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編集後記
大谷 吉秀
pp.854
発行日 2000年5月25日
Published Date 2000/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104726
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消化管出血や便潜血陽性の患者に遭遇したときに鑑別診断を進める上で腸管の血管性病変は重要であり,今回の主題が日常臨床に少しでも役に立つことを編集委員のひとりとして期待している.古賀論文の本邦報告例10年間の集計は,わが国における現状を把握する上で的を射たものと言えよう.9篇の主題症例では小腸血管腫や直腸海綿状血管腫など貴重な症例が報告されている.
動静脈奇形(arteriovenous malfommation;AVM)に関するMooreの分類は広く用いられ,今回も多くの論文で取り上げられている.しかしながら,AVMとangiodysplasia(AGD)が混同して用いられている現状が浮き彫りにされた.背景には消化管出血を呈する血管性病変に対する欧米とわが国の関心度の違いがあるとの指摘がある(小林論文).また,angiodysplasiaに関連して,英語の対訳に終始して本質が理解されなかったのではないかとの厳しい批判もある(酒井論文).内視鏡治療やIVR(interventional radiology)が積極的に行われる今日において,外科的切除の機会は必ずしも多くないが,標本が得られた場合は八尾の方法を参考にしながら確実な診断にもっていくようにしたい.拡大内視鏡やdoppler機能を組み込んだ超音波内視鏡により,血管性病変の質的診断法が変貌していくと思われるが,それぞれの所見を検証しながら分類を整理統合していくことも必要であろう.
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