胃と腸 3巻10号 (1968年9月)

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Ⅰ.緒言

 ほんの数年前まで,唯一の直視下胃内観察法であった胃鏡検査はその技術の習得がなかなか容易でなかったし,また胃鏡が最後まで克服しきれなかった可撓性等の器械的制約の存在が,胃鏡を広く一般にまで行きわたらせなかった.

 ごく最近になってから胃内視鏡の勉強を始めた人達はもはや胃鏡を手にしてみる機会はほとんどないであろう.また胃鏡はおろか,胃カメラ,ファイバースコープですら観察盲点あるいは観察難点があってその克服にたいへんな苦労がつみ重ねられてきたということも,すでにピンとこないことかもしれない.

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Ⅰ.はじめに

 1958年発表されたHirschowitz1)2)3)によるGastroduodenal fiberscopeは,従来の胃内視鏡学に革命的な変革をもたらした.即ち,レンズ系を通して物を見るという概念に対して,coatingをほどこした細いglassfiberの中を,光が反射しつつ視野に入るという考え方は,ユニークなものがあった.このfiberscopeが日本に導入されて以来,町田製作所,オリンパス光学KK等に於いて,世界をリードする優秀な装置が作製されていることは,周知の通りである.

 このような我国に於けるfiberscopeの発達は,各種の胃内操作を伴う技術を広く発展せしめた.

 直視下生検及び細胞診の発達は,世界最高峰を占めるに至っている.

 さて,胃直視下細胞診及び生検に関する装置としては,1940年にKenamore4)が,軟性胃鏡の外側にBiopsy forcepsを備えた装置を報告し,更に1948年,Benedict5)が軟性胃鏡の内部より,レンズ系の外側を通してBiopsy forcepsをスコープ先端のレンズ面近くより出すOperating Gastroscopeを発表した.

 昭和29年に常岡6)がこのBenedictの装置を改良した生検用軟性胃鏡を作成した.又昭和31年には綾部7)が同様の装置の生検鉗子の代りに,綿花を装着した消息子を用いて直視下細胞診を行なった.

 我々8)も昭和33年に,当時の生検用軟性胃鏡が長径14~15mmあったため,その太さを少しでも細くしようとして.生検装置を長さ2.5mmの鋭匙とし,これを軟性胃鏡本体に固定せしめて,長径を10.5mmとした,直視下生検及び細胞診用軟性胃鏡を作成した.

 この装置は当時の観察用軟性胃鏡に対して,口径がやや太いのみという長所もあったが,生検用鋭匙が胃鏡本体に固定されており,又長さが一定であるため,その当時の軟性胃鏡の有する種々の欠点,即ち,可撓性のとぼしいこと,胃内盲点の多いこと,患者への負担の大きいことのほか,細胞及び組織採取範囲が胃角部より口側の小彎側前壁及び一部後壁のみに限定され,従って前庭部大彎側などは,病変を正視し得ても,鋭匙がとどかぬために,生検の適応外となるなどの欠点を有しroutineに行なうべき検査とはなり得なかった.

 然し当時でもAbrasive balloon法やα-chymotrypsin洗滌法で陰性であった早期胃癌症例を,この装置による直視下細胞診で陽性の成績を得た時のよろこびを,現在でも忘れ得ない.

 なお昭和38年に,山形,上野9)による川島10)11)式硬性胃鏡を用いた直視下生検の発表があった.

 昭和37年に,近藤らが中心になって,HirschowitzのGastroduodenal fiberscopeが我国に導入されて以来,これを用いた胃内視鏡検査が次第に普及し始めて来た.

 昭和38年に,春日井等12)はHirschowitzのfiberscopeの外側に細い胃ゾンデを装着して直視下洗滌細胞診を行ない,又高木12)は同じくHirschowitzのfiberscopeの外側に細いビニール管を装置し,その中をbiopsy用鉗子を通して直視下生検を行なった.

 昭和39年に生検用Fibergastroscope B型,昭和40年に直視下洗滌細胞診用Fiberscope K型が町田製作所により作製されて,胃細胞診も一大転機をむかえるに至った.

