胃と腸 35巻7号 (2000年6月)

今月の主題 胃の“pre-linitis plastica”型癌

序説

胃のpre-linitis plastica型癌 下田 忠和
  • 文献概要を表示

一般的にスキルス胃癌はびまん浸潤性胃癌(diffusely infiltrative cancer), linitis plastica型胃癌,Type4胃癌と同じ意味で使われている.しかし本来"スキルス"とは形容詞としての"硬い"という意味で,上記に挙げた胃癌の肉眼形態表現とは異なった事象である.それでもスキルスがあたかも独立した胃癌として,特に臨床の場で使用されているのは,この癌が広範な癌細胞の壁内浸潤と高度の線維化のために特異的な肉眼像ならびに臨床像を呈するためである.したがってスキルス胃癌はニックネームとして使用されていると考えられる.びまん浸潤性胃癌には胃体部ならびに幽門部に発生するものがある.前者は胃底腺領域に発生し,肉眼的には胃壁全体が硬化性の肥厚を来し,鉛管状あるいはleather bottle状を示す胃体部型で,中村によりlinitis plastica(LP)型胃癌と呼ばれている.一方,後者は幽門腺領域に発生し胃体部方向に浸潤すると同時に幽門狭窄を来し,幽門型とされる.したがって肉眼分類でのType4(Borrmann4型)胃癌はこれらの両者を含んだ肉眼的表現である.

  • 文献概要を表示

はじめに

 linitis plastica型胃癌は種々の肉眼型の胃癌の中でも,初期病変の発見が困難で,患者の予後が悪く,更に特有の発育進展様式と肉眼形態をとることから注目されてきた1)2),本癌型はびまん浸潤型胃癌,4型胃癌,胃スキルスなどとも称されるが,その定義は研究者により異なる.われわれはlinitis plastica型胃癌をびまん浸潤型胃癌の中の一型として用いている.本稿ではびまん浸潤型胃癌の癌巣の特徴から,pre-linitis plastica型胃癌,すなわちびまん浸潤型胃癌の早期の形態について考察した.

 びまん浸潤型胃癌におけるlinitis plastica型胃癌の位置づけ組織学的に,粘膜下層以深で癌細胞が単個または小胞巣を形成して,びまん性ないし散在性に浸潤し,間質に著しい線維形成を伴う胃癌の増殖様式は,従来よりスキルス型胃癌と称されてきた.このような癌部は未分化型癌(現行規約の低分化腺癌非充実型,印環細胞癌)を主体とする.

  • 文献概要を表示

はじめに

linitisplastica(以下LP)型胃癌については様々な考え方が出されていたが,組織発生から発育進展を臨床病理学的に解析した中村1)によるLP型癌の定義と病期分類が現在広く知られている.その病期分類は共に研究をしていた杉山ら2)によって臨床的立場から定義されたものであるが,現在の中村の分類はそれとは変わってきている(Table1).特にpre-linitis plastica(以下pre-LP)型胃癌は異なっており,杉山らは粘膜下層以下への浸潤が胃の1/4以下にとどまっているものと定義しているが,中村はその後の検討からⅡc型sm癌で潰瘍化がなく,癌の胃壁浸潤範囲は粘膜内より少し大きく,胃壁浸潤による肉眼所見の認められないものとし,また,原発巣の大きさは2cm前後あるいはそれ以下としている.そのようなpreLP型癌について粘液形質発現を含めて病理組織学的に検討し,考察した.

  • 文献概要を表示

はじめに

 linitis plastica型癌の定義は,中村1)によると,"肉眼的には,胃壁全体は肥厚して硬く,胃は管状あるいはleather bottle状を示している.胃粘膜は一般的に一様平坦で,粘膜ひだは肥厚・蛇行し,原発巣と考えられる限局性の腫瘤形成が認められない.そして,組織学的には線維形成の著しい未分化型癌の広範囲に及ぶびまん性浸潤である"とされている.今回はこの定義にあてはまる症例を用いて,完成されたlinitis plastica型癌の特徴を検討し,更に肉眼的に早期癌に類似した進行癌のデータを用いてlinitis plastica型癌の前段階の病態を推定した.

