胃と腸 20巻9号 (1985年9月)

今月の主題 胃癌診断におけるルーチン検査の確かさ―部位別・大きさ別の検討

主題

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要旨 X線,内視鏡を使っての胃癌の診断は飛躍的進歩を遂げ2~3mmの微小胃癌の発見も可能になってきているが,一方,大きな進行癌が見逃されることもそう少ない経験ではない.そこで,今回胃集検における間接X線診断の精度を検討し,今後の改善の方向性を考えてみた.1970~1982年度の北海道対がん協会の胃集検,総受診数1,644,658,発見癌2,017を対象としaccidentally detected cancer法(以下ADC法)により偽陰性率を算出すると,合計で29.7%,X線無示現が要因のもの14.8%,読み落としが要因のもの10.4%であった.更に胃癌の部位,大きさ別に検討すると,胃上部・後壁・大彎で無示現,読み落としとも多く,小病変で無示現が多かった.これらの病変を更に良く現す撮影法の改善と,double readingなど読み落としを減少させる読影の工夫が必要と思われた.

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要旨 (1)50歳以上の胃集検対象者から12,405人を無作為に選び出し,細径panendoscopyを全員に施行したところ,胃癌183例(男性135例,2.04%:女性48例,0.82%)が発見された.これらのうち早期癌は126例,131病変であった.これらの群から発見された早期癌は,外来診療や胃集検などのように幾つかの網目を通して選択され発見された早期癌よりも,微小病変が多く,またC領域,前壁,大彎などの拾い上げの難しい病変が多かった.(2)全員にpanendoscopyを施行した12,405人のうち1982年4月までにpanendoscopyが行われた4,911人からは82例の胃癌が発見された.胃癌なしとされた4,829人に対して,初回のpanendoscopy施行後1年から5年の間に追跡調査を行い,14例の胃癌が発見されたが,そのうち進行癌が6例あった.6例の進行癌はすべて3年以内に発見され,C領域のものかスキルスであった.追跡調査で発見された進行癌は,全発見胃癌96例中の6.3%であった.また,初回の内視鏡検査で誤診例と考えられるものは,7例(7.3%)であった.

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要旨 1979~1984年に当科で初めて胃癌と診断された例でpanendoscopyによるルーチンのスクリーニングが行われた例に,他院で癌を疑われながらpanendoscopyでそれを見逃した例を含めた,早期胃癌54例,進行胃癌42例を対象とした.2年以内に癌なしとされながら診断時に20mm以上の早期胃癌であったもの,および4年以内に癌なしとされた進行胃癌例を見逃し例として算定すると,ルーチン検査としてのpanendoscopyで早期胃癌を発見する確からしさ(有病正診率)は77.4%であった.C領域と大彎の病変ではやや劣る.panendoscopyは早期胃癌を発見するために十分な確からしさを有する.

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要旨 (1)prospective study:1983年1月~1984年12月に初回ルーチンX線検査を6,168例行い,うち1,006例(16.3%)に内視鏡検査を施行した結果,見逃し例も含め81例の癌を発見した(発見率1.31%).X線診断の確かさは,癌とした73.3%,癌の疑いとした17.6%に癌を認めた.不確かさは,潰瘍とした4.3%,潰瘍瘢痕とした0.9%,良性隆起性病変とした3.3%,軽微な所見とした1.0%に癌を認めた.部位別にみた病の拾い上げと診断の確かさをみると,前壁では数は少ないが明らかな異常のみを拾い上げており,小彎や後壁では拾い上げの約80%を占めたが読み過ぎの傾向がみられた.(2)retrospective study:1980年1月~1984年12月に切除し病理検索できた早期癌70例82病変について,ルーチンX線検査の成績を検討した.大きさ別にみると,1cm未満の拾い上げは難しく,1cm以上3cm未満のものでも,隆起型の27.3%,陥凹型の32.4%を見逃していた.部位別には,前壁や大彎の拾い上げが悪かったが,多発病変や変形胃がその原因であり,後壁や小彎では,読影ミスによる見逃しが多かった.

