胃と腸 35巻6号 (2000年5月)

今月の主題 腸管の血管性病変―限局性腫瘍状病変を中心に

序説

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はじめに

 腸管の血管性病変の代表的疾患は虚血性腸炎である.高齢者の増加と食生活の欧米化が原因と考えられるが,従来わが国では比較的まれと考えられていた虚血性腸炎も今では日常臨床でしばしば遭遇する疾患となった.大腸の虚血性腸炎や腸問膜血管の閉塞など,虚血によって引き起こされる病像は多彩であり,また多くの炎症性腸疾患でも血流ならびに微小循環障害が,病態と密接に関連していることが知られている.腸の血管性病変の大部分はびまん性あるいは分節性であることが特徴であることはよく知られている,これら虚血性腸病変については「胃と腸」28巻9号で主題に取り上げられ,白壁彦夫先生の詳しい序説をはじめ優れた論文が発表されている.したがって本号では虚血性腸病変は除外し,限局性血管性病変を取り上げ,その臨床病理学的特徴を明らかにすることを目指した.この中には,動静脈奇形,angiodysplasia,腫瘍状病変(血管腫,血管肉腫),変性疾患などが含まれるが,今回は動静脈奇形,angiodysplasiaおよび腫瘍状病変に限定した.

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要旨 1990年から1999年の10年間における消化管の限局性血管性病変の本邦報告を集計した.非腫瘍性病変では,動静脈奇形169例,gastric antral vascular ectasia116例,angiodysplasia114例の計399例,腫瘍状病変では,血管腫139例,glomus腫瘍24例,膿原性肉芽腫13例,血管肉腫12例,Kaposi肉腫11例,血管周皮腫9例の計208例が報告されていた.合計607例の血管性病変につき,各疾患別にその臨床像を検討した.

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要旨 腸管動静脈奇形(AVM)の自験12例と文献報告例の解析を行い,本邦における腸管AVMの臨床像や画像所見の特徴を中心に検討した.主症状は,病変部からの反復する出血であり,時に大量でショック状態を来し,輸血が必要になる場合も多い.診断には選択的血管造影が有用であるが,大腸病変に対しては内視鏡検査の担う役割も大きい.治療は,外科的切除が原則であるが,重篤な合併疾患などにより手術が困難な場合は,血管カテーテルを用いた治療や内視鏡治療も積極的に行われている.人口の高齢化や欧米型腸疾患の増加などにより,本邦でも患者数の増加が見込まれ,原因不明の消化管出血をみた場合は,本症の存在も念頭に置いて検索を進める必要がある.

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要旨 大腸における非腫瘍性の血管系の異常に関する定義は一定でない.後天的に形成された(と想定される)限局性血管拡張をangiectasiaとして,最近の10,000回の内視鏡において診断した48例を検討した.32例は単発であり,1例を除きクモ状血管腫様を呈し,全大腸に分布したが,横行結腸からS状結腸に高率であった.これらの血便のエピソードは5例であり,そのほかに出血源を思わせる病変はなかったが,内視鏡時には出血はなかった.2個以上存在した多発群16例では単発群に比し,高齢であり,5例に血便があり,クモ状血管腫様のものや限局血管怒張,その混在など多様で,2/3に肝硬変を合併していた.止血を必要としたのは2例のみであった.

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要旨 腸管の血管性病変の名称・分類法,臨床病理像および鑑別診断につき,病理形態学立場から,概説し文献的考察を加えた.一群の病変中,特に血管異形成と動静脈奇形間には用語・分類法に多少の混乱がある.前者は後天性変性性病変で高齢者に多く,病巣は小さく多発性傾向があり,粘膜下層と粘膜に限局し,組織学的には拡張・屈曲した静脈,細静脈,毛細血管から成るという特徴を示した,これに対し後者は先天性過誤腫性病変で若年者にみられ,病巣は大きく単発性で,粘膜から漿膜までの腸壁全層に及び,光顕的には比較的大きな静脈と動脈から構成され,両血管間には吻合ないし移行像が認められるという特徴を有していた.以上から両疾患は明確に区別して診断し分類すべきと考える.

