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はじめに
古くより,胃癌の発生に胃炎が密接に関連していることはわかっていた1).そして,活動性慢性胃炎は低分化型腺癌(びまん型癌,未分化型癌)の発生母地となり,萎縮性胃炎および腸上皮化生は高分化型腺癌(腸型癌,分化型癌)の発生母地となることも唱えられていた.1983年,WarrenとMarshallによって発見されたHelicobacter pylori(Hp)が活動性慢性胃炎から腸上皮化生まで一連の変化のほとんどに関与することがわかってから2),"胃炎と胃癌"という研究課題は"Hpと胃癌"という研究課題へ変わってきた.さらに拍車をかけたのがWHO/IARCによる"Hpは胃癌のGroup 1 definite carcinogenである"という認定である.その根拠となったのが後向き研究による疫学的研究成果であった3).
その後,1998年,Huangらによるmeta-analysisで,胃癌におけるHp感染者のodds比は解析した全研究で1.92,cohort studyで2.24,case-control studyで1.81と高く,Hpが胃癌発生の危険因子であることがいっそう明瞭となってきた4).2000年,Yamagataらの前向き試験では(40歳以上で胃切除歴や胃癌の既往歴がない症例),男性の胃癌発生odds比が2.59で,女性のそれは0.99であったことから,Hpは男性の胃癌発生に有意に相関すると報告した5).1997年,Uemuraらの除菌介入試験では(早期胃癌の内視鏡的治療後に発生する異時性二次癌の発生率を検討.平均観察24か月),除菌群(65例)に二次癌発生がなかったが,非除菌群(67例)ではそれが6例であった.Hpが胃発癌の高危険因子であることがさらに一段と強調されてきた6).
それでは,Hpがどのような遺伝子学的・免疫学的・生化学的変化を誘導して,胃癌を発生させるのであろうか.スナネズミの実験から得られたHpと胃癌の関係はどのようなことを示唆したのであろうか.さらに,ヒトでHp感染を受けた胃粘膜のうち,どのような肉眼形態や組織所見を有するものが胃癌の高危険度群であろうか.Hpが胃小窩上皮に付着して,胃上皮細胞に種々の変化を与え,癌が形成されるまでの"Correaの胃癌発生仮説"は本当にそのまま受け入れられるのであろうか.
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