技術解説
内視鏡検査時の空気の入れ方
鈴木 茂
1
,
山下 克子
1東京女子医科大学消化器病センター
pp.1593-1596
発行日 1969年12月25日
Published Date 1969/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110868
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はじめに
胃内視鏡検査は胃内に空気を入れて行なう検査方法にもかかわらず,空気の入れ方,入れる量についての配慮は意外に乏しい,従来,胃カメラ撮影時,またはファイバースコープ観察時における胃内空気量は,見映えのする写真,あるいは胃壁の良く伸展された状態での観察を得ることができれば良いと考え,それほど問題にされなかったきらいがある.
最近では,直視下に観察条件をかえることが比較的容易な優れたファイバースコープの出現,さらには微細病変の診断への要求と,ただ単に,見映えのする写真とか,一定の観察条件を得ることのみを目的とした送気量の固定化,すなわちどんな症例に対しても常に同じ程度の空気量下に内視鏡検査を行なう在来のやり方では,必ずしも十分に満足できなくなり,観察し得るに足る最少の空気量から,過伸展に近い,すなわち患者が排出してしまう限界に近い最大の空気量を送入しての状態まで種々の条件下で観察を試みることが,より確実な診断を得るために重要であると考えられるようになってきた.
特に慢性胃炎,潰瘍瘢痕,微小早期癌の診断,癌の深達度の判定の問題などは,この送気量を主体とした動的観察によって,より適確な判断が期待できるし,また,今後検討しなければならない分野であろう.しかし,これを実際の内視鏡施行時において,どのように,またどの程度に空気を入れるか,いかなる病変はいかなる送気量下に観察することが正しいかを断定することは困難な現状である.われわれは胃内送気量について改めて検討を加えているが,この点についてこれまで得た知見をもとに,空気の入れ方についてできるだけ具体的に述べてみたい.
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