胃と腸 3巻11号 (1968年10月)

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Ⅰ.まえおき

 最近,食道の早期癌が相次いで報告1)~5)されているが,これらの大部分のものは,既に食道鏡検査で診断がつき,X線検査のみでは診断が困難であったという例であって,X線検査はその実をあげることが出来なかった.胃の早期癌におけるX線診断の如き役割を期待するならば,食道のX線診断については更に研究を必要としよう.

 ここで食道のX線検査における基本的な技術や診断方法を述べ症例を示す事が何らかの参考になれば幸いである.

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Ⅰ.はじめに

 従来,食道鏡による診断は硬性食道鏡にたより,耳鼻科医の手によって行なわれていた.最近,食道の微細な病変を問題にする様になり,癌の早期発見が叫ばれるようになって,実際診断にたずさわる内科,外科,放射線科の医師が比較的容易に操作することが出来る食道鏡の開発が望まれていたが,食道ファイバースコープの改良によって食道疾患の診断も新しい時代に入ったのではないかと思われる.胃癌の早期発見がレントゲン撮影診断技術と内視鏡の活用によって,いちじるしい向上を見た事が思い出されるのである.

 実際に現在までに報告された7例の早期食道癌のうち,そのほとんどが,食道鏡による生検によって確診が得られていることを思うと(第6表)食道ファイバースコープの普及は今後,益々,その重要性が認識されるものと思われる.

 われわれは第1表及び,第2表に示す如く,種種の疾患に各種の食道ファイバースコープを使用して来たが,その使用経験を中心に,従来の硬性鏡と対比しながら述べて見たいと思う.

食道癌の治療法 中山 恒明 , 羽生 富士夫
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Ⅰ.はじめに

 食道癌の治療には種々の困難性があるにもかかわらず,最近はいたるところでこれが行なわれるようになったことは喜ばしい限りである.しかしながら胃癌における目覚ましい診断技術の進歩と切除手術の普及による治療成績の向上に比すれば,食道癌治療の道は今なお険しいものがある.われわれは,昭和21年来,5,000余例の食道癌患者を診療する機会に恵まれ,現在迄あらゆる機会に治療上の諸問題とその対策について発表してきたが,今回はその経験をもとにして,食道癌治療の綜説を試みたいと思う.赤倉教授の集計によれば本邦60施設の総症例数は,11,601例,切除例数は,5,227例,切除率46%,他はすべて姑息的治療に終っている.またその切除手術死亡率も15.6%という平均値となっている.われわれが昭和21年から昭和42年にいたる約21年間に診療した食道癌患者総数は,5,435例であり,その内入院治療総数3,563例65.55%であり,その内切除手術の対象となったのは2,178例40.7%に過ぎず,他はすべて姑息的治療である.われわれは,元来,癌腫に対しては,積極的切除手術をもって最良の治療法として今日に至っているのであるが,これらの成績は一つの限界を示すものといえる.特に古い千葉大学時代の統計と最近の東京女子医大消化器病センターにおける統計とを比較してみても,その切除率に差をみいだすことができない.このことは,食道癌治療の上の大きな壁,即ち食道癌患者は高齢者が多いこと,食物の通過障碍からくる低栄養状態,手術そのものの複雑さ等が関連するばかりでなく,それにもまして早期発見の方策が確立していないという感を深くする.食道癌患者は現在でもかなり進行癌の状態ではじめて診断治療されているといえる.ただ一筋の光明は極く最近の1・2年われわれの4例を含めて十数例の早期食道癌が諸々の施設から相次いで報告されだしたことである(第1,2表).

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Ⅰ.緒言

 近年メデカルエレクトロニックスの発達に伴い食道の検査方法にも種々の革新を起こし,とくに,食道機能検査法がようやく確立しつつある.教室においても約7年前より食道機能検査をとりあげ,まずCodeら1)の行なった食道内圧測定法より始め,この方法及び診断的意義については度々報告2)~5)をして来た.さらに最近は食道pH測定及び筋電図の工夫改良を行ない,その臨床的意義について検討しつつある.

 食道の機能の殆どは嚥下した食物を胃内に輸送する運動機能である.食道噴門運動については古くはMeltzerら6)7)の報告に始まるが,1958年Codeらの食道内圧測定をElectronicsを応用して行なうようになってから急速に発展した.この正常の食道噴門運動に対し,各種食道疾患がどのような態度をとるかを指標として診断,治療,病態生理が検討されることになる.