  • 文献概要を表示

はじめに

 中村恭一教授1)によって提唱されたpre-linitis plastica型癌は,linitis plastica型癌へ発育進展してゆく条件を十分に備えた癌とされている.中村教授1)は多数の症例の解析から仮説を立てられ,更に仮説を再検討し"Linitis plasticaへの道"を,①pre-linitis plastica型癌期,②潜在的linitis plastica型癌期(latent linitis plastica),③典型的linitis plastica型癌期(typical linitis plastica,以下L-P)の3期に分けておられる.教授の説に異を唱えるつもりは毛頭ないが,教授の述べておられるとおりですと書いてしまえば,原稿はそれで終わり,責を全うできない.筆者2)は20数年前,診断した胃癌症例の診断される以前のX線,内視鏡検査資料を蒐集し,当時九州大学助教授であった渡辺英伸先生の御指導の下にその切除標本の病理学的検索を行い,臨床的な発育進展過程と病理学的所見を丹念に対比検討した経験がある.プロトコールを作製して検討した症例は150例に及んだが,このころ考えた事柄を,中村教授"pre-linitisplastica型癌"の考えにあてはめながら,筆者の考えを述べて御批判を仰ぎたい.

  • 文献概要を表示

 早期胃癌の診断が一段落した1970年代半ば,依然として最悪の予後を示したいわゆる“スキルス”の早期診断への挑戦が始まった.佐野ら1)は病理組織学的に同じscirrhousと診断されるⅡc進行型とびまん性癌を予後の点から区別し,また,びまん性癌の粘膜下浸潤部の時相をコラーゲン線維の生化学的研究から浸潤期,水腫期,硬化期に分けた.当時,水腫期のびまん性癌は“柔らかいスキルス”と呼ばれ"スキルス"の早期診断に連なるものと考えられた.そして,佐野はスキルスの発生部位(原発部)として浅い潰瘍の合併した粘膜内癌(Ⅱc)と考え,その分布は胃体部,大彎部に多いと報告した.

 中村ら2)3),望月4)は胃硬癌をBorrmann4型癌とlinitis plastica型癌(以後,LP癌と略す)に分け,それぞれの特徴を文献的な面からも明らかにした.そして,中村は典型的なLP癌の肉眼像の特徴を原発部位は小彎を除いた胃体部に多く,胃のほぼ全体に,粘膜下層以下をびまん性に拡がり,粘膜ひだの蛇行と太まりが広範囲に認められるものとし,X線所見上はleather bottle状を呈するものとした.そして,この典型的なLP癌に比して癌の粘膜下層以下への浸潤が胃の1/4以上に達しているが,胃内腔の狭小化はいまだ来していないものをlatent-linitis plastica,また,癌の粘膜下層以下への浸潤がいまだ胃の1/4以下にとどまっているものをprelinitis plasticaと呼んだ5).この2つの型は経過観察例からみてLP癌のより早期の型として提唱されたものと思われる.したがって,胃の“pre-linitis plastica”癌と言うと,中村の定義したこの型を指すことになる.この型の典型的と考えられる〔症例1〕を掲げる.

  • 文献概要を表示

 pre-linitis plastica型癌(以下pre-LP)は中村1)の定義に基づくとlatent linitis plastica(以下latentLP)以前の状態である.latentLPは癌細胞の胃粘膜以外の胃壁各層における拡がりは典型的LPと同じであるが,癌細胞浸潤に伴う線維性組織量は少なく,いまだ線維性収縮が加わっていない状態である.pre-LPは原発巣には潰瘍化がなく,癌細胞の粘膜下組織における浸潤範囲がlatentLPよりも狭く,癌細胞浸潤に伴う線維組織量が少ないもので,このような癌は発見されなければlatentLPに進展する可能性が高い.このpre-LPの定義からもわかるように,Ⅱcの粘膜内癌との鑑別が肉眼的にも困難な症例が当然みられる.すなわち,術前のX線診断・内視鏡診断が難しい.

