胃と腸 37巻2号 (2002年2月)

今月の主題 4型大腸癌とその鑑別診断

序説

4型大腸癌とその鑑別診断 飯田 三雄
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 進行大腸癌の大部分は限局性潰瘍形成癌(2型大腸癌)であり,大腸壁全層にわたってびまん性に浸潤増殖する4型大腸癌はまれで,全大腸癌の0.5~1.3%を占めるにすぎない.従来,4型大腸癌の同義語としてscirrhous carcinoma,linitis plastica carcinoma,びまん浸潤型癌などが用いられてきたが,1977年の大腸癌取扱い規約の肉眼分類では4型(びまん浸潤型)大腸癌に統一され,現在に至っている.本症の早期診断は極めて困難であり,そのため予後は不良とされてきた.その理由として,Bonelloらは,①まれな疾患であり,②粘膜面の病変が少なく,壁の浸潤性増殖が中心となるため,血便などの症状が発現しにくい,③X線所見が炎症性疾患に類似している,ことを指摘している.このような背景から本誌23巻6号(1988年)では「びまん浸潤型大腸癌と転移性大腸癌」というタイトルで特集が組まれているが,当時の主題論文2本の検討対象症例数は12例,9例と少なかった.前回の特集から13年経過した現在も,日常臨床において4型大腸癌の診断は相変わらず難しく,時に他疾患との鑑別に苦慮することがある.そこで再び4型大腸癌を本誌主題として取り上げ,その病理学的特徴,画像診断,他疾患との鑑別点などについて,できるだけ多数例の検討結果を基に執筆して頂いた.

 4型大腸癌は,病理組織学的にlymphangiosis(LA)型,scirrhous(SC)型,muconodular(MN)型に分類される.すなわち,LA型は,高分化ないし中分化型腺癌が顕著なリンパ管浸潤によって,癌性リンパ管症(lymphangiosis carcinomatosa)と称される進展を示すもので,間質の線維化は強くない.これに対し,SC型は,胃のスキルスに類似し,印環細胞癌,低分化型腺癌が強い間質の線維化を伴って浸潤するものである.一方,MN型は,粘液癌が粘液結節を形成しながら広範囲に浸潤するもので,通常癌性リンパ管症や間質の線維化は伴わない.そのほか,最近,高分化型腺癌が癌性リンパ管症を伴うことなく顕著な炎症細胞浸潤と線維化とともに進展する4型大腸癌症例も報告されている.このように病理組織学的な発育形式から病型分類した場合,各病型で臨床像やX線・内視鏡・生検診断も異なることが予測される.この点について,本特集で検討・執筆される予定である.

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要旨 4型(びまん浸潤型)大腸癌の病理学的な特徴を明らかにするために,術前未治療の4型大腸癌の外科的切除材料を,その浸潤形式からlinitis plastica型,癌性リンパ管症型および粘液結節型の3群に分類し,以下の諸項目について比較検討した.検討項目は①癌巣の大きさ,組織型,壁深達度,脈管侵襲およびリンパ節転移,②浸潤部における間質線維増生の程度,固有筋層構造の保存状態,③癌部,非癌部における腸壁の厚さである.各浸潤形式間の病理学的類似点としては,腸壁を水平および垂直方向に広範囲かつびまん性に浸潤増殖することにより,一定区間の全周性壁肥厚を必発すること,深達度は全例が固有筋層以深で,脈管侵襲,リンパ節転移を高頻度に伴うことが挙げられた.一方,相違点としてはlinitis plastica型の群は低分化型腺癌と印環細胞癌が,癌性リンパ管症の群は分化型腺癌が,粘液結節型の群は分化型腺癌と印環細胞癌が主たる組織型であること,linitis plastica型と癌性リンパ管症型の2群は浸潤部固有筋層構造は比較的よく保存されているが,粘液結節型の群は固有筋層は破壊され,その構造は消失していることが挙げられた.以上の解析結果から4型大腸癌には3種類の浸潤形式があり,浸潤部の組織型は分化型腺癌主体のものから,低分化型腺癌,印環細胞癌主体のものまで様々であるが,共通して腸壁を広範囲かつびまん性に浸潤し,高度の全周性壁肥厚を来すことが明らかになった.