展望

胃集団検診の展望 高田 洋
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Ⅰ.胃集検の歩みと胃集検学会

 我が国における胃集検の歴史は1953年入江,黒川等の胃疾患診断へのX線間接撮影の導入の試みに始まるといってよい.当時は尚装置も不完全で,被検者数も少なく,集検と呼ぶには程遠いものではあったけれども,開拓者としての数々の努力が重ねられ,その間にも色々の障碍やエピソードがあったとうけたまわっている.その後間接撮影装置に改良,工夫が加えられ,黒川,山形,有賀等はこれを駆使して胃集検を軌道にのせたのであった.

 昭和34年に至り,胃集検全国研究連絡協議会が結成され,志を同じくするものの全国的な組織が育って来た.しかし現在からみれば,これに参加する人々も決して多いとは言えない状態であり,報われる事の少ない努力ではあったが地道にこの方面の研究を進め,胃集検の実績をつみ重ねつつあったのである.

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Ⅰ.まえがき

 X線,内視鏡,直視下細胞診および生検の発展に伴い,微小病変に対する診断は非常に向上してきたが,それと共に良性と悪性の境界病変ともいえる異型上皮がクローズアップされてきた.我々も最近異型上皮と思われる症例を経験したので報告する.

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Ⅰ.症例

 患者:T.M.37才,男,会社員.

 初診:昭和42年9月30日,

 主訴:上腹痛.

 現病歴:生来胃弱の傾向があった.2年前粘液便が続き某医受診,胃X線検査をうけたが局在病変は指摘されなかった.一カ月前から空腹時に上腹部の鈍痛及び胃部膨満感を来すようになった.疼痛は摂食により寛解していた.又疼痛は背部に放散することもあったが胸灼け等の酸症状はなかった.時に悪心を伴うこともあった.42年8月植木医院を受診し,胃X線検査及び胃カメラ検査で胃潰瘍(悪性?)の診断をうけ,精査のため当科に転医入院した.

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Ⅰ.症例

 患者:鶴○孝,52歳,男,

 主訴:なし.

 現病歴:昭和40年10月,胃集団検診で,前庭部の異常を指摘され,10月11日,当科受診.

 既往歴:特記すべきことはない.

 家族歴:癌死はない.

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Ⅰ.はじめに

最近胃癌に関する知識の普及とともに,自覚的,他覚的に胃癌を疑って診察を受ける患者が多く来院するようになった.このような患者のうち異常を発見されて,胃切除を施行されたもののなかには,癌腫や潰瘍を伴なわずに胃粘膜搬奨の増加と肥厚を特徴とする症例が少数ながら見出される.これはいわゆるgiant rugae1)または,胃粗大皺襞症2)とよばれるものであって,臨床上癌腫との鑑別が問題となり,その本態や病理についても議論の多い疾患である.昭和40年2月消化器病センター開設から昭和42年8月まで2年半にこのような9症例を経験した.今回は肉眼ならびに病理組織所見について検討を試みたので報告する.

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Ⅰ.症例

 患者:藪○○男,♂,62歳

 家族歴:特記すべきことなし.

 既往歴:昭和6年鼻中隔彎曲症の手術をうけ,同時に扁桃剔出術をうけた.

 50歳頃より高血圧症(最高180)

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 赤倉 きょうは諸先生方大へんお忙しいところをまた内山先生は鹿児島から遠路はるばる飛んできて下さいまして,どうもありがとうございます.それでは僣越ですが,私が司会をやらせていただきますからよろしくお願いいたします,一応食道疾患ということでいろいろ話すようにというお話なんですが,食道疾患というとどうしても食道癌に重点がかかるのはやむを得ないと思うんですが,まず食道疾患の診断というところから入っていったらいいんじゃないかと思うんです.食道疾患の診断で最初にだれでもレントゲンを見るんですが,ほかの写真はかなりよく見る人でも食道の疾患は案外見落されやすい.それからときには全然食道のほうの写真は撮らないで胃のほうに飛んで行っちゃって,そして食道疾患を見逃しているというふうなことも現在はまだ珍しくない.そういうことなんですが,食道のレントゲン写真を見るという点でどういう点に気をつけなくちゃいけないかというふうなことを御厨先生,1つ口火を切って下さい.