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要旨 非紹介切除胃癌134例に対するX線診断の実状を調査し,胃癌診断におけるルーチンX線検査の確かさの一面に触れてみた.X線検査先行胃癌は80例で,内視鏡検査先行胃癌は54例であった.ルーチンX線検査では11mm以上の大きさの早期癌を発見できたものの,60mm以上の大きさの早期癌を発見できなかった.X線検査と内視鏡検査の有検査歴癌を比較すると,A領域の20mm以下の早期癌にX線検査歴のある例が多かった以外には,特にこれといった差は指摘できなかった.ルーチンX線検査の質を高く,一定に保つためには,検査医の合理的配分について再考する必要がある.

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要旨 (1)X線,内視鏡検査両者併用によるルーチン検査の診断について部位と大きさの面から検討した.(2)対象として5mm間隔で全割された早期胃癌238病変(切除標本の検索によって発見されたものを含む)を用いた.(3)238病変の分布は壁別にみると大彎<前壁<小彎<後壁で,区分別にみると区分法1では噴門部<幽門部<A<M<C,区分法2では噴門部<幽門部<胃角部<前庭部<胃体部であった.(4)X線,内視鏡検査両者併用によって発見できなかった病変が60病変あった.5mm以下が63.3%を占め,11~20mmに見落としが5病変8.3%あった.(5)20mm以下の早期癌の発見率は74.8%で大きさ別にみると5mm以下40.6%,6~10mm 69.6%,11~20mm 95.8%であった.(6)区分別に発見率をみると,区分法1では幽門部,Aの後壁,大彎,Mの大彎,Cの前壁が低く,区分法2では幽門部,前庭部,後壁,大彎,胃角部前・後壁が低かった.

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要旨 日常臨床上実施してきたX線および内視鏡ルーチン検査の確かさについて検討した.1980年4月より1985年1月の期間に実施したX線ル一チン検査2,025例において,早期胃癌および早期胃癌疑いと診断したものは134例(6.6%)であり,その32%が最終的に早期胃癌であった.一方,同期間における内視鏡検査3,275例では105例(3.2%)が早期胃癌または早期胃癌疑いと診断されており,うち56%が早期胃癌と確診された.病理組織学的検索のなされた切除早期胃癌44例の検討からは,X線的に4例(9.0%)が描出不能であり,内視鏡的に2例(4.5%)が指摘不可能であった.以上より微小病変あるいは前壁病変,胃体上部病変,幽門輪近傍病変のルーチンワーク成績向上に努力する必要性がある.

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 ルーチン検査とは何か

 八尾(司会)ルーチン検査の確かさと言っても方法,技術,器械の差などいろいろな問題があると思います.

 また,ルーチンとは何かも一番問題になると思います。例えば,集団検診もルーチン検査であるとするのかどうか,そのあたりから口火を切っていただきたいと思います.

今月の症例

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〔症例の概略〕患者は37歳の女性で,主訴は背部痛.家族歴は母が直腸癌で死亡しているが,既往歴に特記すべき事項なし.4年前より胃部不快感があった.1983年11月だるいような背部痛があるため,近医受診し胃X線・内視鏡検査により異常を指摘された.1984年1月26日,当科に紹介され,入院となった.入院時は身長158cm,体重57kg,栄養良,脈拍68/分・整,表在リンパ節は触知せず.貧血・黄疸・浮腫はなく,胸部の理学的所見に異常は認めなかった.腹部は平坦,軟で,肝・脾・腎および腫瘤を触知しなかった.

胃と腸ノート

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 食道アカラシアに対する非外科的治療法には,ブジーを用いた受動的拡張療法とpneumatic dilatorによる強制噴門拡張療法とがある.前者は,1900年代前半までは治療の主流であったが,治療効果が一過性で不十分とのことで,pneumatic dilatorの普及に伴い顧みられなくなった.しかし,60 French(φ20mm)の太径ブジーを使用すれば治療効果の持続が長く,pneumatic dilatorに比し手技が簡単で安全であるので外来で施行できることからブジー療法が再評価されている(Gastrointest Endosc 28: 169-172,1982).私どもも太径ゴム製ブジーによる食道アカラシア治療を試み良好な成績を得ているので紹介する.

 治療法は,Fig.1に示した市販のMaloney mercury-filled tapered esophageal bougie (Pilling Co.)60 Frenchを使用し,Mandelstamらの方法(前出文献)に準じ噴門部を6回往復させた後に1分間留置した.自験例は10例で,経過観察期間平均18か月の時点の治療成績は,自覚症状のない著効例が4例,軽度のつかえ感を時々自覚するが日常生活に支障のない有効例が5例,無効例は1例であった.

