylori(Hp)と胃癌発生に関して背景胃粘膜の観点から取り上げた.HpはWHO/IARCにより胃癌発生に強く関与するとしてdefinite carcinogen(group1)に定義され,これまでの多くのデータはHpと胃癌との関係を支持している.しかし,Hpの感染より胃癌発生への道筋は現在のところ十分に解明されてはいない.
胃癌の時代的変遷をみた西倉論文と辻論文は膨大な数の胃癌切除標本を見直し,最近の20~30年の間に生じた胃癌の変化をHpとの関わりから詳述している.胃癌の母地はHp感染により生じた萎縮性胃炎・腸上皮化生を経た分化型胃癌とこれまで考えられていたが,未分化型胃癌の組織発生にも関わっている可能性が多くのデータから示唆された.また,形態的に特徴を有する鳥肌胃炎(鎌田論文)や皺襞肥厚性胃炎(篠村論文)はHpの発見より胃癌との関わりが再評価されるようになった.一方,Hpと関連のない胃癌も極めて少ないが存在し,その特徴が明らかにされている.特に,噴門部胃癌の中にはHp感染との関わりがなく,酸分泌の保たれたBarrett腺癌と同様なものが存在するとしている.
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