 その後昭和41年6月頃より,現在の改良型新B型及び新C型等の,スコープ先端の前後屈,左右回転の可能なgastrofiberscopeが作製され,又lightguide方式の光源の完成により,これらの胃内観察下で行なう各種の操作が,容易に行えるようになった.同様な装置がオリンパス光学KKでも作製され,それぞれの特色を生かして活用されているのが,胃直視下診断法の現況である.

 これらのFiberscopeの進歩は,嘗て軟性胃鏡を中心に内視鏡検査を行なっていた我々にとっては,まさに驚くべき進歩であることが実感される.

 ここで直視下細胞診の範囲について述べておきたい.胃直視下細胞診とは,fiberscopeにより病巣部を直視下に観察しながら洗滌する直視下洗滌細胞診と,直視下生検法により得られた小組織片の塗沫標本を検鏡する直視下生検塗沫細胞診14)15)16)17)18)19)20),及び,東大分院城所等の提唱するビニール管を病巣部におしあて,その部より注射器等で吸引により細胞を採取する直視下吸引細胞診などを含むものである.

 これらの方法にはそれぞれの特色がある.

 我々はここでは直視下洗滌細胞診の立場を中心として論ずるが,他の方法については他の著者の意見を参考にしていただきたい.

 以下,本論文に於ては,直視下洗滌細胞診の問題点について述べる.

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Ⅰ.はじめに

 胃の細胞学的診断法が,その第一歩を踏み出したのは,Papanicolaou1)により試みられた空腹時胃液の細胞診にはじまるといってよいであろう(1946,1947).本邦においては綾部ら(1949)2)が,胃液吸引法による胃癌細胞診に成功し,つづいて,生理的食塩水3)4)による標本採取が試みられたが,当時は尚80%前後或いはそれ以下の陽性率にとどまり,酵素液洗滌法,abrasive ballon法の開拓によって,ようやく85~90%の診断率が報告されるに至った.特に山田(1959)5)のTrypsinによる蛋白融解酵素洗滌法,阪6)7),信田8),山形,石岡ら9)のabrasive balloon法の改良による擦過法が応用されるに至り,胃癌細胞診の臨床的価値が評価されるようになった.しかし早期胃癌例に対する成績は,このような非直視下法では,70~80%の診断率にとどまり,わずかに安藤10)によるX線透視下選択的洗滌法,城所ら11)によるV型胃カメラを改良した洗滌器などにより,多少の進歩がみられたが,早期胃癌の細胞診の飛躍的向上は,春日井ら12)の考按になる直視下洗滌細胞診用ファイバースコープの開発によるものと考える.このような直視下採取法では,非直視下法に比して,早期胃癌,進行胃癌の間にその成績に大差なく,ともに95%前後の診断率があげられ,むしろ早期胃癌のほうが採取し易い症例が多くなり,臨床診断学として,その地位を確立したといってよいであろう12)

 本稿の主題である直視下吸引細胞診は,直視下洗滌法,直視下生検法の長所を生かし,欠陥を補う意味で,

1.胃粘膜面の損傷を軽くすること

2.標本の採取,処理,鏡検をより簡易にすること

3.狙撃性を活用すること

等を目的として開発した方法である.

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Ⅰ.はじめに

 胃生検は古くは胃液吸引の際得られた胃粘膜小片の観察を行ったEinhorn(1894年)に始まるというが,本格的な生検は1940年Wolf-Schindlerの軟性胃鏡を応用したKenamore1)の直視下生検が嚆矢と云える.KenamoreはWolf-Schindlerの軟性胃鏡に生検用の鉗子を装置して直視下に胃生検を実施する方法を考案した,今日各種の生検用ファイバースコープが開発されているが,いずれも28年前のこのアイデアを拝借しているわけである.

