Coffee Break
大腸学事始め―(11)日本の大腸学―その1
武藤 徹一郎
1
1癌研有明病院
pp.1032
発行日 2007年5月25日
Published Date 2007/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101127
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大腸癌取扱い規約作成時のエピソードをもう少し続けよう.胃癌の場合と大きく異なる点は,大腸には腺腫という良性腫瘍ならびに様々な腫瘍様病変が存在することである.一般には,これが十把ひとからげにポリープと総称されるため無用な混乱が生じている.肛門ポリープも癌になるのですか,などという愚問が発せられるゆえんであるが,これには医師の不用意な用語の使い方にも責任がある.前癌病変であるだけに,腺腫の分類には特別の注意が必要であるが,異型度分類のところで大いにもめた.もめたと言っても,私1人が大勢に異を唱えたのである.Morsonの弟子として英国流の分類,すなわち腺腫を高度,中等度,軽度異型に分けることを主張した.粘膜内癌という用語の代わりに高度異型腺腫を用いる案である.病理の先生方は胃癌分類に準じて,m癌(粘膜内癌)と腺腫に分け,その腺腫の異型度を高,中,軽の3段階に分けることを提唱された.激しい討論の末,と言っても私が頑強に反対したにすぎないのだが,現在のごとくm癌の名称を認める案で落ち着いたのである.他臓器との整合性を考えればこれでよかったのであるが,m癌の存在のために,最近になって種々の不都合が生じてきていることも事実である.例を挙げると以下のごときものがある.
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