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要旨 4型大腸癌32例を対象とし,X線・内視鏡像を検討した.対象は組織学上の浸潤様式からlymphangiosis(LA)型24例,scirrhous(SC)型4例,muconodular(MN)型2例,inflammatory(IF)型2例に分類可能であった.X線検査では,27例中24例(88.9%)で病変の全体像を評価可能であった.しかし,内視鏡検査では28例中7例(25.0%)で病変の口側大腸を,11例(39.3%)で狭窄内部を観察できたにすぎなかった.X線上SC型とIF型でLA型とMN型よりも管腔狭小化が高度で,LA型では口側ないし肛門側の横走ひだと敷石像の陽性率が高かった.切除標本上の腫瘍長径はX線所見上の長径と有意に相関した(r=0.74,p<0.0001)が,LA型では両者が乖離する傾向を認めた(0.05<p<0.1).以上より,4型大腸癌ではX線所見から浸潤様式が推測可能であること,LA型では浸潤範囲を慎重に決定すべきことが示唆された.

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要旨 4型大腸癌と鑑別を要する炎症性腸疾患として,狭窄を伴う大腸型Crohn病や潰瘍性大腸炎,虚血性大腸炎などが挙げられる.そこで狭窄部の形態学的所見に注目し,注腸造影や大腸内視鏡による鑑別点について検討した.4型大腸癌に特徴的で鑑別に有用な所見として,狭窄部の壁の不整な硬化や多発する粘膜下腫瘍様隆起が挙げられた.一方,炎症性腸疾患では,疾患に特徴的な潰瘍の存在とともに,狭窄部にみられる炎症性ポリープは個々の立ち上がりが明瞭で,発赤を伴うものが多かった.また炎症性腸疾患では,狭窄の周辺腸管にも病変が認められた.これらの形態学的所見に着目すれば,4型大腸癌と炎症性腸疾患の鑑別診断は十分に可能である.

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要旨 最近5年間に経験した4型大腸癌5例と転移性大腸癌12例を対象に鑑別所見につき検討した.4型大腸癌は全例が全周性狭窄のため内視鏡の深部挿入は困難であったが,狭窄部には結節状変化または易出血性粘膜所見を認めた.転移性大腸癌では内視鏡を施行した9例中6例は全周性狭窄で深部への挿入が困難であったが,狭窄部はいずれも粘膜の明らかな結節状変化はなく平滑であった.注腸X線所見では転移性大腸癌において,わずかな縦じわ所見が重要であった.4型大腸癌と転移性大腸癌の鑑別が困難なことがあるが,注腸X線所見と内視鏡所見とを合わせれば両者の鑑別診断は可能と考えられた.

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要旨 4型大腸癌は,病理組織学的にlinitis plastica型胃癌様の進展をするもの(LP型)と,lymphangiosis様の進展をするもの(LA型)に分けられる.注腸X線所見では,粘膜面の凹凸が目立たないもの(平滑型)と,一見して目立つもの(凹凸不整型)に分けられる.自験例7例のうち,手術可能であった4例では,注腸X線で平滑型の2例はLP型であり,凹凸不整型の2例はLA型であった.腸間膜脂肪織炎の注腸X線像の特徴から,凹凸不整型4型大腸癌との鑑別が必要であるものと考えられた.凹凸不整型4型大腸癌の腸間膜脂肪織炎との鑑別点は,粘膜像では不均一な横ひだと不揃いで輪郭不整な顆粒状ないし結節状陰影であり,辺縁像では変形の程度が不均一であり角張った鋸歯状の伸展不良像であった.狭窄部に関しては,4型大腸癌で高度な傾向があったが,同部での鑑別は難しいものと考えられた.

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要旨 放射線治療は進行した子宮頸癌,前立腺癌,膀胱癌,直腸癌などの骨盤内悪性腫瘍や,その再発癌に対する有効な治療方法の1つである.しかし腸管の放射線に対する高感受性から,放射線性腸炎の発生が臨床上問題となることがある.特に照射後6か月から1年以上して発生する晩期型の放射線性腸炎では,びらん,潰瘍などの粘膜側の変化のみならず,広範な腸管壁全層に及ぶ放射線障害により,粘膜下層以深に線維化を来し壁硬化,狭窄を認めることがある.さらには穿孔,瘻孔を生じ,外科治療が必要となる場合もある.鑑別する疾患として,各種の炎症性腸疾患や悪性腫瘍の転移,びまん浸潤型大腸癌(4型大腸癌)が挙げられるが,特に4型大腸癌は予後が不良であることから診断上重要と言える.症状および放射線照射の既往歴の聴取とともにX線二重造影像の詳細な検討により鑑別診断は十分可能であり,臨床において問題となることは少ないと考えられる.また放射線性腸炎の経過中に放射線誘発癌の発生を認めることがあり慎重な経過観察が必要である.