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要旨 特異な形態を示した回腸動静脈奇形の1例を報告した.患者は54歳,女性.1997年,高度貧血の原因精査目的で当院に入院した.小腸X線検査では,終末回腸に約15cmにわたり縦長で軟らかい連珠状の隆起性病変を認めた.大腸内視鏡検査では隆起は正常粘膜に覆われ,やや青みがかった軟らかな病変で,血管性病変と診断した.上腸間膜動脈の血管造影では,回結腸動脈の拡張と,回腸末端を中心にnidusと思われる血管叢を認め,静脈相では早期静脈環流が出現していることより,上腸間膜動脈と上腸問膜静脈の動静脈奇形と診断した.高度の貧血を繰り返していたので,回盲部切除術施行.切除標本の病理組織学的検索にて,動静脈奇形と確診した.

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要旨 患者は39歳の男性.痔瘻と痔核の術後,右下腹部痛と灼熱感が持続し来院した.盲腸から上行結腸に拡張蛇行した血管と赤色斑紋の集簇した病変を認めた.終末回腸とS状結腸にも斑状発赤を認め,大腸血管拡張症と診断した.血管造影では回結腸動脈の末梢で火炎状に拡張蛇行した動脈と静脈への早期還流を認めた.下血や貧血はなかったが,右下腹部痛が持続したため盲腸上行結腸切除術を施行した,組織学的にも粘膜固有層と粘膜下層に拡張した小血管の集簇を認め,粘膜下層では動脈と静脈が隣接し移行が確認できた.大腸内視鏡検査では,1.2%(308/25,576例)に血管拡張症を認めているが,そのうち動静脈奇形として切除したのは本例だけである.その内視鏡所見は特徴的であった.

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要旨 種々の循環器系基礎疾患を有する高齢者に繰り返す下血と貧血が出現し,大腸内視鏡検査および出血シンチグラフィにて盲腸angiodysplasiaからの出血が示唆された.血管造影や超音波内視鏡では異常が捉えられず同部位に限局した小病変と考え,内視鏡的粘膜切除術を施行し,病理所見でngiodysplasiaであることを確認した.術後経過も良好で,1年3か月経過した現在も再出血を認めていない.消化管出血の原因としての大腸angiodysplasiaの重要性,その治療方針などを含め文献的考察を加えて報告する.

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要旨 患者は65歳,女性.1990年2月末,新鮮血を伴う暗赤色便を認め,精査を受けたが出血部位は確認できなかった.その後も月に1~2回の割合で同様の下血が続いたが原因不明であった.1991年3月に施行した腹部血管造影の結果,右結腸動脈末梢に血管拡張像がみられ,内視鏡検査では長径8mmの淡い斑状の発赤が認められた.エピネフリン加生食を内視鏡下に撒布したところ,中心部より出血を認め,この部位からの出血であると考えられた.診断治療の目的でホットバイオイプシーを施行し,angiodysplasiaと判明した.翌日大量の下血を来し,内視鏡的に止血困難であったため,上行結腸部分切除術を施行した.その後8年以上,下血は認めていない.エピネフリンは本来局所止血に用いられる,angiodysplasiaの場合には逆に出血を誘発するものと考えられ,出血部位の確認に有用であると考えられた.

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要旨 患者は85歳,女性で貧血のため入院した.腹部造影CTにて十二指腸に強く造影される腫瘤を認めた.十二指腸造影で十二指腸第3部に大きさ11×10mm,頂部に陥凹を有する広基性の隆起性病変を認めた.十二指腸内視鏡ではびらん状の陥凹した表面から出血を伴う丈の低い隆起性病変を認めた.生検で毛細血管の増生を認めた.以上より十二指腸の粘膜下腫瘍(血管腫疑い)と術前診断し,十二指腸部分切除術を施行した.病理組織学的には静脈と毛細血管の混在した血管腫と診断した.十二指腸血管腫は本邦では自験例を含め9例の報告があるのみであり文献的考察を加えて報告する.

