胃と腸 4巻12号 (1969年12月)

今月の主題 潰瘍性大腸炎

綜説

潰瘍性大腸炎の臨床 渡辺 晃
  • 文献概要を表示

はじめに

 激しい血性下痢や高熱を主症状とする患者のなかに,病理学的には潰瘍をともなう炎症によって特徴づけられる,非伝染性の,重篤な大腸炎のあることが古くから注目され,欧米ではWilks1)(1868)の記載以来ulcerative colitis1),simple ulcerative colitis2),Colitis ulcerosa3),Colitis chronica gravis4),chronic ulcerative colitis,nonspecific ulcerative colitis,idiopathic ulcerative colitis,asylum dysentery,innominate ulcerative colitis,ulcero-hemorrhagic colitis,chronic suppurative colitis,thrombo-ulcerative colitisなどと呼ばれ,わが国では稲田5)(1928)の報告以来重症大腸炎または潰瘍性大腸炎と称せられている.しかるに,当時“colitis”という名称は臨床的には,必ずしも病理組織学的な炎症を示す用語として用いられているわけではなかったが,やがて大腸の機能的疾患であるirritable colon過敏大腸症の概念が新に登場し,従来spastic colitis,mucous colitis,およびmechanical colitisなどと称せられていたあいまいなものが過敏大腸症の範疇に含まれるにおよんで6),近年,欧米では原因不明の非特異性大腸炎として本症が大きくクローズアップされる結果となってきている.

 一方わが国においても,従来症状や理学的所見だけからしばしば慢性大腸炎という診断が下されていたが,筆者らは大腸各部の生検や細胞診を用いてこれらを検討し,これらの大部分は過敏大腸症の範疇に入ること,および大腸に発生する原因不明の非特異性炎症は,将来はいくつかの疾患に区分される可能性を否定しえないとしても,現段階では潰瘍性大腸炎の範疇に入れざるをえないことを明らかにしている7)8).このように,今日わが国では本症をめぐる考え方が大きく変りつつあるように思われるので,ここでは筆者らが最終的には生検,手術,または剖検による組織学的所見を把握したのちに診断を下した本症84例の臨床成績にもとずいて,本症の頻度,症状,理学的ならびに検査所見,診断ならびに鑑別診断,合併症,内科的療法ならびに外科的療法の適応,および予後について検討を加えてみたいと思う.

  • 文献概要を表示

はじめに

 潰瘍性大腸炎の精密かつ周到な診断は,詳細な病歴の聴取と糞便を中心とする一般検査のほかに,X線検査・内視鏡検査・病理組織学的検査の三者の有機的な結合によりはじめて可能である1)2)

 とくに内視鏡検査は,潰瘍性大腸炎の好発する直腸・下部S状結腸の検索には極めて重要な意義を有し,その診断確定には直腸・S状結腸直達鏡検査は絶対に欠かすことはできない.

 一方,少数ではあるが,直腸・下部S状結腸には全く病変のみられない型の潰瘍性大腸炎もある.また,直腸S状結腸鏡で観察できる場合でも,その範囲は限局されるので,長大な大腸に波及した病態を正しく把握することは不可能である.これが深部大腸粘膜の観察が強く望まれる所以である.直腸S状結腸直達鏡による深部大腸粘膜観察の試みは,Regenbogenによりなされてはいるが3),姑息的なものであり,その観察可能の範囲もわずか50cmくらいにすぎない.

 深部大腸粘膜の観察は,すでに1957年,松永教授により開発されたSigmoidocameraによりはめじて可能となった.爾来教室では大腸疾患の日常検査として使用し,精密診断に貢献するところが多かつた4)~9).しかし,このSigmoidocameraは盲目撮影であること,および技術的にも難点があり,実地臨床に用いられるには不充分であった.そこでより実用的に直視下,しかも容易に操作できる大腸ファイバースコープの開発を,オリンパス光学工業と協同ですすめた結果,昨年ほぼ満足できる器械の試作に成功した.