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要旨 患者は72歳の女性.2001年1月に腹痛,便秘にて近医を受診した.注腸造影検査にて横行結腸に長さ約13cmの辺縁に細かな毛羽立ちを有する全周性狭窄認め,精査目的にて入院となった.腹部造影CT検査にて腸管壁肥厚および同部位の造影効果が認められた.大腸内視鏡検査ではmelanosis coliが存在し,同部に狭窄が認められたが,生検ではGroup Ⅰであった.既往歴として1995年に乳癌にて右乳房切除術がされており,乳癌の転移による狭窄を強く疑い,左半結腸切除術を行った.病理組織学的診断は乳癌による転移性腺癌であった.4型大腸癌と鑑別が必要である大腸転移腫瘍の1例を経験したので報告した.

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要旨 症例は,39歳,女性.便秘・下痢・体重減少を主訴とし,近医を受診した.注腸X線にて,下部直腸(Ra~Rb portion)に全周性の狭窄および不整な結節状粘膜を認め,さらに上行結腸から脾彎曲部にかけては,多発する壁の伸展不良およびひだの収束像を認めた.上部消化管の検索にて,胃体上部から前庭部の全周を占める進行胃癌(4型,低分化腺癌)を認めたことから,胃原発の転移性大腸癌と考えられた.腹膜播種に伴う転移性大腸癌の罹患部位は,一般に腹膜反転部より口側であるが,自験例のごとくまれに肛側の下部直腸に及ぶことがあり,下部直腸の病変が発見の契機となりうることを認識しておくべきと考えられた.

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要旨 患者は64歳,男性.残便感・便柱狭小が出現,近医の直腸診で全周性の腫瘤を認め直腸癌を疑われた.注腸造影で下部直腸の全周性狭窄と辺縁の不整硬化を,上部直腸~直腸S状部になだらかな圧排像を認めたが,粘膜面には隆起や陥凹は指摘できなかった.内視鏡は著明な狭窄のため肛門より約3~4cmの下部直腸しか観察できず,粘膜はびまん性に不整な凹凸を呈し粗糙で易出血性であったが,びらんや潰瘍は認められなかった.CT・MRIでは直腸壁は全周性に著明に肥厚し,軽度腫大した前立腺内部に不整な腫瘤像を認めた.直腸からの生検標本で粘膜深部に低分化腺癌を認め,PSA染色陽性であることから前立腺癌の直腸浸潤と診断した.

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〔患 者〕 72歳,男性.2000年12月に肝細胞癌のため肝右前区域切除術が施行され,その後に中等量の右胸水貯留が持続していた.呼吸器症状はなく,胸部X線像で中等量の右胸水貯留を認めたが,肺野に異常影はなかった.胸水穿刺は黄色透明,細菌培養陰性で,結核菌は培養,PCRとも陰性で,ADA上昇もなく,細胞診はClass Ⅱであった.術後αFP,PIVKA-Ⅱとも正常化したため,開胸術後の反応性胸水と考え,経過観察されていた.2001年5月下旬より食道異物感を認めたため,5月28日に当院入院となった.

Coffee Break

視る 長廻 紘
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 画家や写真家は対象物をよく視ることが仕事のスタートであるのは言うまでもありません.彼達の書いたものの中に,“気がつくと,目の中にある手が伸びていって木や花あるいは人物をつかまえて色々動かして裏をみたり横をみたり,伸ばしたり縮めたりあるいは置き換えてみている”といったふうなものがあります.なるほど言われてみるとそうかもしれません.

 内視鏡医の中にもそういうふうにして観察している人が少なくないと思いますが,芸術家ではないので,上記のような表現をした人を知りません.優秀な内視鏡医は目から手どころか,鼻,耳,口と五感を総動員して対象に迫っているはずです.