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要旨 患者は42歳の女性.30歳時にタール便で輸血を受け,今回再びタール便があり輸血の後に当院へ紹介された.入院時血色素8.8g/dlの貧血を認めたが,上部および下部消化管内視鏡検査では異常なく,小腸X線で骨盤内の小腸に約10cm長の粘膜下腫瘍を認め,CTで同部に7cm大の低吸収域とその一部の石灰化を認めた.血管造影では異常なし.以上の所見から小腸血管腫を疑い,手術を施行した.小腸のほぼ中央に異常血管の集簇を認め,小腸部分切除術を施行した.術中小腸内視鏡では結節状の隆起性病変を認め,切除標本の割面では凝血塊を入れた大小多数の囊胞状構造を認めた.組織学的には内皮細胞に裏打ちされた管腔構造の集まり,で,免疫組織化学染色で抗第VIII因子抗体,抗CD34抗体および抗smooth muscle actin(SMA)抗体に陽性であった.以上から小腸血管腫と診断した.出血を伴った小腸リンパ管腫との鑑別を考察した.

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要旨 患者は38歳,女性.主訴は血便.大腸内視鏡検査では上部直腸から下部直腸にかけて粘膜下に拡張した静脈を思わせる暗青色,凹凸不整の比較的なだらかな隆起性病変をびまん性に認めた.腹部単純X線,腹部CTは同部位に一致して石灰化像が認められ,直腸海綿状血管腫を疑った.腹部MRIのT2強調画像で認められる著明な高信号と超音波内視鏡像は本疾患の診断に非常に有用であった.入院後出血を認めなくなり,約4年後の現在も外来通院中である.

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要旨 直腸のびまん性血管腫はまれな疾患で,画像診断上,まだ十分に検討されているとは言い難い.今回,われわれの経験した症例は66歳,女性,主訴は小学生時よりの下血.検査所見では,注腸X線所見:直腸の管腔の狭小化と周囲の石灰化,内視鏡所見:怒張した暗赤色の血管,透明感のある扁平隆起や暗褐色の扁平隆起,怒張した血管を伴う灰白色の粘膜下腫瘍様隆起,EUS所見:粘膜下層および固有筋層外の管腔構造と石灰化の描出,CT所見:直腸壁の肥厚と壁内の石灰化,MRI所見:T2強調画像における直腸壁の著明なhigh intensity等の所見を呈していた.手術により直腸びまん性血管腫と確定診断され,画像診断上は典型的な症例と考えられた.

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要旨 患者は74歳,男性.血便を主訴に受診,注腸X線検査および大腸内視鏡検査にて下行結腸に縦走潰瘍を,上部直腸にびらんを認めた.共に生検はGroup 1で,虚血性大腸炎と診断し経過観察となった.しかし血便が続くため,約2か月後に注腸X線検査および大腸内視鏡検査を再検したところ,下行結腸病変は全周性狭窄に進展し,上部直腸病変も更に増大し発赤も強くなっていた.このときの生検もGroup 1であったが,血便が続き貧血も進行するため外科的切除を行った.術中,下行結腸,上部直腸病変以外に,空腸にも隆起性病変を認め,それぞれ局所切除した.術後の病理学的検討にて病変はすべて血管肉腫と診断された.消化管原発の血管肉腫は極めてまれであり,経過を追えたという点においても貴重な症例と考えられたので報告した.

「胃と腸」ノート

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 腸の血管性病変の外科手術材料のホルマリン固定材料において病理学的検索を行う場合には病変の同定が困難であることがある.それは,臨床的には血管造影による造影剤の溜まりとして同定された異常血管網は固定標本では表面からは観察できないことや,固定後には拡張していた血管が虚脱して内視鏡で見えた紅斑(固定後は茶褐色斑)が消失することが原因である.このような場合にわれわれ病理では切除腸管の階段状切片による全割標本作製を強いられ大変な労力を払うこともしばしばある.そして挙げ句の果てには異常血管が検出できない場合さえもある.このような問題を解決するためにはこのような腸の血管性病変の外科手術材料の固定時の工夫が必要である.