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 早期胃癌用語に,“聖域”ないし“聖域型”という言葉がある.たしか,村上忠重先生から直接お聞きした記憶があるが,この用語,ベトナム戦争で米軍が意識的に爆撃を避けた某都市を,新聞が“聖域”と呼んだことにヒントを得たということである.

 最近,ある雑文を書く必要があって,J.ホイジンガの名著「ホモ・ルーデンス」(第19版,高橋英夫訳,中央公論社,1984年)を再読していたところ,「裁判が行なわれる場所は〈法廷〉である.すでに『イーリアス』の中には,アキレウスの楯の上に裁きの長たちが描かれていたことがうたわれている.そこで言われている〈聖域 iepos kukios〉というもの,これがはや,言葉の最も完全な意味での法廷なのだ.法の裁きが告げられる場所は,すべて真の〈神苑〉であり,日常の世界から遮られ,特別に柵で囲われ,奉献された場なのだ」とあった(p.140).そこで,ホメーロス「イーリアス」(下巻,呉 茂一訳,岩波文庫)をみたが,原注の指定ページには,「長老たちが,神聖な円形の中の磨いた石の座にすわり込み,声を張りあげる伝令使らの笏杖を(借り)手に捧げ保ち,さて次々にその杖を執り,突っ立ち上がって,交る交るに裁きを述べた.その真中には黄金の錘が二つ置いてあり,みんなの中でもっとも正しい裁きを述べた者に授けることになっていた(ママ)」とあるだけである.いま,「イーリアス」2巻を精読するひまはないが,文庫の文章,「ホモ・ルーデンスの」p.144~145にも説明があり,ここにも聖域という単語が繰り返し出ている.

Far East Nippon 武藤 徹一郎
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 Crohn病は欧米で多い病気だ.最近の報告ではどの国でも頻度が上昇しており,術後の再発率が高いうえに内科的治療法も確立していないやっかいな病気で,“clinically malignant”などと嘆かれるのも無理はない.

 Crohn病の原因は何だろうか?最近ではmycobacterium説が出ているが,一時はウイルス説が有力であった.いや,現在でも有力な説の1つである.患者の腸管のホモジェネートを濾過してマウスの足底に注射したところ,肉芽腫が形成されたというCaveらの実験報告は大変センセーショナルで,わが国でも追試されたと思われる,その後間もなく学会で会ったMorson日く“あの肉芽腫は異物性のもので,注入時に毛でも入ったんじゃないか.ちゃんとした病理学者が標本をみていないのだから……”.その後,この研究に発展がみられた形跡がないのは周知のとおりである.

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 最近,新しい潰瘍治療剤が相次いで登場しているが,なかでもH2受容体拮抗剤(以下,H2B剤)は画期的な治療剤という評価を得ている.しかし,ここで取り上げるのは治療効果の話ではなく,治療後の再発の問題である.H2B剤による治療後に再発の多いことも周知で,その理由についてもいろいろな説明が試みられているが,結局は,“H2B剤を以てしても潰瘍の自然史は変えられない”というのが,その要約のようである.

 報告された再発率の数字も多様で,1年累積再発として,30%とし,50%といい,また70%とし,更には3か月で70%という報告さえある.その昔,制酸剤や抗コリン剤などを用いて潰瘍の治療をし,後療法を行っていた時代の再発率,例えば,有名な原らの観察データでは,1年累積再発率は約10%,それが50%を越えたのは,7~8年の間であった.この数字1つを比較しただけでも,H2B剤治療後の再発率の高さが尋常でないことは明らかである.現在,制酸剤や抗コリン剤の再発予防効果については否定的な意見が多い.すなわち,原らの成績も自然経過に近いということになろうか.とすれば,H2B剤が,自然経過を変えないという要約は疑問である.むしろ,H2B剤は,潰瘍の自然史を著しく変容させるというべきではないか.H2B剤は,潰瘍を治して,潰瘍症を悪化させるのではあるまいかなどと思ってみるのは疑心暗鬼というものであろうか.