  • 文献概要を表示

 linitis plastica型癌(以下LP型癌と略す)は集団検診や人間ドックなどで定期的に検診を受けていても,発見されたときには既に手遅れの状態のことが多い予後不良な病変であり,しかも40歳前後の若い女性に好発する傾向が強い点で社会的影響は大きく,臨床的にもその早期発見は重要な課題となっている.LP型癌の定義はさておき,その早期発見のためには,typicalLP型癌が完成する直前のlatent LP型の,更にその前の状態のpre-LP型病変に的を絞る必要がある.中村1)はpre=LP 型病変の条件として,①粘膜下組織浸潤がある,②粘膜下浸潤範囲は原発巣よりやや広い,③胃底腺領域にある,④潰瘍化がない,⑤未分化型癌,⑥2cm以下のⅡc型,⑦肉眼的に胃壁浸潤所見がみられない,などとしているが,これは将来,LP型癌になるための必要かつ十分な条件を挙げたものであろう.筆者も基本的には中村の学説を支持するものであるが,実際の臨床の場ではこのような条件を備えたsm癌に遭遇する機会は極めて少ないことや,筆者2)が収集したtypicalないしlatentLP型癌58例の原発巣の分析の結果からみると,pre-LP型病変の条件はもう少し緩めてもよいのではないかと思われる.すなわち,①の浸潤の程度は,この時点で発見されれば予後は十分に良好であることを考慮に入れると,粘膜下層だけでなく固有筋層(あるいは漿膜下層)までとしてもよい,②粘膜下浸潤範囲は原発巣より狭くても,〔症例1〕のようにある程度の線維化を伴いながらびまん性浸潤を示していればよい.④については,中村自身も述べているが,〔症例2〕のように潰瘍化があっても粘膜下層の癌浸潤が潰瘍に伴う線維化層によって完全に覆われていなければよい.⑥の原発巣の大きさは厳密に2cm以下にこだわる必要はなく,例えば2.5cm以下としても構わない.特に原発巣が噴門部や萎縮境界にかかって存在している症例では5cm前後でもよい.𤙥については,〔症例3〕のように粘膜下組織浸潤を示唆する辺縁隆起や皺襞の限局性肥厚が認められてもよい.pre-LP型病変については筆者は以上のように考えている.以下に症例を呈示する.

  • 文献概要を表示

要旨 予後不良な胃癌の1つであるlinitis plastica(LP)型癌の早期発見を目的に,X線診断の立場から検討した.胃上部における2cm以下の未分化型早期胃癌130病変のうち55病変(42.3%)がsm癌であった.130病変中13病変(10%)が中村の定義するpre-linitis plastica型癌に相当した.臨床的に発見されたprelinitis plastica型癌は12病変で,このうちひだ集中が発見の契機となった例は9病変(75%)であった.12病変のX線および肉眼所見の特徴は,陥凹境界明瞭でひだ中断が認められ,陥凹面の顆粒状変化に乏しいものが10病変(83.3%)と多かった. pre-linitis plastica型癌に限らず,胃底腺粘膜領域のm癌を含めた未分化型のⅡc病変を発見することがLP型癌の減少につながると思われた.