 Morson&Dawsonの「Gastrointestinal Pathology」(第3版,p559,1990)にも記載されているが,微細なangiodysplasiaの病理学的検索において有用な固定方法を紹介する,その手法に準じて,われわれは以下のような手順で行った(J Clin Pathol 23:139,1996).

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 〔患者〕77歳,男性.ふらつき,耳鳴りなどにて当院耳鼻科で加療中,食思不振のため,1997年9月当科紹介となった.腹痛・便通異常を認めず,現症および入院時検査成績でも特に異常を認めなかった.

 〔十二指腸内視鏡所見〕十二指腸に,下十二指腸角に起始部を有し水平脚に向かって長い茎を有する有茎性粘膜下腫瘍を認めた(Fig.1a~d).起始部にははちまき状のbridging foldを認め,色調はほぼ正色調で一部やや黄白調を呈し,表面は正常粘膜で潰瘍や出血・びらんは認めなかった.可動性に富み,生検鉗子で押すと弾性軟でcushion sign陽性であった.

学会印象記

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 第86回日本消化器病学会総会は,2000年4月20日から22日までの3日間の日程で,新潟県民会館,新潟市民芸術文化会館,メルパルク,白山会館,新潟市体育館の5施設において開催された.あいにくの曇り空であったが,満開の桜の中,どの会場も熱気にあふれ戸外の肌寒さを感じさせない3日間であった.本学会では特別講演4題,招待講演6題,会長講演と理事長講演がそれぞれ1題,教育講演7題,From Benchto Bedsideとして6題の講演が行われ,更にシンポジウム9題,パネルディスカッション9題,ワークショップ10題と非常に盛りだくさんの内容であった.以下,筆者が参加したセッションを中心に感想を述べさせていただく.

 21日午前に行われたシンポジウム3「炎症性腸疾患の治療の進歩と治療法の選択」はメイン会場の大ホールを満員にするほどの大盛況であった.司会の八尾恒良先生(福岡大学筑紫病院消化器科),馬場忠雄先生(滋賀医科大学第2内科)の進行により,潰瘍性大腸炎(6題)とCrohn病(2題)の最先端の治療に関して活発な討論が行われた.潰瘍性大腸炎に対する治療で問題となったのは,標準的なステロイド治療に抵抗するあるいは依存する例にいかに対処するか,ということである.これは潰瘍性大腸炎を診療する上で必ずぶつかる問題である.それぞれの立場から細かに解析されたデータが示され,新しい治療法を現在の治療指針の中にどのように位置付けるかが討論の中心となった.大筋として,白血球除去療法は中等症に有効例が多く,サイクロスポリン療法は重症にも有効例が比較的多いこと,薬剤感受性試験や患者のDNA解析により投与薬剤の効果や予測できることが示され,日常診療において大変参考になる内容であった.現時点では,多くはretrospective studyから得られた結果であるため,明確な結論を得るには至らなかったが,潰瘍性大腸炎治療の新たな展開が目前に迫っていることを感じさせられる内容であった.Crohn病に関する2題は,新たなステロイド投与法を示した演題と腹腔鏡下手術に関する演題であったが,いずれも臨床に即した有意義な内容であり興味深く聞かせていただいた.

早期胃癌研究会

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2000年2月の早期胃癌研究会は2月16日(水)に東商ホールにて開催された.司会は多田正大(多田消化器クリニック)と平田一郎(大阪医科大学第2内科)が担当した.ミニレクチャーは,「2チャンネル・スコープおよび先端キャップ(フード)装着スコープを用いた大腸腫瘍病変に対する内視鏡治療」と題し,今村哲理(札幌厚生病院消化器科)が行った.

 〔第1例〕58歳,男性.びまん浸潤型胃癌(症例提供:自衛隊中央病院内科箱崎幸也).