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要旨 4症例5病変のDieulafoy潰瘍を経験し,全例緊急内視鏡検査で診断し,緊急手術にて救命しえた.本疾患の病態は動脈硬化の二次的な変北による動脈瘤説と動脈走行異常説とがあるが,最近の文献では後者の説が多い.過去14年間に本邦にてDieulafoy潰瘍として報告された28例に,胃粘膜内動脈瘤破綻例2例を加えた総計34例35病変の文献的考察を行った.年齢は11歳から80歳に及び,平均年齢は男57歳,女59歳であり,男女比は4:1であった.90%は吐血を主訴とし,全例ショックまたはプレショックで受診し,病巣は不明1例を除き,全例胃体中部以上にあった.吐血から診断または外科的処置まで平均5.7日を要し,救命率70.5%,死亡率8.8%,不明20.5%で,本症の認識と緊急内視鏡検査の重要性が強調された.

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要旨 glomus腫瘍は,一般的には四肢末端の皮下や爪下に有痛性腫瘤として発生する良性腫瘍である.今回われわれは,極めてまれな胃glomus腫瘍の1例を経験した.患者は56歳女性.心窩部不快感を主訴として当科へ入院.胃X線および内視鏡検査より,胃前庭部小彎に表面平滑な球状の隆起性病変を認め,bridging foldを伴っていた.胃粘膜下腫瘍と診断し手術を施行.切除標本では腫瘍は,大きさ2.5×2.5×2.Ocmで,被膜に覆われ,固有筋層から圧排性に発育していた.病理組織学的に胃glomus腫瘍と診断された.われわれの症例を報告すると共に,これまで本邦で報告された胃glomus腫瘍32例についての文献的考察を加えた.

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要旨 患者は49歳,女性.腹部不快感を主訴として来院.胃X線検査および胃内視鏡検査では,胃前庭部大彎側に粘膜下腫瘍を認めた.胃切除術およびリンパ節廓清術を施行した.腫瘍の割面は,充実性で灰白色を呈していた.組織学的には,腫瘍は紡錘型細胞より成っていた.peroxidase-antiperoxidase immunohistochemical法により,S-100蛋白を含有するelementが明らかになった.この染色法は,Schwann cell由来の腫瘍を同定するのに有用と考えられる.

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要旨 患者は46歳の男性で,16年前に十二指腸潰瘍にてBillroth Ⅱ法による広範囲胃切除術を受けた.7か月にわたる上腹部膨満感と黒色便を主訴として来院し,臨床検査成績上では軽度の貧血を呈したのみであったが,上腹部に小児頭大の腫瘤を触知し,上部消化管造影(Fig.1),胃内視鏡検査(Fig.2)にて巨大な胃石を認めた.これに対し,内視鏡的に3度にわたってポリペクトミースネアを用いて砕石し,完全に除去した.しかしこの処置の際,内視鏡にて白苔を伴った潰瘍形成が吻合部にみられた(Fig.3).その後の上部消化管造影にても,胃壁の不整,狭窄の所見が吻合部近傍に認められた(Fig.4).生検の結果,中等度分化型腺癌であった.この患者に対し胃の再切除を行いRoux-en Y吻合にて再建し根治しえた.切除標本(Fig.5)では肉眼的に吻合部の狭窄を起こしたのであろう,悪性を思わせる隆起牲病変が吻合部に認められ,組織学的には中等度分化型腺癌の像を呈していた(Fig.6).

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要旨 反復する貧血を主訴としたまれな小腸海綿状血管腫の1例を経験したので報告した.患者は22歳の女性で,腹部単純写真で小骨盤腔に多数の小石灰化像を認めた.小腸X線検査を行うと,小骨盤腔内の中部小腸に限局性の病変を認めた.充満像,圧迫像では小顆粒~結節状隆起による辺縁不整像,粘膜像が描出され,二重造影像では辺縁不整像が丸味を帯び,伸展性はよく保たれていることが示された.手術により海綿状血管腫と診断され,内腔に静脈石を伴っていた.血管造影,CTでもこの病変の状態がよく示現されており,小腸海綿状血管腫の典型例と考えられた.

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要旨 患者は37歳の男性で1979年家族性大腸腺腫症,結腸癌と診断され結腸全摘術が施行された.術前の上部消化管検査では胃ポリポージスと十二指腸ポリープが認められたが悪性病変はなかった.家族歴は患者の母親とその姉が直腸癌で死亡しており,また患者の従姉妹が家族性大腸腺腫症,早期結腸癌で同様に手術を受けている.1983年1月,患者が41歳のとき,定期的上部消化管内視鏡検査を受けた.この時点では自・他覚症状,異常検査所見は認められていなかった.この内視鏡検査により十二指腸乳頭部に強く悪性化を示唆する病変が発見された.その部の生検は高分化型腺癌を示した.1983年3月膵頭十二指腸切除術が施行された.切除標本では2cmの乳頭部癌と29個の十二指腸の腺腫性ポリープが認められた.所属リンパ節に転移はなく,癌病巣の膵および胆管への浸潤はなかった.