 ついで1948年Benedict2)はWolf-Schindlerの軟性胃鏡に改良を加えて胃内分泌液の吸引と生検採取を同じchannelから行えるOperating Gastroscopeを開発した.その後本器もしくは本器のmodificationが欧米並びに我が国に於ても使用されて来た.

 一方Tomenius3)はWolf-Schindlerの軟性胃鏡の尖端に吸引生検器を装着した装置を考案し直視下の吸引生検を試み,Debrayら4)はaspiration-sectionの原理に基づく新型のdirect-vision biopsy gastroscopeを開発した(1962年).

 我が国に於てもBenedictの改良型とも云うべき武井式軟性生検用胃鏡(常岡),硬性胃鏡を用いた川島式生検用胃鏡(川島,稲葉)及び順天堂式生検用胃鏡(信田)5)等が開発され,一部において使用された.しかしこれ等胃鏡を用いた胃生検の重要性には誰も異論がなかったが,その手技に熟練を要し,又患者に与える負担も大きく,その割に成績も余り良くなかったので一部の胃鏡学者の研究的或いは臨床的使用にとどまり一般臨床に広く利用されるまでには至らなかった.

 しかるに1958年Hirschowitzら6)によりファイバースコープが開発され,これが胃内視鏡として広く利用されるに至り,ファイバーガストロスコープを用いた直視下生検法が開発され7)~10),ファイバーガストロスコープによる胃癌の生検診断が器械の改良と手技の進歩により臨床的に可能となり10)~16),更にX線,内視鏡,細胞診と並んで胃癌診断の為のルーチン検査法の一つとなった17)

 本稿においては最近その重要性が注目されて来たファイバーガストロスコープによる胃癌の生検診断を中心にのべる.

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Ⅰ.はじめに

 潰瘍性大腸炎の成因については古くから感染説,アレルギー説,精神身体症説,自律神経障害説,リゾチーム説などの諸説があり,最近になって自己免疫に関する研究も行なわれているが,未だ解明されていない1)2).またこの疾患の原因を多元的とする説も有力である3).したがって治療法に関しても多くの問題が残されている現状である.私どもは本疾患に各種の内科療法を試み,第54回消化器病学会総会のシンポジウムにおいて「潰瘍性大腸炎の内科療法」のテーマで報告したので,ここにその概要について述べる.

展望

腹部臓器の動脈撮影 田坂 晧
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Ⅰ.はじめに

 腹部臓器の動脈撮影は,最近数年の間に,臨床診断の中に新しくもち込まれたX線検査法であるといえる.脳や四肢など古くから動脈撮影が実用されている部位について考えればすぐわかるように,動脈撮影は動脈瘤や動脈の閉塞など動脈自身の病変について具体的な情報をあたえることと,髄膜腫の診断のように血管系におこっている二次的な変化から腫瘍の存在部位やそれの性質を知るための資料を提供することの2つの大きな役割を通常もっている.腹部臓器についても動脈撮影のもつ役割は全く同じであるが,診断上の価値はそれぞれの臓器についてはほかの検査法(とくにX線検査法)のもつ能力などにより相対的に左右されることになる.腹部臓器の動脈撮影がどのようにして行なわれているか,どんな疾患の診断に役立つと考えているかを一通り展望をしてみることにする.

 腹部臓器の動脈撮影はカテーテルを使う選択的血管撮影といわれる方法で行なわれている.通常は大腿動脈から先端部をあらかじめ屈曲して型をつけておいたカテーテルをSeldinger1)が考案した経皮カテーテル法にしたがって動脈内に挿入し,X線テレビ透視により腹部大動脈に進めて目的の分枝に先端を入れ造影をする.腹腔動脈,上腸間膜動脈,下腸間膜動脈,腎動脈,下横隔動脈,副腎動脈,腰動脈などの選択的撮影ができる.もっとも頻度が多く実施されるのは腎動脈であり,腎腫瘍と腎囊胞の鑑別診断,腎動脈狭窄の判断など多くの腎疾患の診断に役立って診断的価値が高いが,腎動脈についてはこの展望では除くことにする.