  • 文献概要を表示

要旨 linitis plastica型胃癌を初期像(“pre-linitis plastica”)の段階で発見するための検討を行った.遡及的追跡例の内視鏡フィルム再検討では,胃底腺粘膜領域の皺襞の局所的な太まりや屈曲,蛇行などの所見に隠れて,小さな陥凹病巣の存在が疑われた.切除した胃底腺領域の深達度smおよびmpの未分化型癌78例中,癌浸潤範囲が粘膜内より粘膜下で広く,粘膜下の線維化より癌が広いpre-linitis plastica型は14例(17.9%)であった.非pre-linitis plastica型と比較してpre-linitisplastica型は癌巣径,粘膜内癌巣径ともに小さく,mp癌の比率が高く,内視鏡的には陥凹面が比較的平滑で,全周が隆起で取り囲まれているものが多かった.

  • 文献概要を表示

要旨 ①原発巣が胃底腺領域粘膜の小さな未分化型陥凹型癌であり,②潰瘍を合併せず,③粘膜内病巣に比べ粘膜下浸潤の拡がりが大きく,④深達度はsmまたはmpを満たすものをpre-linitis plastica(LP)型癌として検討を行った.pre-LP型癌は対象3,269例中1例,0.03%にすぎなかった.その内視鏡像をみると,原発巣は粘膜ひだと粘膜ひだの間に埋もれるように存在する,ひだ集中を伴わない極めて小さな陥凹で,その周囲に限局性の粘膜ひだの肥大を認めるが,空気伸展すると肥大した粘膜ひだは目立たなくなり,台状挙上の所見を呈した.これが特徴と言えそうである.

  • 文献概要を表示

要旨 linitis plastica型胃癌のより早期の像について逆追跡的検討と比較的限局したびまん性浸潤癌切除例の検討から,pre-linitis plastica型胃癌の形態は,多くは胃底腺粘膜領域に存するひだ集中のないpunched out ulcer,または小さいⅡc様所見であり,陥凹周囲にわずかの隆起所見を伴うのが特徴であった,またこれより更に早期の所見(leather bottle状態より21か月前)は褪色した小さいⅡc様所見であった.毎年,年1回の内視鏡検査を注意深く施行することによって,早期診断は可能であると思われた.

  • 文献概要を表示

要旨 linitis型の増殖因子とそのレセプターに関する検討,更に,粘液形質に関する検討を免疫組織学的に行い,"pre-linitis"状態について言及した.その中で,"pre-linitis"状態として胃底腺領域にできるⅡc-like型あるいはMénétrier型のsm massiveからmp癌が,linitis型の初期変化として重要であることと,線維化の完成にTGF-βRIIの異常と癌細胞の粘液形質からみた脱分化が関与することを示したが,今回,われわれが分類したlinitis型が必ずしも中村の指摘するlinitis plasticaと同じであるとは言えない.われわれが示した体部領域にびまん性に浸潤するlinitis型もまた,中村の定義するlinitis plasticaへの道のmile stoneあるいはその一部を見ているのかもしれない.今回の検討結果は,そういう可能性も含んだ中で,体部領域に拡がる硬化型びまん性癌と潰瘍型癌とを両極に組織学的に細分類し,両者の同質性と異質性をみたものにすぎないと考えている.

  • 文献概要を表示

要旨 胃癌では様々な遺伝子変異が示されており,それは遺伝子変異(genetic;ジェネティック)と後成的異常(epigenetic;エピジェネティック)に分類される.前者には遺伝子増幅やp53遺伝子を代表とする抑制遺伝子の欠失・変異などがあり,後者ではDNAメチル化とヒストン・アセチル化あるいは各種増殖因子の過剰発現などが挙げられる.スキルス胃癌ではreplication errorの頻度が高く,増殖因子受容体をコードするK-samおよびc-met遺伝子増幅が特徴的である.多種多様な増殖因子/サイトカインを介したパラクリン/オートクリン・ネットワークが胃癌細胞と間質細胞間に形成され,特異な間質形成に関与している.加えて,カドヘリン/カテニン系の発現低下ないし欠失はHGF/met系との相互作用により癌細胞の浸潤性増殖を可能としている.