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要旨 患者は75歳男性で,入院17か月前に下血が出現し直腸癌の診断を受けたが放置していた.10か月後下痢が出現し,その後皮膚色素沈着に気付いた.14か月間に10kgの体重減少を認め1981年8月入院した.入院時,手,足の爪の萎縮を認め,直腸に全周性の限局潰瘍型腫瘤を触知した.その後体毛の脱落を認めた.検査成績では軽度の貧血と血清K,Ca値の低下,血清総蛋白の著明な低下(4.3g/dl)を認め,CEAは12.4ng/dlと高値を示した.消化管X線および内視鏡所見では胃,結腸,直腸に多数のポリープがみられたが,食道,小腸にはみられなかった.直腸には全周性の狭窄を示す限局潰瘍型腫瘍を認めた.生検では胃ポリープはhyperplastic polypであり,直腸腫瘍は腺癌であった.直腸癌の治療目的にて直腸切断術を施行した.切除標本では直腸に6.0×4.7cmの限局潰瘍型癌を認め,標本全体に無数の小ポリープを伴う横ひだがみられた.組織学的には直腸腫瘍は高分化型腺癌であった.ポリープには2つの型がみられ,大部分を占める型は腺管の囊胞状拡張,間質の浮腫,炎症細胞浸潤がみられ,他の型のポリープは腺腫または腺腫性腺管の集簇である.術後,下痢の消失,体毛の再生,皮膚色素沈着の改善がみられ,手足の爪は剥離し再生した.人工肛門粘膜面のポリープは背が低くなり,発赤は軽度となりoozingは消失した.その後肺炎に罹患し,下痢,粘血便の再発がみられ肺炎のため死亡した.下血発症後1年8か月であった.

Refresher Course・19

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患 者:57歳,男性 主訴:タール便.

現病歴:1980年11月と1981年2月タール便が出現,いずれも4~5日で自然に消失した.腹痛はなかった.1981年2月,近医より紹介され,上部消化管X線および内視鏡検査,経口小腸X線検査,逆行性大腸X線検査,大腸内視鏡検査が行われたが,明らかな異常を認めず,出血源不明のまま経過観察となった.その後も2回,同様の間歇的タール便があり,精査のため1981年11月入院となった.入院時にはタール便はなかったが便潜血は強陽性であった.

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4.読影法と鑑別診断

 質問 慢性膵炎,特に腫瘤形成性膵炎と膵癌の鑑別診断にはどの検査が有用でしょうか.

 望月 これはUSとか,CTでは診断力はかなり落ちると思います.機能検査は別にしますと,むしろ,ERP,US,CT,anglographyなどの総合的な診断が必要になってくると思いますが,実際の鑑別は難しいと思います.

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欧文目次

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 本当に,掛値なしに役立つ手術書というのはこのような書物を指すのであろうか.本書の著者,長谷川博先生は大変ユニークで,しかも読者を納得させずにはおかない論文を多数発表されている,名実ともに肝臓外科の第一人者であられることは今更言うまでもなかろう.

 本書は,まず氏の体験に基づく極めて実際的な肝切除の適応や,開腹時に術者にどのように見えているかという現実に即した肝の外科的解剖が示されている.次いで肝切除における基本的注意事項が極めて具体的に述べられ,また氏の愛用されている少数の,平凡に見えながら工夫の凝らしてあるハサミや剥離鉗子などが提示されている.肝切除の実技の項では開創の重要性,肝門処理をはじめとする肝切除に共通,必須な諸諸の手技やそのコツが懇切丁寧に記されている.更に,肝の各区域の切除について特有な事項が補足説明され,また術前術後の管理上の諸問題を,多数の経験と深い洞察から既成の観念にとらわれない見解を述べておられる.このほかに随所に現れるtrouble-shootingとcoffee breakは心にくいばかりである.前者は肝切除においてしばしば起こる小さな事件の対策から,術者の目の前を真暗にするような大出血に対する自信あふれた適切な対処の仕方も教えてくれる心強い味方である.後者は,一見気軽そうに,しかし実は氏の動かざる信念を披瀝しておられる楽しくも有益な欄である.