技術解説

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Ⅰ.はじめに

 胃レ線検査とくに精密検査にあたって,二重造影法による描写は,反対側の胃壁の皺襞にあまりさまたげられることなく,病竈をほぼ忠実に撮影されるので,きわめて有利であることはすでにひろくしられている.この考え方にさらに胃壁の伸展度の因子を加味すれば,凹凸についてはほぼ完全に描写されることであろう.

 このような考え方はレ線的にみた胃の各部分についてみると,まず後壁,次に,前壁,さらに,体部小彎について,発達してきたようである.

 後壁については本邦においては,白壁,市川,熊倉らが古くから努力され,完成の域に達したが,反面,白壁らは近年,胃壁の伸展度について,かなり神経質になっているようで,近年,とくに「空気中毒」なる用語さえあらわれてきたことは,よろこばしい現象である.このことは内視鏡の分野にも近年ひろがりつつあり,とくに微細病変をみようとするファイバースコープの立揚でも,やかましくなってきた.

 前壁については,とくに熊倉らは詳細な発展を度重ねて行なっている.

 体部小彎についてはSchatzkiがその描写法を発表してから,しばしば意識して行なわれるようになった.

 しかし,ここにのべる噴門部,体(上)部大彎側の皺襞の正面像の二重造影法による描写法は意識的に行なわれたものは世界中でないと思う.

 そこで以下これらについてのべるが,その部の病変はあまりしばしばないので,利用頻度は少ないと思うが,少しでも病変を疑った時は必ず,こころみるべき方法であろう.

研究会紹介

静岡胃疾患研究会 北村 廉作
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 38年5,6月白壁彦夫先生に早期胃癌,胃潰瘍のレントゲン診断の講演を伺い,あまりにも進歩した技術と診断学に驚異の目を見はった事でした.村上忠重先生にも早期胃癌診断の重要性と可能性を強調せられた講義を頂きました.同年7月静岡市医師会臨床検査センターが開設され,当時としてはすばらしいレ線装置が備えられたので,これを有効に利用したい気分が盛り上りました.40年1月白壁先生にレ線検査のデモンストレーションをお願いした折,研究会設立が先生から提議され,E社後援の下に毎月例会を開いて先生の御指導を仰ぐこととなった.3月第1回研究会発足以来病院,開業医30~50名の会員が集り熱心に勉強しています.市川先生,芦沢先生,小黒先生も御出で頂いた.41年7月から中島哲二先生が御同道下され,胃カメラを判読下さる様になった.尚当地の胃カメラは34年5月田坂内科の第2回講習会を受講された司馬速先生によって導入され,崎田,田中,春日井,城所諸先生の講演,小黒先生の手ほどきを頂いた.41年7月から西沢護先生に毎日レ線と胃カメラ検査の実際を見せて頂く様になって会員の検査技術はとみに進歩しました.静岡市医師会で胃の集団検査,精検が企てられたのもこうしたうしろ盾があったからで,廿数名が数グループを組んで,集検判読,精検を行ない,疑問点を研究会で教えて頂いています.3000名の集検に早期胃癌3名を拾い上げました.又最近の2年間で開業医の会員で早期胃癌約20例を発見し得たのも諸先生の御指導の賜と感謝に堪えません.41年11月村上先生に病理検査の解説をして頂きましたが,目下県立中央病院の河合和夫先生が胃癌の組織検査を熱心にして下され,例の亜連続切片方式をやって呉れますので病理診断に良いつてのない会員も大変に助かっています.レ線診断並に内視鏡診断の最近の驚異的な進歩に従って行くことは到底難しい事ですが,当研究会では白壁,中島両先生が全くの初歩から辛抱強く繰返し丁寧に御指導下さるので,開業医でこれから新規に勉強しようと志す方もどんな症例でも臆することなく判読して頂き,御指導を受けるという打ちくつろいだ雰囲気でまいりました.本誌3巻10号の症例の胃カメラで危く見逃す所を西沢先生に早期胃癌だろうと指摘して頂けたのもこのお陰です.又この症例が生検で診断を確定できたことは生検の威力をまざまざと肝に銘じさせました.そして,中島義麿先生を桐生からはるばる数回も本会にお誘いするという奇縁を生んだのでした.