 Colonofiberscopeと呼ばれるこの器械は,操作が容易でかつ安全であり,直視下生検も可能であるという画期的なものである10)11).数回の改良を経た現在では,盲腸までの挿入観察成功例もある.実用の域に達した新しい検査法といってよい.これにより,従来の直達鏡検査では不可能であった潰瘍性大腸炎の全病巣の観察が可能となった.しかも,容易に深部大腸での直視下生検組織片が採取され,大腸疾患,特に潰瘍性大腸炎診断の精度は飛躍的に向上した.

 本稿では,直腸S状結腸直達鏡検査,Sigmoidocamera検査およびColonofiberscopyについてそれぞれの実際の手技を簡単に記し,これら内視鏡検査での潰瘍性大腸炎の所見を症例をあげて略述し,さらに鑑別診断にふれる.

潰瘍性大腸炎の治療 小平 正 , 吉雄 敏文
  • 文献概要を表示

はじめに

 本質的に本病の原因が明らかにされていない今日,内科的にも外科的にもその治療はすべて対症療法の域を出ていないと言えよう.その経過の長短を問わず,病変が大腸の広範囲に進展した揚合,終局的には根治療法は大腸全切除であることに異論はないが,下部直腸の内視鏡検査によって,そこに未だ軽度の限局的な発赤,びらんなどが発見され,生検によって非特異性の粘膜炎症の所見が得られても,これが再発を繰り返しながら本症と確定診断を下されるに至るものかどうかを予測し難いのが普通である.

 かような初期に発見された場合,当然内科的治療が行なわれ症状の寛解を見ることは少なくない.病変が上方に向って進展,増悪する傾向を示し,また一旦寛解しながらいつか再発を来たすような揚合に,外科的療法を決意しても直ちに結腸の全切除を考えず,部分的ないしは半切除にとどめることが少なくあるまいと思われる.しかし従来の経験に徴して本症の多くが残存結腸に再発し,結局再手術によって結腸の全切除のやむなきに至ることが少なくない.それならかような症例においても1次的に結腸全切除を行なうのが本症の外科的根治法だと言えばまさしくその通りではあるが,全切除後の患者に与える日常の負担は並並ならぬものがあるので,一見病変を認めない部まで含めての全切除が躊躇されるのも無理からぬことと思われる.

 冒頭に,内科も外科もすべて対症療法の域を出ないと言ったのは,かような点までを含めてのことであり,筆者自身も今後同じような外科的判断を繰り返すことかと思うのである.本症の初期における診断法の確立と共に,早期の根治的治療法を見出さねばならない.ここには筆者らの経験例を検討し,現状においての考えを述べてみたい.

  • 文献概要を表示

はじめに

 潰瘍性大腸炎(idiopathic ulcerative colitis)は臨床的に症状の軽快と再発とをくり返す慢性の炎症性疾患であるが,その原因ならびに発生機序については,今日なお不明の点が多い.さらに,本症の示す多様な病像から,これを独立疾患とみなさず,むしろ症候群と考える人も多くなってきた.本症は欧米にくらべ日本では極めて稀な疾患とされていたが,松永1)の発表を契機として注目されるようになり,診断技術の進歩と相まって今日ではそれほど稀なものとはいえなくなった.この理由として,もちろん診断と治療の進歩を第一にあげなければならぬが,本症の概念そのものの変遷もみのがすことのできない事柄であろう.すなわち,Truelove2),Bochus3),渡辺4)によると,大腸の炎症性疾患で病因の確かめられるものをすべて除外し,その後に残ってきたものを包括するというふうにかなり幅広い見方をとっている.このことは,近年急速に進歩した生検材料の診断規準とも関連を有してくる.

 筆者らは手術例による病理形態発生を検討し,また同一症例の生検と手術所見とを対比しながら潰瘍性大腸炎の特徴を明らかにしようと試みた.さらに,剖検例における本症の頻度を剖検輯報から調査し,2,3の問題点を見出したので,これらについて報告したい.