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 Hypergastrinemia develops within 24 hours of trurcal vagotomy in dogs: Hollinshead JW, Bebas HT, Yamada T, et al (Gastroenterology 88: 35-40, 1985)

 迷走神経切除(迷切と略す)後,基礎あるいは食事刺激後の高ガストリン血症の発現が,ヒト・犬ともに認められるが,この現象の機序は不明である.迷切後の胃酸分泌の低下の結果としてのG細胞過形成,あるいは迷走神経の緊張によるガストリン放出抑制機序の喪失が原因と思われている.しかし,犬では不明だがハムスターのG細胞再現時間(replication time)は10~15日と推定されていることから,高ガストリン血症が迷切後のG細胞過形成によるならば,ガストリンの上昇はゆっくりで日数を要し,逆に,迷走神経の緊張喪失が原因なら短期間に急激な上昇を示すと推定される.著者らは,上記のいずれの機序によるかを明らかにする目的と,ソマトスタチンが迷切後の高ガストリン血症発現に関与しているか否かを,11頭の犬に胃痩を造設しそのうちの6頭に迷切を施し検討した.

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 Development of lymphoma in patients with Crohn disease: Glick SN, Teplick SK, Goodman LR, et al (Radiology 153: 337-339,1984)

 炎症性腸疾患とリンパ腫の関連は,癌との関連ほど明らかではない.しかし,原発性の大腸リンパ腫が潰瘍性大腸炎で26例報告されており,Crohn病でも13例のリンパ腫の発生が報告されている。著者らは,Crohn病で3例のリンパ腫を経験した.第1例は69歳の男性で,小腸Crohn病.十二指腸から近位小腸にかけてのlarge-cell(histiocytic)lymphomaの発生をみた.第2例は51歳の女性で,大腸Crohn病.直腸からS状結腸にかけてのlargecell(histiocytic)lymphomaの発生をみた.第3例は22歳の女性で,回腸末端から結腸にかけてのCrohn病.縦隔から鎖骨上窩にかけてのHodgkin病の発生をみた.

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 標準外科学第4版が改訂上梓された.

 通読して感ずることは,外科学総論・外科学各論の膨大な内容を,必須な知識はほとんどもらすことなく,しかも極めて多い最新の情報をよく整理し,平易に簡潔にまとめているということである.わかりやすい説明を付した図がふんだんに用いられており,理解を更に容易にしているのも印象的である.

書評「今日の診断指針」 岩崎 榮
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 日常診療の中で,必要とされる医学知識や医療技術は,今日の如き日新月歩の医療革新の世では余りにも多いものとなり,何をどのように補ってよいものやら皆目わからない.

 そのようなとき,今回出版された「今日の診断指針」は,このような医師たちへの道しるべともなろうかと思われる.

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 Modulation of suppressor-cell activity by cimetidine in patient with common variable hypogammaglobulinemia: White WB, Ballow M (N Engl J Med 312: 198-202, 1985)

 H2受容体拮抗剤シメチジンには,モルモットやラットで免疫グロブリンの産生などを変化させる作用があることが知られており,ヒトのリンパ球機能に対する影響に関しても多くの予備的研究がある.common variable低γグロブリン血症は気道や消化管の感染を反復し種々の程度の低γグロブリン血症を呈する疾患で,B細胞あるいはT細胞の機能異常が原因と推定されている.

編集後記 八尾 恒良
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 早期胃癌研究会でいつも思うのだが,X線,内視鏡診断で大事なことは,描出された所見を正しく拾い上げることにあると思う.そして,拾い上げた所見やその解釈が正しいかどうかを知るために切除標本肉眼所見があり,病理学的検索がなされているはずである.このような態度を放棄し,診断が当たった,当たらないという点のみに拘泥すれば“診断学”とは言えず,また進歩も望めないであろう.

 本号では“ルーチン検査”が論議されているが,特集号に寄稿される程の施設でも“見逃し”に対する考え方や診断された癌の質にばらつきが大きすぎるように思う.今更という気がしないでもないが,もう一度ルーチン検査や,拾い上げ診断のあり方が論議されるべきかも知れない.

基本情報

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胃と腸
20巻9号 (1985年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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