症例からみた読影と診断の基礎

  • 文献概要を表示

〔患者〕47歳,男性.会社の健康診断により免疫学的便潜血反応陽性を指摘され,当院を受診した.1998年12月18日に外来で大腸内視鏡検査を行ったところ,横行結腸に約1cmの広基性病変を認めた.1cmの病変のため外来で切除せずに,同部位より1か所生検を施行した.翌年1月11日に大腸X線検査,2月26日には再度大腸内視鏡検査と細径プローブによる超音波内視鏡検査を施行した.

  • 文献概要を表示

 実用的な大腸内視鏡が開発されてから30年余を経たものの,苦もなく回盲部に挿入できるのは限られた内視鏡医にすぎない.多くの医師はあと一息のところで壁にぶつかり,偶発症の発生頻度も少なくない.そこで挿入をより容易にするためにスコープの機構上の改良が続けられており,挿入性に優れ,しかも安全度も高い大腸鏡のあり方が検討されている.オリンパス光学(株)から新たに市販された硬度可変式大腸スコープ(CF-240A)もこのような目的で開発されたものである.

 硬度可変式スコープ開発の目的

  • 文献概要を表示

要旨 患者は71歳,男性.左下腹部痛と血便で入院し,左下腹部に腸詰様の腫瘤を触知した.1か月前には注腸X線造影所見でS状結腸と下行結腸の伸展不良,不整鋸歯状の辺縁を認めた.また大腸内視鏡所見で結腸粘膜は軽度発赤し腫大した半月ひだにより管腔は狭くなっていたが,潰瘍やびらんは認めなかった.入院時には多彩な潰瘍性病変が認められた.下部直腸では不整形の小潰瘍の多発,上部直腸では不整形潰瘍,S状結腸と下行結腸では巨大全周性潰瘍が認められた.絶食と中心静脈栄養で加療したがS状結腸と下行結腸の狭窄を来し手術となった.外科切除標本の検索で下腸間膜静脈領域の静脈内膜肥厚と静脈炎による静脈閉塞が明らかとなった.静脈閉塞による虚血が大腸潰瘍の原因と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は48歳,男性.主訴は心窩部痛.胃X線および内視鏡検査で,前庭部小彎に大きさ約15mm大でbridging holdを伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.また,隆起の頂部には大きさ約7mm大の不整陥凹を認めた.同部位からの生検で低分化腺癌の診断を得たため,粘膜下層以深に深部浸潤した胃癌と診断し,手術を施行した.病理組織学的には陥凹部の粘膜面の一部に高分化型腺癌を認めたが,腫瘍の主座は粘膜下層にあり,肺の小細胞癌類似の小型の異型細胞が充実性に増殖し,漿膜下層まで浸潤していた.Grimelius染色は陰性であったが免疫染色のchromogranin Aが陽性を示し,また一部にロゼット様構造を認め,胃内分泌細胞癌と最終診断した.胃内分泌細胞癌は,発育進展速度が速く予後不良と考えられている比較的頻度の少ない腫瘍である.今回は画像所見および病理組織学的特徴を中心に報告した.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は,40歳,女性.胃X線検査では,胃穹窿部大彎に大きなだるま状の隆起性病変を認めた.基部は広基性で表面平滑,頂部は表面不整で結節状を呈していた.内視鏡検査では,基部はやや青白色で健常粘膜に覆われ,クッションサインを認めた.頂部に過形成性ポリープ(HP)を伴う軟らかい粘膜下腫瘍と診断した.EUSでは,頂上隆起部および粘膜下腫瘍上層部に一致して,第2~3層内に高エコー域と多発小無エコーの混在を伴う低エコー域を認めた.更に粘膜下腫瘍深層部に一致して隔壁を有する大きな無エコー域を認めた.基部に関してはhamartomatous inverted polyp(HIP),リンパ管腫などを疑った.確定診断のため,内視鏡的ポリペクトミーを施行した.組織学的には頂上隆起部はHP,基部はHIPであった.本症例の特殊形態の成り立ちとして,粘膜下の異所性胃腺が粘膜内に侵入後,物理的刺激により二次的にHPが形成されたものと推察された.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は68歳,女性で,心窩部痛,胸やけ,体重減少を主訴に当科を受診した.上部消化管内視鏡検査にて胸部下部食道に径1.5cm大の中心陥凹を伴う発赤した粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.超音波内視鏡検査で病変の主座は粘膜固有層と判断し,内視鏡的食道粘膜切除術を施行した.組織学的にはカルチノイドで,深達度はm,水平断端,垂直断端とも陰性であった.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 1987年にMouretが腹腔鏡下胆囊摘出術に成功して以来,内視鏡下手術は,低侵襲性による患者のQOLの向上という利点によって,瞬く間に世界中に普及した.わが国においては1990年に,「内視鏡下外科手術研究会」が発足した,1995年には「日本内視鏡外科学会」へと発展し,消化器外科,胸部外科,内分泌外科,産婦人科,泌尿器科,整形外科,形成外科などの多領域で,数多くの手術が内視鏡下手術として行われるようになり,更に適応が拡大されつつある.この急激な発展は,機器の開発と技術の進歩によって支えられたものであるが,一方では,機器や技術に関する外来語があふれ,誤って解釈されたりあるいは奇異な造語や略語が出てきたりというような混乱も生じるようになった.