  • 文献概要を表示

 潰瘍性大腸炎は直腸出血,下痢,腹痛,発熱,食欲不振と体重減少を特徴とする直腸と結腸の急性ならびに慢性の炎症性潰瘍性疾患である.直腸S状結腸鏡所見では,浮腫,充血,うっ血およびビマン性斑点状潰瘍と血膿性分泌物を伴う粘膜の易出血がみられる.組織学的には多型核細胞にリンパ球,単核球およびプラズマ細胞が加わった組織反応が認められる.陰窩膿瘍(Crypt Abscesses)もしばしばみられるが.この疾患に特有なものではない.病変は粘膜層と粘膜一ド層に始まり,最も著明であるが,全腸壁を侵すこともある.レ線的特徴は直腸と結腸の膨張性の減少,微小ulcerationsを示す辺縁の”のこぎり歯状の切れ込み”,結腸の正常なHaustra形成の喪失,腸の狭窄と短縮ならびに粘膜パタンの偽ポリープ様変化である.X線でみると,少なくとも50%の患者では全大腸がおかされ,45%に結腸のいろいろの部分の変化がみられ,ほぼ5%には病変は認められない.これはおそらく経過の軽いためであろう.

 発病は軽くて直腸出血が唯一の症状である場合もあるが,ときには急激で,発熱,毒血症,激しい下痢,血液,電解質および液体の著明な喪失を伴うこともある.潰瘍性大腸炎の経過はいろいろで,長期の症状緩解もあリ,度々の一時的悪化もみられ,あるいは持続的な進行性疾患になることもある.再発は最初の病変,の解剖的な広さの範囲以内にしばしば現われ(例えば下行結腸,S状結腸および直腸),臨床的に病状が再び活動的になっても解剖学的にそれ以上進行しないという事実は興味のあることである.再発はしばしば感情的緊張,上気管道感染および他のいろいろな疾患,肉体的疲労,食餌の下摂生,抗生物質や下剤の使用,手術,女性の場合はまた月経などに伴っておきる.このように“triggering”(誘発因子となる)事情は多種多様であり,すべての困難な黙生活状況”を含んでいる.潰瘍性大腸炎は局部と全身の合併症をもつ疾患である.結腸の合併症は出血,結腸周囲炎,穿孔,腹膜炎,狭窄,閉塞,中毒性拡張および結腸癌の頻度の増加などである.全身的には貧血,低蛋白血症,関節炎,強直性背椎炎,仙腸骨炎,結節性紅斑,壊疸性濃皮症,虹彩炎,血管血栓症,血小板増加症,脂肪肝,肝炎,胆管周囲炎および胆汁性肝硬変,腎孟腎炎,腎石症,膵と副腎の炎症性変化および軽度の性格異常,精神分裂症,急性精神異常,麻薬常習および自殺の企てなど感情的な問題も合併症に含まれている.

  • 文献概要を表示

はじめに

 X線所見で顆粒状陰影を呈し,病理組織学的には,一方は悪性,他方は良性であった2症例について,X線所見および組織所見を対比しながら呈示する.

  • 文献概要を表示

はじめに

全く愁訴なく,対がん協会の胃集検で発見された,Ⅱa+Ⅱc様の形を呈した早期胃癌の1例を報告する(この症例は,昭和44年4月4日,仙台市で行なわれた早期胃癌研究会の席上検討された).