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要旨 患者は23歳,女性.労作時息切れを主訴に来院,著明な貧血を認め入院となった.内視鏡的に,病変は胃体中部小彎のoozing様出血を伴い,なだらかに立ち上がる隆起性病変で,頂部にはイクラ状に発赤した細顆粒を認めた.X線的には,胃は脾臓による壁外性圧排が著明で,病変は比較的軟らかい粘膜下腫瘍様であるが,表面細顆粒状変化を伴う粘膜病変の像を呈した.超音波内視鏡で病変は粘膜下層を中心に局在するhypoechoicmassであった.腫大した脾臓は,CT・MRI・血管造影より多発するcystic lesionに占拠され,脾病変を合併したlymphangiomatosisの胃病変と診断した.病理組織学的には,lymphangiomaが粘膜下層を中心に粘膜内を含む胃壁全層に増殖し,脾病変と小網内病変を合併していた.極めてまれな,また特徴的な形態を呈する病変と思われ報告した.

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欧文目次

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 最近,内科,外科の経験ある医師が,その専門性を活かすために,内科,外科の標榜を秘してあえて“消化器クリニック”として開業される場合が多くみられる.医学書院から発行されている「開業医のための」シリーズはそれぞれの専門領域について読みやすい形で記述することを目的にしているが,今回発行された本書はこれらの医師の疑問に答えうる実に時宜を得た著書である.

 消化器科のおもしろいところは個人でありながら大病院に遜色のない水準で消化器病に対処できることであると著者は述べる.東大卒業後,東大第1内科,国立がんセンター,関東逓信病院で膨大な数の消化器病の患者さんを診断,治療し,多数の内視鏡検査の経験から著作を書かれた著者にとって,現在のクリニック診療生活は,往年の名F-1レーサー,あるいは名ラリーストが,街中を軽自動車で運転するような感じかもしれない.渋滞する街中では交通事故に注意し,目的地へは安全,かつ迅速に到着しなければいけない.

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 国立がんセンター時代を長くともに過ごした畏友,大倉久直博士を筆頭者に,腫瘍マーカーの研究のはしりのころからこの問題に取り組んでこられた研究者七人の侍による,「腫瘍マーカー臨床マニュアル」が世に出た.大倉氏のほか,石井勝,高橋豊,有吉寛,加藤紘,長村義之,栗山学の諸氏の頭脳と経験によるものである.加えて,執筆協力者として,伊藤仁,永井利正の両氏が加わって完成した.

 序文は大倉博士によるが,"臨床医と研修医を対象に,腫瘍マーカーの使い方のエッセンスをマニュアルとしてまとめた"と自負をもって世に出した気概がにじみ出ている.

編集後記 大谷 吉秀
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 消化管出血や便潜血陽性の患者に遭遇したときに鑑別診断を進める上で腸管の血管性病変は重要であり,今回の主題が日常臨床に少しでも役に立つことを編集委員のひとりとして期待している.古賀論文の本邦報告例10年間の集計は,わが国における現状を把握する上で的を射たものと言えよう.9篇の主題症例では小腸血管腫や直腸海綿状血管腫など貴重な症例が報告されている.

 動静脈奇形(arteriovenous malfommation;AVM)に関するMooreの分類は広く用いられ,今回も多くの論文で取り上げられている.しかしながら,AVMとangiodysplasia(AGD)が混同して用いられている現状が浮き彫りにされた.背景には消化管出血を呈する血管性病変に対する欧米とわが国の関心度の違いがあるとの指摘がある(小林論文).また,angiodysplasiaに関連して,英語の対訳に終始して本質が理解されなかったのではないかとの厳しい批判もある(酒井論文).内視鏡治療やIVR(interventional radiology)が積極的に行われる今日において,外科的切除の機会は必ずしも多くないが,標本が得られた場合は八尾の方法を参考にしながら確実な診断にもっていくようにしたい.拡大内視鏡やdoppler機能を組み込んだ超音波内視鏡により,血管性病変の質的診断法が変貌していくと思われるが,それぞれの所見を検証しながら分類を整理統合していくことも必要であろう.

基本情報

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胃と腸
35巻6号 (2000年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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