 腹腔動脈の選択的撮影についてはÖdman2)(1958)がはじめて比較的多くの症例に基づく報告をした.肝,脾,膵などの診断に役に立つ可能性がこれにより示され,多数の臨床例についての検討が実施されるきっかけとなった3)~5).上腸間膜動脈6)および下腸間膜動脈7)の選択的撮影では小腸および大腸の腫瘍や炎症性疾患の診断への寄与が期待されてはじめられた.

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Ⅰ.症例

 患 者:小○テ○エ,43歳,女

 主 訴:上腹部痛

 現病歴:約3力月前より,空腹時に上腹部痛をおぼえ,食欲不振で時々悪心があった.便通1日1行.

 既往歴:23歳の時に肺結核に罹患.25歳時,卵巣腫瘍の摘出術.39歳時,甲状腺癌の手術をうけている.

 家族歴:特記することはない.

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Ⅰ.緒言

 胃癌診断法の著しい進歩に伴い,近年早期胃癌例の発見はおびただしい数に達しているにもかかわらず,Ⅱb型早期胃癌の術前診断例は依然として少ない現状である.

 われわれは先ず胃カメラ検査によってⅡcを疑い,直視下胃生検によって癌と確認したうえで手術したⅡcにやや近いⅡbと思われる症例を経験したので報告する.本症例がⅡb診断にいささかでも参考になれば幸いと考える次第である.

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Ⅰ.はじめに

 われわれは最近,胃前庭部大彎の微細なⅡcを経験したが,その病巣から約3cm離れた幽門側後壁に,術前診断の不可能であった極く微細なⅡcの合併例をえたので報告する.

 なお,このように術前診断が不可能で,切除胃で漸く癌性変化を認めた極く微細なⅡc症例が,このほか2例あり追加する.

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Ⅰ.はじめに

 近年,胃X線検査,内視鏡検査,細胞診等の検査法の進歩は著しく,早期胃癌をはじめとする各種胃疾患の鑑別診断は一段とその精度を増し,診断能はとみに向上している.胃腫瘍の診断に際し,しばしば問題となる胃粘膜下腫瘍についてはX線診断或いは内視鏡診断に関する諸家の報告も多い.我々は最近粘膜皺襞の走行異常と著明な筋線維の増殖を伴った興味ある迷入膵の症例を経験したので報告する.

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Ⅰ.まえがき

 胃X線撮影において胃病変を正しく診断するためには是非とも胃微細レリーフ(胃小区)像の撮影が必要である.

 しかしながら,単に胃レリーフ撮影を行なうだけでは良い微細レリーフは描出されない.特に表層性胃炎,肥厚性胃炎,消化性潰瘍等の場合には不良である.これらの場合には胃内貯留液過多,過酸,粘液,壊死物質,胃壁過緊張等の諸因子が悪影響を及ぼしているものと考えられる.

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 司会(石原) きょうはお忙しいところをお集まりいただいて,ありがとうございました.これから,田中君を私のアドバイサーとして直視不診断法と題して座談会をはじめたいと思います.

 胃の中の,いわゆる限局性の病変,ことに早期胃ガンの診断にはレントゲン検査をはじめとして,直視下診断法が,ひじょうに重要であることは,いまさらいうまでもありませんが,最近,とくにこの方面が発達して,直視下観察法にはじまって,直視下細胞診および生検,あるいはそれのpolypectomyなど治療への応用も行なわれ,この方面の進歩はいよいよ深く,広くなり,直視下観察法の将来への期待もますます大きくなってきました,本日はそういうことについて,いろいろとお話し願いたいと思います.

技術解説

私のレントゲン検査 鈴木 武松
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Ⅰ.はじめに

 近時,早期胃癌診断の重要性がさけばれ,私共第一線臨床医の間でも,臨床カンファレンスが盛んに行なわれるようになり,いろいろな胃X線写真を読影させられる機会が次第に多くなってきた.そこで常々気づくことは,胃X線写真の撮り方が,余りにも人によって違い過ぎるということである.しかし正確な診断をするためには,病変を忠実に描写する技術と,それを正確に読む目とが必要であるが,まずよいX線写真を撮ることが第一歩のように思う.