  • 文献概要を表示

はじめに

 筆者らは,集検によってチェックされ,胃生検によって癌と確診された,Ⅱb型早期胃癌で,微小Ⅱa様異型上皮巣と,微小Ⅱc様異型上皮巣を合併した症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃の内視鏡検査は胃カメラについては1950年,宇治1),杉浦,深海らによって発表されて以来,幾多の機構・性能上の改良が施され,現在ではほぼ完成された観を呈している.一方,1957年,Hirschowitz2)がファイバーオプティックスの原理を応用して胃十二指腸ファイバースコープを開発して以来,その適用分野は胃粘膜面の観察のみならず,その他の消化管や心臓その他の臓器にも及んできつつある.一般にファイバースコープを含めて内視鏡検査の応用範囲は体表面に開く内腔臓器より漸次深部臓器に進んでゆく傾向にあるといえる.すなわち消化管系においては口側では食道,胃に至るまで,肛門側では直腸より上行結腸に及んでいるのが現状である.口側よりのアプローチとして,十二指腸についてはHirschowitz3)が1961年,Gastroduodenal Fiberscopeを用いて観察したのが最初であるが,以後Jones4),Fulton5),Burnett6),Kemp7),Cohen8),Watson9)らがそれぞれ行なっているが,いずれもガストロファイバースコープを用いている.1967年,Riderら10)はHirschowitzのガストロファイバースコープでは十二指腸への挿入率が低いため,より細くて柔軟性のある新しい十二指腸専用のファイバースコープを考案し,挿入については12例中11例成功の好成績を示したと報告している.以上のように十二指腸ファイバースコープについては,現段階では従来のガストロファイバースコープをそのまま転用する方法と,新しく十二指腸ファイバースコープを試作し応用する方法とがある.筆者らは,以下に述べる理由により十二指腸,とくに乳頭部観察を行なうには,十二指腸の解剖学的,生理学的特性に従った専用の十二指腸ファイバースコープが新しく開発されねばならないと考えている14,15,16).すなわち,

 1)十二指腸,さらに小腸を含めて挿管を進めるには,腸管の解剖学的構造からみて,胃ファイバースコープとことなり,機械的におしこむことは困難である.よって挿入には胃および腸の運動を利用するのが妥当であって,ファイバースコープの形態としては細くて軟性のものが望ましい.

 2)十二指腸粘膜および乳頭の探索ならびに観察は直視式でもよいが,今後乳頭に加えるべき操作を考慮すると,対象を正確に傭瞼できる側視式に利点があることは申すまでもない.

 また従来より行なわれている方法,すなわちファイバースコープを一定位置まで到達させた後,これを引きぬきつつ探索・観察を行なうことは可視範囲が不定かつ限定され,腸管内腔を全周にわたって見ているとは必ずしもいえない欠点があった.そのため病変(乳頭を含めて)の見落しがある可能性がある.現在までの報告例では連結部の追従性を期待して操作部を回転し,先端をまわす方法,外筒の保護のもとに内筒(ファイバースコープ)を回転させる二重管式,体外部よりファイバーに沿わせたワイヤーをひき先端部を回転させる方法などが考えられたがいずれも回転が十分でなく,任意の位置に確実に停止させることができないように思われる.

 したがって側視式で先端レンズ部の回転(360回転,希望位置で確実に回転開始および停止ができる機構)が可能なファイバースコープが望ましいことになる.

 3)十二指腸内で対象との間に安定した明視の距離を保つために空気送入を行なうことは,胃とことなって解剖学的に空気の保持に難点があり,バローンやカブでもこの目的を満足させるものが得られていないように思われる.したがってわれわれは一定の明視の距離を保つことのできるなんらかの腸管内腔の機械的拡張が必要であると考えている.

 4)またこの方法によると,今後予定されている乳頭内操作を行なう上で,視野の固定維持および「足掛かり」を与えられる利点がある.

 5)機構的に複雑となる可能性がある.また安全性については電気関係や回転および機械的拡張方法に関して絶対に保証確立されたものでなければならないことは勿論である.

 以上の諸点を考慮して,われわれはオリンパス光学工業株式会社の協力を得て,今回十二指腸ファイバースコープの試作を行ない,少数例ながら臨床的応用を試み,動物実験において2,3の知見を得たので報告する.

  • 文献概要を表示

 増田(司会) 潰瘍性大腸炎は,昔はごくまれなものと考えられていましたが,最近ではちょいちょい見られ,かなり重要な疾患です.また,潰瘍性大腸炎と,ほかの大腸の炎症との関係も,非常に興味深いものがあります.そこで「胃と腸」の読者に,広く潰瘍性大腸炎をご理解いただくため,平易に,プラクティシュなことを主にお話しいただければ幸いと存じます.