佐世保早期胃癌研究会 早川 滉
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 佐世保早期胃癌研究会の概況を御報告するにはまず長崎県の胃疾患研究会の発展経過を知って頂く必要があります.本県では第一回の東京で行なわれた胃カメラ講習会に長崎市民病院内科の山根先生(現開業),ついで長大筬島内科平井得夫先生が出席され,それぞれ基礎をつくられました.その当時より平井先生を中心として,大学の中では同好の人が集り,なんとはなしに胃カメラ同好会が出来あがり,カメラの読影,レントゲン診断などが気楽にディスカッションされていました.昭和39年10月日本消化器病学会,日本内視鏡学会の各九州地方会が,筬島教授を会長として,長崎で行なわれ,教室先輩の綿田,喜々津,影浦,池田各先生の御努力により,学会前夜に胃疾患検討会をE社の援助により長崎グランドホテルで開いたのが正式の始りであります.その時は九大より岡部,井上,古沢各先生,中村(現福岡医師会病院)先生などにより,活発な討論がなされ,時間が予定よりオーバーする盛況でした.岡部先生にはそれ以来一年に1~2回出席して頂き,一つのテーマでの講演と診断などのアドバイスを頂いており,会員一同深く感謝いたしております.幸いなことに長大病理竹林助教授,放射線科の常岡助教授からもそれぞれの立場から御発言を頂き,開業されている方々の中には高原誠先生一門,井上哲治先生などの活発な働きがあり,年に一回は東京から講師をお招きしており,すでに村上,白壁両先生からそれぞれの立場で貴重な御講演を頂いております.さて佐世保地区では上述したバックがなく,在住の諸先生方より佐世保でも開催してくれるようにとの要望が強く,42年7月に第一回を市民病院,犬塚,早川が中心となりE社,Y医療器械店の御厚意により,計画いたしました.御存知のように佐世保周辺は九大,長大のほぼ中間にあり,大きい病院も少なく,出席を心配しておりましたが,第一回より80人を越す盛況で2カ月に一回開いております.講師としては長大筬島内科より池田,梶山両先生に御足労をおねがいしております.こういうように回も浅く,各地区や大学で行なれわている検討会とは異り,日夜第一線で活躍しておられる多忙な先生方が中心であり,早期胃癌研究会という名にはずかしい位の低いレベルであり,少量のバリウムによる充満像や,不十分なダブルコントラスト,内視鏡ではどこに病変がうつっているのか判定に迷う例も多かったようであります.しかしこれらの点も回を重ねるにしたがって改良され,質問の内容も基礎的なものから,漸次早期癌の型,進展度,異型上皮の問題などにまで討論されるようになり,提出されるレントゲン,内視鏡も一応見るに耐えるように向上していっているのは嬉しいかぎりであります.症例も進行癌やはっきりした潰瘍,自分では癌と思うが,自信がないのでこの会で討論してもらい,結論をえたいとするものなどが多いようでしたが今年に入り,隆起性病変の考え方,ビラン性胃炎,早期胃癌,異型上皮なども発表され,盛況をていしております.中村裕一先生が本紙3巻4号でふれられているように,どこに出してもはずかしくないレントゲンフィルム,内視鏡フイルムの撮影法を末端で活躍していられる開業医,勤務医に習得してもらうことが,胃癌の発見ひいてはその早期の時期による発見を増加させる基盤となるものであると信じております.

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欧文目次

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 The latest publication in a long line of comparisons between radiological and endoscopic examinations is Atlas of X-ray Diagnosis of Early Gastric Cancer. Like authors before them, Dr. Shirakabe and his group state that “the small lesion is the more diflicult to demonstrate on a film.” “...in this regard rigorous cooperation between endoscopy and radiology is strongly recommended for early gastric cancer detection.” How true.

 The Japanese have made tremendous strides in improving endoscopic instruments. Their instruments are introduced into the stomach easily and “blind spots,” responsible for not seeing lesions in the early days of endoscopy, are greatly reduced. Not only are ulcers and neoplasms easily seen but they are photographed quickly.

編集後記 市川 平三郎
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 本号は食道の特集である.

 食道ということになると,赤倉教授も座談会の中で言われているように,食道癌が中心とならざるを得ないであろう.胃癌の治療方法がある程度行き詰った時に,早期胃癌の診断法の著しい進歩に支えられて,胃癌の治癒率が向上しはじめたのと全く同じように,食道癌の治癒率の向上のためには,早期食道癌の診断が強く要請され始めている.そして既に10例前後の経験例が報告されているということは,この方面に於ける黎明を告げる喜ばしい事実といえるのではなかろうか.こういう観点から,本号に於ては,食道の診断と治療を中心にした各々の権威者による綜説と座淡会を味わっていただきたいと思うのである.

基本情報

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胃と腸
3巻11号 (1968年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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