 胃X線撮影の場合には大ざっぱな言い方が許されるならば(誰が撮っても同じX線像が撮れるとは限らないが),こうすれば,こんなように撮れるという言い方ができよう,それは少くなくとも自分も読み易く,他人にも読ませ易い写真は撮れるだろうということである.ではそんな胃X線写真を撮るにはどうすればよいかと自分なりに考えてみた.

 以前から胃X線検査は弾力的或いは臨機応変な検査でなければいけないといわれているが,その意味は自分勝手な検査をしてよいということではなく,一応の検査体系及び検査理論を自分なりに考えて検査をすることであろう.それが自分も読み易く,他人にも読ませ易いX線写真を撮るコツであろう.そこで日常行なっている胃X線検査に対する私の考え方についてのべる.

研究会紹介

熊本胃疾患懇話会 赤木 正信
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 既に7~8年も前のことであったと思うが,南国熊本のむし暑い初夏の頃,白壁彦夫先生をお迎えして,胃のX線診断に関する御講演を拝聴し,大変深い感銘と刺激をうけたことを記憶している.

 これが熊本内視鏡懇話会の起こりとなり,関連講座の教授の方々に,交代制の当番幹事をお願いして,その第一年目は第二外科学教室でお世話して,何とか運営することが出来た.然し第二年日以降には,当番幹事の交代に伴い,いつの間にかこの会の実施がうすれてしまい,数年間のブランクが続いた.そのため熊本地区に於ける内視鏡的診療は著しく停滞したように思われる.

岡山の胃精検研究会 木原 彊
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 北から南から,つぎつぎと胃腸研究会のもようが生き生きと本誌に報告されてきました.岡山県のこういった研究会について老えてみますと,いささか全国の研究会となりたちが違っております.岡山県の研究会は,県下の胃集団検診が始まったのを契機とし県の衛生部,医師会,集検にたずさわっている医師,そして岡大第一内科,第一外科の協力で研究会が始まりました.昭和38年より岡山県下の胃集団検診が行なわれるようになりましたが,その際精密検診を実施する医師として,胃レ線,胃内視鏡の診断能力をお互いに勉強してレベルアップしようではないかと,お互いに期せずして集まり,集検フィルム,精検フィルム,胃カメラフィルムの読影会を始めたのが最初です.当時,会の運営は第一内科の小坂教授,草加先生に随分お世話になりました.集検間接フィルムを読む会とでもいいましようか,週一回,集団検診を行なっている医療施設の先生方が集まってこられました,そのうちに,県の胃集検運営委員会―これは県衛生部,医師会,岡大医学部で構成されていますが―,に参加している県衛生部のお世話で一昨年から,岡山市の県医師会ホールで毎月第三水曜日午後4時から6時まで胃集検間接レントゲン診断に関係のある医師達の間で胃間接レントゲンから精検までの研究会がもたれるようになりました.間接レントゲンフィルムをどう読み,間接レントゲンで出ている所見が,直接レントゲンフィルムでどう表現され,それが内視鏡でどういう像であったか,さらに切除胃の肉眼像,組織像まで提示され,忌憚ない意見が交換されます.しばしば6時をすぎてしまいますが,いそぎ夕食をすませたのち,7時から,今度は医師会主催の胃精検研究会が同じ所で始まります.これには間接フィルムを読む会に集まった先生は勿論,胃精検を担当している先生方が参加されます.ここで一寸と,岡山県の胃精密検診委嘱施設について紹介します.胃集検でチェックされた患者さんの胃の精密検診を正しく行なう以上,一定の施設と医師の能力が必要なことは申すまでもありません.岡山県では県医師会,県衛生部,岡大医学部が適当であると認めた医療施設を胃集検の胃精密検査施設として医師会長が委嘱し集検でチェックされた患者の精密検査を行なってもらっております.現在,県下に53の施設があり,この施設の精検担当医は岡山県下の冒精検能力向上を目的に研究会の出席を義務付けられています.研究会の名称は胃精検研究会といかめしい名ですが,全国でみられる早期胃癌研究会の雰囲気と少しも変りません.症例は県下の病院からまわりもちで次々と提示され,草加先生の司会の下で,きびしい,遠慮のない意見の交換が行なわれます.時には,同じ施設内の先生達で違った意見が出てきたりします.症例の病理組織学的な結論は倉敷中央病院の高柳先生や川崎病院の中川先生,岡大第一外科にお願いしてきました.