 まず潰瘍性大腸炎の概念,あるいは定義について,山口先生,いかがでございましょうか.

技術解説

  • 文献概要を表示

はじめに

 胃内視鏡検査は胃内に空気を入れて行なう検査方法にもかかわらず,空気の入れ方,入れる量についての配慮は意外に乏しい,従来,胃カメラ撮影時,またはファイバースコープ観察時における胃内空気量は,見映えのする写真,あるいは胃壁の良く伸展された状態での観察を得ることができれば良いと考え,それほど問題にされなかったきらいがある.

 最近では,直視下に観察条件をかえることが比較的容易な優れたファイバースコープの出現,さらには微細病変の診断への要求と,ただ単に,見映えのする写真とか,一定の観察条件を得ることのみを目的とした送気量の固定化,すなわちどんな症例に対しても常に同じ程度の空気量下に内視鏡検査を行なう在来のやり方では,必ずしも十分に満足できなくなり,観察し得るに足る最少の空気量から,過伸展に近い,すなわち患者が排出してしまう限界に近い最大の空気量を送入しての状態まで種々の条件下で観察を試みることが,より確実な診断を得るために重要であると考えられるようになってきた.

 特に慢性胃炎,潰瘍瘢痕,微小早期癌の診断,癌の深達度の判定の問題などは,この送気量を主体とした動的観察によって,より適確な判断が期待できるし,また,今後検討しなければならない分野であろう.しかし,これを実際の内視鏡施行時において,どのように,またどの程度に空気を入れるか,いかなる病変はいかなる送気量下に観察することが正しいかを断定することは困難な現状である.われわれは胃内送気量について改めて検討を加えているが,この点についてこれまで得た知見をもとに,空気の入れ方についてできるだけ具体的に述べてみたい.

診断の手ほどき

Ⅱcの症例 高田 洋
  • 文献概要を表示

今回は胃角部後壁に局在するⅡc型早期胃癌の症例をとり上げてみた.病変がこのあたりにあると充盈像での辺縁の変化は少ないもので,その診断は二重造影と圧迫撮影法に負う所が大きい.ただし,この部は十二指腸・小腸陰影と重なることが多いため注意しないと見逃すこともある.

研究会紹介

西湘消化器研究会 西田 一彦
  • 文献概要を表示

 私たちの研究会の歴史は比較的に古い.昭和38年旧臘.有志の2,3人が山比町で開業の傍ら,夙に消化器病研究にユニークな業績をあげておられた高山欣哉先生の門を叩いて胃カメラの実技と胃レ線診断の指導を受け始めたのがきっかけとなり,その後1人2人と同好の士がふえ,40年1月以来“西湘消化器研究会”の名の下に毎週1回例会を持ち,現在に至っています.日本国中に研究会の数多しといえども,私たちの会のように曲りなりにも毎週1回例会を持ち現在に至っている会は少ないのではなかろうかと,いささか自負しています.毎回の出席者は10名ないし15名と比較的小人数ですが,それなりにまとまりも良く,各人が持ちよった症例を中心に各人各様,シヤウカステンを取り囲んで,憶面ない発言も物とせず遠慮会釈のない活発な討論を展開,談論風発とどまる処を知らず,深夜1!時12時に及ぶことも稀ではありません,それは,創設者高山先生の情熱と猛烈な牽引力に預かること大であり,同時に会員1人1人の熱意,すなわち第一線の実地医家こそ,早期胃癌を発見する責務があるとの使命感に基くものに外ありませんが,その中にあって特筆すべきは,小田原市の村上富郎先生の地味な努力でしょう.雨の夜も,風雪の夜も厭わず,毎週欠かさず定時に出席,会場の準備は勿論のこと,常に会の進行と発言の中心になって会を盛り上げ,時に2人3人の集りの時にも休むことなく,会の存在を支えて来た努力は高く評価されるべきです.レギュラーメンバー中,東大分院付属の鵜川先生の指導力も大きく,毎回,病理組織学的所見まではっきりしている貴重な症例を持参されて,全員デスカッションを求め,その後,適確なまとめと説明を下されて,会のレベルアップに貢献して頂いています.最近日野胃腸病院勤務となられたために,出席が少くなりましたが,湯河原診療所在勤中の根本達久先生から学んだ胃レ線写真読影の基本的な態度と知識はこれまた,莫大なものです.その他,昨今とみに読影にきめの細かさと鋭さを加えて来た大磯町の松橋先生,胃内視鏡所見の読みに深みをまして来た秦野市の大林先生等々,多士済済で1人1人が会の支柱的役割を果して来ています.

