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第86回日本消化器病学会総会は,2000年4月20日から22日までの3日間の日程で,新潟県民会館,新潟市民芸術文化会館,メルパルク,白山会館,新潟市体育館の5施設において開催された.あいにくの曇り空であったが,満開の桜の中,どの会場も熱気にあふれ戸外の肌寒さを感じさせない3日間であった.本学会では特別講演4題,招待講演6題,会長講演と理事長講演がそれぞれ1題,教育講演7題,From Benchto Bedsideとして6題の講演が行われ,更にシンポジウム9題,パネルディスカッション9題,ワークショップ10題と非常に盛りだくさんの内容であった.以下,筆者が参加したセッションを中心に感想を述べさせていただく.
21日午前に行われたシンポジウム3「炎症性腸疾患の治療の進歩と治療法の選択」はメイン会場の大ホールを満員にするほどの大盛況であった.司会の八尾恒良先生(福岡大学筑紫病院消化器科),馬場忠雄先生(滋賀医科大学第2内科)の進行により,潰瘍性大腸炎(6題)とCrohn病(2題)の最先端の治療に関して活発な討論が行われた.潰瘍性大腸炎に対する治療で問題となったのは,標準的なステロイド治療に抵抗するあるいは依存する例にいかに対処するか,ということである.これは潰瘍性大腸炎を診療する上で必ずぶつかる問題である.それぞれの立場から細かに解析されたデータが示され,新しい治療法を現在の治療指針の中にどのように位置付けるかが討論の中心となった.大筋として,白血球除去療法は中等症に有効例が多く,サイクロスポリン療法は重症にも有効例が比較的多いこと,薬剤感受性試験や患者のDNA解析により投与薬剤の効果や予測できることが示され,日常診療において大変参考になる内容であった.現時点では,多くはretrospective studyから得られた結果であるため,明確な結論を得るには至らなかったが,潰瘍性大腸炎治療の新たな展開が目前に迫っていることを感じさせられる内容であった.Crohn病に関する2題は,新たなステロイド投与法を示した演題と腹腔鏡下手術に関する演題であったが,いずれも臨床に即した有意義な内容であり興味深く聞かせていただいた.
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