 県北部は地理的な関係で岡山市に遠いので県北の中心,津山市にある津山保健センターで美作地区の胃精検研究会が毎月第4水曜日に開かれております.初めは講演会の形式で始めようということで青山大三,山田達哉先生達のお話をうかがってきました.本月で8回目になります.夏には,夏の研究会が県下の胃精密検診施設担当医を中心に二日間に亘り岡山で開かれています.この研究会は講習会の形式で,これまでに講師として,村上忠重,有賀槐三,城所仂,崎田隆夫,高橋淳,白壁彦夫,市川平三郎,西沢護,平山雄,横山富雄らの諸先生が御来岡下されました.そして,診断の尖端の話を承り,本では会得できない診断のこつを生き生きと聞き,質疑応答に接することができ,大いに県下の医師は勉強して参りました.

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欧文目次

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 今日確かに医原病という言葉がむしろ乱用と思われるほど耳に入って来る.その本来の意味が拡大解釈され,医療に伴うあらゆる行為に基く病態をすべてふくめて解釈される.内科医の立場においては薬剤による問題が多いことは著者らの指摘する通りである.この意では著者らのいう通りdrug induced diseaseが最も重要な問題である.

 本来薬物はそれが強い作用を生体に持つほど有効な薬物とされる可能性が大きく,他面副作用として現れてくる症状も強い.両刃の剣である性格がある.当然薬を投与する場合その薬物の作用は熟知し,いかなる作用を持ち,逆にいかなる副作用の危険があるかも知らねばならない.

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 菊地・小篠・菅野3氏による「医学会話」第2版を最近よんだものとして,若干の感想を述べたい.

 本書はポケットに入れて車の中やちょっと患者を待っているときなどに,短い時間を利用して気軽によめる医学会話の本である.

書評「選択的血管撮影」 立入 弘
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 臓器または臓器群の血管造影を選択的に行えるようになったのは比較的近年のことである.しかし像の明瞭さ,末梢までの微細血管像を現わしえること,よい実質造影,造影剤の小量使用で足ることから全身的副作用を防止できる点,など,本法のもつ有利さはこの技法を急速に発展させ,その普及も要求されている.

 昨年春の日本医学会総会でもシンポジウムの主題に“腹部臓器の脈管造影”がとりあげられ,本書の著者の田坂博士はその重要な部門である膵及び脾の動腺撮影を担当された,同博士ははやくから日本の放射線医学の診断部門で重きをなしているとともに,常に新しい分野を開拓する若さをもった真面目な研究家である.そして,その海外留学の際にも,現在の東大病院中央放射線部副部長の場でも,その臨床的研究の焦点を腺管造影,とくにこの選択的血管造影にしぼって努力して来られたのであって,このテーマの本の著者として,これ以上の人は求められないと云っても過言ではあるまい.

編集後記 崎田 隆夫
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 本号の綜説は,直視下診断法である.常岡,竹本,信田,城所,春日井と,この道の第一人者による各論文は読者にとり貴重な教科書ともいうべきであろう.生検を中心に,洗滌ならびに吸引細胞診,色素法等々詳説されているが,この面での今後の進歩は,胃疾患の診断より一歩を進めて治療の面に進むことになるであろうと,その期待は大きい.

 名尾博士は「潰瘍性大腸炎の内科療法」について,すぐれた論文をよせられたことを感謝したい.

基本情報

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胃と腸
3巻10号 (1968年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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