 会歴5年有余を経た現在,会として抱く悩みも少なくはありません.

呉消化器病研究会 木村 規矩志
  • 文献概要を表示

 呉の夜景は,丁度港神戸を思わせる瀬戸内の静かな入江の深い街である.戦時中は.戦艦大和(6万8千チン)を筆頭に数々の艦船が建造され,東洋一の軍港として栄えたものであった.現在の造船界では,20万トン級のタンカー船を,造り世界のトップクラスを行く平和産業都市に生まれ変った.当地は,広島県の文化の中心地である広島と最も地理的条件が接近しているので,広島大学に恩恵を蒙ることが多い.

 昭和36年には,浦城教授を会長とする広島消化器病同好会が発足した.その例会,あるいは幅広い研究発表会には何時も全国から有名な諸先生の御来広を仰いで,特別講演が開かれたものであった.当時呉市においても同好の士の熱意も並々ならぬものがあって絶えず広島での講演を拝聴し,唯々感銘にひたったものであった.したがって,消化器疾患に関する興味を持った開業医の先生は,次第に増加の傾向を辿っていた.昭和38年,広大医学部浦城内科教室,抽木助教授の助言で,呉にも消化器疾患に関する組織的な研究会を持ったらどうかと言うことの助言があり,機を得たりと同年暮れ,私と中国労災病院,岩越仙三先生,国立呉病院,桐本孝次先生,小笠原病院,小笠原康隆先生らが発起人となって,呉の総合病院及び開業医の諸先生の協力のもとに第1回の例会を開催した.当時は,胃疾患に関するいろいろの症例を気軽に話し合えると言うことで,会の運営は会員がもち廻りで,隔月1回幹事をつとめることにした.時には,地元専門家の講演会を開催し,それによってわれわれは啓発され,また刺激を受けることにした.月例会の出席者は35名前後で和気あいあいのうちに,夜のふけるのを忘れることもしばしばであった.

--------------------

欧文目次

編集後記 佐野 量造
  • 文献概要を表示

 本号をもって「胃と腸」4巻も有終の美を飾ることになります.この号は「腸」シリーズで,本号に関する限りは「腸と胃」です.潰瘍性大腸炎のような,日常経験することは非常に少ないが,しかし大腸疾患の鑑別には是非知っておかねばならぬという“やっかい”な病気を,臨床と病理の面から詳しく記載された雑誌は大変有難い.私達の病院で,過去7年間に手術された潰瘍性大腸炎は僅か2~3例程度で,こう材料が少なくては勉強するにもしようがないというのが本音です.大腸癌は世界的にも増加の傾向があり,まずその鑑別診断として潰瘍性大腸炎の一般的知識はますます必要となるでしょう.

 「胃と腸」4巻を通覧して気のつくことは,早期胃癌も深達度の診断とより芸が細かくなり,また一方では胃生検による微小癌の診断,さらに十二指腸ファイバースコープによる膵および乳頭癌の早期発見と,十二指腸の癌も射程距離に入ってきたようです.ますます臨床と病理の協同作業,両者の情報伝達が不可欠のものとなってきました.世はまさに情報時代,断絶は困ります.仲良くやりましょう.

基本情報

05362180.4.12.jpg
胃と腸
4巻12号 (1969年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月12日~11月18日
)