早期胃癌研究会

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 2001年10月の早期胃癌研究会は,10月24日(水)に東商ホールで開催された.司会は平田一郎(大阪医科大学第2内科)と長南明道(JR仙台病院消化器内視鏡センター)が担当した.ミニレクチャーは馬場保昌(早期胃癌検診協会)が「胃内視鏡のピットフォールその2」と題して行った.

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要旨 患者は,62歳,女性.主婦.喫煙,飲酒歴なし.1999年末より,嚥下時違和感を自覚.翌年2月,近医で消化管造影と内視鏡検査を受け,中部食道に病変を指摘された.3月当科を紹介受診.血沈が亢進.食道造影で頂部に陥凹を有する2cm大の長円形の隆起性病変.食道内視鏡では黒色調の粘膜下腫瘍.超音波内視鏡検査では第1層から第5層を貫く,1.5cm大の境界不明瞭な低エコーが壁外のリンパ節と連珠状に連なっていた.胸部CTでは傍気管リンパ節が腫大し,食道壁と境界不明瞭.内視鏡下生検では上皮下に肉芽腫,線維化,リンパ球浸潤と炭紛を貪食した組織球を認め,食道炭粉沈着症と診断された.食道の黒色調を呈する粘膜下腫瘍の1つとして念頭に置くべき疾患であると考える.

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要旨 患者は43歳,女性.空腹時心窩部痛を主訴とし来院.上部消化管内視鏡検査にて胃角上部小彎に境界が不鮮明で白苔を有する浅い潰瘍性病変を認めた.胃X線検査でも胃角上部に敷石模様を有する陥凹性病変と小彎の壁の硬化像が認められⅡc型早期胃癌かMALTリンパ腫が疑われた.潰瘍周辺からの生検では,粘膜固有層内に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が多数認められ,サルコイドーシスと診断した.治療はPPIの8週間投与に加え,H. Pylori除菌療法を施行した.潰瘍は治癒し病理組織学的に肉芽腫は縮小した.

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要旨 患者は66歳,男性.空腹時心窩部痛を主訴に近医受診.胃内視鏡検査で胃粘膜下腫瘍を認めたため,当院に紹介された.胃体下部後壁に,中心にびらんを伴う粘膜下腫瘍様病変を認め,生検で中分化型腺癌と診断された.胃癌の診断で2000年2月23日,幽門側胃切除術+D2郭清を施行した.摘出標本では腫瘍は30×20mmで,病理組織学的所見はtub2,sm,ly0,v0,n0であった.癌は粘膜面にわずかに露出するのみで主座は粘膜下に存在し,さらに腫瘤に一部非癌粘膜が存在することから粘膜下の異所性胃腺を発生母地として発癌し,膨張性に発育した胃癌と考えられた.

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欧文目次

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「大腸内視鏡治療」の書評原稿の執筆依頼を受けて少し時間がたつ.本書著者工藤進英氏と出版元の担当者の顔を見るたびに執筆の遅延を心で詫びながら,困難さを感じてきた.それは一病理医である筆者が「治療」という臨床医学第一線の仕事の集約点である本書を評価するという,一種の違和を感じていたからである.病理医の立場から独自の書評を執筆せよということであろうが,そして著者工藤氏と筆者の関係から担当者が私を指名したのであろうが,逡巡せざるを得なかったのである.しかしいったん引き受けた仕事である以上お断りするわけにはいかない.

 氏は大腸sm癌と大腸Ⅱcの報告を「胃と腸」誌で精力的に行った後,1993年に「早期大腸癌―平坦・陥凹型へのアプローチ」(医学書院)とその英文版「Early Colorectal Cancer―Detection of Depressed Type of Colorectal Carcinoma」(Igaku-Shoin)を世に問うて以来,わが国だけではなく世界においても早期大腸癌をめぐる認識を大きく一変させた代表的人物である.1980年代中葉の“幻の癌”Ⅱcの相次ぐ発見と臨床上の定着は,われわれ消化器病理医の間にある種の混乱と激しい論争を巻き起こすことになった.評者は長らくWHOの消化管腫瘍組織分類の委員長・委員を務めてきたが,細胞異型・構造異型度や浸潤の定義と判定法などをめぐり,欧米の病理医たちとの差を常に感じつづけてきており,国際的なレベルでも論陣をはってきた.とりわけ,大腸については粘膜下層に浸潤して初めて癌と認定するという,それこそ腫瘍学の本質,科学の本質からは程遠い欧米の病理学者との論争に明け暮れてきた感がある.近年ようやく欧米の病理医も消化管腫瘍の組織学的分類の王道に立ち戻って(と念じたい),日本の主張も一部取り入れるかたちで,国際的合意形成がVienna ClassificationやIRACでの会議などを経て進みつつある(まだまだ道のりは遠い).そのような一病理医としてみた場合,本書の著者工藤氏の豊富な早期大腸癌の症例提示は腫瘍病理学に対する貢献という意味でも計り知れないものである.まさに俊才,俊英と言うべきであろうか.