 このような情況下で,1999年5月に,日本内視鏡外科学会用語委員会(山川達郎委員長)編集による「内視鏡外科用語集」が医学書院から発行されたことは,誠に時宜を得たものと喜んでいる.

  • 文献概要を表示

 20世紀最後の年を迎えた今,医学情報が氾濫している.論文は星の数ほどあり,主だった論文に目を通すことさえ不可能となってきた.多忙な臨床医はコンパクトにまとめられた成書を手にすることにより,整理された知識を得るのが効率的と考えられるが,毎年出版される成書の数がこれまた膨大である.一体全体どのようにして,自分の診療に役立つ医学書を選べばよいのだろうか?

 数多い医学書の中から自分の診療に見合った1冊を選ぶとき,筆者はまず本のタイトルと編者や著者を重視する.自分の興味に合致したタイトルで,信頼できる医師により書かれたものならば第・・関門クリアーであり,次にその内容を検討することにしている.さて本書は,わが国の消化器病学の重鎮,多賀須博十の執筆による「開業医のための消化器クリニック」である.その中身を拝見する前から,筆i者は強い衝撃を受けてしまった.何と言う多芸多才な方であろうか!

編集後記 細井 董三
  • 文献概要を表示

胃癌の中でも最も予後不良なlinitis plastica型癌の初期病変としてのpre-linitis plastica型癌について,臨床,病理,細胞増殖活性,遺伝子変異,などのそれぞれの立場からその実像に迫り,あらためて早期診断の目標を明確にするのが本書の企画の目的である.著者は各自の専門的立場からpre-linitisplastica型癌に対する定義と概念に関する理論を展開しているが,中村理論があまりにも大きな存在のため,あえてその範囲を越えない展開にとどめようとするあまり,その実像を鮮明に浮き彫りにするまでには至らなかった感がある.また胃癌の遺伝子変異の解析が進んでいる現状は理解されたが,pre-linitis plastica状態における特異的な遺伝子変異はいまのところ解明されていない模様で,今後の課題として残されているようである.一方,細胞増殖活性や粘液形質に関する検討からは胃底腺領域のⅡc-like型あるいはMénétrier型のsm massiveからmp癌がpre-hnitis plastica型癌として重要であるとの新たな知見は注目される.しかしそれが臨床側の理論と一致するか否か,そこに問題がありそうである.linitis plastica型癌の発育に関してはまだ未解決な部分が相当に残されており,今後再び,本誌にこのテーマが取り上げられることを期待する.

基本情報

05362180.35.7.jpg
胃と腸
35巻7号 (2000年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)