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 従来のわが国の卒後教育には一貫性がなく,特に大学病院では研究至上主義がまかり通り,またマンパワーの不足もあり卒後教育は片手間に行われ,研修医は単なる労働力,雑用係として扱われてきたのではなかろうか.また最近では専門医指向が強く,卒後直ちに自分の興味のある狭い範囲の専門分野の研究にのみ従事し,幅広い内科疾患全般に対応できない若手医師が増加していることも医療不信の原因の1つと考えられる.これらの反省からか,わが国でも2004年から卒後臨床研修の2年間の必修化が制定されたことは喜ばしいことと考えるが,必修化にあたっては,研修医の身分保障,給与の確保,研修内容,指導医の養成など多くの問題点を解決する必要があろう.

 いずれにしろ卒後臨床研修の必修化はもう間近に迫ってきたわけであるが,指導する立場にある医師の心構えはできているであろうか.いざ指導医の立場に立っても,自分自身が受けてきた教育が悪ければ,今後研修医をどのように指導していけばよいのか見当もつかないというのが現状ではなかろうか.

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 大腸内視鏡検査・治療に伴う合併症が増加している.4~5日に1回の割合でわが国のどこかの病院で,腸管穿孔が発生している(宇野良治.医器学67:289,1997)とのことであるが,穿孔まで至らないにせよ,女性患者は検査中の腹痛はお産よりも辛いと訴えることもまれでない.

 このような苦痛多い検査を安全で普遍的なものに変革したいという一念で,colonoscopy名人として類まれな才能を有する岡本平次先生は1995年に労作「プラクティカルコロノスコピー」を刊行した.この書籍は挿入法についての系統的な記述書が少なかった時代にあって,初心者にとってはわかりやすい手引書として,ベテランにはShinya氏の提唱する一人操作法を理解するための指標として,多くのcolonoscopistに愛読されてきた.名人は自分の裏技を他人に伝授することを好まないものであるし,必ずしも教え上手であるとは限らない.しかし岡本名人は本書の中に裏技を余すところなく記載し,しかも理解しやすい文章であったことから,読者に大変好評であったと聞いている.

編集後記 松川 正明
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 本主題は2000年7月20日に開催された第1回臨床消化器病研究会で取り上げられた.4型大腸癌は大腸癌の中で数%以下と頻度も低く,多くの施設でも経験例が少ない.本誌でも14年前に“びまん浸潤型大腸癌と転移性大腸癌”として特集号が組まれている.今回は4型大腸癌を中心に鑑別を要する疾患について特集している.二村らは4型大腸癌を肉眼所見・病理所見から見て3つのtypeに分けて記述されている.しかし,高度な管腔の狭小化のため,臨床の場では2つ程度に分けたものが使いやすい.4型大腸癌と鑑別を要する疾患として,転移性大腸癌と炎症性の疾患(腸間膜脂肪織炎,炎症性腸疾患,放射線性腸炎)が挙げられている.転移性大腸癌を除き,一般臨床の場でこれらの疾患と遭遇することの少ない疾患であり,これら疾患のX線・内視鏡検査を一同に見ることができるのは読者にとって非常に有益であり,また本誌の特徴と言える.これら鑑別を要する疾患では超音波・CT検査の所見についても言及している.

 現在,大腸検査では内視鏡検査が主流となっている.4型癌と鑑別を要する疾患では高度な管腔狭小化のために病変部を内視鏡で十分に観察できないことがあり,内視鏡診断で苦渋することがある.これらの疾患を鑑別するときに大腸病変を概観的に捕えられるX線検査を積極的に活用することにより,鑑別が容易になることがある.今後4型大腸癌の早期癌に相当する病変が発見されることを期待したい.

基本情報

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胃と腸
37巻2号 (2002年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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